過去の雑記 03年 6月

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6月21日
昼間に何かやろうという意思はあったが、軽く酒が残っている体が許さなかった。まんがを読んでだらだらと。

外薗昌也『琉伽といた夏』3巻(集英社YJCウルトラ)。妹萌えまんが路線驀進中。敵の正体も見えてきて、そろそろまとめに入ろうかという所か。なるほど、ループは基本だよな。

神崎将臣『ブルーバック』1巻(講談社アッパーズKC)。謎の青い鞄を巡る巻き込まれ型アクション。幼い頃の事故、どたんばの底力、戦闘マシンとして育てられた美少女、などなど。ありきたりの要素を手堅くつないでいて、今のところは楽しく読めている。もうしばらくは読んでみる予定。

夕方から宴会。例によって例のごとくで朝まで。

6月22日
たらたらと日常のメンテナンス。

荒川弘『鋼の錬金術師』5巻(ガンガンコミックス)。師匠に会う話から二人の過去へ。泣きと笑いとアクションを完璧な割合でブレンドした隙の無い面白さで、それ自体に不満は無いのだが、大佐が出なかった(そして、しばらく出て来そうにない)のは残念至極。番外エピソードでいいから大佐を!
でも、あれだ。本当に秋からアニメ化なんてして大丈夫なのか。どう見てもエピソードが足りないぞ。アニメにせかされてストーリーが荒れるなどという最悪の事態だけは回避して貰いたいところである。

志村貴子、小田ひで次、他『コミック星新一 午後の恐竜』(秋田書店)。ミステリーボニータ掲載の、星新一のショートショートをコミカライズする企画をまとめたもの。この手の名作コミカライズは、多少巧く出来ても「元が良いから当然」という印象を与えてしまうのでまんが家側には辛そうだ。原作を壊していないだけでも価値はあるんだが、それじゃまんが家の名前は印象に残らないんだよね。この本もだいたいそんな感じ。星新一得意の明るい諦観が出ている白井裕子「午後の恐竜」、志村貴子「生活維持省」あたりは巧いと思うが、原作以上ではないしなあ。敢えてコミカライズの難しい作品に挑戦した木々「天使考」も努力は買うけど面白くないし。微妙。星新一を読んだことが無い読者なら価値があるかも。いや、そんな状態は想像できないんでわかりませんが。
水準前後の作品が多い中、ベストを挙げるなら小田ひで次「箱」。作品の雰囲気ごと自分のものにしてしまっているあたりはさすが。

6月23日
毎度毎度の/.jより、ウィンドウサイズ55808バイトの幽霊パケット。どんなもんだか、いまひとつ具体的イメージがつかめないんですが、ちょっと電子生命っぽいのがいい感じ。

一時の気の迷いで渡辺浩弐『怪人21世紀 中野ブロードウェイ探偵 ユウ&AI』(講談社ノベルス)の二冊目を買ってしまう。あおい書店で配っていた限定「赤い同人誌」目当てという見事な駄目さだ。ダブりを置いておくのはさすがに悲しいので、欲しい人がいれば是非とも申し出ていただきたい。ただで差し上げます。1ページも読んでないんで内容の保障は出来ませんが。

西田龍雄『アジア古代文字の解読』(中公文庫BIBLO)。ロロ文字、水文字、西夏文字、女真文字、契丹文字など、東アジアの忘れられた文字(ロロ文字は現役)がいかに解読されていく/いったかを紹介する。暗号解読のようにわずかな断片から謎が解けていく過程はエキサイティング。かなり専門的なので、予備知識なしに読むのは辛い部分もあったが、それはそれなりに楽しめた。失われた文字体系を再構築する過程を読んでいると、日本語はどうなるかが気になってくる。日本語が死語になっていた場合、再構築は可能だっただろうか。日本文字の種類と読み方の数を考えるとかなり絶望的かも。なんで、こんな難しい体系を使う気になったんだろう。> 日本人

6月24日
朝から筋肉痛。どうやら、一昨日鉄アレイをぶらさげながら1時間踏み台昇降をした影響が今頃出ているらしい。そうか。もう、僕は「一昨日筋肉痛」の世界に入ってしまったのか。自らの老いを痛感するのはこんなときですね。

体重急増に危機感を感じてはじめた踏み台昇降だが、どうもいまひとつ習慣化できていなかった。しかし、今週からは違う。適切なBGVを見つけたのだ。いや、まさか「空飛ぶモンティ・パイソン」がこんなにはまるとは。画面にあわせてばか歩きをしそうになるのさえ我慢できれば、ここまで調子よく行けるものは無い。O.K.これでしばらくは大丈夫。買い置きのDVDが尽きたら、トム&ジェリーか、ルーニー・トゥーンズにでも手を出そう。

健康とは金のかかるものだなあ。< 何か違う

6月25日
SFマガジン8月号からグレッグ・イーガン「決断者」だけ読む。7月号はまだ1ページたりとも読んでないってのは公然の秘密だ。イーガンである以上、ある程度の期待を持って読み始めたのだが、残念ながらそこそこ止まり。いつもの「私と考えている私は誰?」という話なのだが、いつもより遥かにネタのマンマ度が高い。「この素材を生で出されてもなあ」と処理に困ること請け合い。残念でした。

つくば勤務となった友人から電話。なんとなく出した「雨中見舞い」が気になったらしい。悲喜こもごものつくばでの生活や、昨今ボードゲーム事情などについて1時間だか。久しぶりの人の声を聞くのは楽しいことだね。……って、一月だか二月だか前に話したばかりのような気もする。

6月26日
なぜか買ってしまった柳下毅一郎『愛は死より冷たい』(洋泉社)をようやく読み終える。映画評、評伝はさくさくと読めたのだが、4章の日記で急激にスピードダウン。日記という奴はまとめて読むもんじゃないですね。一単位が短すぎて、まったくスピードが出ない。

6月27日
先月に引き続き、今月も「日経サイエンス」を買ってみる。今月の特集は平行宇宙と火星とSARS。なかでも平行宇宙の話が面白い。主に数学の立場からの平行宇宙実在論で、地に足が着いてんだか着いてないんだか空中遥かを歩いてんだかってバランスが絶妙。「宇宙が無限なら、すべてのありうる陽子配置はどこかで再現されるから、どこかにそっくりさんはいる」というプリミティヴな平行宇宙から始まって、物理定数の異なる平行宇宙に、エヴァレット解釈による量子的平行宇宙、最後は数理構造の異なる宇宙まで。さまざまな荒唐無稽な世界が「ありうるんだからあるんじゃない?」と軽やかに論じられる。さりげなくイーガンの『順列都市』が出てきたり、カリフォルニア州立大の数学者ラッカーに言及したりSF的においしい話題もあり。『宇宙消失』のわかりやすいガイドになっていたりもするので、SF系諸氏にはご一読をお薦めする次第。

珍しい人から電話。「雨中見舞い」効果恐るべし。ダメ者がダメ者をなぐさめたり諭したりしようとすると、ダメの相乗効果で恐ろしいことになることがわかった。ともかく、次はお互い明るい話で電話できるように努力しよう。な。

6月28日
田中貴子『百鬼夜行の見える都市』(ちくま学芸文庫)。百鬼夜行に対する因習的な見方を打破し、都に特有の妖怪として再構築する。「こんなに凄いぞ」「こんなに新しいぞ」「どうです詩的でしょ」の部分がいちいち鼻について読みづらかった。こうまで相性の悪いノンフィクションは久しぶりだ。「百鬼夜行の姿は時代とともに変化している」というメインの指摘だけは悪くないんだから、そこを資料を駆使して証明してくれてればなあ。

昼から「結んだハンカチ ティールロヴァーとチェコアニメ」のAプログラム(ボーイズ編)とBプログラム(ガールズ編)。ヘルミーナ・ティールロヴァーはイジー・トルンカ、カレル・ゼマンと並ぶチェコ・アニメ三大巨匠のひとり。毛糸やハンカチ、おもちゃなどを動かす子供向けのマテリアル・アニメを造り続けたことで有名……らしい。今回の上映はティールロヴァー単独ではなく、トルンカ、ガリク・セコ(ティールロヴァー作品のアニメーション担当)に加えバリバリ現役の若手の作品まで交えた豪華なプログラムとなっている。ティールロヴァー単独か、セコを加えた程度かと思ってたんでこれは嬉しい驚き。

Aプログラムは、アウレル・クリムト「ブラッディ・ヒューゴ」、イジー・トルンカ「金の魚」「おじいさんの物々交換」、ガリク・セコ「僕の友達はチクタクいう」「本棚の世界」、ヘルミーナ・ティールロヴァー「ミーチェク・フリーチェク」「仕返しの日」「結んだハンカチ」の8作・95分。
 新人枠クリムトはサイレント西部劇のパロディ。コマ録りのユーモラスなリズムに、体操道具を馬に見立てるばかばかしさ、悪漢ヒューゴの悪辣さ(近づくだけでいたいけな少女も孕むのだ!)が加わって、なかなかシュールな味に。投げっぱなしのラストには感動すら覚える。
 トルンカは昔話に題を取った絵本調のアニメ二作。いくらなんでもそれはやり過ぎだろうという繰り返しが、いかにもチェコアニメという感じ。この素朴な味は嫌いではない。
 セコの「僕の友達はチクタクいう」は捨てられたものたち同士のふれあいを描くファンタジー。ほのぼのと良い話のようではあるが、ぼろぼろになった熊のぬいぐるみのデザインには微量の毒を感じなくもない。「本棚の世界」は生命を持った本たちの世界。ちょっとディズニーっぽいイメージ。
 ティールロヴァーは動く「モノ」の話三篇。老夫婦が動くボールを育てる「ミーチェク・フリーチェク」、物を乱暴に扱う少年に物達が叛旗を翻す「仕返しの日」、ハンカチがひとりで世界を旅する「結んだハンカチ」と先に行くに従って「モノ」の話としての自己完結度(人間不要の度合い)が増していく。それぞれにかわいらしく、楽しいアニメーションではあるが、ちょっとずつ尺が長すぎて飽きが来るのが難点。

Bプログラムは、マーリア・プロハースコヴァー「おたふく風邪」「足跡」、イジー・トルンカ「動物たちと山賊」、ガリク・セコ「卑怯者、出てこい」「シューズショー、あるいは自分勝手な靴」、ヘルミーナ・ティールロヴァー「玉」「豚飼い王子」「雪だるま」「迷子の人形」の9作・94分。
 新人枠プロハースコヴァーは、子供の絵がアニメーションする作品と、公園を足跡だけが動き回る作品の二作。足跡と音声だけで楽しそうな公園の様子を描き出した後者は出色の出来。前者も巧い。

 トルンカはこれも昔話。活き活きとした画面の魅力はあるが、それがそう動くのかというような新奇さはない。
 セコの「卑怯者、出てこい」は「僕の友達はチクタクいう」の続篇。かわいらしさはあいかわらず。「シューズショー、あるいは自分勝手な靴」は生命を持った靴。「本棚の世界」と同じパターンではあるが、これはこれで。
 ティールロヴァーは民話をもとにした伝統的人形アニメひとつと、無生物が動き回るいかにもティールロヴァーな作品三作。Aプログラムでも感じたが、やはり1,2割冗長という印象。

帰りに寄った新宿西口イエローサブマリンで久々に買物。

商業化後のGame Journalを2冊ほど。付録ゲームの質が上がったのはいいけど3600円というのは雑誌の域を越えてないか。リプレイコミックがシミュレイター(かってそういう雑誌があったのだ)のノリ、というか書き手も含めそのまんまだったので大変に懐かしかった。

「MISSION:I.S.S.」はISS建設ゲーム。できるものが実際のISSとは似ても似つかないというのはちょっと難。題材なんてカードゲームにとってはフレーバーに過ぎないという立場もあるだろうが、ISSなんてタイトルで手に取る客はフレーバーの方を求めていると思うんだが。これでシステムがだめだったらどうしよう。

「GIVE me the BRAIN!」はゾンビのファーストフード店を題材にしたカードゲーム。手札を捨て切ることを目指すUNOタイプのゲームだが、すべてのカードに特殊効果がついているあたりがポイント。これを見る限りだと手札が増えるスピードが速すぎてゲームが終わらないように思うのだが大丈夫なのか。全体の雰囲気はばかばかしくてラブリー。誰か対戦しません?

6月29日
岩明均『寄生獣 完全版』(アフタヌーンKCDX)。何を隠そう『寄生獣』を読むのは初めてだったり。他にもいろいろと恥かしい物を読んでいないが、恥かしいので書かない。『夏への扉』とか。

読んでみるとこれがまた評判に違わぬ傑作。思想性はまあどうでもいいとして、描写の思い切りの良さ、物語の骨の太さ、アクションの迫力と緊張感。どれをとっても申し分なし。中でも、イヤボーンに堕さず、知力をふりしぼり続ける戦闘シーンには脱帽するしかない。名作と呼ばれる作品は、それだけの理由があると思い知らされたような。これなら星雲賞レースで『マップス』が負けたのも納得できる。個人的な趣味なら、『マップス』に軍配を上げるけどな。

なぜだか突如、杉浦茂『少年児雷也』1,2巻(河出文庫)。雷獣の肝を飲み妖力を得た少年、児雷也の活躍。っつーか、なんつーか。前時代のまんがの自由奔放さというか杉浦茂独特の自由奔放さにあふれたどうにも対応に困るすばらしい作品。とり、唐沢、水玉のオマージュ(パロディともいう)三羽烏のまんがorイラストエッセイで作風は知っていたが、こうまでまんまとは。見たことのある構図ばかりで、どれがどの記憶だが区別がつかず参った。

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