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岩橋百合の県議会レポート 2002年冬号 (2002年2月18日発行)
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■ NPOの先進地、ロンドンへ

−1月13日〜21日まで NPO含め19人で− 

 最近、NPOの活躍は日本でもお馴染みになってきた。イギリスでは新しい労働党政権がNPOとの協働で若者のドラッグや失業問題、コミュニティ再生などに取り組んでいるという。しかもNPOの一歩先を行く『アントレプレナー』がその力を発揮しているとのこと。どんな風にNPOやアントレプレナーは動いているのだろう、政治のNPOを自認するネットとしては、ぜひ見てみたい! というわけで、イギリスに行ってきました。

 
主な視察先
 

 
 

 *ロンドンミッション
 この視察企画にロンドンミッションという名称を与えたのは木更津ネットの高橋てる子さんである。早くから、NPOや、社会起業家の重要性を語り、木更津そごう跡で、市民活動センター「レッツ木更津」を事業化している彼女の熱い思いに動かされて、今回のロンドン視察が実現した。社会起業家とは、儲からなくても社会的に必要な事業を起業する人であり、その特徴はミッション(使命感)であることから、準備のための学習会などを重ねるうち、ロンドンミッション=この視察となった。

 NPO先進国イギリス
 イギリスでは、ゆりかごから墓場までという福祉国家だったが、高齢化、失業、若者の麻薬やアルコール中毒、ホームレス問題や環境破壊、子どもの虐待など複雑多様化する課題をすべて行政という公的セクターで対処することは無理という認識のもと、市民のNPO活動に対する期待が高まった。もともとボランティア活動の歴史300年を超えるイギリスであり、全国組織から地域の小さな組織まで活発な活動を展開していた。

 アンドリュウ・モーソンさんを訪ねて

 
CANの事務所にて熱く語るモーソンさん
 

 イギリスの社会起業家(アントレプレナー)のモデルとしてたびたび取り上げられるアンドリュウ・モーソンさんは、ロンドンの東、ブロムリーバイボウ地区の荒れ果てた教会に牧師として赴任した。工場が撤退した後の町は失業者が多く、犯罪多発地区でもあった。
 財産といえば、教会の建物だけ。しかし、先ずその教会を地域の芸術家にアトリエとして貸し出し、子どもの保育所としても貸し出した。次第に教会に人が集まり始め、多民族都市ロンドンに多い移民の女性の美容院を始めたいという夢に出資をし、成功させた。
 精神障害者の人たちが教会の庭を美しく手入れし、子どもの遊び場には芸術家たちによる遊具や彫刻がおかれた。
 モーソンさんは各地の小さな社会起業家が互いに助け合い連携する組織CANも作った。そして、ホームレスの人たちの食事を3万人用意するというイベントを実現した。まだ小さな子どものいるモーソンさんを始め、社会起業家やそのスタッフの多くは若く柔軟な発想が活動に生かされていると感じた。

         
ユニークな遊具や彫刻
         
 
   
園内のいたるところに地域の人たちの作った作品が…

 行政の対等なパートナーとして
 こうした状況の背景には、もちろん保守党政治から労働党ブレア政権への転換がある。ブレア首相はこうしたNPOやアントレプレナーを行政の対等なパートナーと位置付け、事業を委託していくうえでの行政の具体的基本方針を示した『コンパクト』を作成した。今、地方自治体のローカルコンパクト作りが進んでいる。


 
ブロムリーバイボウセンターの前にて
 

手厚いイギリスの福祉政策  

 イギリスではサッチャーの強力な行政改革後でも、国民の福祉は日本に比べるとずっと整っていると感じた。たとえば、若者が何の資格もなく高校を卒業して就職ができない場合でも、失業手当が支給される。そして、その権利は一生続く。ちなみに日本は一旦就職し保険金を払った場合のみ失業保険金が出る仕組みである。しかも、長くて1年程でその権利も失われる。
 その若年の失業者に雇用の機会を与えるためにイギリス政府はいろいろなプログラムを提供している。そして、その実際のプログラム、講座などを提供するのがグラスゴーで私たちが訪ねたグレーターイースターハウスなどの地域開発会社であり、ロンドンのプリンシズトラストなどのNPOである。
 今日本でもワークシェアリングが盛んにいわれているが、パート労働者が差別的な待遇を受けていることが当然の、被雇用者の権利がずっと弱い日本と、その権利をずっと積み重ねてきたイギリスやドイツ、フランス、北欧諸国などでは違う意味と認識すべきであると感じた。


   
 

やってもーた……
イギリスでの失敗

 私たちのホテルはロイヤルナショナルホテル。はっきり言って名前負けしていたが、イギリスではバスタブのあるホテルは通常100ポンド以上する中、1泊35ポンドと非常に手頃なホテルだった。そのバスタブがあっという間にあふれて、気がついたら部屋まで。日本のお風呂と違ってバスタブの外に排水口がない。ありったけのバスタオルを使って吸い取ったが、電話すると、フロントのお兄さんがやっぱりバスタオルを持ってきて、一緒に吸い取った。水漏れの請求があるかと思ったらまったく無し。良いホテルでした。

   
   

ホームズとワトソンの   
    イメージが強すぎた?

 ロンドンについて、私たちが持っていたイメージは大きく変化させられた。
 ひとつは寒いというイメージ。ホッカイロや遠赤外線の長袖の下着(パッチを持っていった人もいたとか)
をたくさん持っていった私たちの一行は無駄な荷物にうんざり。
 しかし何より面食らったのは、街を歩いている人や地下鉄の乗客を見ても、アフリカ系や中東、アジア系の人たちが多いこと。ロンドンはニューヨークやバンクーバーよりも多くの人種が混じり合って暮らしている世界一の多国籍都市であった。

 

介護の質は誰が決める?◎
兵庫県尼崎市『けま喜楽苑』視察

 1月30日と31日は兵庫県尼崎市の『けま喜楽苑』を訪れました。健康福祉常任委員会の県外視察が、狂牛病の関係で、延期されていたもの。今、一番新しいタイプのユニットケア(全室個室でグループごとにリビング、小さい食堂などがある)の特別養護老人ホームです。
 喜楽苑の最初の施設は83年に同じ尼崎にオープン。その高い理念と実践は知る人ぞ知る良心的で先進的な特養でした。その喜楽苑が2000年12月に4番目にオープンさせたのが『けま喜楽苑』です。職員が入所者に決して幼児語を使わない、命令形で話さない、かぎをかけない、もちろん拘束しない、タバコやお酒も自由、外出も自由という特養です。

 
広くて明るい個室
 

 施設長の市川禮子さんが2時間に渡って、阪神淡路大震災の時に作った仮設のグループホームがとても入所者にとって良かったことから個室のグループリビングタイプの介護に行き着いたこと、入所のお年寄りの生活のようす、人権擁護と民主的運営をかかげる介護の理念などについて、お話くださり、木の薫り高い特養と数奇屋作りの痴呆性グループホームを案内してくださいました。自分の住まいのように家具を持ち込み、中庭をみおろす窓辺で楽しそうに御夫婦の入所者が食事をしておられました。
 実は千葉県にも、この喜楽苑に大きな影響を受けて建設された特養『風の村』(八街市)があります。これらをふくめ、こうしたタイプの新しい特養は全国でもまだ4ヶ所しかありません。
 今回の視察は委員会で私から提案しました。数年前に震災後の喜楽苑仮設グループホームを見学したことがあり、新しい『けま喜楽苑』をぜひ見たかったからです。参加した議員始め県の職員にとってもこうした特養の存在を知ったことは貴重な経験だったはず。
 同じ介護保険の中で、高齢者施設の介護の質が大きな差があるのが現実です。けま喜楽苑のような施設がもっと増えていくことをたくさんの市民の声で実現していきたいと思います。
(もっと詳しい内容を知りたい方はネットに書籍と資料があります。)


県議会に全員参加の予算委員会を

 昨年4月から議会改革の話し合いがはじまった。各会派から出された提案のうち、唯一、一致できた予算委員会設置について論議している。
 千葉県議会では膨大な予算を各常任委員会で審議している。8つの委員会に委員を送っている会派はいいが、私のような一人会派は他の委員会の予算について詳しく知ることが難しい。もちろん、関心のあるところは職員にきてもらって説明を受けたり、資料を請求したりするが、全体を一人で把握するのは不可能に近い。千葉市議会のときにあった予算委員会が県議会にはないことが不満だった。また、たとえ予算委員会ができても、現在の決算委員会のように、14人くらいのメンバーしか選ばれなければ、また一人会派は参加できず、傍聴のみとなってしまう。そこでわたしの提案は「全員参加の予算委員会を!」というものだ。
 今年1月に視察した宮城県、山形県では私の希望通りの予算委員会を作っていた。しかも、国会と同じような一問一答である。議会活性化の切り札として導入したということだ。
 今回私はどの会派より多い改革案を提出した。そのうち、議員の野球部やゴルフ部などへの補助金の廃止は実現できた。その他次のような提案をしているが、まだ結論が出ていない。
 ◎ 議員の質問時間と回数を現在の年に1回30分から、希望すれば毎回できるようにする(市議会同様に)
 ◎ 空き日の費用弁償(日当)を廃止する。
 ◎ 本会議開催時のお茶専門の職員をなくす。
 ◎ 議場で帽子をかぶってはいけないなど現代にそぐわない規則を見直す。

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