過去の雑記 03年 5月

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5月21日
突然、『ハチミツとクローバー』は講談社の作品ではないことに気づいた。それで講談社漫画賞というのはすごいことかも。と、あれ?講談社以外の漫画の受賞という話は、前にも聞いたことがあるような。というわけでWeb上のリストを捜してみました。最近の講談社漫画賞受賞作と、ついでに最近の小学館漫画賞受賞作。これで見ると、講談社のほうは自社作品ばかりでもなくなっているようだ。2001年以降の少女漫画部門は他社作品が連続して受賞している(今年は講談社の『きみはペット』と同時)。一社ローカルのご褒美賞からの脱皮を図っているということか。ただ、やはりメジャー誌の人気漫画ばかり並ぶという印象は強い。これでは賞よりも、作品のブランドのほうが高そうだ。この賞を受賞したからという理由で改めて手に取る気にはならないな。

ところで、上のリストがあったサイトにはメディア芸術祭マンガ部門受賞作なんてリストもあった。こちらは、メジャー一辺倒でもなく、さまざまな漫画が並んでいる。賞としては、こちらのほうが面白い。

あ、あいかわらず落ちは無いです。

定時で会社を退けて、新宿で「二つの塔」を観る。ロードショー終了までに前売りを使い切るためという。客の入りはさすがにまばらで、2割入っているかどうか。終了間際の平日最終としては頑張っているほうか。面白かったのは客層。カップルもいないことはないが、圧倒的多数がその筋っぽい女性の二人、三人連れ。あとは僕のような男の一人客がちらほら。見るからにファンタジーファンとわかる人々ばかり、こんなに見たのははじめてかも。

体調調整に失敗して半分方寝ちまったのは残念だが、それでも3回目なりの楽しみ方はできた。今回、印象に残ったのはフロド役イライジャ・ウッドの艶っぽさ。ときおり見せる表情にゾクっとくるほどの色気がある。特に、終盤、黒の乗り手に魅入られ指輪をはめようとするシーンの妖しい魅力といったら。なるほど、サムがまいるのももっともだ。< なにか激しく間違っているような

北野勇作『北野勇作どうぶつ図鑑』その3 かえる,その4 ねこ(ハヤカワ文庫JA)読了。すでにタイトルの動物との関係はほとんど無い。あー、その3は役者と変化の話、姿を「変える」話中心だから「かえる」とか。無理がありすぎますか、そうですか。

この2冊では、「シズカの海」がベスト。失われた未来へのノスタルジア。「あの漫画」へのオマージュも、有名な都市伝説含め、うまく作品に取り入れられている。今の閉塞感と未来への軽い絶望、それにフィクションがくれるかすかな慰めがほどよくブレンドされた穏やかな佳品。

5月24日
夕方から飲み会。2次会で、深夜プラスワンに連れて行っていただいたあたりから記憶が曖昧になり、ゴールデン街の路上で寝ていたら警官に起こされたことと、パセラでフロントに予約の部屋を尋ねたら間違った階を教えられたこと、パセラの部屋の床に寝ていて容赦の無い同行の人に蹴り続けられたことくらいしか覚えていない。どうも、大変ご迷惑をおかけしたような気がします。> 同行の方々

しかし、新宿の飲み屋街の路上で寝てしまうとはなあ。またひとつおやじの階段を登ってしまったよ。っつーか危険なので、今後はしないほうが良いとは思いました。

あ、借りたゲームの入ったバッグをなくした。どこに置き忘れたんだかなあ。

5月25日
夕方から、池袋文芸座で「惑星ソラリス」を観る。二日酔い気味の上に3時間睡眠じゃ辛いかなと思ってはいたが、案の定寝てしまいました。まあ、そんなもんだ。それでも、第二部以降はほぼ起きていることに成功。ワンカットの長さに時に辟易しつつも、概ね興味深く観ることができた。液体酸素をかぶったハリーの美しさには感動。

映画を見た後は、軽く飲み。ダイエットの人や甘いものの人の食欲を前に、己の食が細くなったことを痛感する。さらにまた、おやじの階段を。

5月26日
蒸気日記GX5/23付より、「マリみて」。噂しか知らなかったけど、こんな話なのか。読んでみたいかも。

健康診断にて、昨年から体重が5kg増加したことが判明。5kgですよ、5kg。部屋の体重計は較正がなってないから増えたことしかわかってなかったんだけど、まさか5kgたあ。確かに、去年の春から酒飲んで寝るようになったからやばそうだとは思ってたんだが。いくら標準体重までは余裕があるとはいっても、短期傾向があまりにやばすぎなので、相応の努力をすることを決意。とりあえず、睡眠と食事を削ろう。

夕方休みを利用して、一昨日の忘れ物を取りに新宿まで。ご心配をおかけした皆さま、無事見つかりました。

そんなわけで、45分で中野〜新宿ゴールデン街を往復という記録に挑戦していたので、地震には気づかなかったのだった。

SFMのコミックス・リスト代替案募集。20代からせめて30代前半までと思われる漫画家の作品で、なぜこれが入ってないという作品があれば是非掲示板まで。「SF限定ではなく、ファンタジー&ホラーまでを視野に入れる」というのが元条件なので、ジャンルはそんな感じ。『Q.E.D.』はさすがに違うと思うが、『ロケットマン』はぎりぎりOKくらいの広さかな。結果は、僕の読書の参考にしますということで。

いや、まとめるくらいはすると思います。多分。

5月27日
福岡市の放置駐輪を取り締まる「チャリ・エンジェルズ」。「放置自転車はおしおきよ!」

……すでにどこから突っ込んでいいかもわかりませんが、一応チャリエンなのに「おしおきよ!」はないだろう、とでも。

守護ロボ様占いお父さんでした。まあ、お父さんじゃしかたあるまい。

5月28日
集中度は低いんだけど拘束時間の長い作業で疲弊したので自棄更新。こうして疲労と脂肪は蓄積していくわけだ。いや、脂肪は別の話だが。

再発見したんで書いとこう。名作カレーパンのうた(gif版)FLASH版もあり。ゆだんすると、ぐるぐる回りつづけるタイプの歌なので、FLASH版を観るときはご注意を。かれーぱん♪かれーぱん♪

最上のWebサイトの日記からサイト「極端大仏率!」内の記事、「テンソル,地ソル,人も反る」。スカラー波から、「あなたは(あるいは、わたしは)本を鵜呑みにする人を笑えますか?」という話。「理論物理学者の田崎氏だって,ここで音波のことをスカラー波だと書いているが,実は実際の音波の圧力テンソルを精密に測定すると,線形の範囲でも非対角成分が無視できない大きさで存在するというのは」あたりの記述の説得力はかなりのもの。最後は常識的な話に落ち着くわけだが、この辺の感覚は忘れちゃならないと心に誓う昨今だ。

昼休みに、中野サンプラザの北隣に出来た大型書店、あおい書店に行ってみる。中野最大との噂は伊達じゃない。かなり広い床面積の2フロア。高田馬場芳林堂よりは確実に広く、池袋芳林堂と比較しても勝負できるんじゃないかというサイズ。そこに高い背の本棚が詰め込み気味に並んでおり、蔵書量はかなりのもの。品揃えのほうもまあまあより上で、本屋としての使い勝手は新宿のどの書店よりも上という印象。中央線の新宿以西なら、新刊書はとりあえずここに行けば済むんじゃないかと。わざわざ池袋だの渋谷だのに出る手間が省けそう。ただ、できたてということもあり、ちょっと古い本を探そうとすると役に立たない可能性はあり。文芸書を見た感じだと、かなり新らし目に倒してあった。また、ハードカバーの翻訳小説はとりあえず国別という分け方をしていたので、ジャンル読者はジャンル棚を探す前に文芸棚を見たほうがよさげ。『スーパー・トイズ』もSFではなく、文芸棚にありました。

雑誌とコミック、新刊文庫・新書を目当てにする分には必要十分に使える本屋が午後10時までやっているというのはなんとも嬉しい話なのだが、僕の中野勤務はあと一月なのだった。ふっ、いいんだ。僕には柏新星堂があるさ。帰ると閉まってるけど。

5月29日
川崎洋『かがやく日本語の悪態』(新潮文庫)。落語、遊里、芝居・文芸、方言、現代言葉などさまざまな場面で用いられる悪態を収集しその魅力を語る。言葉よりは収集された状況を重視して語っている。落語編など引用もとの落語の紹介が大半で言葉そのものを味わう部分はほんの1節などということもしばしば。もとの状況から距離を置き、言葉そのものの意味を追求し滋味を語るものを期待していたのでちょいと外れ。ただ、だらだらと悪態が列記される場面など、退屈な部分も多くお薦めしにくい。悪態という狙いどころは面白そうなのに、もったいない。

中野あおい書店を再訪。言語学関係の本が、人文専門書ではなく辞書の棚の隣に置かれているのはちょっと気づきにくい。線文字Bの読み方など、気になる本もあったが、昨日の今日なので被害は最小限に抑えることに。って、結局買ってしまっているあたりがアレだ。まずいなあ。昼休みに寄れるところにこれだけ専門書があると歯止めが聞かなくなりそう。

あおい書店にあったチラシで、今日中に観ておかねばならない映画があることを知る。しかし、世は無情。鴨川の水と双六の賽と解析結果だけは思うようにならない。夕方にはとても観にいける状況ではないことが明らかに。涙を飲みながら解析をつづける。うう。

あまつさえ、ひいきチームまで負けてしまう。同一カード3連敗なんざいつものことだが、すべて1点差負けというのは何の冗談か。ああ、きっとこの世界は僕に悪意を持っているに違いない。 < テンパリはじめている

荒んだ心で夜の街をとぼとぼ歩くとすべてが敵に見え始める。狭い歩道だというのに手を繋いで歩く奴らなんざ、当然最大の敵だ。きさまら全員地獄に墜ちるがいいと祈る自分のあさましさが、かわいく思える今日この頃。手をつないで歩く老夫婦なんてのは「いい風景だなあ」と素直に眺められるので、多少は心に余裕もあると思いたい。

荒んだ心を和ませるため、今日買ってきた沼田元氣『東京スーベニイル手帖』(白夜書房)を眺める。叔父さんが少女に買ってくるべき「ハイカラな」おみやげを紹介。レトロな空気を漂わせた、お店の写真が良い感じ。小粋な本です。

5月30日
昨日の『かがやく日本語の悪態』について書き忘れたこと。全体としては僕の求めるものではなかったのだが、収録されていた茨木のり子の詩「自分の感受性くらい」は良かった。これを読めただけでも、値段の半分くらいの価値はあったと思う。「自分の感受性くらい/自分で守れ/ばかものよ」。そうだね。

最相葉月『あのころの未来 星新一の預言』(新潮社)。星新一の作品をキーワードに語る現代文明論風味のエッセイ集。星作品の扱い方が逐一癇に障ってまともに読めなかった。落ちは平気で割るし(しかたがない面はある)、稚拙な改作はあるし、どうにも。だいたい、星新一の「預言」という副題からして気にいらない。仮に星作品に「予言」があったとしても、「預言」はないだろう。星新一のファンにはおすすめしかねる。となると、誰が読むのかという疑問がわくのだが。

四方義啓『数学をなぜ学ぶのか』(中公新書)。数字、位取り、三角関数、幾何などの数学概念の意味を平易な比喩で解き明かす。のが目的なのだろうが、平易にしようとするあまりむしろわからなくなっている。連立方程式が「安寿と厨子王」で、無限大が「かぐや姫」と言われても、物理屋くずれの僕程度ではまごつくばかり。あまり真剣にならずにざっと読むと、面白いことも見つからなくも無い。しかし、タイトルとは概ね関係ないような。

久々に20時前に仕事を終え、上野で再び25度の日本酒を飲む。今度は主にストレートで。前回は気づかなかったが酒があまり回っていないうちにストレートで飲むと、明らかに日本酒の味がする。ところがロックにすると今度はまごうことなき蒸留酒の味に。これは、ロックのほうがうまいな。

5月31日
ラピュタ阿佐ヶ谷に一日籠もる予定だったのだが、雨と昨夜の酒に負けてだらだら過ごすことに。「おんぼろフィルム」だけは観ておこうと心に誓ったはずなのに、それも夢のまた夢か。かくも、わが決意は移ろいやすい。だらだら。

MEIMU(原作:石ノ森章太郎)『キカイダー02』5巻(角川コミックスA)。表紙はビジンダー。でも、ビジンダーが登場するエピソードは本編のどこに収まるのか不明な外伝。……もうすこし整理したらどうだ。> MEIMU
(外伝の挿入位置さえ気にしなければ)すっきりした話になりつつあるので読みやすくはあるが「仏像から01、が6人(< おい)」のようなはったりが少なくなったのは残念。もっとこう、愕然とするような展開を求めているのに。

加藤元浩『ロケットマン』5巻(講談社KCGM)。次々と明かされるRの過去。そうか、ドイツ時代のフォン・ブラウンの同僚の孫と来たか。謎解き漫画として優れているのはいまさら言うまでもないとして、SF副題漫画としても絶好調。「影がゆく」「虎よ、虎よ!」「天の向こう側」はまだしも「金属モンスター」ってのは。さすがに無理がある気もするが、僕は心が広いので何の屈託も無く許せるぞ。行け行けGO!GO!でも、キャンベルのあれは、ふつう「影が行く」ではなかろうか。

唐沢なをき『電脳炎』4巻ハイブリッド版(小学館ビッグコミックススペシャル)。同じ本を二冊出すのはさすがに諦めたようだ。1日150通メールを出すけどろくに返事の来ない「ともだちほしい君」は痛すぎました。いや、メールはださないけどな。

諸星大二郎『碁娘伝』(潮出版社KIBOコミックス)。なにをかいまさらシリーズ。碁と剣の達人、碁娘こと玉英を主人公とする武侠漫画。考証のいいかげんさが実に的確。

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