過去の雑記 02年 3月

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3月21日
一日部屋に籠もって文書仕事を進めておこうなどと殊勝なことを考えていたのだが、昨日の後遺症でそうはいかず。呆然とWebをめぐりラファティに対する言及を読んで回る。……回るほどの言及がない。じつはラファティファンってそんなに少なかったのか。確かに既に役目を終えていた作家ではあるが、しかし。

ともかく。今気になるのはSF邦訳系の動き。SFMに新訳短篇4篇、インタビュー記事翻訳1篇、評論記事2篇、コラム4篇、全冊内容紹介つき著作リストからなる追悼特集が組まれるのは当然として(←すべて願望なので信じないように)、SFセミナーはどう動くのか。本会は無理にしても、合宿で司会・牧眞司、出演・大森望、柳下毅一郎のラファティ追悼部屋があるのは絶対確実だと思うのだが(←完全に願望なので信じないように)。

3月22日
再読の『ウェットウェア』を読了。スタアンの妻に対する考え方にちょっと引いた。肉体だけ同じなら、肉人形でもカビでもなんでもいいのか、おまいは。ギブスンやスターリングが「ポストヒューマニズム」がどうこう言ってもラッカーの足元にも及ばないことを痛感。しょせん、天然には敵わないというか。

Web上に点在する青少年なんたらと児ポ法改悪がらみの話を読んでいるうちにふと思ったのだが、なぜ出版社は動かないのだろう。講談社、小学館、集英社の3社が主要漫画誌全誌で「こんな法律ができそうになってて、こんな影響が出そうです」と周知を図れば反対運動も盛り上がるだろうに。おそらく動けない理由があるんだろうけど、通っちまったら通っちまったで死活問題だと思うんだが。審査団体に金ばら撒きつつ、自主規制を強化してなあなあで済ます腹なのか。
# 法律反対の2ページくらいの文章広告は見たような気がする。が、本気で反対するなら啓蒙まんがの掲載くらいしないと。

昨日のラファティに対する言及の無さを憤る記述に対して、こんなメールが来た(差出人の許可も取らずに引用)。

Subject: ラファティへの言及が少ない件について

「で、もう起きる準備はできたのかい、マックスキー?」
「まだできるものか、ジョン。ついさっき死んだばかりじゃないか。あと五十年経たなけりゃ、本格的な食欲はわいてこんよ」

「…それからおれをもう一度埋めて、そっとしといてくれ。墓の中でのんびりするまもなくたたき起こされるのは、だれだってうれしくないからな」

それもそうかもなあ。しかし五十年も待てません。

3月23日
近所の書店に、その週の文庫売上ベストが貼り出してあった。ベスト10の内訳は、指輪4、屍鬼2、ハヤカワ文庫SF、FT、JA各1、北方三国志1。ベスト10の9割がSF/ホラー/ファンタジーというのは驚くべきなのか、当然なのか。ちなみにSFはローダン、FTは時の車輪で、JAは『夢の樹が接げたなら』。JAだけ異様に見えるのは偏見というものか。騙されて買ってしまった<星界>ファンが9割を占める説に1票。いや、僕は短篇の方が100倍好きなんだが。

businを進める合間にまんがを読む。柳沼行『ふたつのスピカ』1巻(MFコミックス)、芦名野ひとし『ヨコハマ買い出し紀行』9巻(アフタヌーンKC)、ゆうきまさみ『パンゲアの娘 KUNIE』3巻(少年サンデーコミックス)、竹本泉『よみきり▽もの』2巻(ビームコミックス)。『よみきり▽もの』の西園寺京子たち聖林檎楽園学園三人娘の再登場は大変うれしかったことだよ。

諦めてSFM考課表集計用のperlスクリプトを書く。所要時間2時間。手作業でやれば20分程度だから、投資時間がペイするためには6回使う必要がある。というわけで最低半年は続けるのが目標ということで。> 参加者のみなさん

週ベの今年のペナント予想を流し読み。セントラルは 読売 > 広島 > 阪神 > ヤクルト > 横浜 > 中日という予想が主流のようだ。阪神はちょっと過大評価という気もするが概ねこんなものか。このうち広島から横浜まではさほどの差ではないので容易にひっくり返るはず。問題はこの混沌に読売を引きずり込めるかどうか。それさえなんとかなれば優勝の可能性も皆無とまではいえないだろう、中日以外は。
横浜は今のところ順調。何かの間違いでグランが使えたら6石井琢、8金城、7鈴木尚、5グラン、9ロドリゲス(中根)、3佐伯、4小川(種田)、2相川(中村、光山)はそれなりくらいの打線にはなる。先発が絶望的に足りないという事実さえなければAクラスを夢見る権利はあるかも。希望順位は4位(以上)。予想は、広島 > 読売 > ヤクルト > 横浜 > 阪神 > 中日かな。戦力だけなら読売1位で鉄板だけど原を見ているとどうしても優勝するとは思えない。

3月24日
昼飯を食いに出たついでにふらっと桜を観にいってみる。近場の児童公園なので「桜の森の満開の下」とまではいかなかったが、それなりの風情ではある。近場の人たちが微笑ましく宴会する中、持っていった文庫本を拾い読みなどしつつ桜を愛でる。

いや、子供ら走り、大人たちは童謡を歌うほのぼのとした空気の中で、『フリーウェア』はちょっとどうかと思いはしたが。

SFM考課表第一回結果はこちら。浅井Rは相変わらずオリジナルな評価で突っ走っているようで、15年来の友人としては嬉しい限り。君は採点基準を明確に言葉にしないと敵を作りまくるかもだ。

3月25日
そんなこんなで5月号も出たことだし、SFM4月号の感想を。

イモリの歯車:北野勇作
イモリを助けた恩返しに死んだ妻を貰った男が、妻を取り戻そうとするイモリから逃れ旅をする。「曖昧な旅」「雨の国で」の形式・文体で「新しいキカイ」の頃の話を書いたような短篇。世界の構造が次第に見えてきてしまうあたりは氏の短篇としては珍しいような。世界の裏が透けすぎているのが今ひとつ趣味に合わない。端整な文章はさすが。
愛撫:The Caress(1990):グレッグ・イーガン
捜査中、豹女を発見した警官。事件の謎を追ううちに巧妙に仕掛けられた罠にはまり込む。最初期にしていつものイーガン。投げ出したような結びの言葉がいかにもイーガンらしい。「貸金庫」や「ぼくになることを」の結末を「終わっていない」と評する向きには不評だろう。あの閉じ方を「あれしかない」と歓迎する者には楽しめるのでは。
空からの風が止む時:小林泰三
重力が次第に衰え行く世界。少女の知恵が世界を救う。おなじみ<せかいのふしぎ>シリーズ。今回のキーは常時天より吹き付ける風と変化する重力。概ね世界の構造は見えていたので、視点を変えての謎解きが冗長に映った。ミステリとしてはオト視点で通した方が気持ちよくなっただろう。ただ神の視点に移ることでそれまでの物語を一気に突き放す効果は確かに捨て難い。そこまでの物語がもっとウェットなら、効果が生きたか。
あの言葉:田中啓文
テロリストから転身し副大統領まで登りつめた女性。そのきっかけとなった一瞬を確認するため、発明されたばかりのタイムマシンに乗り込むが。グロは皆無、地口も見かけ上は存在しないという得意技を封じた短篇。単に封じられただけに見えるのが最大の難点。
恩返し(ことのはの海、カタシロノ庭):田中哲弥/藤原ヨウコウ
見ることはできないがそこにいる女性から受ける恩返し。居心地の良い情報の欠落。星新一の「門のある家」を思い出したりしたが思い出しただけかも。女性に腕を抱きしめられながら歩く1ページ目が良い。
膚の下 [15]:神林長平
なんだか無事軍に戻りましたとさ。次回前進基地奪回篇。この話で評価も何もなあ。
パンドラ [15]:谷甲州
自衛隊に捕まり再びボルネオに連れてこられた朝倉。場面転換篇なのでさほどの進展なし。このところの話の速さ・大きさでまだ面白く読めている。着地さえうまく決まれば良作から秀作くらいの評価にはなりそう。傑作までにはもう一つ大仕掛けが必要か。
エデンに還れ [5]:ひかわ玲子
ニューヨーク篇終了で次回大都篇。ちょっと迷走気味。場面が変わる毎にテーマらしきものはあるが表層的にしか映らず読者に効果を残さない。気がつくとシーンが変わるし。毎号載るか、単行本で読むならこのペースでも耐えうる可能性はあるが隔月でこれでは。だからなんだよ。
で、採点した結果はこれ

浅井Rが情報を公開しない理由を聞き納得する。なぜ納得したのか、どう納得したのかは、納得してしまった以上秘密だ。

3月26日
SFマガジン5月号をパラパラと。「兎に角」をほんとうに「うさぎにかど」と読んでしまった自分にほとほと嫌気のさした春の宵。

3月27日
太田虎一郎『宇宙の法則 世界の基本』2巻(HHMC)読了。脳が融けているときに読むとみごとにだるだるな気分に浸れる。すばらしい。第87回については必ずしも賛同するものではないが、「犬の顔に自分の顔を近づけてうにゅってやる」こと自体はいいよな。

安田弘之『続・紺野さんと遊ぼう』2巻(F×COMICS)読了。いくらなんでもえっちにすぎるのではないか。あからさまにえっちな回ももちろん大歓迎なのだが公開の場でそれを表明するのは憚られるので、「辞書で遊ぼう」のえっちさがたまらないなどと腑抜けたことを書いてお茶を濁しておく。

3月28日
今忙しいのでちょっとだけ。風野掲示板で知った万有引力体感ゲーム(うそ:要flashshockwave まちがいました)が面白い。うまく摂動する軌道に乗せるのが高得点の鍵なんだけど、あまり摂動が遅いと時間(距離?)制限に引っかかって点が入らなかったりするんでぎりぎりを見切るのが勝負の分かれ目。初回28万点で浮かれてたら、2chのスレッドには200万点とか書いてあったり。特訓か?特訓なのか?

3月29日
仕事場の送別会に参加。おざなりな話をしていかにもな料理を食い意外な価格に面食らったりしていただけなのが、ちょっと驚いたのはドリンクメニュー。モスコミュールやシンガポールスリングといったありがちというまでもないような定番メニューが並ぶ中、ウメッシュベースのカクテル群が圧倒的な存在感を放っていた。しかし、ウメッシュ赤ワインってーのは、いったいどこに需要があるんだ?頼んだけど。

3月30日
諸事を片付けた後、ホーリーグレイルのDVDを求めて東京へ下る(少なくとも南下ではある)。久方ぶりに秋葉原に行くはめになるのかと覚悟を決めていたのだが、あにはからんやダメモトで寄った上野駅構内のCD屋で見つけてしまったのだった。実は都内ではどこにでも売っていたのか?柏新星堂がダメなだけなのか?まあともかく入手できたのは喜ばしいことである。さて、いつ観よう。

ついでにこれも近所では手に入らなかった結城心一『ももえサイズ』2巻(零式コミックス)を買いに行く。今度はアンソロ本で来たか。この手の一発芸は探しにくくなるだけのようにも思うんだが、くだらないんだからいいや。

まあ、なんか色々と。

坂田靖子『サカタ荘221号室』(PHP研究所)はウェブページ掲載の記事を中心にさまざまな媒体に発表された原稿を集めた文字中心の本。雑誌の1コーナーや、コミックスの巻末で読む坂田靖子の文章は好きなのだが、こうまとめて読むとちょっと辛い。

火浦功『ファイナル・セーラー・クエスト完全版』(スニーカー文庫)。イラストが竹本泉であることを前提としたギャグがあるんだからイラストレイターを変えるのはどうかと。あー、どっからどうみても火浦でよかった。ファイナルだのクエストだの言っておきながら基本はWizというあたり、実に火浦。「たかがシールド+2がなんででないんだよー!」

結城心一『ももえサイズ』2巻。前巻にも増してモトネタがわかりにくいような。たまみちゃんの扱いがいいかんじ。

赤美潤一郎『妖幻の血』1巻(ガンガンコミックス)。冬目景クローンのような絵柄で繰り広げられる呪術戦もの。この方向なら、もう3段階は洗練されないと辛いかな。

外薗昌也『琉伽といた夏』(ウルトラYJC)。SFへの愛は微笑ましいが、排他原理でもなんでもない排他原理のうさんくささで引いてしまったので評価はふつう。この物語だと絵柄が不利か。巻末特集に嬉しくなってしまった自分に反省中。「いつものところ」以外の場所でSF小説が紹介されているだけで喜ぶのは、あまりにも悲しいから止めよう。

近所のモスバで晩飯を食い、ついにモスバ柏店スタンプカードがいっぱいになる。何がもらえるんだろうとちょっと期待していたら、小皿を一枚渡された。……コレステロールと食塩を大量摂取しつつ努力した結果がこれか。いいけど。

あー、開幕戦は負けました。三浦は良かったんだけどね。

3月31日
八房龍之助『宵闇眩燈草紙』4巻(電撃コミックスEX)読了。基本的には三つの鞄が取り違えられるというだけの話だが、ざっと数えても8つの集団の思惑が入乱れるという困った構造になっているため、適当に読み始めたら話がわからなくてまいった。思わず3巻を読み返してしまいましたね。

今回は、前巻にも増しての怪獣総進撃。最終章、「破れ六方」冒頭の見開きには大爆笑したんで、こういうノリも歓迎ではあるんだけど、こればかりなのはちょっと。静かに見える展開に見え隠れする棘、という話も欲しいところではある。この後は再び中篇ベースに戻るようなので期待できるか。

しかし、ラスキンさんはいい人だなあ。

なんかまた惜敗したようで。いやきっと河岸を変えれば何とかなるに違いない。

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