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菊池バレエ研究所発表会「白鳥の湖」(全幕)    (2004.10.1)

菊池バレエ研究所は、毎年夏に発表会を行っています。2001年は「シルヴィア」全幕、2002年は「ドン・キ・ホーテ」全幕、2003年は「眠りの森の美女」全幕でした。発表会で、全幕の上演というのは、とても珍しく、私は毎年楽しみにしています。
そして今年は、「白鳥の湖」全幕を取り上げました。「白鳥の湖」は、長編バレエの代名詞とも言える作品ですが、今回15回出演の表彰を受けた園田真野さんの希望で取り上げることになったそうです。菊池バレエ研究所では、毎年表彰を受けた出演者の希望を聞いて、上演作品を決めているとのこと。 「シルビア」は奥山有紀子さん、「ドン・キ・ホーテ」は奥山八重子さん、「眠りの森の美女」は沢田真理子さんの希望を取り入れての上演でしたが、それぞれ、立派に主役を務めました。自分が踊りたい作品を出演者自らに決めさせる、これは非常に良いことだと思います。自分が選んだ役ですから、必然的に責任を持ち、それだけ稽古にも熱が入ることでしょう。その証拠に、今回園田さんのサポート役に回った、奥山有紀子さん、奥山八重子さん、沢田真理子さん、それぞれが立派に成長され、見事な踊りを見せて下さいました。そして今回、園田真野さんが、素敵な踊りを見せ、また一人、初々しく美しいバレリーナが羽ばたきました。
出演者自身に作品を選ばせるこの企画、かなりの冒険でしょうが、これをあえて遂行し、出演者の技量や精神を鍛えようという菊池武久氏の教育方針は、なるほどと納得できるものがあります。
「白鳥の湖」は、古典中の古典で、出演者も踊りの数も多く、公演でも、とても大変なのに、まして発表会で・・・ということで、ダンサーもスタッフも、さぞご苦労だったと思います。上演の一週間前、指導助手も務めておられる奥山有紀子さんは、「ちょっと焦りモードに入っていますが、できることを精一杯頑張ろうと思います」と言っておられましたが、発表会が滞りなく終わって、ほっとしておられることでしょう。実に細かなところまで気を配られた立派な舞台でした。
 
「白鳥の湖」は、オデットとオディールを一人のバレリーナが踊るのが本来の姿です。バレリーナは、オデットの叙情性とオディールのテクニックを演じきることが必要です。でも今回は発表会ということもあり、第2幕のオデットは奥山有紀子さん、第3幕のオディールは園田真野さん、そして第4幕のオデットは奥山八重子さんが踊りました。ちなみに、かのロイヤルバレエのプリマバレリーナ、マーゴ・フォンティーンが初めて「白鳥の湖」を踊った時も、オディールは別のダンサーに委ねたそうです。一人で全幕を踊り切るには、それだけ、肉体的にも精神的にも過酷で、デビュー間もないフォンティーンには荷が重すぎるとの、師ニネット・ド・ヴァロワの配慮があったのでしょう。
 
前述の四人の踊りを中心に感想を述べます。
まず、第一幕、奥山有紀子さんが村娘役として出演。さすがに他の人たちより、一枚も二枚も上手という感じで、軽やかなステップと爽やかな笑顔に魅了されました。
 
第2幕、奥山有紀子さんはオデット。第一幕から出ずっぱりですが、少しの疲れも見せず、優しさ溢れてとても美しい、白鳥でした。
有紀子さんは、アチチュードのポーズがとりわけ美しいのですが、今回もアダージョでのアチチュードのポーズが美しく決まっていました。そして、何より、しなやかに波打つ腕の美しさに眼を奪われました。しっとりとした情感漂う踊り、これは、有紀子さんの大切な財産だと思います。
昨年、「眠りの森の美女」で素晴らしいローズ・アダージョを踊った沢田真理子さんは、三羽の白鳥に出演。三羽の中でひときわしなやかで美しく、目を引きました。
 
第3幕、園田真野さんがオディールで登場、見事な踊りに魅了されました。まずアダージョ。男性のサポートも実に優しく的確で、園田さん安心して踊っておられたようで、難しいポーズやリフトも乱れず、素敵でした。
圧巻は、コーダのグラン・フェッテ。頑張りましたね!!。軸足がずれてきて、ハラハラしたところはありましたが、歯を食いしばっての懸命に回る姿は感動的。険しい表情で、最後まで必死に踊る姿に、「頑張れ、頑張れ」と心の中で呟いていました。踊り終わってのレヴェランス。力尽きて脚がもつれ、男性に支えられるところも。それだけ必死に頑張ったのでしょう。ブラボーの声に、嬉しそうな園田さんの笑顔が素敵でした。こんな感動的なシーン、「発表会」だからこそ、味わえるのだと思います。こういうシーンを見ると、なおさらバレエが好きになります。
また、マズルカでの、有紀子さんと八重子さんが楽しそうに踊る姿、爽やかで、気持ちよくて、やはり姉妹なんだなと、感じました。
また、沢田真理子さんが、ルースカヤで出演。これは実に見物で、この曲の持つ雰囲気を実によく捉えて踊っていました。第2幕の白鳥と正反対の雰囲気の踊りですが、いずれも見事に踊りこなしたのには感心させられました。昨年のオーロラ姫の成功が、自信に繋がったのでしょう。
 
そして、第四幕、奥山八重子さんのオデット、こちらもとても素敵でした。八重子さんは、以前拝見したキトリのような、快活なイメージがあったのですが、しっとりとしたオデットで、とても良かったと思います。何より、ほとんど靴音をたてない、静かな着地にはビックリ。以前、下村由理恵さんの音を立てない着地に感激したことがありますが、今回の八重子さんの、それに匹敵するくらい。ふんわりとした風のようで、なんとも優雅で、きっと苦しいレッスンの賜なのでしょう。
 
実は、私は、前日(8/6)、フランス旅行から戻ったばかりで、時差ぼけで、少し眠かったのですが、思い切って見に行って本当に良かった。素敵なステージを見て、眠気も吹っ飛びました。
 
毎年夏に行われる菊池バレエ研究所の発表会、来年の演目は何でしょう。今から楽しみです。


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