過去の雑記 01年 5月上

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5月 1日
起きたら昼。飯を食って、家賃を振り込み、昼寝したらいきなり夜。すがすがしいほどに非生産的な一日だった。

あ、医者行くの忘れた。まあ、このところ症状が出てないし、いいか。

近所のトイショップで、ガシャの新作を見かける。「東映ヒーロー列伝」今回のメインは『宇宙鉄人キョーダイン』。当然、狙うはゴンベスただひとつ。気合を込めて数ヶ月ぶりのハンドルを、回す。

……だから、バロム1なんていらねえってばよう。

5月 2日
久しぶりに仕事。4連休明けで翌日から5連休という気合が入らないのも当然という日に、マニュアルの存在しないプラグインの使い方を推測するという仕事をするのは我ながら無謀に過ぎたか。本当にやる気が出てこない。困ったものだ。

近所の書店で中村融/山岸真・編『接続された女』(河出文庫)と井上雅彦・編『物語の魔の物語』を購入し、前者からラファティ「空(スカイ)」を読む。さすが本邦初訳の70年代ラファティ。文章は楽しいけど話はわけがわからないので、ラファティを読んだことのない人には薦めにくい。まあ、このアンソロジーを順番に読んでいるのなら「町かどの穴」を先に読んでいるはずだから問題ないが。

5月 3日
柏駅で立ち食い蕎麦を食い、南へ。例によって例のごとくSFセミナーである。

十年一日のごとく博史さん(8)と雑談をしているうちに、水牧(10)、住田(11)、堀川(12)、野呂(17)と名大組が次々到着。いつものとおりのOB会となる。現役でかたまっているのはまだともかく、OBでかたまってどうするというご意見はもっともなれど、習慣なのでいかんともしがたい。ファンジンを冷やかしたり、他大学SF研のグループに挨拶したりしていると、すっかり同窓会気分である。

同窓会気分のまま博史さんと話をしているうちに昼企画が始まった。

第一パネルは「レキオス、翔ぶ 池上永一インタビュー」(出演/池上永一、聞き手/鈴木力)。『レキオス』の削り落したエピソードを中心に取材秘話や創作手法を語る。池上永一の語る中身は面白いのだが、語り口が「作ったハイテンション」(注:本当に作ったものかどうかは知らない)だったので今ひとつ乗れない。聞き手の鈴木力が引き気味だったのも流れを阻害していたか。会場の反応も真っ二つ(*)で、ひたすら笑う中央の集団と、半身引いているそれ以外にきれいに分かれていた。びみょー。
*:もちろん会場全体が沸く場面もあった。
ただ、創作手法を語り始めるときなど、時折見せる生真面目な語りは本当に面白かった。この辺をもう少し引き出せていたら全体が締まったか。って、あのテンションに対抗するのはよほどの熟練者でも難しかろう。鈴木力は不運だったとでも言う他あるまいて。

第二パネルは「アンソロジーの新世紀」(パネリスト/中村融、山岸真、伊藤靖(河出書房新社)、小浜徹也(東京創元社))。小浜徹也の司会のもと、各人のアンソロジー原体験から、『影が行く』、<20世紀SF>の編集に関するエピソードなどを語る。こちらは、語り口と語られる中身のテンションが正しくつりあっており、引っかかることなく企画を楽しむことが出来た。20年来セミナーのパネルをやってきたメンバーがほとんどなのだから当然かもしれないが。
語り口だけでなく、中身も充実。特に中村融の、読んだ全作品について、作品名、著者名、原題、初出、推定枚数、5段階評価を記録しているという発言は、会場の度肝を抜いていた。そうか、海外SF者というのはここまでしないといけなかったのか。
ただ好きで作る架空のアンソロジーの目次と商売で作る目次の違いなど、興味深い話題のオンパレード。個人的には今回の白眉である。同意する人の率は低かろうけど。

と、この辺まで聞いたあたりで腹が痛みはじめる。ちくわ天蕎麦を消化しきったのが問題か、とチョコレートバーを食べてみても改善せず。第三パネルは聞くのを諦めロビーでうだうだする。いくら博史さんに「ゴロのようだ」と責められようと、体調の悪さはいかんともしがたい。うー。特に割り込むべき話題もなく所在無く過ごす(←この辺がゴロじゃない証拠だ)うちにパネル終了。少し調子を戻したはずと信じ第四パネルに臨む。

第四パネルは「「SF」とのファースト・コンタクト 瀬名秀明、SFに対するアンビバレントな思いを語る」(出演/瀬名秀明)。SF系日記更新時刻収録の日記のバックログ1年分を読み、一ヶ月かけたWebアンケートを行い、編集者数十人にインタビューという徹底した調査結果を纏めた渾身のレポート。苦笑した部分から、感心した部分まで、色々な意味で楽しかった。特に、ラストの「SFファンへの提言」は意味するところが大きいような気がしないでもないもの。「今後5年間、「これはSFではない」と言わない」か。いや、守れないだろうけど。

昼企画終了後、名大組でとりあえず宿に移動。飯を食いに行く体力は無かったので、近所のコンビニで買ってきて済ますことに。大広間に一人ぽつねんと座って食べたマグロのヅケにぎりは予想外においしかったよ。

やがて時が満ち、人もまた満ち、合宿オープニングがはじまった。今回、企画紹介を小浜徹也が、ゲスト紹介を鈴木力&柏崎玲央奈が担当するという、担当の入れ替わりがあったのだが全体としての印象はほとんど変わらなかったのだった。企画紹介がなあなあな印象を残すのは、オープニング時点で企画主催者がいないことがあるのが主要因なのだろう。

合宿企画で参加したのは2コマ目「海外SF同好会「アンサンブル」の部屋」と3コマ目「海外アンソロジーの部屋」のみ。後は大広間でぐだぐだ。堺三保さんの話に面白いものが多かったが、内容は本人の名誉のため秘密だ。もちろん、「本当に「本人の名誉のため秘密」にする必要があるかどうか」も秘密。

「「アンサンブル」の部屋」で聞いたのは、前半のヒューゴー・ネビュラリストを肴に海外SFを紹介するあたりまで。名誉会員・志村弘之氏が懸命に話の流れを作っていたのが印象的。みんな個々のエピソードを語る能力はあるんだけどね。
聞いていた間は本当に昨年の海外SF話がほとんどで、「アンサンブル」が何かはよく分からなかった。きっと、真の「アンサンブル」は各人の心の中にだけあるのだろう。

「アンソロジーの部屋」は昼間の続きで、水鏡子、大森望、大野万紀が<20世紀SF>の目次にいちゃもんをつけるという企画。どんな突っ込みも一刀のもとに切って捨てる中村融の名調子が最高。目次に込められた意味に関しては、昼のパネルと矛盾する部分もあったがこれはまあご愛嬌。でもやっぱり、「空(スカイ)」はどうよ。

企画終了後、大広間でうだうだしているうちに眠くなってきた。この時点で名大組が占拠している部屋に行って寝てしまえばよかったのだが、なんとなくそんな気になれなかったので、大広間で寝場所を探す。しかし、音量と空気の悪さが気になり5分で起きることに。そんなこんなを繰り返すうちに、どんどん気分が悪くなる。午前5時過ぎには、気持ち悪くて寝ることも出来ないほどになっていた。寝転がるのも苦痛、座るのも苦痛。立って喋っているのが一番ましという状態のままなんとか落ち着ける場所を探す。辛い。結局、落ち着ける場所は見つからず、同様に体調が悪化した細井さんと体調が悪い話をして過ごすことに。楽しく歓談している集団を恨みがましく睨みつけたりする。けっ。 < 八つ当たりにも程がある

しかし、恨みがましく思っていられるうちはまだましだった。クロージングを迎える頃にはさらに体調が悪化し、何をしても気持ち悪いという状態に。スタッフ紹介を遠くに聞きながら体操座りで自分のへそを眺め続けるまでに陥った僕の運命や如何に。

5月 4日
眠いは腹は痛いは吐き気はするはという悲惨な体調ではあるが、このまま帰るだけの気力も無かったので名大勢とともに喫茶店に向かう。何も考えず、前を歩くグループについていったら、春日経由で水道橋のルノアール、という想像もしていなかった場所につれていかれたのだった。ただでさえ体調が悪いのに、3kgの鞄を肩に担いでえんえん歩き回ったもんだから、ドームが視界に入る頃には本当に泣きそうに。だから、そんな人間にいたずらをしかけようとしなくても。 > 折り紙の偉い人

そんなこんなのうちに、なんとかルノアールに到着。プロの人や、アンサンブルな人、京大な人など知った顔もいなくは無かったが、気づかないことにして名大だけで溜まる。だったら、春日の珈琲館にでも入っておけば良かったのではと思いはしたが、いまさら後の祭りである。まあ、これが名大だ。

席につくなりスポーツ紙を手にとりひたすらにプロ野球談義。あとは時折、今期のアニメとCSの話など。いかにもSFセミナー帰りという話題選択だね。1時間ほど話しているうちにだいぶ気分がよくなってきたので、安心してテンションをあげる。が。

アイスカフェオレの後に飲んだ熱いお茶が悪かったか再び体調が悪化。店を出て、新宿で松野さん(9)と合流する他のメンバーと別れたときには、かなり辛い気分になっていた。まあいい、もはや柏に戻るしかないのだから覚悟も決まるしなんとかなるだろう、と千代田線・新御茶ノ水駅に向かい歩き始め……ようと地図を見て、しばし呆然。そうか、今は水道橋にいるのか。歯を食いしばりつつ駿河台を越え、千代田線に乗り込んだときには、息も絶え絶えという形容詞がぴったりの状態になっていたり。いやもう、北千住で快速に乗り換えるなんて体力はかけらもなかったね。

電車でまどろんで回復した貴重な体力を駆使して柏の自室へたどり着いたのは0時30頃だったか。駅4分という立地をこれほどありがたく思ったことはない。ありがとう、半年前の僕。朦朧としたまま布団を引き、倒れこんで熟睡。

夕方目を覚まし、その後、寝たり起きたりまた寝たり。睡眠をとっただけでもかなり回復したところを見ると、不調の主因は寝不足だったらしい。次のコンベンションからはちゃんと寝よう。

えー、いやもうしかし本当に今回はご迷惑とご心配をおかけしました。> 博史さん(8)はじめ気を遣っていただいた一部の方
今後はもう少し気をつけますんで。はい。

5月 5日
そこそこに体調が回復したので開いている医者を求めて柏駅周辺をまわる。が、祝日であるという事実はいかんともしがたく、見つからず。休日診療の病院に行くほど急患でもないし、と困っていたら、日曜に開いている病院を見つけた。よし、明日だ。

明日はいいとして、今日の調子とは今日向き合う他はない。じっとしているとまあまあ快調だが、少し歩き回るととたんに気分が悪くなるという状況を鑑み、新宿に映画を観に行く、高田馬場の喫茶店に行く、理髪店に行く、洗濯をするなどの計画はすべて保留。あ、最後のはやっても大丈夫なのか。まあ、何はともあれ明日だ、明日。

さまざまな計画を考慮すると、明日は40時間くらい必要な気がするが、きっと気のせいなのだろう。

5月 6日
今日こそは、と勇んで日曜開業のはずの病院に行ったのだが、「5月6日は特別に休診」の張り紙の前にあえなく玉砕。3件行って3件ともというのは陰謀としか思えない。わざわざ北柏まで出向いた僕の立場は。
ともあれ明日だ、明日。そんなわけで明日には必ず医者に行くつもりなので堀川(12)のお母さん、ご安心を。田中(克)(11)の行く末に関しては保障しかねますが。

井上雅彦・編『物語の魔の物語』(徳間文庫)読了。タイトルから容易に想像がつく通りメタフィクション怪談を集めたアンソロジー。小松左京「牛の首」、星新一「殺人者さま」といった「言わずと知れた」作品から、ショートショートランドに載ったっきりの作品まで幅広く集めている。中では、赤松秀昭「ある日突然」と三浦衣良「丸窓の女」の2本のショートショートが良かった。どちらも、画と地が入れ替わる瞬間が魅力の作品で、その一瞬の魔をうまく描き出している。これだけの傑作が埋もれているのだとすると、『ショートショートの広場』は集めなおすべきか。

5月 7日
ついに念願の内科に行くことに成功。確かに、3分診ただけで「んー、胃炎か潰瘍だね。とりあえず制酸剤と、粘膜保護剤出しとくわ」といわれるだけのものではあったが、診断があるというのは心強い。あんまり心強かったので、すぐさま胃の検査を予約してしまったり。< 診断を信用して無いだろう

先日のSFセミナーで人に聞きまくってしまった「つかぬ疑問」を思い出したので、検索エンジンで調べてみる。「S.P.ソムトウの「P」ってなに?」というのがその疑問。いずれ劣らぬSFの偉い人に聞きまくって回答が得られなかったものだけに、簡単に見つかるとは思っていなかったのだが、あにはからんやいとも簡単に見つかってしまった。それも、ISFDBの著者情報などというチェックしていて当たり前のところで。人に聞く前に自分で調べろということですね。はい。
てなわけで、正解はPapinianという、今ひとつ納得感の無いものだった。これなら、某氏のいうPrinceの「P」の方がまだマシだな。 < マシって

実は、2日の代休で休みだったので、池袋まで出て買い物したり。とある行列計算ソフトで、サードパーティーが出したツールボックスを扱えるようにする方法を知りたかったのだが、そんな情報はどこにもないのだった。しかたがないので行列計算ソフトのハンドブックだけ買って帰宅。……したはずなのに、4時間以上歩き回った気がするのはなぜ?

5月 8日
「わがふるさとは黄泉の国」で今号のSFMを読了。主人公の造形が個人的ツボ。どうにも、自分からアクションをすることの出来ない男。同僚たちの会話に加わりたいと思うこともあるのだが、躊躇するうちに話題に入り込むタイミングを失い結果的に黙り込む。そのうち周りからも陰気だからと敬遠されて、結果読書に逃げ込むことに。って、それはあれですか。俺を見て書きましたか。< 妄想です

ああ、『奇憶』といい、これといい、ダメ男小説は心が洗われるなあ。

5月 9日
そういえばSFセミナーのアンソロジーアンケートを出し忘れた。今更何の役にも立たないと思うけど、僕の回答はこんな。

●年齢(28才) 性別(男)
●海外SFはいつごろからお読みですか。(12才頃から:1985年頃から)
●SFマガジン掲載の海外短篇をお読みですか。(はい)
●現在お読みの場合、いつごろからお読みですか。(1990年頃[17才頃]から)
●これまで読んだなかで、お好きな海外SFアンソロジーの書名を挙げてください。
『アザー・エデン』<新潮アンソロジー>
●海外SFのアンソロジーをどういうふうにお読みになりますか。
(あたまから順に読む。)
●以下のアンソロジーをお読みですか。お読みになっている場合には、好きな作品を三つまでご記入ください。
『影が行く』(ぜんぶ読んだ)(好きな作品名:「唾の樹」「仮面」
『20世紀SF1 星ねずみ』(ぜんぶ読んだ)(好きな作品名:「美女ありき」「昨日は月曜日だった」「AL76号失踪す」
『20世紀SF2 始めの終わり』(ぜんぶ読んだ)(好きな作品名:「芸術作品」
『20世紀SF3 砂の檻』(ぜんぶ読んだ)(好きな作品名:「リスの檻」「何時からおいでで」「月の蛾」
●編んでほしい海外SFアンソロジー、また、そこに収録してほしい短編がありましたら、その内容について自由にお書きください。
(オーストラリアSFのアンソロジー)

いや、いまさら何の役にも立たないと思うが。ああ、でもオーストラリアSFのアンソロジーは読みたいなあ。「バーナス鉱山」みたいな話ばかりの奴。< それはちょっと

5月10日
仕事をせにゃぁと思いつつ見るともなしにうたばんを見る。
加護@タンポポのとぼけた発言に苦笑しつつかわいいと思っている自分に気づき、ちょっとショック。違う、僕はロリコンなんかじゃないぞ。たぶん。

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