過去の雑記 98年12月

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12月21日
ハラルト・シュティンプケ『鼻行類』(博品社)を読了。再読だと思い込んでいたのだが、記憶に無い部分が非常に多かった。
さすがに、ダンボハナアルキやジェットハナアルキなどの大ネタは覚えていたが、ツツハナアルキ科(鼻水で釣りをしたり、地面に逆立ちで固着しているハナアルキ)の大部分や、タダハナアルキ科(全長数ミリで内臓の大半が退化している地中生活をするハナアルキ)の生物については全く覚えていなかったので実に新鮮な驚きを感じることが出来た。ああ、やっぱり一家に1冊は欲しい本ですね。
気になるのは、もっとも印象に残り折りに触れて頭の中でこだましていたフレーズ、「シェムトクヴィストナゾベーム」が索引中にしか登場しなかったこと。中の図版などによるとモルゲンシュテルン オオナゾベームの別名、または亜種の名前らしいんだけど、なんでこんなフレーズが10年近くも頭の中に残っていたんだろう。思索社版ではもっと大々的に取り上げられていたんだろうか。謎だ。


12月22日
「第3次スーパーロボット大戦」をプレーしているうちに時が過ぎ去り、漫然と「われめでポン」を見ている自分に気づいたりする。ただ麻雀をしてるだけなのに、森本レオの声はカッコ良いなあ。


12月23日
久しぶりに立ち寄った書泉西葛西で『となりあわせの灰と青春』を見つけ、懐かしさのあまり手に取ってしまう。が、あとがきの駄目さに耐えられず、すぐさま棚に返却。
いくらなんでも、最高のWizardryがファミコン版だなんて言う奴は信用できないでしょう。Wizの醍醐味はシンプルであるがゆえに想像力を掻き立てるワイヤーフレームのダンジョン、プログラマーが訳したとしか思えない拙さが微笑を誘う日本語、敵に出会うたびに起こるファイルアクセスによる緊張感、そしてなんといってもタイプミスが死を招くトラップ解除のスリルだよ。
"POISON NEEDL"まで打ち込んだところでReturnを押してしまったときの悲しみもわからない奴にWizを語って欲しくないよな。 < いやなマニアの典型である。

ついでにアシモフ『ロボットと帝国』と宮脇孝雄『煮たり焼いたり炒めたり』を購入。どちらも、ハヤカワ文庫の挟み込み広告が欲しいという理由だけで買ったもの。これの収集をやめればもう少し未読が減るんだよな。

まあ、買ってしまったものは仕方が無いので『煮たり焼いたり炒めたり』を読了。中身は、著者が海外の料理本で見つけた料理を日本風にアレンジして紹介するもの。料理のレシピを大半読み飛ばしたので、あまりちゃんと読めてはいないが、エッセイ部分はかなり楽しめた。ただ、マクラの語りとレシピ紹介がうまく繋がっていない回が多いのは気になるところ。文庫だから納得できたけどハードカバーなら腹が立つだろうな。
しかし、料理する暇があるならとっとと『エヂプト』を出して欲しいところではある。 > 宮脇孝雄


12月24日
仕事が最悪の予想よりは順調に進んだので午後8時頃に切り上げ、高田馬場芳林堂へ。クラフトエヴィング商會の新刊を探しに行ったのだが発見できず。竹本泉『てきぱきワーキン・ラヴ』3巻を買ってかえる。
帰りの電車で『てきぱき』を読了。悪くはないけど、『トゥインクルスターのんのんじー』『乙女アトラス』なんかの世界観や『アップルパラダイス』の変さ加減に比べると「軽い」という印象が否めない。
竹本泉ならもう少し突き抜けたところで勝負して欲しいね。

「近代麻雀ゴールド」の一條裕子の連載を立ち読み。あいかわらずいい味を出してるなあ。


12月25日
<異形コレクション>『屍者の行進』を読了。
どうしようもない作品も多くなってきてはいるが、トップレベルも上がっおり、全体としてはまあまあの出来。テーマについても、頑ななまでに忠実に守る作家と、敢えて外してくる作家が適度に混在しうまくまとまっているように感じる(屍者ではなく死者を描く作品が多すぎた嫌いはあるが)。
ただ、底辺のレベルが低くなりすぎているというのはあるかもしれない。隔月で20数作を供給し続けるというのはかなり無理があるのでは、という感は強い。季刊程度にペースを落としてもいいのではないだろうか。
個々の収録作では、七五調を基調とした文体が気持ち良い加門の「虫すだく」がベスト。かんべ「壁、乗り越えて」の執拗な語り口や、北野「肉食」の敢えて弛緩させた語り口も面白かった。甘く見て3分の1が良、3分の1が可、3分の一が不可といったところだろう。もう少し没を増やし、2割ほどシェイプアップすれば素晴らしいアンソロジーになるだろう。

会社の忘年会をすり抜けて神保町へ。なんとかクラフトエヴィング商會『すぐそこの遠い場所』(晶文社)を発見し購入する。ついでに第2期奇想天外を3冊ほど購入したが、これはまあおまけだ。

西葛西で、SFマガジン99年2月号をチェックする。
SFマガジン読者賞と予想が外れたいいわけは以下の通り。

海外
  1. イーガン「ワンの絨毯」(1月号)
  2. ニーヴン<ドラコ亭夜話>(7月号)
  3. スターリング「自転車修理人」(3月号)
  4. ビッスン「穴のなかの穴」(1月号)
  5. ライバー「バケツ一杯の空気」(1月号)

予想 スターリング「自転車修理人」(3月号)
にも書いたが一位のイーガンには驚いた。彼らしい過剰に知的な話の上、「ぼく」系短編のような「いい話」性も低いというのにここまで票を集めるとは。個人的には今年度ベスト5クラスの作品だけど、ランキングには入らないだろうなと思ってましたよ。うーむ、マガジン読者の平均も侮りがたいな。
一位には驚いたけど、他はまあ予想通りか、予想外に佳作が評価されたというものなので、ベストとしてはかなり好感が持てる内容になっている。特に、ビッスンがランクインしたのは非常に嬉しいところ。これで次作掲載の可能性も高まったかな。

国内
  1. 小林「海を見る人」(2月号)
  2. 神林<新・雪風>(連作・99年2月号完結)
  3. 山田「星砂、果つる汀に」(2月号〜連載中)
  4. 小林「脈打つ壁」(9月号)
  5. 藤田「ファントムの左手」(11月号)
  6. 高野「ラー」(2月号)

予想 菅「ラヴソング」(7月号)
<博物館惑星>こそ想像より弱かったものの、今年の最高傑作と評価し、対抗と見ていた「海を見る人」が受賞し、どうせ上位だろうと思っていた神林・山田の両連載が上位に来るなど、こちらの上位はほぼ予想通り。4、5位も入ったと聞かされればふーんといえる程度には納得がいくラインナップだ。これで良いなら来年はもう少し精度よく予想が出来そうだ。

イラストの受賞は田中光。予想は加藤&後藤だったのでこれはおおはずれ。読者賞の最初の頃とは客層が変わってきているのかな。まあ、この賞はいまいち存在意義がわからないんでどうでもいいや。

結局、今年も全敗ながらも、かなり近くなってきた。読者層が大きく変わらないのなら、来年はもう少し近づけそうだ。


12月26日
本来は今日帰省する予定だったのだが、雑記を更新していたら遅くなってしまったのでもう一日延ばすことにする。その代わり、早朝の新幹線に乗る必要が出てきたため、徹夜をすることに。なんか致命的に間抜けなことをしているような気がしなくも無い。
まあとりあえず時間だけはできたので近藤雅樹『ぐうたらテクノロジー』(河出書房新社)を読了。明治・大正期の特許を紹介しただけといえばだけだが、この手の本にしてはわりと楽しめた。紹介される特許が、あるストーリーの元に並べられているのが功を奏しているようだ。漫然としたものになりがちな連載コラムも、ちゃんと考えれば体系的にまとめられるという好例。

SFマガジンのえとせとら欄でAmeqリストが完成したことを知り、早速見に行く。いつのまにか、かなり網羅的にチェックされたリストが完成していてびっくり。トップページの重さも解消されているし、これなら実用リストとして申し分あるまい。ああ、しかしうちのリストの存在意義がまた減ったなあ。


12月27日
というわけで法事があるので朝早い新幹線で名古屋へ。法事なんて面倒なだけなのでできうる限り避けたいのだが、祖母さんの一周忌では、さぼるわけにもいくまい。そりゃ、三十三回忌とかなら忘れたことにするけどさ。
まあでも今回の法事は坊さんが珍しく能弁だったので結構楽しかった。曹洞宗の由来なんぞには興味はないが、近所の歴史となると話は別。江戸時代に熱田新田として成立してから、その寺が出来るまでの話を堪能してしまった。そうか、あの道は堤防だったのか。

とはいえ、さすがに親戚一同揃っての会食というのはたるいだけなので、途中でぬけて名大SF研の部室へ。浅井R(10)と合流し、野呂(17)が何やら作業しているのを横目で見ながら、いつまでも浅井Rを相手にモン・コレ「聖都の決闘者」をやり続ける。初心者にゲームを教えるという目的に特化したデックだとして無理矢理自分を納得させるが、やはりロクに対抗カードも入ってないデックというのは違和感があるなあ。
10数回プレイして、はじめて負けた(注:浅井Rは今日はじめてモン・コレをプレイしたのだ)ところでゲームを止めたがちょうど終電が出たところだったり。久しぶりに部室に泊まる…、って同じ過ちを帰省の度に繰り返しているような気がするが気のせいか?とりあえず、視界内にいた野呂と浅井Rは巻き添えだ。

野呂がやっていた作業はT-CONクイズ用の問題らしい。有利不利が発生してしまうとまずいので詳細は伏せるが、そんなもん分かるわけが無かろうという問題ばかりで、かなり良い感じだ。これで、去年の僕の問題より正答率が高かったら大笑いだな。

その後は、浅井Rが「エヴァと愉快な仲間たち」をプレイするのを眺めたり、突然現れた小野(14)の濃いネタを受け流したり、野呂の辛辣な言葉を聞いたりしているうちに、朝になったので帰宅。春から注目していた野呂のキャラクターがどんどん先鋭化してきているのは実に喜ばしい。


12月29日
目が覚めるとBSで旧「サイボーグ009」の映画版をやっていた。009だけが活躍し、002、004といった魅力的な脇役がまったく活かされてないというのは時代と対象年齢を考えれば仕方が無いところか。00メンバーでまともに画面に出るのが、女の子の表象としての003と、子供としての自分の投影である007だけというのもいかにもという感がある。ノスタルジアの対象としては価値があるが、大人になった今見て評価が可能な代物ではない。

009が終わったあたりで再び睡魔が襲ってきたので、寝る。目が覚めると夕方だった。とてもじゃないが、昨日一日寝ていたとは思えない。
一日潰れてしまったものは仕方が無いので、ちょうどやっていた「カードキャプターさくら」を鑑賞。ごくまっとうに作ってあるのは好感が持てる。まあ人気があるのも理解できるな。


12月30日
目が覚めるとBSで「サイボーグ009」の映画版をやっていた。これがまた、昨日の映画より遥かに酷い出来なので言葉を失う。画そのものは丁寧に書いてあるのに、致命的に脚本が腐っているのでとてもじゃないが見ていられない。ストーリーがどうしようもない(中盤の惑星のエピソードは必要無いだろう。もっと、大筋の話に密着したエピソードにすべきだ。)のもそうだが、00ナンバー達が宇宙の平和を守るという設定がそもそも駄目。00ナンバーの能力は等身大の戦場で最も映えるのに、広大な宇宙空間に抛り込むとはなんて無謀な。一人乗り戦闘ポッドで闘う002や008を見たときには涙が出てきましたよ、ぼかあ。
004が自爆するエピソードはちょっと良かったけど、オチがあれじゃあすべて台無し。アニメ映画ワースト10の8位くらいにはランクできそうだ。

脱力の映画を見終わった後、とりあえず本屋の巡回に向う。映画のおかげで、前向きに生きる力を失ってはいるが、年明けまでに東京に戻ろうとすると、本屋のチェックをできるのは今日くらいしかないのだから仕方が無い。
古本屋10軒をまわっての収穫は残念ながら0。そのかわり、パルコで中古CDの即売会があったので3枚ほど買い、ついでにTOWER RECORDで2枚ほど買い込む。ああ、今月はCDを買う気は無かったんだが。だいたい、今更「Gift for Funks」なんか買って、どうしようというのだ。 < おれ
いい加減資金が乏しくなってから立ち寄ったパルコブックセンターで、『カチアートを追跡して II』を発見する。下だけ見つかってもなあ。とりあえず、購入は保留。どこかでIが見つかったら、誰かに頼んで買っといてもらおう。

とりあえず縁起物なので名大SF研の部室に寄る。なんと、今日は野呂(17)がいなかった。その場にいた堀川(12)や山川(15)から名大SF研内での最近の流行について聞きながらだらだらとした時を過ごす。しかし、嫌われている奴が良いといっただけで、その作品を否定するようなコンセンサスが出来上がるというのは、集団として病んでいないか?

修士課程になってから会に入ったという変わり者の中池君(17)が現われ「鮫・鮫・鮫」のイージーモードノーミスクリアを達成したあたりで、終電間近になったので帰宅。さすがに社会人ともなると同じミスを2度は繰り返さないのだ。
#3日以内には、ね。


12月31日
昼過ぎに名古屋を出て東京に戻る。風邪気味で無理をする気にならなかったので、山本屋の味噌煮込みは食い損ねた。
帰りの電車の中で、MILKSOFT144号の改訂版をチェックする。なんだか、電波が飛びまくっている誌面だな。ただ読みにくいだけのような気もするが、これはこれで面白いかも。

戻ってみると、東洋大OB大熊君が生命を削って作った「ハヤカワ文庫SF年鑑'95-'97」が届いていた。前号(年鑑'93)の形式を踏襲した立派な出来。掲載書籍の中に、すでに目録落ちが出始めているのは悲しい話ではあるが、このリストを頼りにサルベージする本を決めたりするには最適だろう。
編集後記で僕の名前が挙がっていることだけが謎だな。

などと考えている間も無く風邪の症状が悪化。休みの間にあれもやろう、これもやろうと思い描いていた更新計画は画餅に終わる可能性が高くなってきた。とりあえず、スーロボでもやろう。


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