Northwind Passage - 北風紀行 - (part-2)

山線を越えて - 函館本線 -


函館 7:20-(5001D:スーパー北斗1号)-8:30 長万部 9:08-(2933D)-12:42 小樽 13:04-(3926M:エアポート134号)-13:26 手稲

函館本線は長万部から倶知安(くっちゃん)、小樽経由で札幌、旭川に至る。〔スーパー北斗〕など特急や貨物列車が走るのは「海線」と呼ばれる室蘭本線で、対してこの区間は「山線」と呼ばれ、かつてC62重連が急行〔ていね〕〔ニセコ〕を牽引して峠に挑む難所そして名所として知られた。しかし単線と線形の悪さが災いし、遠回りでも比較的平坦で複線が整備された「海線」のほうがメインルートだった。

両者の差が決定的になったのは国鉄末期の1986年11月改正で、このとき特急〔北海〕など優等列車が全廃され、もともと普通列車も少なかった山線は一気にローカル線になった。「本線」の特急を切るなど、国鉄としては思い切った整理のしかただが、JRに持ち越して面倒を起こさないようにした配慮なのかもしれない。以来ここを特急が走るのは、冬の〔北斗星ニセコスキー〕やリゾート列車と、災害で室蘭本線が不通になった場合に限られている。


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羊蹄富士をのぞむ山線区間を行く

5月2日、きょうも晴れ。噴火湾沿いを最高130km/hで飛ばす〔スーパー北斗1号〕から、山線小樽ゆきへは約30分の接続。本数を考えれば良い接続なのだろう。その間に駅を出て、名物駅弁かに寿司を買いに行く。

単行のディーゼルカーは室蘭本線と分れるとさっそく勾配にかかり、エンジンの音も重くじりじりと進んで行く。窓をすこし開けてとり入れる風はやはり涼しい。にしても、この「窓を開ける」楽しみを味わえる列車も少なくなってしまったものだ。北海道でも冷房車、そして窓を固定された車が増えてきている。

ミズバショウが咲く原生林を抜けて、やがて右手に蝦夷富士・羊蹄(ようてい)山が見えるニセコ、そして倶知安。20分の休止を経てさらに歩を進めるとしだいに乗客が増え、立客も出て終着小樽。長万部から3時間半! いまこれだけの時間があると函館から特急で札幌へゆうゆうと着いてしまう……。


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ホーム上屋の柱に掛かるランプの照明が港町らしい小樽で、また弁当を片手に新千歳空港ゆき快速〔エアポート〕に乗りこみ、進行左側に陣取った。小樽築港〜銭函(ぜにばこ)間は海岸線に沿って走る名所で、最初の北海道旅行でも訪れ、その風景を見たいと思っていた。ところが夜行明けで疲れていたので、札幌発の快速列車が海岸線にさしかかる前に眠りこんでしまう。帰りに今度こそ、と海側に座るもまた眠ってしまい、結局眺められなかった……という経験がある。ま、きょうは大丈夫だろう。

小樽築港を出た列車は短いトンネルを出ると一気に海岸線に躍り出た。途中の張碓(はりうす)はほんの短い海水浴シーズンだけ開設される臨時駅で、断崖下のこの地には列車しか行く手段がない。今はとてもそんな時期でなく、各駅停車も素通りする。

海岸線を離れ、札幌運転所をすぎると手稲、ここで下車。「バリアフリー法」で設置が進むエレベーターに乗ると出入口が2つでしかもL字に配置されたおもしろいものだった。


ゴムタイヤを聴く - 札幌市営地下鉄 -


手稲=(JR北海道バス)=宮の沢-(地下鉄東西線)-新さっぽろ/新札幌 14:48-(3934M:エアポート144号)-15:16 新千歳空港 15:19-(3925M:エアポート153号)-15:22 南千歳 15:34-(5016D:スーパー北斗16号)-16:22 東室蘭 16:56-(444D)-17:09 室蘭 19:15-(1439M/1039M:すずらん9号)-20:11 苫小牧

地下鉄東西線の宮の沢(みやのさわ)駅へは、バスで行ける。JRバスの札樽(さっそん)線で、周遊きっぷゾーン券でも乗れる(札幌近郊ゾーンを除く)区間だ。

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こちらは南北線 もうひとつの特徴・
シェルター区間を行く(南平岸)

札幌市営地下鉄はゴムタイヤ式の地下鉄で、法規上は「案内軌条式鉄道」。車両などはいわゆる新交通システムよりふたまわり大きい。電車が近づくと、軌道敷の鉄板とゴムタイヤが擦れて「ピュン、ピチュン……」という独特の音が鳴り響く。 "MOTOR MAN 札幌市営地下鉄東西線 rubber scream" の「音」は決して誇張ではない。

タイヤ式だから静かなのが売りというが、南北線に乗った時は意外にうるさく感じたものだ。あらためて乗るとそうでもないのかな、気の持ちようもあるのかもしれない。加減速はかなりのものと見受けられる。


手稲から当初計画より前倒しに進んだ結果、新札幌から特急〔すずらん5号〕に乗れそうだ。ホームに出るとほどなく781系が滑り込んできた。席はだいぶ埋まっているが立つほどでもなさそう。どうしよう、新千歳に先に行くか、室蘭まで一気に……と思ううちにドアが閉まった。第一球は見逃し。

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旧室蘭駅舎

つぎは千歳ゆき普通なので見送り、三球目〔エアポート〕の人に。もうすこし地下鉄を早く切り上げたら一本前の785系に乗れたはずだな、と思う。

乗換駅以外の何者でもなくなった南千歳から、地下線で新千歳空港へ。単線のトンネルを走ること3分で終着、隣のホームにはその785系が停車中。ホームには常に列車が停留していることになっている。すぐに乗り込んで南千歳へ戻った。