過去の雑記 99年 7月

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7月11日
野田さんのお誘いに甘えて有楽町マリオンへSW#1を見に行く。僕以外は、柴野賞受賞ファンであらせられる阿部さんをはじめ、野田令子さん、三橋さん、森太郎さんと全員お茶大の方々。うーむ、なんか場違いかも。
1時半からの回を見るため11時に行ったのだが、会場は思いのほか空いており、やや拍子抜け。映画が始まる寸前でも、立ち見が出るか出ないかというところで、とてもじゃないがTVで狂騒的な大宣伝をかけている作品とは思えない。大丈夫かルーカス・フィルム。
映画の中身の方は、なんというか「なるほど」という印象。賛否両論色々聞いていたので、どんなもんかと思っていたら、その「賛否」がどちらも納得いってしまうという内容なのであった。
とりあえず貶す方から行くと、ストーリーが激甘。SW#4だって大差無いという声はあるかもしれないが、あれはまだ構成がちゃんとしていたんで安心して見ることができた。しかし、こちらはそれがなってないんだから、つらすぎる。バレバレの仕掛けを明かす場面も早すぎるし、クライマックスの位置も前すぎる。おかげで、エピローグが無駄に長くなってしまっている。これでは得られるはずのカタルシスもどこかに行ってしまう。おざなりな場面転換も含め、もう少しちゃんとやってほしいという思いは否定しがたい。
だが、個々のシーンは素晴らしい。確かに「CGだよなあ」と醒める場面もあるが、醒めた瞬間に次の幻想を投入する力任せの迫力は、さすがルーカス。話題のチキチキマシーン猛レースやETIが乱舞する評議会、バトルドロイドの大行進など「金かけりゃ勝ちだ」と言わんばかりのシーンの連続にはさすがに圧倒された。もちろん、R2D2&C3POの主人公コンビも健在で細かなくすぐりも出来ることを見せつけてくれる。この辺は、その為だけに金を払っても惜しくはないと思わせるだけの力がある。
そんなこんなで否定する立場も肯定する立場もわかってしまうのであった。とりあえず、僕の立場は肯定派ということにしておこう。たとえどんなに盛り上がらなくても、C3POのヌードがおがめただけでそれで良しだ。

遅い昼食を摂った後、山本正之のコンサートを見るため、阿部さん、三橋さんとわかれて新宿へ。あ、昼食時に話題となった吸血鬼の話は、『ようこそ地球さん』ではなく、『ちぐはぐな部品』(角川文庫)収録の「抑制心」でした。いいかげんなことを言って申し訳ないっす。> その場にいた皆様。

まあ、そんなこんなで山本正之コンサート「大王降臨」である。冒頭のメドレーでいきなりピンク・ピッギーズが出てきたときにはさすがに驚いた。しまった、右側席の方が良かったか。
テーマが「Last Ritual」ということで、実にさまざまな儀式が「最後」として行われていく。「缶開け」「ひれ伏し」「拝み」「ライトマン」e.t.c.、本当に次回以降行われないとは思えないんだが、なにやら「区切り」という印象の強いコンサートだった。
その「区切り」感が最も強く出ていたのが、長篇少年ドラマシリーズの新曲「サスクハナ号の曳航2」。歌うことの意義を考え直すという内容で、父の死について語る前作にも増して、リアルな内容になっている。昨年のコンサートでは、迷いのようなものも窺わせていたが、ついに吹っ切れたということなのだろう。
これで一つの区切りはついた。次回以降はどのように展開していくのだろう。
#まったく変わんなかったりして。

帰宅後、楽しみにしていたネタバレSW早分かりを読む。爆笑。そのまんまだよ、これ。
でもなんで、そうまでみんなグンガンを嫌うか。鬱陶しさだけならイォークとそんなに変わんないじゃん。

7月12日
先日はひどいことを書いたが、Web上での追悼記事の嵐を見るうちに光瀬龍が大作家だったんだ、という意識が沸き上がってくる。そうかあ、チャンピオンに連載されていた『ロン先生の虫眼鏡』の原作だけの人じゃなかったんだなあ。
でもだからと言って『百億千億』を読み始めたりはしないけど。

7月13日
Ameqさんに、お預かりしていたファンジン大賞エディトリアル部門の賞状と副賞をお渡しするため、待ち合わせ場所の新宿へ。
20年前のファンダムの話に、NIFの創作フォーラムの話。ミステリの名作の話に、名作ゲームの話。海外から質問が来て困った話など、さまざまなお話を伺うことが出来た。いや、勉強になりました。これだけでもありがたいのに、あまつさえ全額おごって頂いてしまったり。いやはや本当にありがとうございました。
しかし、まさかこの場で「To Heart」を薦められるとは。そこまでは予想できなかったな。

7月14日
草上仁『東京開化えれきのからくり』(ハヤカワ文庫JA)と柴田よしき『ゆび』(祥伝社文庫)を購入。前者は実はまだ買ってなかったのだな。中身はSFM連載時に読んでいるので、もう一度読むかどうかは不明だが、草上仁復活キャンペーンの一環として買ってみた。帯の「軽妙洒脱」という言葉がぴったりのスチームパンク。唐沢なをきのイラストもたっぷり入ってお得なので、みんな買うように。
しかしなあ。こういう内容の本こそ、丁寧な造本のハードカバーで読みたいんだが。

荒俣宏『ホラー小説講義』(角川書店)読了。なんか全体に論の立てかたが余りに胡散臭いんで信用する気にならない。絵について語っているのにその図版が用意されてないとか、書誌情報が思い出したときにしか載っていないとか、使い勝手も悪いし。ホラーネイティヴの人がどのように評価しているかが気になるところだ。
カラーページの図版だけは本当に素晴らしいんだけどね。

夜中に腹が減ったので、近所のコンビニをまわってペプシを探す。
ちっ!さすがに売り切れたか。

7月15日
昼飯に、近所の立ち食い蕎麦屋で「冷やしキムチラーメン」を食べてみる。大失敗。
普通の冷やしラーメンにキムチが載ったものを想像していたのが甘かった。スープ(たれという方が近いか)もちゃんと唐辛子ベースで作ってあるため、非常識なほど辛い。それも、マスタード系の突き抜ける辛さではなく、唐辛子独特のじわじわと締め付けるような辛さなもんだから本当に始末に悪い。麺にたっぷりと絡んだそのスープがどれくらい凶悪だったかというと、箸休めにキムチを食べると、思わずほっとするくらいという(キムチはしょせん白菜がベースなので辛さにも限度が有るのだ)。
こういう非常識な食い物は、平田(11)とか、神崎(13)とか、野呂(17)のような悪魔の舌を持つ者で無ければ耐えられないだろう。

付記:彼らを御存じない方へ。こんな奴等です。
平田:名大SF研(11)。チャーハンをラー油に浸して食べる。
神崎:名大SF研(13)。どんなに辛い物を食おうとも一切感情の動きを見せない。
野呂:名大SF研(17)。CoCo壱のカレーは10辛以上でないと食べられない。
変なやつらだ。

7月16日
東洋大の未読本企画の結果が出た。投票総数は15票で、投票されたタイトルは計37本だそうな。……そりは有意な結果とは言えないのでは。
まあ、とりあえず1位の『ハイペリオン』は当たったのでまずはめでたい。しかし、個人的に本命の『ニューロマンサー』がまったく登場しなかったのは予想外、と思ったら、投票母集団が予想したのと全然違うんでやんの。そら、あたらんわ。
当初予想した母集団は東洋大の若者10人程度に、それ以外10人程度という構成だったのだが、結果は見事に年寄りばかり。26、7の人間の未読本のアンケートじゃあ、『ニューロマンサー』は出てこないよな。
「SF研の企画だからといってSF研の人間が投票するわけではない。」肝に銘じておかねば。
#「その知識がなんの役に立つのか」という疑問は却下。

『東京開化えれきのからくり』『ゆび』など読みたい本は多々あるが、創元強化月間なのであえて『遠き神々の炎』を読み始める。……良い。
まだ、100ページも進んでないのだが、謎めいたプロローグといい、迫力のある戦闘シーンといい、斬新なETIの設定といい実によくできている。いや、さすがはヴァーナー・ヴィンジ。
中でも特に優れているのが、鉄爪族。数個体からなる集合知性というアイデアだけでもかなりいけるのに、そのしぐさがいちいちかわいいんだ。これほど優れた犬SFがあるのなら、犬SFはじゅうぶん猫SFに対抗できるってことだね。この名作を精神的支柱に、猫SFをその不当に高い地位から追い落とす戦いをはじめよう。まずは、犬SFアンソロジーの出版だ!

7月17日
高田馬場芳林堂で、永瀬唯の評論集『欲望の未来』と朝日の「世界の文学」1、2を購入。週刊朝日百科なんて買っていたらきりがないのだが、今号がラブレーだったもんでつい。次号もスウィフトだし買ってしまうんだろうな。

その後、ユタへ。今回の参加者は志村弘之、林、藤元直樹、三村美衣、小浜徹也、雑破業、大森望、添野知生、宮崎恵彦、高橋良平、柳下毅一郎、さいとうよしこ(わりと到着順、敬称略)。志村さん、宮崎さんとは、やねこんで少しお話したけど、ユタでお会いするのは初めてだな。
僕の周囲での主な話題はボトルキャップキャンペーンと昔のSF遊び。伝統の遊びの遊びかたを幾つか伝授されてきたんで、そのうちやってみましょう。 > 誰か。

あと、「中間子」(京大SF研の正会誌、前号は85年8月発行)が復活するかもしれないという噂も話題になっていたかな。さあ、負けてはいられないぞ神崎(13)!「PERCEPTRON」(名大SF研の正会誌、前号は91年4月発行)だ!「SF File」(今は亡き中部学生SF交流会のファンジン、前号は91年発行)だ!

ルノアールで昔作ったリストの話をしたら多少受けたので、調子に乗って、手抜きリストシリーズ1としてリーダーズ・ストーリー掲載作リスト 1981〜1992をhtml化。われながらくだらないリストであることを再確認。さすがにこれはメンテナンスする気にならないかも。

そういえば、ルノアールで大嘘をついたことも思い出したぞ。ハヤカワ文庫SF最初の目録落ち26冊にはエリザベス・A・リン『遥かなる光』は含まれてません。 > 聞いていた方。
正しい目録落ちリストはリストページに置いてあるのでそちらをご覧ください。

(7/22 追記)藤元直樹さんに奇想天外11冊を頂いたことを忘れていた。いや、どうも本当にありがとうございました。
さて、あと半分を切ったか。

7月18日
暑いのでウダウダして過ごす。そんなときにフジの「30何時間だかテレビ」なんて見てしまうと、頭が融けそうになる。

ああ、しかしなんでそんなにドミノが好きか。もっと達成感を感じさせる企画は出来ないのか。
テレビ東京ならきっと遥かに斬新なことをやってくれるに違いない。「24時間耐久大食い王決定戦」とか。

フジなんだから、「30何時間だか耐久割れ目でポン」をやってくれればもう少し興味を持って見るのに。

7月20日
朝日の「世界の文学」3を購入。今号はスウィフトだ。
しかしなんで明和書店の袋には山下書店と書いてあるんだろう。

中身は見開きないし4ページを使っての作品紹介。さすがにライターは一流ぞろいなので、面白い視点も散見されるが本質的にはブックガイドですね。文学史を学ぼうなんて悪い了見で読むと失望するかも。
逆に、ブックガイドとしての出来は素晴らしい。まさか、ミルトンが読みたくなるとは思わなかった。読まないとは思うけど。

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