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討 論
(1999年12月定例県議会)

 市民ネットワークの岩橋百合でございます。平成10年度決算にたいし不認定の立場から討論させていただきます。
決算は本来、予算が適正に執行されたかと言う点を審査するものだと思います。私はこの平成10年度予算が審議された時点で県議会に籍を置いていなかったものですから、膨大な資料に、一通り、目を通し、決算委員会を出来る限り傍聴しましたが、予算執行についての問題点を個別に指摘するには至りませんでした。
 しかし、大きく見た観点から、あるいは基本的な観点から、重大な問題があると受け止めております。それは、県企業庁が千葉銀の協力を得て、行徳漁協に対して行った、転業準備資金の貸付について、であります。
 昭和57年、千葉銀が行徳漁協に転業準備資金の貸し付けを実施し、県が利子補給を行うことを約束したもので、準備資金元金43億円は三番瀬埋め立て計画確定時に漁業保証金と相殺するつもりだったがその後、三番瀬の計画が環境問題の高まりの中で足踏みし、その結果17年間にたまった利子が55億円となっているものです。
 このことについては、2つの問題があります。
1点めは、何よりも、まだ決定されない計画を前提になされた点において、県民を無視したものである点です。さらにこの措置が三番瀬の全面埋め立て740ヘクタールを前提になされたものであることです。実際には今年、計画は7分の1に縮小され、今後さらに縮小される可能性もあることから740ヘクタールの計画を基本にその当時の漁場の価値として算出された転業資金が果たして、適正であったかという問題がありますが、企業庁によれば、それ以前に行われた浦安の埋め立てによって、昭和50年ころから漁場の塩回りが悪くなり漁業が成り立たなくなって、転業を望む声が漁協組合員の大多数から出されていた点を考慮した。また、その当時企業庁として目前と思われていた三番瀬の埋め立て保証と一緒に行った方が合理的と考えてあのような措置を取られたと言うことです。一部理解できるところもありますが、結果的には浦安埋め立ての保証はそれ単独として行うべきだったと思います。
問題の第2点はこのことが決算書に記載されておらず県民の代表たる議員が決算の審査を行う際にも、そのことを知ることが事実上不可能だったことです。その点については、今回決算の参考資料として出された監査委員会による公営企業会計決算審査意見書の企業庁の貸借対照表にも記載されていませんでした。知事は会計法上の問題はないという答弁をされましたが、これらは、明らかに債務であり、貸し付けた元金はもちろん、利子についても毎年金額が確定できたものであります。これらが毎年決算あるいは予算で審議されれば、17年間も放置されて利子が55億にも達することはなかったと思います。山一証券の問題などで、簿外債務と言う言葉が一般的になり、簿外債務の存在とそれを隠そうとする体質は日本の企業が世界の投資家から信頼されない大きな原因の1つといわれております。それを監査できなかった監査法人が最近訴えられましたが、企業だけでなく行政にも決算のグローバル基準化が求められております。
国や地方自治体の公的会計は現金主義の単式簿記であり、実際に公金の支出をしていない今回の場合にその記載がないことすなわち違反ではないというのが先の知事答弁だと思いますが、43億たす55億、計98億は明らかに簿外債務であります。債務保証としての記載もされなかったことは、行政の説明責任、透明な財政運営を求める市民の立場から納得の行くものではありません。また、このような県の姿勢から、このほかにも簿外債務が存在するのではないかという不信感をもたざるを得ない事は大変残念であります。
 今回の議会の指摘を受けて企業庁は来年度から記載に工夫してみたいと言われています。その姿勢は評価できますし、財務諸表の導入、貸借対照表の作成、一般会計、特別会計そして特殊法人などの外郭団体を含む連結決算の作成などにむけ、工夫をしていただきたいと思います。いずれにせよ、以上の理由によりこの負債に関する記載が追加されない限り平成10年度決算を認定することはできないものであります。
環境行政における評価すべき点もありますが、情報公開への取り組みの遅れ、市民参加の手法に対する工夫不足、NPOへの基本的認識、支援体制がかけている点、男女共同参画問題意識が全庁に及んでいない点、乳幼児医療費の窓口現物給付方式を県として推進する積極的な姿勢が見られない点、ノーマライゼイション時代に不可欠な障害者のレスパイト事業や、痴呆性高齢者のグループホームへの取り組みの遅れ、などを指摘させていただき、市民ネットワークの反対討論を終わります。

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