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6月 1日
ラピュタ阿佐ヶ谷に一日籠もる予定だったのだが、寝過ごしたのとカラオケの誘惑に負けたので予定変更。今日はひよっても観られなくなるプログラムが無いので問題ないはず。多分。

そんなわけで上野に出てカラオケのついでに出張してきた堀川(12)を囲んで歌う。顔つきが変ったといわれたのはかなりショックなので、それなりに体重を落とす努力をする予定。めざせ、BMI 18。

エドワード・D・ホック『サム・ホーソーンの事件簿 1』(創元推理文庫)。素人探偵による不可能殺人物連作。「農産物祭りの謎」はちょっとどうかと思う。それをそう処理するのはちょっと。

6月 2日
定時であがって、ラピュタ阿佐ヶ谷。ここでは今、全13プログラムで世界のアニメを紹介する「世界と日本のアニメーション ベスト オブ ベスト」を上映している。これは、 100人以上のアニメ関係者に対するアンケートで世界のベストアニメを決めたムック『世界と日本のアニメーションベスト150』とのタイアップ企画。今日観たのは、アンケート1位作品を含むAプログラム。席数50とはいっても平日だから大丈夫かと思っていたら、18時過ぎには整理券が無くなり何人も追い返されるという盛況ぶり。昼休みに電車に乗って整理券を取りに行った甲斐があった。

劇場にいるのは少数のカップルと、ごく少数の同じ目をした男性と、圧倒的多数の女性たち。アート系アニメの場合、女性比率が高いのは知っていたがここまで極端なのは初めてだ。ラピュタの特徴なのか、客層が変りつつあるのか。

プログラムの7作品で特に印象に残ったのはラウル・セルヴェ「夜の蝶」(ベルギー/'98)。蝶の舞いとともに人形たちが動き出す。パンフにある通りの妖艶な画面は、ちょいと新鮮。やっと『電脳なをさん』の元ネタがわかりましたな政岡憲三「くもとちゅうりっぷ」(日本/'43)のてんとう虫の色気もなかなか。

純粋な面白さならニック・パーク「ウォレスとグルミット チーズホリデー」(イギリス/'90)なんだけど、珍しいもんでもないからいまさら感もあり。アンケート1位のユーリ・ノルシュテイン「霧につつまれたハリネズミ」(ソ連/'75)は確かに綺麗だが、1位とまでは見えなかった。これなら、トルンカの「手」のほうが、深く、美しく、技巧的ではないか。ウェンディ・ティルビー「ある一日のはじまり」(カナダ/'99)は擬人化した動物を主人公に都会に生きる孤独を描く。絵本のようなタッチで描かれた動物は印象的。キャロライン・リーフ「ザムザ氏の変身」(カナダ/'77)は技巧が面白い作品。砂の移動で描かれた画はふだん観ないものではある。もう少し、話が面白ければなあ。ちょいともったいなくも寝てしまったのがノーマン・マクラレン「隣人」(カナダ/'52)。シュワンクマイエルっぽいなあ、と思った瞬間、集中力が途切れていた。シュワンクマイエルよりも前の作品なのだから、類似物扱いは失礼だったと反省していることだよ。

帰り道は件のムックなどをパラパラと。人形アニメ、アメリカ・カートゥーン、日本アニメなどが区別無く並んだリストは門外漢には不思議。なんだか同列に比較してもしかたが無いものが並んでいるような。「ファンタジア」が3位で、「未来少年コナン」が6位で、「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」が26位とか言われてもなあ。日本のセル・アニメーションだけ抜き出して並べてしまうと違和感ばりばりのリストになりそうだ。あなたがたの世界には宮崎・高畑アニメしかないのですか?という。

いっしょに売っていたパンフによると夏に新宿武蔵野館で初期チェコアニメ短篇を、ユーロスペースでトルンカの長篇を上映するらしい。さらに7月9日には中野で川本喜八郎の人形アニメの上映がある。覚えておくように。> おれ

S-Fマガジン考課表、更新しました。今回はスプロール・フィクション特集分。ケリー・リンクは妙に嫌われてますね。ポール・パークも低評価というあたりを見ると、SFでもファンタジーでもないものは受け入れられないということか。トップ評価はブルース・ホランド・ロジャーズの寓話。たしかに、良いファンタジーではある。小林泰三の《ことのはカタシロ》は毀誉褒貶の末、並みの結果に。小林泰三らしいっちゃらしいか。今回は0が比較的少ないのに、平均は0付近ばかりという派手な結果に。SFど真ん中という特集ではないだけに、評者の趣味による差が大きくなったようで。そんな中、リンク、パークの作品が低評価なのは、SFファンの狭量さを示しているとみるべきか、SFMでそんなものを読みたがってないとみるべきか。

6月 3日
ちなみに。そのうち全リストがふーじょんぷろだくとのサイトに載ると思うけど、『世界と日本のアニメーションベスト150』(ふーじょんぷろだくと)から、日本のセル・アニメーションだけ抜き出してみた。

数字は順位。なんというか、突っ込みどころ満載。もちろん、これは抽出するほうが悪いのであって、元の文脈におけばさほど違和感のない作品群であるわけだが。こうして、敢えて抽出してしまうとなんだかとっても面白い。回答者の芸術志向が強く出るというか、年齢が見えてくるというか。わが愛しのロボット・アニメというジャンルは、「アニメーションのプロ」の言うアニメの外にあるのだなあ。

6月 4日
蓮コラショックで、ときどき震えが出る今日この頃。ただの寒気かもしれません。

『チェコアニメの巨匠たち ティールロヴァー、トルンカ、ゼマン以前以後』(ESQUIRE MAGAZINE JAPAN)をたらたらと。毛糸玉がけんかしたり遊んだりするという、ティールロヴァー「二つの毛糸玉」は激しく観たい。チェコアニメ史の入門用としてよくまとまっていると思うのだが、ときどき凄まじい翻訳になるのには参った。

6月 5日
ゆうきまさみ『鉄腕バーディー』1巻(小学館YSコミックス)。ヤングサンデーで連載中の巻きなおし版バーディーの第1巻。作者名、題名、出版社名だけだと、少年サンデーブックス版と区別がつかないというのは問題があるような。

新規巻きなおしなので今のところは過去に読んだエピソード主体。細部が変わってOVA版のテイストが加わっているのはちょいと嬉しくない感じだ。でもまあ、あと10巻くらいあれば面白くなりそう。って、そこまで続きそうに無いような気もするあたりが、いろいろとあれ。

6月 6日
「科学雑誌の売上が急落」という記事があったので、久しぶりに「日経サイエンス」を買ってみる。われながらミーハー。

改めて読んでみるとどの記事も意外と面白かったりするわけだが、特に良かったのは「新薬を生かす次世代ドラッグデリバリー」。効率よく薬を体内に運ぶ技術あれこれ。マイクロチップを埋め込んで、必要量を送り込むなんてことも考えられているらしい。おお、星新一だ。

ついでに「宇宙船」も買ってみたり。ヒロイン役のグラビアとかついてんですが。「宇宙船」って前からこんな雑誌だったっけ?

6月 7日
昼前に阿佐ヶ谷。ラピュタに籠もって半日アニメを観る。今日観たのはC,D,Iプログラム。えー、Cがノルシュテイン「話の話」、リーフ「ストリート」、マクラレン「色彩幻想」、セルヴェ「ハーピア」、ラーキン「歩く」、特偉「牧笛」。Dがバック「木を植えた男」、ノルシュテイン「狐と兎」、ポヤル「飲みすぎた一杯」、手塚「ある街角の物語」、ラーキン「ストリート・ミュージック」。Iがミハイル・アルダシン「ケレ」、同「クリスマス」、ミハイル・トゥメリャ「線」、同「マラソン」、同「歌」、イワン・マクシーモフ「4分の5」、アレクセイ・ジョーミン「アトラクション」、アレクサンドル・ペトロフ「雌牛」、オクサーナ・チェルカーソア「ニュルーカの風呂」、オレグ・ウジノフ&エレーナ・ウジノフ「オオカミ」、ステパン・ビリュコフ「となりの人たち」、コンスタンティン・ブロンジット「地球の果てで」。

祖母の死に対する少年の心象をぼやけた水彩風の絵柄で描く「ストリート」、とぼけた雰囲気が魅力の「ハーピア」、水墨画で描かれた風景が美しい「牧笛」、素朴なコメディ「狐と兎」、人形アニメとは思えないスピード感「飲みすぎた一杯」、説教臭さを上回る画の美しさ「木を植えた男」、やや冗長ながらポスターたちの演技が冴える「ある街角の物語」、妖怪の魅力が遺憾なく発揮された「ケレ」、空に浮かぶ病の奇妙さ「となりの人たち」、シーソーのような山頂の家というワンアイデアでギャグをこれでもかと畳み掛ける「地球の果てで」が印象に残った作品。うち、一作を挙げるなら「地球の果てで」。派手さは無いが、ギャグの基本をしっかりと抑えている。

夕方から元ユタ。参加者は、SF人妻、大森望、堺三保、志村弘之、添野知生、高橋良平、林、柳下毅一郎、山本和人(あいうえお順、敬称略)。たまたま隣にいた、SF大会スタッフ組が参加者かどうかには議論の余地があるだろう。みーめさんと向井淳は参加者かも。聞こえた範囲の主な話題は、映画時評、「傑作」、blogにコメントを呼ぶ方法、最近のアニメ、健康管理の必要性、阪神絶好調、最近のSF、DVDのパンフ、アニメベスト、あれがアニメならこれもアニメ、BGMとしてのテコンV、ファビュラス・バーカー・ボーイズと歩くアメリカ・ツアー、など。『凶獣リヴァイアサン』評にトールの話を書かなかったことについて、怒られてしまったのだった。だって、あのおっさん、なぜそこにいるか説明するのが面倒なんだもん。ふゅーじょんぷろだくと版アニメベストについては、「それはそれとして妥当」の声が。確かに回答者の顔ぶれ的には妥当か。

帰りに寄った新宿書店で「清田益章・矢追純一・秋山眞人」というある意味豪華な名が並ぶ帯のついた漫画を発見。毒味しろとの声があったので泣く泣く買ってみる。木ノ花さくや『ENCOUNTER』1,2巻(BUNCHコミックス)。第一回世界漫画愛読者大賞グランプリ作で、ばりばりのオカルト物。週刊バンチ連載らしい。こんなのが始まっていたのか。オカルトネタを気にしなければ、それなりにキャラが立ったアクション物として読める。まあまあ。

6月 8日
日経サイエンス以来、科学書がマイブームだったんで読んでみました。井田茂『異形の惑星 系外惑星形成理論から』(NHKブックス)。水星軌道の遥か内側を数日の周期で公転する大型ガス惑星「ホット・ジュピター」や、0.5以上の高い軌道離心率を持つ「エキセントリック・プラネット」など、ここ数年の観測で見つかった異形の惑星たちについて、その不思議な特性を紹介し、なぜそれが不思議でないかを解説する。とんでもない新発見が従来理論を組替え、発展した理論の枠の中に収められていく過程が実に興味深い。新理論の形成過程にいるという著者の感動がダイレクトに伝わってくるあたりも魅力。複雑な現象を最少の理論で説明する、物理の醍醐味が詰まっている。おすすめ。

昼前から阿佐ヶ谷。昨日は大丈夫だったからと、油断した時間に着いたらみごとに目当てのEプログラムは満席になっていた。しかたなく、Hプログラム「オープンアニメフェスタ ロシア・スーズダリ2003 受賞作&スタジオ「シャール」開催ワークショップ卒業生作品」だけを観る。

マリーヤ・ムアート「ジェルトゥーヒン」は、男の子と彼の拾ったムクドリの雛の話だったはず。立体アニメ。ムクドリの造型は良かったが、他が弱く途中で寝てしまった。セリフのドラマがあると、字幕/吹き替えなしは辛い。英語ならまだしも、ロシア語ではさすがに。

ロベルト・ラピダス「循環」は、たぶんロシアの農場の話。前作の流れでそのまま寝てしまったので記憶に無い。

ソーニャ・クラフツォーヴァ「盗賊たちの生活より」は、盗賊たちのところに、規律にうるさいおばさんが来る話。ドタバタものとしてよく出来ている。落とし方もなかなか。

イワン・マクシーモフ「ゆっくり早く」は、レストランでいらいらしながら食事を待つ人々の生態をコミカルかつシュールに描く。客がどんどん人間離れしていくのは楽しい。

レオン・エストリン「飛べない小スズメ」はタイトル通り。だからどうしたとしか言いようが無い。

ここまでがオープンアニメフェスタの受賞作。以下はワークショップ作品。

マリーヤ・ムアート「Morgulya」。ペットショップで小鳥を買った少女。PPGやサムライ・ジャックといった現代アメリカ・カートゥーンに近いかわいい絵柄が印象的。話もシンプルで、よくまとまっている。

Yu・ダッシーンスカヤ「二頭の羊」。ささいなことから喧嘩をはじめた二頭の羊が、嵐や狼に襲われるうちに仲直りする。特に見るべきところは無い。

セルゲイ・メーリノフ「動物の4行戯れ歌」。動物が次々と変形していく2Dクレイ・アニメ。おそらくセリフが重要な話であり、であるが故にさっぱりわからなかった。

セルゲイ・ミローノフ「アリの幸せ」。アリの生態。だからどうしたよ。

エレーナ・チェルノーヴァ「自分のミーシカを見つけた女の子」。お留守番の女の子が、熊のぬいぐるみをさがして家中引っ掻き回す。典型的なドタバタ。絵柄によってはうるさくなりそうだが、キャラクターを基本的に一色で処理するという方法ですっきりとみせている。

アリョーシャ・オヤーチエバ「危険な散歩」。街角に潜む危険を描いたコメディ。落ちが弱い。

以上、11作品。技術的に凄いと唸るものも無く、物語をどうこうできるものもない。メイン・プログラム(A-E)と比較してしまうと数段落ちの印象は否めない。NHK教育のミニ・アニメの類のほうが平均レベルは高い。中で、「ゆっくり早く」「Morgulya」「自分のミーシカを見つけた女の子」は楽しめた。当日券で、これだけを見るほどの価値は無いが、5回券が余っているなら行ってもいいか。

6月 9日
一時の気の迷いで「蓮 コラ」でぐぐってしまい、大変気分が悪くなる。蓮乳を見て、どんなものかは知っていたというのに。ついうっかりにも程がある。> おれ

いや、しかしまったくほんとに、この画は後に残るね。大丈夫だと思っていても、ふとした拍子に思い出してしまい寒気が走るという。なんというか、「大丈夫ですじょ」という感じ。

蓮陰部とかは、僕にとっては非日常に過ぎる(< それはそれで哀しい話だ)のでダメージが軽いのだが、蓮乳や蓮脚なんかは本当に駄目。うぁ、書いてて思い出してしまった。とにかく駄目なんだってば。

しかし、あれですね。なんでこのコラージュは女性を使うんですかね。中には男性をベースにする奴がいても良さそうなもんだが。えーと、蓮陰茎とかになるわけだな。……画面を想像してしまった。吐きそう……。

うう。本当に寒気がするよぅ。風邪かなあ。

6月10日
蓮コラショックで寝込んだから、ではなく、積年〜月だったり積日だったりの課題を片付けるため休み。昨日の悪寒の一部は鼻風邪由来だったらしく、一日鼻詰まりと咽の炎症に悩まされてまいった。鼻炎薬を飲むと眠くなるし、まったくもって困ったものだ。蓮の呪い?

まずは阿佐ヶ谷で、先日見損ねたEプログラムの整理券を取得。そのまま、白山に出てコック亭の3倍カレー弁当を食べる。数年前から辛い辛いと聞かされていたのでどんなものかと思っていたが、案外普通。弁当屋のカレーにしては辛いが、カレーショップのカレーなら標準くらいではないか。だいたい、CoCo壱の3or4辛くらいの辛さ。野菜たっぷりな分、さらに辛味は丸くなっている。カレーよりも2002年3月4日に出たという日替わりメニュー「さばとイカ(アフリカボゾ族煮)」の方が気になるな。辛さを追い求める向きには特にお薦めしないが、なかなか旨いので白山に用事があって弁当を食べる機会がある場合には行ってみてもいいかも。

阿佐ヶ谷に戻り、Eプロを観る。ホードマン「砂の城」、マクラレン「カノン」、パテル「ビーズ・ゲーム」、ナザーロフ「犬が住んでいました」、手塚「ジャンピング」、トルンカ「手」、岡本「注文の多い料理店」、シュワンクマイエル「対話の可能性」(順番違うかも)。体調の悪さと、薬の副作用でかなり寝てしまったのは残念。通して意識を保っていることが出来たのは、後半4作くらいなので、ストーリーや展開を云々するのは避けるとして。画が印象に残ったのが、「砂の城」。砂の中から生き物が生まれ、仲間を増やしていく様は、「生命を与える」というアニメーションの本来の意味を思い出させる。「ジャンピング」の跳ねる画面も楽しく斬新だったが、中盤ジャンプ中の画面遷移がなっとく出来なかったのでやや減点。あとは、再見、再々見ながら「手」「対話の可能性」が良かった。

長篇を観るのは諦めて船橋に移動。南口の大型ダイソーに寄り、「親子で楽しむビデオ広場 世界のアニメ」を5本買う。ほんとうにフライシャー兄弟が100円とは。1本20分弱で、ポパイかスーパーマンを2or3話収録。1分あたり5円とちょっと。ありがちなアニメDVDが100分6000円弱、1分あたり60円程度だと思うと、破格というのもばかばかしいほどの低価格。いいのか、こんなんで。

昨日の蓮コラの話題は犠牲者を出してしまったらしい。ぐぐって見つかるのは、かなり気色悪い画像なんで、試さないことをお薦めします。はい。

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