過去の雑記 98年4月上

雑記のトップへ


前回へ

4月 1日
今日もまた、芳林堂に寄り『修道士マロウの地図』を買う。なんか、最近欲しいハードカバーが多くて困るのだ。酒見賢一の新刊とか、文学の冒険の新刊とか。確かに、欲しいハードカバーをそれなりに買うくらいの金はあるんだが、どうせ今年中に引っ越すと思うと、なかなか手が出ないんだな。まあ、そのうち買ってしまうんだろうけど。

問題は、いつ読むか。蔵書リストの未読欄が平成3年から始まっていることを考えるとちょっと気が重い。怖くなって数えるのを止めたけど、未読って、いま、500冊位じゃないだろうか。マガジンも含めると1000冊近いかもしれない。うーむ。

本気で読み終わろうとすると、2年位休職しないと駄目かも(苦笑)。


4月 2日
昨日から、書物の帝国のハイブリッド・シティであった嘘SFというネタについて考えているのだが、どうもイマイチいいアイデアが思いつかない。

とりあえず星新一の「とんでもないやつ」、草上仁の「嘘は罪」、火浦功の「たたかう天気予報」なんてのを思いついては見たものの、どれもかなり小粒だね。既に出ている半村の<嘘部シリーズ>には勝ち目が無いなあ。ミステリならスレッサー当りに傑作がいっぱいあるんだけど、ってミステリはジャンル自体が嘘テーマみたいなもんじゃん。


4月 3日
さあ、セントラル開幕だ。残念ながら、仕事で中継を「聴く」(東京の東端の横浜ファンに中継を見る権利はないのだ)ことはできなかったが、なんと2年目川村の1安打完封で8対0、苦手阪神に圧勝である。不安視され続けたマラベも本塁打含む3打点猛打賞の活躍、波留の代役井上も2安打、守っては名手石井琢朗があわやセンター前の打球を3つもセカンドの右横で押さえる超ファインプレー、文句無しの完璧な勝利にいまから不安が募るばかり(笑)。これだけ出だしが好調だと、5月の声を聞くときには、最下位街道まっしぐらとかになってんじゃないだろうな。
どうも、古葉大洋以来の横浜ファンには信じると言うことが出来なくなっているらしいのであった。

他のカードは、まあ、あんなものか。山本昌広、大野、桑田、石井一久と昨年の各チームのエースが軒並み1イニングに大量失点するという展開。石井一、桑田なんかは通年そんなもんであってくれればいうことないが、山本昌は好きな選手だけにちょっと心配。とにかく、明日からはパシフィックも開幕するし、向こう半年、白熱したゲームを展開してくれることを期待しよう。

と、シーズンが開幕してしまった今、SFファンはやや疎かになりがちなので、あえてSFな話。最近、森下一仁のSFガイドの日記で、展開されている『虚数』をめぐる議論がいい。『虚数』を究極のSFと見る向平さんと、凡作とする森下さんとの論争なんだけど、両者のSFに対する姿勢がよくわかって面白いんだな。で、この話題、僕も少し考えてみた。あ、話題は『虚数』全般に関してではなくて、おもに「GOLEM XIV」についてだからその辺はよろしく。

元の議論の対立軸の一つ目は、SFにおける「思想」と「物語」のバランス。「思想」っていっても、右だとか左だとかじゃなくって、「人類の未来」だとか「知性とは」とか「善とは」っていうようなSF独特の大風呂敷のことですね。コアなSFの面白さの柱がこの「思想」にあるってのは確かだと思う。問題はそれが「物語」にささえられることが必要かどうか。僕は、少なくとも短編なら必要無いと思う。森下さんは形式として物語であることを放棄し、書評、序文、講義録などの形を取ると「思想」がフィクション内部のものとしてではなく生のものとして感じられ、その「嘘」が目立ってしまうというようなことを書いているが、僕には逆に物語の中で「思想」が展開されるほうがリアリティが無く、物語のうちにあると言うことが余分に感じられる。もちろん、SFという形式が物語から始まったのは事実なのだから、ノンフィクションの外見を纏ったこの手の「小説」はSFではない、という意見も一理あるとは思うけど、じゃあ、SFじゃなくてもいいから、この形式で「思想」を語ることが面白いという線は譲れないな。

これはもうひとつの対立軸、内部で展開される「思想」の価値ということに関係する。ここで展開される「思想」は超知性たるGOLEMによる人類批判という形式を取っていて、その内容は「人類論」「文化論」から「進化論」「宇宙論」まで多岐にわたっている。森下さんは、このGOLEMの知性に疑いを持ち、さらに細部の甘さから内容に乗っていけなかったという内容のことを書いてある。それは、確かにそうなんだけど、これはあくまで「小説」なんだよね。いくらGOLEMの言葉が、生のレムの言葉に聞こえたとしても、フィクションである以上、議論の精度ではなく、派手さを目指すのは当然のこと。GOLEMの「知性」だって、まさにその部分が「小説」の仮構の部分なんだから、問題にしてもしょうがないと思う。自意識を持たない、そのことがまさに利点となる知性なんていい着眼だと思うんだけどなあ。
多分、リアリティをどう考えるかがこの本の評価を分けているんだと思うんですよ。森下さんは、物語内部で展開される「思想」ならかなり突飛でも受け入れられるが、書評、序文などの形式を取るときは、生の「思想」として読めてしまうので、厳密なリアリティを要求されるとするんだけど、僕は、どこかでフィクションだと言う仁義を切っている以上、形式が書評だろうが序文だろうがフィクション内部のものなので「思想」に要求されるリアリティはその枠内で十分だと考えるし、下手に物語の中で展開されると「思想」の純粋性が損なわれ、とくに「GOLEM」のウリである、「わかりえないものの理解」の純粋性が失われると思う。多分どんな形式だろうとフィクションはフィクションというわりきりをできるかどうかが、この「小説」を楽しめるかどうかを分けるとみたんだけど、どうだろう。

しかし不思議なのは、みんなが「虚数」の部分を誉めていることだな。
確かに「ネクロヴィル」は面白かったけど、しょせん『完全な真空』の二番煎じだし、平均もトータルも『真空』に劣ってるんだから、評価すべき場所じゃないと思うんだが。うーむ、変なのは僕のほうなのか?


4月 4日
遅い昼飯を食べ、部屋に戻ってラジオをつけると、マラベのヒーローインタビューが聞こえてきた。どうも今日の横浜・阪神はデーゲームだったらしい。痛恨のミスである。聞くところによると、先発・三浦が初回無死満塁のピンチをパウエルをゲッツーに取って1失点でしのいだり、中盤のピンチを関口が桧山を打ち取ってしのいだり、パウエルのホームランが出たり、満を持しての佐々木の登場があったりと言うとんでもなく面白い試合だったようだ。こんなことならちゃんと新聞をチェックしておくべきだったと一瞬思ったが、僕が普段利用しているオンライン産経新聞にはラジオ欄はないんだよな。うーむ。
たとえ、こんな素晴らしい試合でも、巨人が勝ってしまえば、スポーツニュースではほとんど報道されなくなるし、翌日のスポーツ新聞でもまともに取り上げてもらえないんだよな。寮を出てTVKがはいるところに引っ越すことを真剣に考える最近である。

しかし、そんななか、今日の東京中日スポーツの1面は凄かった。いくら、中日がエースで完敗した翌日とはいえ、巨人が石井一久相手に逆転勝ち、しかも「黄金ルーキー」高橋の公式戦初安打なんて話題がある日に、「川村開幕1安打完封」だもんな。さすが読売嫌いの中日新聞。この調子でがんばって欲しいものだ。

元木・ダンカンの二遊間がまたもエラー。一塁・清原、二塁・元木、遊撃・ダンカン、三塁・仁志というのはセントラルでも一、二を争うザル内野だよな。よしよし、この調子でがんばって欲しい。と思ったら清原が好守備。
駄目じゃん。

ほら貝の加藤弘一さんからアドレス変更の通知。無断リンクなんで、こういうことがあるとちょっと恐縮してしまう。とはいえ、「リンクする前にメイルくれ」と書いてない限り無断でリンクするという方針を変える気はないけど。

ふと気になって確認したら3月17日の日記におもいっきり嘘を書いていたことが判明。ミトコンドリアはRNAだけではなく、自分のDNAも持っていました。そーいや、教養の生物でやった気もするなあ。やっぱりこーゆーことを確認もなく書いてはいけないなと反省する日々なのであった。

現代人の精子の数が激減しているらしい。70年代生まれの精子の数は、50年代生まれに比べて6割程度なのだそうだ。まあ、もう少しデータが出てこないと数字までは言えないだろうが、世界規模で精子数の減少がおきているのは確からしいんだな。
このトピックには久しぶりにわくわくさせられた。なんといっても、精子数の減少だ。不妊が原因での人類絶滅である。破滅物のネタで一番現実感の薄かった、「種としての人類の寿命」って奴なのだ。これでわくわくしないのはSFファンとしては駄目でしょう。なんといったってこのままの減少率だと、あと2、30年で妊娠が不可能な精子数になるらしいのである。生きているうちに人類の滅亡を、しかも一番リアリティの無かった形の滅亡を迎えられるかもしれないのだ。やっぱり、核の冬だの温室効果による砂漠化だのなんて面白くも無い最期よりは、こーゆーとんでもない絶滅がいいなあ。番組では、女性ホルモン類似物質による汚染という形でまとめていたけど、そんな公害による絶滅なんていう、つきなみな最期は嫌だね。やっぱり、ここは種としての人類の黄昏といきたいなあ。
すべての哺乳類でほぼ一定といわれる呼吸数と心拍数、それが唯一数倍の値をとる人類。人類は個の寿命の極端な延長と引き換えに、種としての寿命を失ったのでないか…。燃えるシチュエーションじゃないですか。あとは、後継種の育成の為に、迅速なロボット開発と、犬の知性化を目指すしかない。


4月 5日
ハマスタに隆が帰ってきた!

残念ながら放送時間の関係で、ラジオ・テレビで実際に見聞きすることはできなかったのだが、今日の対阪神第3戦、好投野村の後を受け、延長の10回から、あの斎藤隆が横浜スタジアムのマウンドに帰ってきた。内容も、6人をパーフェクトと、完璧な内容。試合も阪神のエラーのおかげとはいえ、ものにし、これで開幕3連勝。考えられる最高のスタートを切った。

本来なら、あとはもうスポーツニュースのはしごをして、翌朝スポーツ新聞を買うだけなのだが、今年はちょっと楽しめない。
平日のスポーツニュースで一番面白かったテレビ東京・スポーツTODAYが無くなり、休日の楽しみだった、フジ・プロ野球ニュースのキャスターが長島<七光り>一茂になってしまったのだ。

スポーツTODAYが休日のみになったのは仕方ないとしても、プロ野球ニュースの一茂起用は納得がいかない。なぜ、いままでの仕事で無能と分かっているキャスターなんぞ起用せねばならんのか。
プロ野球ニュースはプロ野球番組の最高峰だ。プロ野球に割く時間の長さもさる事ながら田尾、豊田、矢沢、関根、大矢といった実力派解説陣を抱えた解説報道はもっとも見ごたえがあった。しかし、そのスタッフの多さは諸刃の剣、司会が下手だと本当に見るに堪えないものになってしまうのだ。
一茂の司会の拙さは見事なまでのもの。あの木佐の最初の頃よりもはるかに下手だ。とてもではないが見ていられない。

ただでさえ、休日のスポーツニュースは酷いのである。なぜか、圧倒的なまでに巨人よりのテレビ東京とテレビ朝日、スポーツ中継が致命的に下手なTBS、それなりにしっかりしているが、いかんせん時間の少ないNHK…。
一茂のせいでプロ野球ニュースが見られなくなると、まともな番組はスポーツうるぐすだけになってしまうのだ。(この番組、巨人御用の日テレのわりにはおもったより公平だったりする。江川の解説者としての実力はかなりのものだ。)フジにはとっとと一茂の首を切って欲しいんだが、今シーズンはこのままなんだろうな、はあ…。

だいたい巨人出身というだけでたいした実績も無いくせにテレビに出てる奴にはろくな奴がいない。長島一茂、岡崎、デブ大久保…、スポーツ選手としての実績も無いくせに、その時の体験だけで食っていこうとすんじゃねーよ、おめーら。
デブ大久保の顔を見るだけで不快になってチャンネルを変えてしまう昨今なのであった。

うーむ、SFじゃない…。


4月 6日
今日はプロ野球の試合も無く、平穏な心でいたら、東洋大「OB」大熊君から、こんなメイルが来ていた。

Subject: もうほとんどラファティというよりベイスターズのファンページですね。

う…、人が気にしていることを…。

いや、前にも書きましたが、企画はあるんすよ。時間と気合が無いだけで。まあ、今のままだとファンページっぽくないのは確かなんで、そのうちなんとかします。
#やっぱり掲示板か?ラファティ関連限定の。 > 誰が書き込むんだ?

TORANU TあNUKIの最新号が届いた。(英樹さん、ありがとうございます。)磯さんの海外SFレビューが無かったのはちょっと残念だが、ニフティのパティオのログ再録が面白かったからまあ良いや。
#ちょっと、ヒキョウな気はするけど。

一番面白かったのがSFMオールタイムベスト関連の話。渡辺兄弟を筆頭に、さすがこの世代のオールタイムベストは一味違いますね。「サンディエゴ・ライトフット・スー」や「還らぬク・メルのバラッド」なんかには特に驚かないけど、「みずうみ」ブラッドベリとか、「慣性」ラッカーなんてのはいいなあ。
ちなみに、僕がSFMのベストに投票したときの内容は以下の通り。今見るとポリシーが無くてちょっとへなちょこなベストですね。
  海外長編               国内長編
1 夢みる宝石             エロス
2 さなぎ                 言壷
3 楽園の泉               声の網
4 宇宙零年               驚愕の曠野
5 ブラッド・ミュージック ツィス
  短編
1 カミロイ人の初等教育   処刑
2 貸金庫                 言葉使い師
3 棺                     佇む人
4 夜のオデッセイ         満員電車
5 ここがウィネトカなら   こちらITT
          君はジュディ
  作家
1 ラファティ             星新一
2 ラッカー               中井紀夫
3 カンデル               谷甲州
4 ウィンダム             梶尾真治
5 スタージョン           山田正紀
いまならラファティの短編は「行間からはみだすものを読め」、R・リードの「棺」をはずして、「わが内なる廃虚の断章」を5位くらいにいれるかな?

「すごいよマサルさん」の後番があさりよしとお言うところの”実用”アニメなんでちょっと悲しい(胸じゃなくてパンツだが)。『幕張』とか『大ロバ』とか、いっそのこと『キムタク』とかいろいろ手はあったと思うんだがなあ。


4月 9日
久しぶりに古書ワタナベによるとSFマガジンの71年〜72年あたりが置いてあった。(まさに紙袋にほうり込んで置いてあったのである。)
この山の中から、ここ数年探していたSFマガジン71年6月号を発見。早速買うことにする。単に欠けだっただけで内容は別に特筆するほどではないんだけど、<大型新人>荒巻義雄の「緑の太陽」の掲載やスペース・シャトル「開発」の話など時代を感じさせる話題が、なんとも嬉しい。そりゃ、生まれる前の号だからなあ。
ついでに、カウンターの『サンディエゴ・ライトフット・スー』を値段を見ずに買いますといったら、3500円だって…。いや、いいんだけどね。それくらいの価値はないではないとおもわんでもないから。

たまたま見た巨人・広島戦で大爆笑。広島わずかに1点リードの6回表、二死満塁の緊迫した場面で、入来が牽制悪送球、三塁ランナー正田楽々ホームへ、つづいて二塁ランナー江藤もホーム突入、ファーストをフォローしたライト高橋がバックホーム、これが悪送球!なんと、最初の牽制でスライディングで帰塁していた一塁ランナー金本まで生還!3失点のタイムリーエラーなんてそうそうお目にかかれるものではない。
なんで絶対を要求される二死満塁なんて場面で、牽制死狙いなんて無謀なことをするんだ?さすが長嶋…。やっぱり巨人の監督はあいつじゃないとペナントが成立しないよな。巨人が強くなりすぎて…。


4月10日
やったあぁぁぁぁぁぁ!
会社で見たときには(あ、インターネットの速報ね)ガルベスに完璧に押え込まれてた上に、川村がいつものように一発を(2発だけど)浴びての0対3、明らかな負けペースに、半ば諦めていたのに、寮のテレビを点けたら、4対3と逆転して、9回表を迎えようとしてるじゃないですか。
これで勝ったも同然と、安心して見ていたら満を持して登場の佐々木が二死から石井にぶつけて危険球退場!もう、頭の中は悪い想像だけがぐるんぐるん渦巻いている中、杉山の代打で出てきたのが、なんとダンカン!
なんで、こいつがまだ出てくるんだと、巨人の選手層の厚さを怨みながら、祈る気持ちで見ている急遽リリーフの島田の調子がこれまた今一つ。
ダンカンが甘目のストレートに詰まってくれたときには思わず歓喜の声をあげてしまいましたよ、ぼかあ。

これで、4勝1敗。ヤクルト相手にまずい負け方をして2試合雨で流された後の逆転勝利で、こんなに重要な一勝はないっす。このカードはなんとか2勝1敗くらいで乗り切れそうだし、この調子なら4月で貯金7〜8くらいってのも夢じゃなさそう。このまま調子を維持して食らいついていって、9月くらいまではペナントの夢を見せて欲しいもんです。

SF?いいよ、そんなもんどうだって。


次回へ


このページのトップへ