実用新案について
 
実用新案も見直されています。すなわち、平成17年4月の出願から、権利の期間が6年から10年へ長くなりました。また、特許出願(特許申請のこと)の審査請求料金が、やや減額(平成23年8月1日から25%すなわち5万円程度減額)されたものの依然として高額(15万円前後)であることから、同様の料金である技術評価請求料金(5万円弱)が安い実用新案登録出願(実用新案の申請のこと)を利用するメリットはあります。
  
実用新案か特許かどちらを申請すべきか迷っている人は、こちらも参考にして下さい。 

[1]ビジネスモデルなどは実用新案で出願できない
      (実用新案で出願できる内容はどんなものに限られるのか)

  実用新案登録出願の対象は、物品の形状や構造などとなっていますので、方法や材料の考案はダメです。特許出願にするしかありません。同じようにビジネスモデル(正確にはビジネスモデル方法特許と呼ばれます)も特許出願するしかありません。その他は下記の[5](3)を参照。
[2]調査の仕方(同じです)
 実用新案登録出願を行う前に、特許調査と同じように、調査を行う必要があります。出願の費用などを無駄にしないためです。
調査の仕方は特許調査と全く同じです。
[3]申請書類の作り方(ほぼ同じです) 
 願書、明細書、図面、要約書は特許申請の場合とほぼ同じです。異なるところは
      特許⇒ 実用新案登録
      発明⇒ 考案
です。特許申請用に申請書類を作った後で、ワードや一太郎などのワープロソフトの「置換」機能で、上記のように書き換えると早くて便利です。
 また、印紙代の額や出願時に登録料を3年分納めなければならないところも異なります。
 以下の願書を例にして参考にして下さい。(コピー貼付けして使ってください)


 (14000円+第1年分から第3年分の登録料額の特許印紙を貼る。請求項の数で異なる*)
(請求項の数が4のとき21500円)

 

【書類名】       実用新案登録願
【整理番号】      U000001
 【提出日】            平成2319
【あて先】       特許庁長官殿
【国際特許分類】    A47G 19/22
【考案者】
  【住所又は居所】  東京都千代田区霞が関1丁目3番1号
  【氏名】      特許 取った郎
【実用新案登録出願人】
  【識別番号】    123456789
  【住所又は居所】  東京都千代田区霞が関1丁目3番1号
  【氏名又は名称】  特許 取った郎     (印)
   【代表者】                         (印:社印)
【代理人】
  【識別番号】    000000000
  【弁理士】
  【氏名又は名称】  特許 太郎
【選任した代理人】
  【識別番号】    000000000
  【弁理士】
  【氏名又は名称】  代理 太郎
 【納付年分】           第1年分から第3年分
【手数料の表示】
  【納付金額】    14000
【提出物件の目録】
  【物件名】     実用新案登録請求の範囲 1
  【物件名】     明細書         1
  【物件名】     図面          1
  【物件名】     要約書         1

* (第1年分から第3年分の登録料額)は請求項の数で異なります。
つまり第1年から第3年まで毎年、 2,100円に1請求項につき 100円を加えた額になり、
例えば請求項の数が4項では、
        3X(2100+100x4) =7500
で7500円です。(詳しくはこちらで。)
   この場合に、貼る印紙代の額は合計、14000+7500=21500円になります。
*願書中の黒色の部分は、全く同じようにしてください。法律の様式で決まっている部分だからです。
青字の部分は、無用の部分、またはご自分で書き換えてください。
赤字の部分レンガ色の部分は個人で申請するときは不要です。
  詳しくは特許申請の説明を参考にして下さい。
[4]作った書類の送り方(同じ)
  詳しくは特許申請の書類送付の説明を参考にして下さい。
[5]実用新案の手続きの流れ

上記[5]手続き流れの中の注の説明
 (1)実用新案登録出願
 実用新案登録出願をすると、基礎的な審査(3)だけが審査され、実質的な審査である新規性や進歩性は審査されずに直ぐに権利化(10)されます。ですから、出願時に3年分の登録料を同時に払う必要があります(上記[3]参照)。
 実用新案は物品の形状や構造などに関する考案だけを対象とします((3)の基礎的要件を参照)ので、必ず図面が必要です。
 (2)優先権を主張した国内出願、又は外国出願、又はPCT出願
 出願した技術内容に、新しい内容をどうしても追加したいときは、登録される前、且つ、1年以内であれば(従って出願公開前でもあるので)、追加した姿で新しい特許出願など(国内出願)をして元の技術内容については優先的に取り扱ってもらうことができます。これを国内優先権主張出願といいます。しかし、直ぐに登録がなされるので、実際には適用を受けるのはむずかしいと思われます。
 同様に、1年以内であれば外国出願、又はPCT出願をして元の技術内容については優先的に取り扱ってもらうことができます。なお外国出願やPCT出願は、その外国毎の現地代理人が必要であり、個人の未経験者では対応が困難なので、特許事務所に依頼されるのが賢明です。
 なお1、 優先権制度について詳しくは特許庁の「優先権の審査基準(案)」を参照してください。
 なお2、PCT出願(国際出願)は国際特許を認めるような制度には未だなっておらず、単に、多数国出願の際の事務的な省力化をはかるもので、最終的には権利は各国別々に取得しなければなりません。詳しくは特許庁のPCT制度の概要あるいは特許協力条約(PCT)に基づくPCT国際出願の概要を参照してください。
 (3)基礎的要件の審査及び方式審査
請求項に記載された考案が、次の@〜Dの基礎的要件を満たすか否かの審査
@実用新案法が保護する保護対象となる考案であるか 。
   つまり「物品の形状、構造又は組み合わせに係る考案」でなければならない。
保護されない
ダメな例:
「物品の形状、構造又は組み合わせ」でない 方法の考案(ビジネスモデル方法特許に相当するものも含む)、組成物(合金組成、薬剤組成、ガラス組成、セメント組成など)、化学物質、液体、気体、粉粒体(一定形状を有さない滑り止めの粒)、動植物の品種、コンピュータプログラム、
そもそも「考案」でない 永久機関、特徴のある音楽を録音したCD、美的創作物(絵画、彫刻など)、コンピュータプログラム言語
[なお、これらは特許などでも保護されない可能性大]
意外にも保護される
OKの例:
不動産(立体交差道路、建造物、プラント)、複雑な機械、電気回路の構造、電話帳の見出し欄、視力検査表の活字の配列、磁性を帯びたカミソリの刃、
A公序良俗に違反していないか
  例えば犯罪目的の装置(紙幣偽造装置、金塊密輸用チョッキ、麻薬吸飲具)など反社会的なものは特許になりません。
B実用新案登録請求の範囲の記載が様式に合致しているかどうか
C実用新案登録請求の範囲に記載された複数の請求項が「出願の単一性」をみたすかどうか
 関係のない内容を一つの出願にすることはできません。
D明細書、実用新案登録請求の範囲、図面の記載が一日しく不備でないか
 例えば、請求項に作用や効果のみが書いてあるもの(例:「〜〜できることを特徴とする〜」)など、できの悪すぎるものは、ここではねられる。
                  詳しくはこちらを。
 方式審査
 明細書、実用新案登録請求の範囲、図面の記載が方式的な様式を満たしているかどうか、を審査する。
  (4)〜(6)
 上記の(3)基礎的要件の審査及び方式審査により、補正できないような不適法な出願とされたときは却下理由通知(4)がなされ、これに対して弁明書(5)を提出できる。また、補正できる可能性のある不備の場合には、補正指令(6)がなされる。
  ()補正指令に対する補正書
 補正指令が来たときは、補正書を提出しなければなりません。
 補正書の書き方は、特許の「補正書の書き方」を参考にして下さい。その場合に次の
      特許⇒ 実用新案登録
      発明⇒ 考案
 の書き換えを忘れないでください。
  (8)実用新案技術評価請求(特許印紙が必要) 
 実用新案権の権利は形式的なものなので、実際に相手に警告状を出す場合などは技術評価書(10)を特許庁からもらう必要があります。これが事実上の審査です。そのためには技術評価請求書を郵便などで特許庁に提出する必要があります。出願と同時にも、登録後にも、請求できます。
 技術評価請求書の作成方法
用紙は、すべてA4サイズで、各ページが50行、各行が40字です。
以下の例を見て、同じ書式にしてください。(コピー貼付けして使ってください)
黒色のところは、全く同じようにしてください。法律の様式で決まっている部分だからです。
青字の部分は、注意書きなどの無用の部分、またはご自分で書き換えてください。
赤字の部分レンガ色の部分は個人で申請するときは不要です。

(ここに特許印紙を貼る。
請求項の数で異なる。2項であれば44000円になります。
貼った特許印紙の下に 料金額を( )して書きます。)

44000円)

【書類名】          実用新案技術評価請求書        
【提出日】    平成2325
 
(例えば郵送(印紙が高額なので書留にして下さい)で
特許庁へ郵送する発送の日付,または発明協会のパソコンでオンラインによる
手続きをしてもらう日付にします)

【あて先】     特許庁長官
【出願の表示】 
  【出願番号】
実用新案登録出願2004OOOOO
           
(出願によって手に入れた出願番号を入れます)
【評価の請求に係る請求項の数】    

           
(評価をして欲しい請求項がいくつあるかを記載します)
【評価の請求に係る請求項の表示】 
「請求項1」、「請求項2」
           
(評価をして欲しい請求項を羅列します)
【請求人】
  【識別番号】
OOOOOOOOO
    
(出願または事前準備によって与えられます)
  【住所または居所】  
神奈川県横浜市南区特許町1丁目2番34号パテ
ントマンション707号

  【氏名又は名称】       
特許 取った郎    (印)(出願時と同じ印)
  【代表者】
【代理人】    (今回は自分個人で行うので記載の必要はありません)
  【識別番号】
  【弁理士】
  【氏名または名称】
*特許印紙は、技術評価請求料金の額、42,000円 + (請求項の数 × 1,000円)の分だけ貼ります。
請求項の数がが2項であれば44000円になります。詳しくはこちら
*既に実用新案権として登録になっているときは、【出願の表示】ではなく
      【実用新案登録番号】 実用新案登録第OOOOOOO号
 のように記載する。
*出願と同時に請求するときは、出願番号は交付されていないので、次のようにします。
      【出願の表示】
          【出願日】 「平成OO年OO月OO日提出の実用新案登録願」
          【整理番号】OOOOOOO
その他、詳しい書式はこちら。
(9)技術評価書
  上記(8)の技術評価請求を行うと、特許庁から技術評価書が送られてきます。
 この特許庁からの応答はかなり速く、実用新案権として登録になっているときは、約1ヶ月程度で送られてきます(平成16年8月現在)。
  技術評価書では、請求毎に評価が1〜6の数字で行われます。その部分を抜き出して次に示します。
評価
請求項 評価 引用文献名等及び説明
特開2003−OOOO号公報
評価の1〜5は、否定的な評価で、権利がいわば無効であることを、1〜5のケース毎に示します。
評価6は「新規性等を否定する先行技術文献などを発見できない(記載が不明瞭であることなどにより、有効な調査が困難と認められる場合も含む)」
とあり、そのような調査困難などの説明がないときに、初めて肯定的な評価、すなわち、権利が有効であるということになります。
 この技術評価書を提示しないと、権利侵害者への警告はできません。また、侵害訴訟も起こせません。
(10)から(11)
 出願から約6ヶ月ほどで設定登録(10)が行われ形式上の実用新案権が発生し、その後に、実用新案登録証が出願人へ送られてきます。

重要な注意:  この実用新案登録証を受け取ったからといって、無審査主義のもとに実体審査は無審査のまま登録されたものですので、実用新案権は形式的であり必ずしも有効ではありません。このため、権利が有効であることを示す技術評価書((9)参照)を提示しないと、権利侵害者への警告はできません。また、侵害訴訟も起こせません。
また、登録実用新案公報が発行され、インターネットで特許庁の電子図書館で閲覧できます。
(12)無効審判請求に対する答弁書
 登録されたからといって、更には技術評価書で「評価6」をもらったとしても、必ずしも完璧な実用新案件とは限りません。何人も特許無効審判を請求することが可能です。 万一、特許無効審判を請求されたときは、答弁書を提出して争います。答弁書の作成は個人の未経験者では対応が困難なので、特許事務所に依頼されるのが賢明です。
 なお、特許無効審判の審決に対して不服がある当事者は、東京高等裁判所に出訴することができます。
(13)4年分以降の登録料の納付(特許印紙が必要)  
 4年分以降の特許料を忘れないように納めなければなりません。特許庁から通知は来ません。忘れると特許権は消滅します。
  技術評価請求料と登録料は減免して(やすくして)もらえる場合があります。資力が乏しい人(税金を課されていない人、法人税を課されていない法人)、研究開発型中小企業、大学、公的研究機関などの出願である場合などです。必要な要件を証明する書類を揃えて申請書を出さなくてはなりません。
なお、ここに説明された内容は、特許権を取得する際の手続きの大まかな流れを説明するのみであり、必ずしも十分ではありません。御自分の発明を無駄にされないように、経験者に相談されたり、特許庁の相談窓口に相談されたり、あるいは資金がある場合には特許事務所(弁理士)に依頼されることをお奨めします。
[6]実用新案の特許との費用比較
費用

(特許印紙代)
実用新案 特許
自分でする場合 特許事務所に
依頼する場合
自分でする場合 特許事務所に
依頼する場合
(1)明細書作成費用 10万〜30万円か 10万〜30万円か
(2)出願料(印紙代) 14000円 14000円 15000円 15000円
(3)実用新案の技術評価請求料(印紙代)。特許の審査請求料(印紙代)。高額なこの費用を、減免猶予措置の免除をうけて0円にすることも可能な場合があります。 5万円弱
(0円の場合有)
5万円弱
(0円の場合有)
14万円程度
(0円の場合有)
14万円程度
(0円の場合有)
(4)中間手続きへの対応費用 5万円〜10万円か
(いきなり特許の場合は0円)
(5)特許事務所への成功謝金 5万円〜15万円か 5万円〜15万円か
(6)3年分の登録料(印紙代) 8000円程度 8000円程度 1万円弱 1万円弱
ここまで((1)〜(6))
合計
8万円弱 23万〜63万円 17万円

(15000円の場合有)
27万円〜
73万円

(24万円から59万円の場合有)
(7)4年〜6年の登録料(印紙代) 2万1千円程度 2万1千円程度 3万円程度 3万円程度
(8)実用4〜10年、又は特許4〜20年の登録料(印紙代) 8万円弱 8万円弱 3年ごとに3倍額 3年ごとに3倍額
*請求項の数によって印紙代が変わる(3)(6)〜(8)は、請求項の数を3項程度として概算しました。
*特許事務所に支払う費用(1)(4)(5)は、出願の技術内容によって、更には事務所によってかなり異なり、何らかのデータを基にしたものではなく、経験から額を出しました。また、中間処理の回数によっても異なります。
*特許の場合に、登録料(正しくは特許料といいます)(7)(8)は、年を経るごとに急激に増加しますので、早期に、例えば出願をしたときから、商品化や実用化を図り、無用の特許には特許料を払わないようにする(特許権は消滅する)といいと思われます。
*実用新案の技術評価請求は必ずしもしなくても済むので、その場合の費用の合計は、5万円弱となります。
*(3)および(6)は特許庁による減免猶予の対象になることがあります。出願人名義が、資力に乏しい個人や法人である場合、さらには研究開発型の中小企業である場合など、です。検討してください。

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