- 6月 1日
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以前、ここでも紹介した、コンピュータが二十の扉に答えてくれるサイトの日本語版が出来ていた。スーパーロボットのイメージで回答してたらちゃんと、19問目で「ロボット」と答えられてしまったよ。なんだか各国語版もあり。各国語版から日本語版がリンクされてないのは正式版じゃないということかな。
乱土労馬さんの日記経由でバンダイの響鬼グッズサイトに行ってみたのだけど。城南高校体操着というのも十分いかがなものかという感じなのだが、トルマリン製イオン・ブレスというのはそれ以上にアレだ。えー、鬼ってトルマリン・ブレスで強くなったりしてるんだー。
で。このサイトを見た感じだと、鬼の服消費問題は、TAKESHIブランドの服を支給されているということで解決のようだね。
ようやっとSFマガジン6月号のフィクション部分を読了。山田正紀「イリュミナシオン」の中に「この世に有毒の哺乳類などいない」という意味の文章が繰り返しでてきたのだけど、カモノハシの立場はどうなっているのか。ひょっとして、作品世界内にオーストラリアが存在しないことの伏線とか。
あ、「アルミテス」というのもどうかと思った。ふつう、そうは間違わないだろう。と、思ってgoogleってみたら、けっこう引っかかって驚いたけど。そんな神、いないよね?
さらに、スピンクスの毒により、英語を話せるようになったパウロが、その事実に驚愕するシーン。
なにより紀元一世紀のこの時代には、英語は取るに足らない辺境言語にすぎず、それを使う人間はきわめて限られているはずだった。
って、その時代、英語はまだ存在しないだろう。当時のイングランドで話されていたのは、Pケルト語系のブリトン語か、ラテン語だ。後のアングル族とサクソン族が話す低地ゲルマン語を英語と呼ぶことは可能かもしれないけど、語彙の面でも文法の面でも、今の英語とまともな共通点があるとは思えない。
どれも、物語の本筋とは関係ないことではあるけれど、リアリティの基盤を衒学的な知識の羅列に求めるタイプの作品なのだから、そこを疎かにしちゃまずいだろう、と。
会社帰りに、近所の本屋で〈宇宙船〉を眺めていたら、いきなり休刊の文字が目に飛び込んできてびっくり仰天。ネットでは4月中ごろから話題になっていたようだけど、まったく知らなかったんで本当に驚いた。特撮関係は一時期に比べて好調なのにとも思うが、アイドル誌的な方向で攻める競合誌が増えた中、比較的硬派な〈宇宙船〉は位置取りが難しかったのか。年に1,2回、思い出したように読むくらいで、とても良い読者とは言えなかったが、25年間の長きに渡って続いた特撮のオピニオン誌の休刊は感慨深いものがある。
最後の最後に表紙を飾ったのは、C-3POとR2-D2でした。
- 6月 2日
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『SFベスト201』届きました。ご恵贈ありがとうございます。
どうにも目立ってしまうレーダーチャートは評者ごとに基準がバラバラで、参考にしようとするのは無駄っぽい。「テクノ志向」の数字ですら相互比較できそうに無いからなあ。今になってそれを読めといわれてもなあというタイトルもあるけど、それはまあこの手の企画の常という奴で。これは余分というよりは、これが足りないというほうが楽しかろう。とりあえず、《Early Asimov》3冊がないのはいかがなものか。< おい
どうでもいいこと。作家インデックスのアルカジイ・ストルガツキーの項に、(1925〜1991/露)とあるのが気になって、調べてみたところ、ソ連建国は1924年、崩壊が1991年だった。ストルガツキー兄は、ソヴィエトと(ほぼ)ともに生まれ、ともに死んだのだね。ということは、出身国は「ソ」と書くべき、って、それは混乱を招くか。
こどものもうそうblogより、European Geography Level 3。欧州各国を白地図の上に置いていくパズル(教育用ゲームかも)。出てくる順番はランダムなので、はじめのほうに内陸国が出てくると、慣れないうちは確実に死ねます。欧州地図にはちょっと自信があったのに、3回やっても41/44だよ(一回目は35/44)。
やっと、エウレカセブンの7話を見た。どうも気後れしがちでだめだ。今日も、10分見ては1時間休むような形でなんとか最後まで到達。しばらくメンバーのサイテーっぷりを描きつづけて、適当なところで実は良い人モードに反転という感じかな。でもって軍の隠された秘密話を前後のどこかに入れて、やっぱり軍隊は倒される理由があるよね、と。兵士は普通の人に見えるのがネックだよなあ。どうしても、殺されて当然とは思えない。
20話過ぎくらいで、レントンが倒したLFOの中の死体を見て、自分の行為を悟るというエピソードが入ることを予想。
入るといいなあ。
- 6月 3日
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SFマガジン 2005年6月号読了。スプロール・フィクション特集第3回。そんなサブジャンル/傾向が実在するのかどうかはともかく、結果として掲載される作品は必ずしも嫌いじゃないので、まあいいかという気になってきた。
クリストファー・ロウ「志願兵の州」。頭の中に知事の従僕を宿らせた人々の住むテネシー州に侵入したカラスの羽を身にまとう戦士たち。変貌したテネシーの異様さはけっこう面白い。そこに侵入した戦士たちの目的が明らかになっていく過程もうまく書けている。ただ、それが新しい、わからないといわれるところが良くわからない。ディストピアへの反乱物を、視点人物の立ち位置と、ディストピアの設定にちょっと工夫して書いてるだけじゃないのか?僕が何か見落としてる?
ベンジャミン・ローゼンバウム「抱擁もて新しきもの迎ふる神」。外部の生物に記憶を預ける異星の種族。神像彫刻家の主人公は、師匠に抜擢され、新たな神を彫ることになる。異種知性の人類とは異なる生態と、その生態故にもたらされる苦悩を描くところは、「愛はさだめ、さだめは死」に似ている。親の記憶を代々受け継いでいったり、記憶生物を形見分けするように兄弟に分け与えたり、複数の記憶生物を一つの人格に統合するため個人の神が必要だったり、いろいろ考えられた異種知性の設定が楽しい。「新しさへの賛歌」というメッセージ性の強さについては、設定と物語の面白さが十分にあったので気にならなかった。でも、これも、新しいと大威張りでいわれると返答に困るな。
リチャード・バトナー「未来の家」。少年が町外れで見つけた未来の家。「過去の未来」(ガーンズバック連続体って奴?)を体現するようなデザインのその家は、なぜは次第に新しくなっていき……。過去の未来へのノスタルジーがただよう都市型ファンタジー。だから、これのどこがスプロール・フィクションなのかと。ふつうに良く出来た F&SFっぽい短篇にしか見えないんだけどもが。
というわけで、今回の掲載作は面白かった。特集解説も、スプロール・フィクションという単語を気にしなければ、読書ガイドとして役立ちそう。
栗本薫《グイン・サーガ》外伝『鏡の国の戦士』2話「闇の女王」。すべての空を集めた世界に囚われたグイン。グインが閉じ込められた世界の設定(表層のほう)は魅力的。魅力的なだけに、それがろくに活かされないのが惜しい。英雄のはずのグインが、あられもなく悲鳴をあげるばかりなのはいかがなものか。あと、魔を断つ名剣に「スナフキン」なんて名前をつけるのはやめてくれないか。この名前が出てくるたびに笑ってしまって、世界に没入できない。それ以前に文章の荒さのせいで没入できないという話もあるけど。
栗本薫への愛が溢れていることだけはよく分かる特集は、心の底からどうでもいい。ただ、あまりにも怖すぎるんで、近影を載せることだけは避けて欲しかった。
山田正紀『イリュミナシオン ILLUMINATIONS 君よ、非情の河を下れ』第2回。ブローン・レイミア……、じゃなかった、ショットガンを構えた女戦士、パウロが語る己の過去。「反復者」「青ざめた虚無」などの謎設定でひっぱるのはあいかわらず上手い。ただ、作品にリアリティを与えるための、細部の薀蓄の部分で粗が見えるが難点。粗に見えたところが伏線になっていて、後日回収されるというのなら良いのだが。
小説外では、横田順彌の連載が好調。今回紹介された作品は、なんだかどれも面白そうだ。永瀬唯の書く「大砲パンクとしてのジュール・ヴェルヌ」も興味深い。
昨日の欧州地図パズルのサイトをさかのぼったら、いろいろ面白そうな物があった。まずは、
欧州地理関連。昨日のやつがLevel3の中級で、国名の矢印を配置するやつとか、国名の最初の3文字をタイプするやつとかいろいろあって、最上級がアインシュタイン級。これになると、国の形を回転&拡大縮小して適切な場所に置くという難儀なものに。もちろん、国名なんて表示されません。群小国は回転も拡大縮小もなく国名も表示されるので、こんどはこっちが心のオアシスに。Level3の特訓で欧州地理レベルがだいぶ上がったと思っていたのに、35/44で惨敗しましたさ。序盤の内陸国で、サイズ一つを調整するのが難しい。
もちろん、アジア版もある。ほかに、アフリカ、オセアニア、中南米、カリブ海なんてのも。とりあえず、アジアのLevel3をやってみたのだけど、旧ソ連の中東諸国がむつかしすぎで、初回は40/47でいっぱいいっぱい。
アメリカ合衆国は別扱い。州を置くゲームの中級を、他の地域版のLevel3だと思ってやってみたら、州の名前すら表示されず、にっちもさっちも。この正方形と、さっきの長方形が違うといわれてもなあ。ただの長方形をいくつもならべていると思わず笑みがこぼれてきます。
- 6月 4日
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響鬼占いってのが、ありまして。一見、よくある誕生日+血液型系なのだけど、キーワード入力も全体結果に影響を与えるという点が珍しい。たぶん、誕生日+血液型+キーワードで一つの数値が決まって、それを使って各結果を呼び出してるのだろう。ぼくは「好きな仮面ライダー:仮面ライダーX」にして、結果がヒビキさんでした。「なんでも笑ってごまかすのはやめましょう。」に笑った。
夜から元ユタ。今回の出席者はSF人妻、STR(今はこれだっけ?)、大森望、高橋良平、林、山本和人(あいうえお順、敬称略)。
主な話題は、SFベスト201のラインナップ、1500冊、山本の1位・大森の1位(@googleランキング)、宮崎あおいよりも蒼井そら、戦国自衛隊1549、Ζガンダムは誰が観ているのか、〈宇宙船〉の休刊、特撮の視聴率、SMAPドラマが視聴率上位を独占する件について、映画版「電車男」、バットマン・ヒギンズ(間違い)、ブルガリアのスタジオは違ったらしい、山尾悠子の掲載誌、今時のAV、小林王子、最近の新刊SF、すごい帯、昨今のアニメ、スター・ウォーズ、宇宙戦争、小松左京の名前、ケヴィン・ベーコン・ゲームはまだ流行っているのか、ここ以外でmixiという言葉をはじめて聞いた、SNSマーケティングなど。
あまりまとまった話はしなかったので話題が拡散してます。てか、それぞれの苗字でSF関係者が何位になるかを調べていた時間が一番長いというのはどんなものか。
一瞬だけ話題を振った徳間の短篇小説アンソロジーってのは、日本文藝家協会編『短篇ベストコレクション 現代の小説2005』(徳間文庫)でした。2001年から出てるらしい。
ケヴィン・ベーコン・ゲーム(任意の俳優からIMDB掲載映画の共演者を辿って、6映画以内でケヴィン・ベーコンにたどりつくというゲーム)の話題を受けて思いついたのがヴァン・ヴォクト・ゲーム。映画の共演者ではなく、同じ邦訳アンソロジー(雑誌を含む)の収録作家をたどって、ヴァン・ヴォクトにたどりつくまでの冊数を競うゲーム。
IMDBに当るものは、てつさんの翻訳アンソロジー/雑誌リストでいいかな。ヴァン・ヴォクトの名前はいま適当に思いついただけなんで、別の作家でも可。作品数から言えばアシモフのほうがいいか。さあ、スタートはヴァンス・アーンダールですよみなさん。
#すぐ終わるからだめだって。
- 6月 5日
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『バタフライ・エフェクト』を観る。時間を遡って人生やりなおし系の話。かなりちゃんと作ってあるけど、タイムパラドックスの処理にはまだ穴がある。しかしまあ、映画なんだからそこを突っ込んでも仕方ないだろう。
最後の最後のシーンは、何十回見ただろうという典型的なパターン。パターンだけに無難な終り方ではある。大きな伏線一つが無かったことになっているけど、それはディレクターズカット版で使われたようだ。
#公開版とディレクターズカット版の概要を対比したサイトで確認したら実際使われていた。
物語の整合性としては、ディレクターズカット版のほうが美しいし、僕の好みもこちら側。でもまあ、公開版でも悪くはないか。パンフの梶尾真司によるレビューが、「これくらいのSFは読んでるよね」状態で楽しかった。まあ確かに、ハインラインや広瀬正くらいは基礎教養かな。
- 6月 6日
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早いもので交流戦の後半も半分終わり、セントラルとパシフィックの勝ち星が図ったように半分半分という出来すぎな状況の中、前半戦ボロボロだった中日が、5割に向けて怒涛の追い上げを見せていたり、スタートダッシュに成功したはずの読売がけっきょく馬群に沈んでいたり、悲喜交々の展開がつづいている。順調なのは千葉ロッテとヤクルトくらいか。わが横浜は良いとはいえないが悪くはない状態なので、このまま無難に乗り切っていただきたいところ。
さて、そんなわけで残り3カードなわけだが、梅雨入りも間近に迫り、そろそろ天気が心配になってくる。明日以降のカードで降雨中止の可能性があるのは、次の9カード。
6/ 7- 9 B-T M-G Yb-F E-D C-H、6/10-12 T-F Yb-B E-C、6/14-16 S-M
交流戦は予備期間がほとんどないので、下手に雨が降ると極端に厳しい戦いを強いられることになる。幸い、露天球場が5カードもある今週前半はだいたい晴れの予報だが、週後半は全国的に雨の予報なのが気がかり。特に横浜は、既に対東北楽天がホーム、アウェイで1試合ずつというたいそう嫌な残り方をしているので心配だ。
最悪の場合、14-16の福岡での福岡SB戦から、21日静岡での読売戦までの間に、仙台1試合(対楽天)、横浜4試合(対楽天、対檻鉄)なんて可能性もあるのか。横浜:福岡 横浜 仙台 横浜 横浜 静岡とか。うへぇ。
- 6月 7日
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諸般の事情から、この辺で1日有給休暇を取っておくことが効果的っぽかったので、お休み中。思わず、「らくがき怪獣娘・宇宙人娘」なんて、読み返しちまいましたよ。どうやら、だいぶ見落としがあったらしい。これで、第二部開始に向けての準備もばっちりだ。
やっと、うちにも井川りかこSPAMが来たぜ!わーい。でも、まとめサイトで概ね全文知ってるからなあ。別バージョンであることを期待しよう。
昨日は社長SPAMも来て千客万来。もてもてです。いや、社長SPAMは何度も来てるんだけど。
SPAMといえば、greeからのメッセージを真似たメールというのはちょいと盲点を突かれました。なるほど、その手があったか。urlを似せる必要はあるけど、うまくやれば入れ食いになる気がする。問題は、誘導先で何をさせるかだな。アクティブアドレス収集だけなら、かなり高性能になりそう。
観たもの。
「スピードグラファー」ふたりで温泉な設定説明篇。説明の仕方が唐突なのは仕様なのでしかたなかろう。「神楽様はここ数日、風呂に入っていない」とかいきなり言い出す犬男は、なかなか良い味をだしてる。でも、びっくりどっきり人間が登場しなかったのは不満。次回は「水天宮来る」。その副題のセンスはどうにかしたほうが。
「エウレカセブン」こんどは軍の仕事をするよ。って、いいのか軍。いままで何人の仲間が殺られたと思っているのか。まあ、テロリスト集団の作る雑誌が、全国展開してる世界だから何が起きても不思議は無いが。で、軍の走狗となったテロリスト達は、ターゲットが案外良い奴だったから、金だけ貰って依頼主を殴り倒しました。めでたしめでたし。この馬鹿しか出てこない&モラルのかけらも無い話を、変に爽かな画でやるんだから始末に悪い。そろそろ切ってもいいんじゃないかという思いがふつふつと沸き中。どんなに脚本がダメでもアクションの爽快さで魅せるあたりは、買っているんだけど。むー。
「マジレンジャー」門の鍵は自分で敵に突っ込んでいって負けました。終わり。えーと。いろいろ不快なんだけど、特に赤ごときが偉そうに説教垂れるのが心の底から不快です。さすがに、これはもう切った。
「響鬼」日曜・朝の3番組では唯一安心して観てられる。轟鬼さんのやんちゃっぷりがすてき。戦闘後のライブで一緒に踊っちゃうディスク・アニマルもおちゃめでかわいい。
「アクエリオン」新しい敵の顔出し回で、概ね退屈ではあったのだけど、無限クロスで笑ったのでよしとしよう。この作品にそこまでの期待はしてないし。
「ガオガイガーFINAL GGG」だから最初に再生機構を潰そうとするのが筋ではないのか。< 凱にいちゃん
ルネはあいかわらず噛ませ犬にもならない最低の扱い。唯一の見せ場は来週?
「BLEACH」なんか、新撰組風のかっこうした何番隊の隊長とか副長とかが仲間割れしつつ侵入者と戦っていたんだけど、これって死神がどうこうという話じゃなかったのか?初見でもちゃんと盛り上がってるように見えたんで、毎週追ってたらそれなりに面白いんじゃなかろうか。
「じゃパン」せっかく観れたのに、変なリアクションが無いよう。金返せ。
1日半で4時間分も特撮・アニメを観るのは、目と頭に悪そうなのでもうやめようと思いました。
読んだもの。
ゆうきまさみ『鉄腕バーディー』9巻(小学館ヤングサンデーコミックス)
千明をめぐる攻防、バーディー&つとむ対ゴメス。むちゃくちゃ久しぶりに見覚えのあるシーン(34-37ページと、147-150ページ)があったんで驚きましたさ。これでついにまったくの未知の世界へ……、と思ったらOVAを連想させる設定(ダムに沈む廃病院)がでてきたな。
今回のメインはやはり、ネズミ型宇宙人フォルテ巡査部長。群知性なんで、個々の個体は次々と入れ替わるので声なんかはどんどんかわっていくとか、あまりに個体群が広がりすぎると思考に支障が出るとか、SF設定としておいしすぎ。しかも、行動はただのねずみだし。今後の活躍が期待されます。
小川洋子「バタフライ和文タイプ事務所」(日本文藝家協会編『短篇ベストコレクション 現代の小説2005』徳間文庫・所収、小説現代 2004年4月号・初出)
収録書の解説で、堀晃がSFだと言い張っていたので読んでみたもの。時代は昭和初期といったところか。医学部学生の論文のタイプを請け負う和文タイプの事務所が舞台。新しく入ったタイピストである主人公の案内で、懐かしく、目新しい和文タイプという職業の様子が活写されていく前半もすばらしいが、活字の一つが欠け倉庫に交換に赴いたことから妖しい世界に囚われていく後半はなおすばらしい。活字をここまで艶かしく描くことができるとは。
冲方丁「日本改歴事情」(SF Japan 9号 所収)
星雲賞候補作フォローシリーズ。幕府の囲碁指南役、二代目安井算哲こと渋川春海が、数々の苦難を乗り越え、改歴をなしとげるまでを描く歴史小説。保科正之との会話、関孝和との対決など名場面の連続で、めっぽう面白いのだけど、さすがにこれはSFではないだろう。SFじゃないよね?(知らない話の連続なので弱気)
googleってみた感じだと、事実関係は概ね歴史通りの様子(例)。ただ、日食の説明で「月と地上が、ざっと十万里。太陽と地上は、その距離、四千万里ほどです」というシーンはどうだろう。地球・月間や太陽・地球間の距離ってそんなに正確にわかっていたのか。
陰山琢磨『蒼穹の槍』(光文社 カッパノベルス)
麻薬マフィアが、空から槍を降らせる人工衛星を作る話と、それを止める話。メインアイデアは面白いし、それが出てくるまでの前半はテンポも良く緊迫感もあってなかなか。それだけに後半、スクリプトのようになってしまうのが惜しい。
あと宇宙関係の描写でいくつか、それはないだろうというところがあるのは残念。様式はハイテク・スリラーなんだから細部のリアリティはちゃんとおさえないと。
- 6月 8日
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SFM考課表更新しました。しかし、現時点で参加者が5人しかいないってのは、さすがにこう、ねえ。
響鬼の映画版は戦国時代が舞台らしい。弦の人と管の人がどうなるかむちゃくちゃ興味あるなあ。あと、式アニマル。
- 6月 9日
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愛・蔵太のきままな日記経由で、「こどものための合唱組曲 チコタン──ぼくのおよめさん」という歌を知る。
なんでかな? なんでかな? なんでチコタン 好きなんかな? なんでこないに 好きなんかな?
と関西弁で楽しく歌い始める歌が、急転直下の落ちに終わるのに呆然。
で、呆然としていると、さらに「日曜日」が襲いかかってきたり。少年の平和な生活をつづるかに見えた歌がなぜ、こんな打つ展開にならねばならないのか。曲を聞いてみると本気でトラウマになりかねないパワーが。合唱曲おそるべし。
発酵薀蓄まんが『もやしもん』で(一部人々の間で)ブレイク中の石川雅之が、「かもすぞジャパン」という企画を立ち上げ中(5月28日の記事)。
個人的に「かもすぞジャパン」という企画を立ち上げました 外に出た時 ペンと書くものが用意されているところには必ず菌を書こうと思います 手始めにコムサの子供の遊び場コーナーに落書き帳があったのでかもしました みんなでやりませんか? 教室の黒板からプールバーのスコアボード 砂浜からラブホテルのコメント帳まで いつの日か誰かが書いた菌を見つけてニヤリとしたいんです でも壁とかは駄目です ファミレスでアンケート書いたついでにお手拭に書いて戻すとかも駄目です かならず「かいてもいいよ」と相手がスペースを提供してくれてるところってのをルールとして 健全で地味な活動を夢としています
あー、それはちょっといいかも。菌が描けるように、練習しようかと思ったことですよ。しないけど。
- 6月10日
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有川浩『空の中』(メディアワークス)読了。すばらしい怪物SFで、少年の成長譚で、ファースト・コンタクトSF。
高度20000mにひそむ異種知性、「白鯨」の設定が秀逸。物語への印象的な登場のしかたも、その後の振る舞いも、怪物化した時の恐ろしさも申し分ない。いささか無敵に過ぎるところも含めて、ほぼ完璧。登場人物配置も見事。正義側、悪側、間で揺れる主人公と、サイドを明確に分けながら、悪側にも「しかたない」と納得できる要素を与えている。それぞれの人物が背景に持つドラマも必要十分。
いささか残念なのは、航空小説としての性格が次第に薄れてしまうこと。冒頭の空への思いが印象深かっただけに、後半ほとんど登場しなくなるのが寂しかった。それでも、忘れてしまったわけではなく、ラストでちゃんとフォローしているのは好印象。物語としての面白さ、SF設定の魅力、キャラクターの厚み、どれをとっても文句は無い。星雲賞国内長篇部門の投票作品はこれにしよう。
というわけで星雲賞投票してきました。
コミック部門は棄権。読んだ作品は投票するほどじゃないし、名前でこれはと思う大作は読んでないという。と思ったのだけど、投票後しばらくしてから、山名沢湖「ハミング」があったことに気づいた。しまったなあ。
メディア部門は当初「王の帰還」で行くつもりだったのだけど、直前になって、「その他:Mr.インクレディブル」に。
海外短篇は悩んだ末、「ふたりジャネット」。作品としては「ニュースの時間です」や「アイスドラゴン」のほうが好きなんだけど、作家の名前と今後の邦訳への期待も加味するとこっちに。マーティンは来年、タフで取るだろうし。
ノンフィクションは『SF雑誌の歴史 パルプマガジンの饗宴』。優劣の問題ではなく、趣味の問題です。AからEは(読んでないけどひょっとしたらFも)どれがとってもおかしくない。
アート部門はとりあえず松尾たいこ。この部門は、どんな活動があったか思い出せなくて困ることが多いんだよね。候補選定時に、名前だけでなくその年の主なSF関係の仕事を例示してくれると考えやすくなるんだけど。
- 6月11日
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八房龍之助『宵闇眩燈草紙』6巻(メディアワークス 電撃コミックス)。うわはははははは。バカだ!バカばっかりだ!
禁酒法下のアメリカ西部は、製機企業と傘下のギャング団が支配する街シホイガン。麻倉屋の仕事の手伝いでこの街を訪れた虎蔵は、闇酒場を経営する親子と知合う。この街で唯一まともなコーヒーにありつくため、その店に通いつめるようになった彼は、その闇酒場がギャング団に立ち退きを迫られていることを知る。あるとき、ついに彼らの店はギャングの襲撃にあい……。って、ここまでだとハードボイルド物みたいだね。それが、なんでまた、こんな話になるんだか。出てくる奴みんな、人を人とも思っちゃいねえし、実際人間じゃない奴ばかりだし。
いつもにもまして、ど派手なびっくり人間大集合。後半は3ページに一度くらいのペースで声あげて笑いそうになっちまいましたよ。画とアクションのインパクトだけで笑いをとるってのは卑怯だよなあ。もちろん、いつもの衒学趣味もてんこもり。がんがん飛ばしてます。それで落ちが「シェボイガンを喰った…」ってのはどうなんだ。
既刊を読んでいる人はもちろん、読んでない人も既刊全部と一緒にまとめてすぐ読め今読めとにかく読めと強く主張したい。
- 6月13日
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Yahooニュース経由でスポニチの記事。
人気ヒーロー「仮面ライダー響鬼(ヒビキ)」の劇場版に、日本5大都市の“ご当地ライダー”が登場する。タイトルは「戦国大決戦(仮題)」で、舞台が戦国時代というライダー史上、初の時代劇。響鬼らテレビシリーズのライダーの先祖としてお目見えする。ご当地ライダーは「47都道府県に1人ずつ鬼(ライダー)がいる」というテレビシリーズの基本設定を踏まえて誕生。東京は「歌舞鬼(カブキ)」で歌舞伎がモチーフ、大阪の「西鬼(ニシキ)」はトラがモチーフ、名古屋の「煌鬼(キラメキ)」は金のしゃちほこをあしらい、福岡の「羽撃鬼(ハバタキ)」はタカをデザイン、札幌の「凍鬼(トウキ)」はクマ。それぞれ地元色やプロ野球の球団を生かしたスタイルだ。
テレビシリーズの設定で、「47都道府県に1人ずつ鬼がいる」ってのも初耳だが(関東で11人ってのはどこに行ったのか)、戦国時代のご当地ライダーたちの設定もすごすぎ。地名はまあ、江戸、堺(戦国時代だと大坂よりも堺だろう)、清洲(那古屋よりも同右)、博多(これはちょっと自信なし)、函館(どうしたらいいのか見当もつかない)に読み替えるにしても、モチーフはさすがにどうにもならんよなあ。歌舞伎も、金シャチも江戸時代以降だってば。
そもそも、他が虎鷹熊なら、名古屋は竜、東京は兎が筋ではないかと。てなわけで、名古屋のライダーは仮面ライダー龍鬼ということで。
- 6月14日
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ウェルズ『宇宙戦争』を読み比べた結果のメモ。
- あらすじは覚えていたが、細部はまったく覚えていない。ひょっとして初読かとすら思ったが、「読んだ棚」に井上勇訳があったから、読んだのだろう。
- 火星人の戦闘マシーンが、あまりにもトリポッドなんで笑った。あー、どちらも三本脚+触手ってのはそもそもわかってたことだけど、走り方まで同じだったとは。
- 早川版(斉藤伯好訳)はもっとも意訳気味。読みやすくはある。平易な文章になっているのはいいのだが、ヴィクトリア朝が舞台なのに平気で「ホームレス」が出てくるのは興を殺ぐ。クラークの序文のあたりは、やたらめったら注がついていて、なぜそこまでと不思議に思ったが、本文にはそれほど付いていなかった。飽きたのか。
- 創元新版(中村融訳)は、おそらく最も原文に忠実。斉藤訳と比べると、こちらは「いかにも古典」という文体になっている(だからと言って読みにくくは無い)。表現にふくらみがあって、個人的にはいちばん好き。ウェルズの間違いにまで突っ込む注が面白い(たぶん底本の注釈)。
- 角川(小田麻紀訳)版は、きちんと読み通せてないけど、一番堅いかなあ。主人公の一人称が「ぼく」なので、他とだいぶ印象が違う。
- 本文以外が一番充実しているのは創元版。ロンドン周辺の地図に味のある挿絵までついてお得感大。表紙も一番。
- 早川版はクラークの序文と高橋良平の解説が充実。ウェルズの科学小説に対するスタンスがつづられる「私の科学小説」の引用と、一九世紀末〜二〇世紀初頭のジャンルフィクション古典一覧は必見。
- 角川版はおまけという点では一番寂しい。堺三保の解説も枠が5ページでは、前2者(早川15p、創元12p)と戦うのは難しい。ただ、早川より50円、創元より100円安いというのはひとつのアドバンテージではある。
- どれも、一長一短あるけど、どれかひとつなら地図の価値を最大とみて創元新版をお薦めするかな。
先日、人に「きゅうりのキューちゃん」を知らないと言われて、たいそうびっくりした。
「きゅうりのキューちゃん」と言えば漬物のビッグブランド。あったかいごはんに漬物というシチュエーションでは真っ先に思い出されるもののはず。メーカーの東海漬物の名を知らないということはあるかもしれないが、「きゅうりのキューちゃん出たときは」「ビールがいいな」「熱燗一本!」「ごはん、あったかーい、ごはん」のCMを知らないはずがない。世の中には物を知らない人もいるものだ。そう思っていた。
先程、ふとそれを思い出し、googleってみたところ、「きゅうりのキューちゃん」は800件足らずしかヒットしなかった。
……ひょっとして、きゅうりのキューちゃんってマイナーなのか?
会社帰りの常磐線。僕の座る座席の近くに、3人の女子高生がいた。本を読んだりうつらうつらしている時に、横から聞こえてきた会話を総合すると。
ひとりは眼鏡におさげで、生徒会だか文化祭実行委員会だかにいるらしい。規律正しく、ダメなものはダメとびしっと言うタイプの様子。
ひとりはショートカットの、お洒落好きで元気な子。会話のリードを取っているのはこの子のようだ。ときどき、眼鏡の子にたしなめられたりしている。
ひとりはおっとりした、天然ボケっぽい子。絵を描くのが好きらしい。会話には時折口を挟むくらいだったが、他二人のどちらからも愛されてるっぽい。眼鏡の子がきついツッコミを入れた時に場を和ませる役になっていた。
キャラ配置があまりに見事なので、四コマ漫画かと思ったよ。
- 6月15日
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魚蹴日記から「冒険用具の使い方」という記事を読みに行って、そのままそのサイトを眺めてるんだけど、いまどきのD&Dはすごいことになってますね。
「現代に蘇る!ロードスの勇者たち!」の、初代ロードス・パーティに対する評価はどうだ。標準+1ボーナス装備が当然とでもいうのか。そんな力自慢のプレイは悲しいねえと、少し沈んだが、
パラディン関係の能天気なルールをみて、いきなりほがらかな気分になったのでよし。「Book of Erotic Fantasy」なんてサプリメントがあるという段階で呆然とするわけだが、
20分間恋人と愛を育むと、その後24時間の間魅力に+2(Enhance)される。
なんて技能まであるとは。重ねがけOKなんで、1時間「する」と、+6なんだそうです。3.5版のパラディンは、魅力で戦闘ボーナスが得られるので、こうなるとかなり強いらしい。パラディンが最高の力を発揮するためには、毎日たっぷりしとけと。
謎のルールだ……。