過去の雑記 99年 2月上

雑記のトップへ

前回へ
2月 1日
昼休みに「宇宙船」を眺める。次の戦隊は救急戦隊ゴーゴーファイブだそうな。絶対何かの冗談だとは思うが。

歩書房で『殺意を秘めた天使』日本代表ミステリー選集8(角川文庫)を購入。昨日、「星新一の世界」と『ショートショート1001』をクロスチェックした時に収録先がわからなかった「七人の犯罪者」の内容をチェックするためである。その結果、まちがいなく何かで読んでいることを確信。再度『ショートショート1001』にあたってみると、昨日はチェックしなかった欄に『かぼちゃの馬車』に収録と書かれていることがわかった。なるほど、七は「ひち」ではなく「しち」と読むのだな(笑)。
しかし我ながら記憶力が落ちたものだ。昔はこの辺の収録作ならタイトルを聞いただけでストーリーと収録書名くらいは出てきたはずなのに(一部嘘)。
やっとso-netのIDを再発見したのでSF Onlineの短篇をダウンロードする。ダウンロードをしたのは、大原まり子「Je te veux」と西澤保彦。印刷するタイミングを逸したので読むのはまた後ほど。



2月 2日
コンビニで、ピカチュウのお面が入った節分セットを見つける。やっぱり「ピカチュウは外」と言って豆をぶつけるんだろうか。


2月 3日
夜中にふと目が醒めたので何気なくテレビをつけると、「バブルガム・クライシス」をやっていた。あいかわらず動きには難があるが、それなりに見ていられた。来週は見ないけど。
勢いで「火魅子伝」も見る。オープニングから5分で「そーゆー話ね」と納得してしまった。実際のところはどうだか知らないが、見かけのあざとさだけで耐えられ無いものが。これは二度と見ない。


2月 4日
先日はああ書いたが、森下ページのベスト投票中間結果を見て方針変更。『スノウ・クラッシュ』の配点を若干下げることにする。確かに、他人の評価を見て自分の評価が変わるというのもおかしな話だが、ほっといても1位になるような作品に大きく配点する気にはどうしてもなれない。

リンダ・ナガタ『極微機械ボーア・メイカー』読了。配点する気にはなれなかった。
フリークスがあふれるスンダ自治領、虚空に浮かぶ人工の自然・夏別荘社、無敵のナノマシン、ボーア・メイカーなど面白いネタはあり、ニッコー、リアンダー、カースティンなど面白いキャラもいるのだが、どうも上手く活かしきれていない。本来ならSF的迫力が直に伝わってきても良さそうなものなのに、不幸な少女の解放の物語としてしか読めないあたりSFとしては不合格だな、
って、それは言い過ぎにしても、ナノマシンがあまりに万能でつまらなかったのは事実。個人の幸せと自然環境を秤にかけるというテーマも魅力的ではあるが十分に消化しきれているとは思えなかった。眼高手低はデビュー作だから仕方が無いと諦め、次作に期待というのが正しい態度かなあ。
いや、無敵の悪役カースティン・アデア女史はちょっと気に入ったんですけどね。


2月 5日
名大OB-MLでやねこんがもうすぐ定員という話を聞いたので早速申し込み。2月2日時点で定員まであと100人前後ということだから、間に合ったとは思うが。しかし予定外(3月or4月に申し込むつもりだった)の出費で今月は急に苦しくなってしまった。ただでさえ、1本15750円(税込み)のショートショートを2本も買ったというのに。

大森掲示板で、ヴォネガットの短編に関する質問があったのでフォロー…してから、直前に回答が書き込まれいることに気づく。おおぼけである。しかも短編のタイトル間違えるし。そうです。「バーンスタイン効果」ではなく「バーンハウス効果」です。あまつさえ「この場合は「バーンハウス効果」『モンキー・ハウスへようこそ』ではなく、「武器なき世界」『時間と空間の冒険』ではないか」という突っ込みまで入ったり、散々(笑)。やはり調べもせずに脊髄反射でフォローを入れているようではいけないね。

安い予算で荒んだ心を癒すにはこれしかない。というわけで、ハヤカワ文庫解説目録99年1月をチェックして目録落ちを探す。が、なんと今回の目録落ちはバーンズ『軌道通信』ただ1冊であることが判明。(いや、ローダンが少し落ちてるんですけど。)どうした早川!まさか、SFが売れてるなんてこたあ…。そんなことはないか。


2月 6日
夕方からユタ。今回の目的は星新一『ショートショート1001』を自慢することだったので、人の話はあまりちゃんと聴いていない。 < おい
いや、そんなこたあ無いですが。他では、「リング2」&「死国」の話と、最近のSFMのコラム批評、カイメングリーンなんかが印象に残ったかな。ちなみに、参加者は藤元直樹、小浜徹也、林、高橋良平、大森望、三村美衣、雑破業(到着順、敬称略)。最近は夕方若者が来ないなあ。

8時前にユタを出て六本木へ。東洋大SF研OB大熊君と合流し、「彼の案内で」PARANOIA CAFEというバーに向かう。PARANOIA CAFEは全身で「キッチュでしょ」と言っているような悪趣味な装飾の店だったが、垂れ流しビデオが「マーズ・アタック」というだけですべてを許す気になってしまった。そうなると、狙いすぎのメニューも、いやさ中にプラスチックの目玉が浮いているカクテルすら愛らしく思えてくるから不思議だ。でも、あのクリスピーな(婉曲的表現)ピザで1000円以上とる勇気はちょっと愛せない。

店を出てから、映画館前で東洋大SF研の方々と合流。先日のファンタ以来楽しみにしていた「キラー・コンドーム」を見る。
ニューヨーク市警の辣腕刑事ルイージ・マカロニは、ラブホテルの一室で連続して起きたペニス切断事件を追ううちに衝撃の事実に遭遇する。犯人は、娼婦達ではなく、その部屋に置いてあったコンドームだったのだ。自らも、そのコンドームの犠牲となりかかった彼は、娼婦の釈放とコンドームの捜査を提唱するが、同僚は誰も信じてくれない。仕方なく孤独な捜査に乗り出すルイージ。捜査が暗礁に乗り上げる頃、被害はラブホテルの外にまで拡大し始めた。そして、ついにルイージの自室にまでもコンドームの魔の手は迫る。昔の恋人バベット=ボブの協力で危機を脱したルイージは、ついに犯人がコンドームであることを市警当局に認めさせるが、この頃から事態は意外な方向に進み始める…。
いや、ユタを出るときには「アルバトロス配給の映画を金払ってみるとは」なんて言われてしまいましたが、面白いよこれ。地口、パロディ、シチェーションコメディ、ナンセンスギャグ、スラップスティック。およそ思いつく限りの笑いの要素を取り込み、それでいて品の無い笑い声を一切入れないそのストイックな作りは見事の一言。個々の場面は完全にギャグなのに、全体はハードボイルドを貫いてしまうあたりにセンスの良さが滲み出ている。若干長すぎるきらいはあるものの、金を払った価値は十分にある映画だった。ただ、一人で見に行くのはつらいかもしれない。

その後、Book 1stの最上階の怪しげなバーで始発まで飲み、あまつさえ池袋の喫茶店で8時までだべる。若者相手にどんな嘘を付いたかはもうおぼえちゃいないが、かなりいいかげんなことを言っていたような。
この後ワンフェスに行くというつわものたちを見送りながら西葛西に戻り、寝る。


2月 7日
昨日、大熊君経由で頂いたASOV 19号「FASOV 3rd」を読む。齋藤君編集の号では、いや、ここ数年見たコピー誌の中では最高の出来。ヘッダ、フッタを上手く使い煩くならない範囲で統一感を与える手腕もなかなかのものだが、特筆すべきは文字と空白と絵のバランス。一つの原稿は必ず見開きに収めるという単調になりかねない誌面に、絵の配置を変えることでアクセントを加えたり、右上隅と配置が固定されているタイトルロールを空白の入れ方を工夫することでバラエティ豊かに見せたりする技術はMILKSOFTでも見習って欲しいものだ。これだけの人材が編集するという「ハヤカワ文庫SF年鑑98」やオフセット予定の「ASOV 20号」はさぞや素晴らしいものになることだろう。期待大である。

Hybrid Cityで星新一『声の網』が絶版になっているという話を知り、早速手持ちの目録を幾つかチェックしてみる。確かに、角川・講談社とも目録から消えているようだ。しかし、あらためて目録を眺めてみると星新一も意外と消えている。小松左京が全滅状態になったことは知ってはいたが、星・筒井は大丈夫、などとたかをくくっていたら、このような事になっているとは。
星の文庫では以下のものが98年4月時点の目録から落ちている。
(太字は直ちに手に入れることを薦めるもの。)
新潮文庫:ほ-4-17『明治・父・アメリカ』(伝記)、19『きまぐれ暦』(エッセイ集)、30『できそこない博物館』(創作メモ)、41・42『きまぐれフレンドシップ』(書評集)、49『きまぐれ遊歩道』(エッセイ集?未確認)

角川文庫:『人民は弱し 官吏は強し』(伝記)、『きまぐれ博物誌・続』(エッセイ集)、『声の網』(連作長篇)、『きまぐれ体験紀行』(旅行記)、『きまぐれエトセトラ』(エッセイ集)

講談社文庫(ただし97年7月):『おみそれ社会』(作品集)、『声の網』(連作長篇)、『なりそこない王子』(作品集)、『ごたごた気流』(作品集)、『きまぐれ体験紀行』(旅行記)

他では早川書房、集英社、徳間書店などからも文庫が数点刊行されていたが、これらも残っていない。

新潮・角川以外の文庫の目録落ちは新潮、角川に取り込まれた結果なので問題はないが、新潮・角川の目録落ちはやや寂しいものがある。ほとんどはエッセイ集などで創作は2作しかないのが救いといえば救いだが、なぜよりにもよって傑作『声の網』を落とすかな。 > 角川
新潮にはただちに『声の網』を再刊していただきたい。

しかし、これを調べていて気づいたんすけど、新潮の目録って、短編タイトルから引けるんすね。すげえ便利。早川・創元にも見習って欲しいものである。


2月 8日
『レッド・マーズ』を早く読み終わらなければと気は焦りながらも、<異形コレクション>『月の物語』読了。今回、底辺のレベルは普段より高かったが、トップ集団が少なかったという印象が強い。
中では、喪われた未来へのオマージュ北野勇作「シズカの海」が収穫。ある有名な都市伝説を用いながら、ありえたはずの未来への鎮魂曲を謳いあげている。そりゃまあ、僕には大阪万博的未来なんざ思い入れはないんだけどさ。

ところで。「山陰の言葉が織りなす独特のムード」と「月はオレンジ色」の解題にあるのだが…。富山って、普通北陸と言わないか?


2月 9日
週刊ベースボールの2/22号を購入。今週は言わずと知れた名鑑号である。眺めているだけで無限に時が潰れていきそうだ。
しかし、あらためてみてみると中日の投手陣は凄まじい。野口、川上、武田、門倉、山本昌、今中、サムソンと順調に行けば一枚余る先発陣に、落合、前田、正津、中山、日笠、島崎と1・2枚駄目でもどうにでもなる中継ぎ陣、そして抑えの宣と、昨年の疲労さえなんとかなれば防御率2点台も夢ではないという陣容だ。これで万が一、福留が期待通りだったりした日にゃ、とてもじゃないが、勝てるチームは無いんじゃないかという世界。まあ、中日だから、結局半分は使い物にならなくて5位になるんじゃないかという気もするけど、そうなると読売が優勝してしまうんでせいぜい頑張っていただこう。
というわけで、今年は中日の行方に注目だ。

え、横浜?オフの選手のはしゃぎ方を見ていると、とてもじゃないが勝てるとは思えないんだもん。応援はするけど、最高でAクラス確保ってとこじゃない?


2月10日
なにやら平台に文庫SFが並んでいると思ったら、早川の春のSFフェアらしい。ラインナップは特にどうということはない。ただ、フェア対象作品の全リストがどこにも無いのは気になった。フェア作品リストを書いた挟み込みビラくらい入れればいいのに。

3月の文庫新刊予定を眺めているとティプトリーの文字が。ああ、そうですか。そういう路線で来ますか。

ティプトリーって言うと、最初に読んだのが「たったひとつの冴えたやりかた」で、そのあまりのあざとさにしばらく毛嫌いしていた時期があった。結局、『愛はさだめ、さだめは死』と『故郷から10000光年』を読んで、愛すべき作家の一人と判断を変えたのだが、「たったひとつ…」だけはなぜ評価されるのかがわからない。
「たったひとつ…」が、見事に計算された泣かせになっていることは認めよう。エピソード配置もほぼ完璧。寄生型エイリアンのジェンダーを女性に設定する、犠牲者を同性愛に耽る姿で描くなど、挑発的な設定を入れ込みながらも、それを感じさせないほどの圧倒的な「いい話」で覆ってはいる。コーティの暴虐的なまでのけなげさの前にはどんな分析的な読みも無意味だって言うくらいにみごとな泣かせだ。
しかし、そのみごとさが逆に鼻につく。全体のあまりの完璧さの中にティプトリーの冷徹な知性が感じられるのだ。その匂いを嗅ぎ取った瞬間、こちらはすっかり醒めてしまう。なんで、みんなこんなんで泣けるんだろう。

笑いながら書かれた喜劇と、冷静に書かれた悲劇は「面白くは」ないと思うんだけどなあ。


次回へ

このページのトップへ