カンタータ・データ 2002
BCJのコンサートに登場するカンタータについてのデータ
をお届けします!
コンサートに向けての“予習”などにお役立て下さい!
 

 2002年度BCJ定期公演は、ライプツィヒ第2年巻のコラールカンタータ・シリーズに突入!
 このHPにおいでいただいている皆様の中には、BCJの定期公演で取り上げられるカンタータについて“予習”されている方もいらっしゃることと思います。私も、毎回できるだけ個々のカンタータになじんでから演奏会に伺うようにしています。と申しますのは、何も知らずに初めて聴いてもバッハのカンタータはそれぞれの美しさがあり楽しく聴くことができるのですが、やはり「言葉と音楽の結びつき」が大きな意味を持つカンタータ演奏では、内容への理解の度合いが演奏を通して得られるものの大きさに深く関わっていると思うからです。まして、その「言葉と音楽の結びつき」にこだわって取り組んでいるBCJの演奏ですから、なおさら事前にできるだけ曲の世界に親しんでから実演に接したいものです。
 そこで、限られた情報ではありますが、今年度のBCJ定期で取り上げられるカンタータに関する基本データを、順次このコーナーで紹介していこうと思います。これらのデータをもとに『聖書』を参照していただく(次回に取り上げられるカンタータのデータから当該聖句へのリンクを設けるようにします)などしてコンサートを迎え、当日入手できるプログラムと合わせ、より深いBCJ体験を持っていただけましたら幸いです。 (03/02/15) 

次回に取り上げられるカンタータ・データ中の「礼拝での聖句」欄の書簡、福音書名をクリックすると、当該の聖句を読むことができます
カンタータの基礎知識についてはこちら(「カンタータの源を求めて」)をご覧下さい!

*参考文献・・・『バッハ事典』(礒山雅/小林義武/鳴海史生編:東京書籍刊:1996)
          『バッハ全集』第1巻〜5巻(『バッハ全集』編集部:小学館刊:1995〜99)
          『トン・コープマン/バッハ・カンタータ全集CD』解説(C.ヴォルフ[訳:鳴海史生]、野中裕)


 


 《おお永遠、雷の言葉よ》 BWV20  
 
初演 1724年 6月11日、ライプツィヒ                       
用途 三位一体節後第1日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :ヨハネl 4,16-21
福音書:ルカ 16,19-31(金持ちと貧乏人ラザロの譬え) 
歌詞 作者不詳
(引用:全曲にわたってJ.リストのコラール「おお永遠、そは雷の言葉」(1642)より) 
編成 声楽:ソロ(ATB)、合唱
器楽:トロンバ・ダ・ティラルシ(トランペット)、オーボエ3、ファゴット、
    ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約26分 (アーノンクール:27分、コープマン:27分) 
構成 第I部
 第1曲:コラール合唱(合唱、トロンバ・ダ・ティラルシ、オーボエ3、ファゴット、弦楽、通奏低音)
 第2曲:レチタティーヴォ(バス、弦楽、通奏低音)
 第3曲:アリア(テノール、通奏低音)
 第4曲:レチタティーヴォ(バス、通奏低音)
 第5曲:アリア(バス、オーボエ3、通奏低音)
 第6曲:アリア(アルト、弦楽、通奏低音)
 第7曲:コラール(合唱、トロンバ・ダ・ティラルシ、オーボエ3、弦楽、通奏低音)
第II部
 第8曲:アリア(バス、トランペット、オーボエ3、通奏低音)
 第9曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音)
 第10曲:二重唱(アルト、テノール、通奏低音)
 第11曲:コラール(合唱、トロンバ・ダ・ティラルシ、オーボエ3、弦楽、通奏低音)     
備考
J.リストの同名コラールに基づくコラール・カンタータで、第2年巻(いわゆるコラール・カンタータ年巻)の第1作。堂々たるフランス風序曲で始まる、2部構成、全11曲からなる力作。
第I部は、無限に続くかと思われる終末の責苦や災いと、それに対する恐れ、惑いを扱い、最後の審判のラッパの響きとともに始まる第II部では、現世の超克が促され、財貨への執着が戒められる。
第1,7,11曲で合唱のソプラノパートに重ねて演奏される「トロンバ・ダ・ティラルシ」の正体については様々な意見がある。アーノンクールは、トランペットの歌口でバロック・トロンボーンを吹かせる指示と解釈しているが、今回のBCJの演奏で果たして島田さんがどのような楽器を演奏してくださるか、注目である。

 


 《我らの主キリスト、ヨルダン川に来たりぬ》 BWV7  
 
初演 1724年 6月24日、ライプツィヒ 
用途 洗礼者ヨハネの祝日
礼拝での
   聖句
書簡  :イザヤ40,1-5
福音書:ルカ I,57-80 (洗礼者ヨハネの誕生と父ザガリヤの預言)     
歌詞 作者不詳
(引用:全曲にわたってM.ルターのコラール「われらの主キリスト、ヨルダンの川に来たり」(1541)より) 
編成 声楽:ソロ(ATB)、合唱
器楽:オーボエ・ダモーレ2、ヴァイオリン・コンチェルタンテ(solo)2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約26分 (レオンハルト:26分、コープマン:22分) 
構成 第1曲:コラール合唱(合唱、オーボエ・ダモーレ2、ヴァイオリン・コンチェエルタンテ1、弦楽、通奏低音)
第2曲:アリア(バス、通奏低音)
第3曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第4曲:アリア(テノール、ヴァイオリン・コンチェルタンテ2、通奏低音)
第5曲:レチタティーヴォ(バス、弦楽、通奏低音)
第6曲:アリア(アルト、オーボエ・ダモーレ2、弦楽、通奏低音)
第7曲:コラール(合唱、オーボエ・ダモーレ、弦楽、通奏低音) 
備考
M.ルターの同名コラールに基づくコラール・カンタータ。コラール・カンタータの第3作にあたる本作品は、スケールの大きな音楽に生き生きとした情景描写を盛り込みつつ、洗礼の意義と本質を考察していく。
カンタータはヨハネの洗礼を受けにヨルダン川にやってくるイエスに焦点を当てて始まり(第1曲の弦楽による表現:コラール旋律はテノールパート)、洗礼の水がキリストの血の象徴であり、愛の潮としての意義を持つことをコラールの最終節で明らかにして幕を閉じる。
第1曲(1パート)と第4曲(2パート)で活躍するヴァイオリン・コンチェルタンテが楽しみ。第4曲では夏、あず、秀三み一体の愉悦が聴けることでしょう! どことなく無伴奏チェロ組曲を思わせる第2曲のバス・アリアのコンティヌオでの鈴木秀美さんの演奏にも注目を。

 


 《われ、いかで世のことを問わん》 BWV94  
 
初演 1724年 8月 6日、ライプツィヒ
用途 三位一体節後第9日曜日
礼拝での
   聖句
書簡  :コリント I 10,6-13
福音書:ルカ16,1-9(不正な家令のたとえ)
歌詞 作者不詳
(引用:全曲にわたってB.キンダーマンのコラール「われいかで世のことを問わん」(1664)より)    
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:フルート・トラヴェルソ、オーボエ2、オーボエ・ダモーレ、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約25分 (レオンハルト:26分、コープマン:25分) 
構成 第1曲:コラール合唱(合唱、フルート・トラヴェルソ、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:アリア(バス、通奏低音)
第3曲:コラールとレチタティーヴォ(テノール、オーボエ2、通奏低音)
第4曲:アリア(アルト、フルート・トラヴェルソ、通奏低音)
第5曲:コラールとレチタティーヴォ(バス、通奏低音)
第6曲:アリア(テノール、、弦楽、通奏低音)
第7曲:アリア(ソプラノ、、オーボエ・ダモーレ、通奏低音)
第8曲:コラール(合唱、フルート・トラヴェルソ、オーボエ2、弦楽、通奏低音) 
備考
B.キンダーマンの同名コラールに基づくコラール・カンタータ。原コラールの各詩節を結ぶ「われいかで世のことを問わん」という言葉が、2つのアリアを除く各曲の歌詞の結びに使われ、当日の礼拝のテーマである「世の宝の拒絶」という想念が追求されてゆく。それは最後に、イエスという真の宝の認識へと達する。またこの曲は、以降数曲で見られる名人芸的なフルート・パートを持つ、最初のカンタータである。
BCJ第7回定期('93、6/5神戸、6/8東京)での演奏に続く再演。9年の月日を経て充実を深めたBCJのコラールの表現力を楽しみたいものです。'93年当時のメンバー表を見るとソプラノ13人、アルト8人、テノール7人、バス10人のお名前があり、なんと総勢38人!(ただし神戸と東京で全員が出演したのではないかのしれません・・・) 先日の「マタイ」公演よりも多い数です。今回の合唱メンバーはコンチェルティストを含めて14人。こんなところにもBCJの歩みが見てとれるのかもしれません。
第1曲と第4曲のオブリガード・ソロで活躍するトラヴェルソのパートは'93年には朝倉未来良さんが演奏されました。今回の演奏では菅きよみさんが妙技を披露してくださいます。楽しみです!

  


 《我が魂は主を崇め》 BWV10  
 
初演 1724年 7月 2日、ライプツィヒ                       
用途 マリアのエリザベト訪問の祝日(7月2日) 
礼拝での
   聖句
書簡  :イザヤ 11,2-5
福音書:ルカ 1,39-56(マリアのエリザベト訪問と賛歌) 
歌詞 作者不詳 (引用:ルカ伝第1章 「マニフィカト」のドイツ語訳に基づく) 
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:トランペット、オーボエ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約20分 (ミュンヒンガー:22分、レオンハルト:22分、リヒター:20分、ロッチュ:22分、
        リリンク:22分、コープマン:17分、ビュッフナー:19分、リューシンク:19分) 
構成 第1曲:コラール合唱(合唱、トランペット、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:アリア(ソプラノ、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第3曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第4曲:アリア(バス、通奏低音)
第5曲:コラール付き二重唱(アルト/テノール、トランペット、通奏低音)
第6曲:レチタティーヴォ(テノール、弦楽、通奏低音)
第7曲:コラール(合唱、トランペット、オーボエ2、弦楽、通奏低音)    
備考
コラール・カンタータ年巻の第5曲。当日は三位一体節後第4日曜日でもあったが、固定祝日の「マリア訪問の祝日」にちなんだ曲となった。バッハは当時ライプツィヒで親しまれていたグレゴリオ聖歌に由来するマニフィカト旋律を定旋律にとり、それを1,5,7曲に配している。この同じ定旋律がラテン語の「マニフィカト」BWV243の第10曲に現れるので、両曲がともに演奏される名古屋公演では是非そのつながりをお感じいただきたい。
BWV10の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら

 


 《愛する御神にすべてをゆだね》 BWV93  
 
初演 1724年 7月 9日、ライプツィヒ                       
用途 三位一体節後第5日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :第1ペテロ 3,8-15
福音書:ルカ 5,1-11(ペテロの大漁) 
歌詞 作者不詳
(引用:全曲にわたってG.ノイマルクのコラール「愛する御神にすべてをゆだね」(1657)より)
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:オーボエ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約18分 (ドールマン:23分、リヒター:24分、リリング:20分、
       アーノンクール:18分、ヘレヴェッヘ:20分、リューシンク:19分、ベリンガー:20分) 
構成 第1曲:コラール合唱(合唱、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:コラールとレチタティーヴォ(バス、通奏低音)
第3曲:アリア(テノール、弦楽、通奏低音)
第4曲:コラール付き二重唱(ソプラノ/アルト、弦楽、通奏低音)
第5曲:コラールとレチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第6曲:アリア(ソプラノ、オーボエ、通奏低音)
第7曲:コラール(合唱、オーボエ2、弦楽、通奏低音)  
備考
G.ノイマルクの同名コラールに基づく、典型的なコラール・カンタータ。ペテロの大漁をめぐる福音書章句を踏まえ、神の御旨への信頼を説く。
記念すべきBCJ第1回定期の冒頭に演奏された名曲。まさに“愛する神にすべてを委ね”たかのような教会カンタータ全曲演奏への船出だった。そして旅はつづく・・・。
BWV93の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら

 


 《なぜ うなだれるのか》 BWV107  
 
初演 1724年 7月23日、ライプツィヒ                       
用途 三位一体節後第7日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :ローマ 6,19-23
福音書:マルコ 8,1-9(ガリラヤの奇跡;7つのパンが四千人を満たす) 
歌詞 作者不詳 (引用:J.へールマンのコラール「なぜ うなだれるのか」(1630)の全節) 
編成 声楽:ソロ(STB)、合唱
器楽:コルノ・ダ・カッチャ、フラウト・トラヴェルソ2、オーボエ・ダモーレ2、
    ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約19分 
(リリング:17分、レオンハルト:19分、ヘレヴェッヘ:18分、リューシンク:18分、コープマン:17分)
構成 第1曲:コラール合唱
     (合唱、コルノ・ダ・カッチャ、フラウト・トラヴェルソ2、オーボエ・ダモーレ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(バス、オーボエ・ダモーレ2、弦楽、通奏低音)
第3曲:アリア(バス、弦楽、通奏低音)
第4曲:アリア(テノール、通奏低音)
第5曲:アリアとコラール(ソプラノ、オーボエ・ダモーレ2、通奏低音)
第6曲:アリア(アルト、フラウト・トラヴェルソ2、ヴァイオリン、通奏低音)
第7曲:コラール
     (合唱、コルノ・ダ・カッチャ、フラウト・トラヴェルソ2、オーボエ・ダモーレ2、弦楽、通奏低音)
備考
コラールの全節をそのまま歌詞とする、いわゆる「コラール・テキスト・カンタータ」。1724年にはこの一曲しかなく、詩人の協力が得られない事情があったとも考えられる。
冒頭の合唱曲は、旧作の転用とする説もある。第3曲以降には4つのアリアが連続。「御心の成就」の喜びに向けた流れが表現されている。
BWV107の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら

 


 《主なる神、我らの側に留まりたまわず》 BWV178  
 
初演 1724年 7月30日、ライプツィヒ                       
用途 三位一体節後第8日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :ローマ 8,12-17
福音書:マタイ 7,15-23(にせ預言者を警戒せよ) 
歌詞 作者不詳 
(引用:全曲にわたってJ.ヨーナスのコラール「主なる神、我らの側に留まりたまわず」(1524)より) 
編成 声楽:ソロ(ATB)、合唱
器楽:ホルン、オーボエ2、オーボエ・ダモーレ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約20分 (リリング:23分、リヒター:20分、アーノンクール:20分、リューシンク:20分) 
構成 第1曲:コラール合唱(合唱、ホルン、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:コラールとレチタティーヴォ(アルト、通奏低音)
第3曲:アリア(バス、ヴァイオリン、通奏低音)
第4曲:コラール(テノール、オーボエ・ダモーレ2、通奏低音)
第5曲:コラールとレチタティーヴォ(合唱、アルト/テノール/バス、通奏低音)
第6曲:アリア(テノール、弦楽、通奏低音)
第7曲:コラール(合唱、ホルン、オーボエ2、弦楽、通奏低音)     
備考
J.ヨーナスの同名コラールに基づくコラール・カンタータ。原コラールは詩篇第12篇に依拠したもので、神を味方に頼んでの敵との戦いをテーマとする。
歌詞作者は編作を通じて戦いのリアリティを強化し、バッハの音楽も全編に渡って劇的な迫力に富んだものになっている。
BWV178の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら

 


 《主イエス・キリスト、汝こよなき宝》 BWV113  
 
初演 1724年 8月20日、ライプツィヒ                       
用途 三位一体節後第11日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :第1コリント 15,1-10
福音書:ルカ 18,9-14(パリサイ人と取税人の譬え) 
歌詞 作者不詳 
(引用:全曲にわたってB.リングヴァルトのコラール「主イエス・キリスト、汝こよなき宝」(1588)より) 
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:フラウト・トラヴェルソ、オーボエ2、オーボエ・ダモーレ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約26分 (リリング:26分、レオンハルト:26分、リューシンク:25分、コープマン:23分、ガーディナー:24分)
構成 第1曲:コラール合唱(合唱、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:アリア(アルト、ヴァイオリンl,ll[ユニゾン]、通奏低音)
第3曲:アリア(バス、オーボエ・ダモーレ2、通奏低音)
第4曲:コラールとレチタティーヴォ(バス、通奏低音)
第5曲:アリア(テノール、フラウト・トラヴェルソ、通奏低音)
第6曲:レチタティーヴォ(テノール、弦楽、通奏低音)
第7曲:二重唱(ソプラノ/アルト、通奏低音)
第8曲:コラール(合唱、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ2、弦楽、通奏低音)     
備考
B.リングヴァルトの同名コラールに基づくコラール・カンタータ。内容的、音楽的に強い統一感が感じられる作品。
パリサイ人ではなく取税人が義とされたという当日の福音書章句をふまえ、正しい信仰の何たるかを説く。
BWV113の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら

 


 《ただ汝にのみ、主イエス・キリストよ》 BWV33  
 
初演 1724年 9月 3日、ライプツィヒ                       
用途 三位一体節後第13日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :ガラテヤ 3,15-22
福音書:ルカ 10,23-37(慈悲深いサマリア人の譬え)  
歌詞 作者不詳 
(引用:全曲にわたってK.フーベルトのコラール「ただ汝にのみ、主イエス・キリストよ」(1540)より) 
編成 声楽:ソロ(ATB)、合唱
器楽:オーボエ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約21分 (ハインツェ:26分、リリング:21分、レオンハルト:22分、リューシンク:21分) 
構成 第1曲:コラール合唱(合唱、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(バス、通奏低音)
第3曲:アリア(アルト、弦楽、通奏低音)
第4曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第5曲:二重唱(テノール/バス、オーボエ2、通奏低音)
第6曲:コラール(合唱、オーボエ2、弦楽、通奏低音)     
備考
K.フーベルトの同名コラールに基づくコラール・カンタータ。つつましい編成で書かれているが、その魅力は他の大作にひけをとらない。
当日の礼拝のテーマである、神への愛・隣人への愛を掘り下げた作品。
BWV33の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら

 


 《いと尊き御神よ、いつわれは死なん》 BWV8  
 
初演 1724年 9月24日、ライプツィヒ                       
用途 三位一体節後第16日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :エフェソ 3,13-21
福音書:ルカ 7,11-17(ナインの若者の甦り) 
歌詞 作者不詳 
(引用:全曲にわたってC.ノイマンのコラール「いと尊き御神よ、いつわれは死なん」(1690頃)より) 
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:ホルン、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ・ダモーレ2、オーボエ・ダ・カッチャ、
    ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約20分
(リリング:17分、リヒター:24分、ヴェルナー:21分、レオンハルト:19分、ヘレヴェッヘ:19分、
 リフキン:18分、トーマス:17分、リューシンク:18分、コープマン:19分) 
構成 第1曲:コラール合唱(合唱、ホルン、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ・ダモーレ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:アリア(テノール、オーボエ・ダモーレ、通奏低音)
第3曲:レチタティーヴォ(アルト、弦楽、通奏低音)
第4曲:アリア(バス、フラウト・トラヴェルソ、弦楽、通奏低音)
第5曲:レチタティーヴォ(ソプラノ、通奏低音)
第6曲:コラール(合唱、ホルン、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ・ダモーレ2、弦楽、通奏低音)     
備考
C.ノイマンの同名コラールに基づくコラール・カンタータ。原コラールが1690年頃なので、他のコラールに比べるとはるかに近代的な趣のもの。
過ぎ去りゆく時への哀惜の念、一種東洋的な無常感に満ち、死の問題を扱った同日用のカンタータの中でも、とりわけ感動的な作品。
1746/47年頃改訂再演の際には、全体を一音下げたニ長調稿が作成され、楽器編成にも手が加えられた。
BCJ定期では第9回(93/10/17)に演奏されている。この時の演奏では合唱のソプラノ・パートを補強するホルンパートは省略されたが今回はもちろん演奏される。また、レコーディングでは再演時の別稿からも収録が予定されているとのこと。 ※第9回定期のデータこちら! (02/09/12)
BWV8の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら

 


 《神の時こそいとよき時》(哀悼行事) BWV106  
 
初演 1707/08、ミュールハウゼン                       
用途 葬儀・追悼? 
礼拝での
   聖句
書簡  :−−−
福音書:−−−
歌詞 作者不詳(J.オレアーリウスの『キリスト教の祈りの学校』[ライプツィヒ、1668]に基づく)
(引用:使徒行伝17,28[第2曲a]、詩篇90,12[第2曲b]、イザヤ38,1[第2曲c]、
     外典シラク14,18および黙示録22,20[第2曲d]、詩篇31,6[第3曲a]、
     ルカ23,43およびM.ルターのコラール「平安と歓喜もてわれは往く」第1節[第3曲b]、
     A.ロイスナーのコラール「われ汝に依り頼む、主よ」第7節[第4曲])
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:リコーダー2、ヴィオラ・ダ・ガンバ2、通奏低音
演奏時間 約20分
(ラミン:21分、Prohaska:23分、シェルヘン:25分・19分、ゲンネンバイン:20分、リヒター:22分、
 ロッチュ:23分、Oehrwall:21分、レオンハルト:20分、リフキン:19分、ガーディナー:19分、トーマス:20分、
 コープマン:20分、BCJ:21分、リューシンク:21分、コレギウム・アウレウム:21分、ユングヘーネル:18分、
 リチェルカーレ・コンソート:20分、Patterson:17分、ヴェルナー:22分、Fasolis:18分) 
構成 第1曲:ソナティーナ(リコーダー2、ヴィオラ・ダ・カンバ2、通奏低音)
第2曲a:合唱(合唱、リコーダー2、ヴィオラ・ダ・カンバ2、通奏低音)
第2曲b:アリオーソ(テノール、リコーダー2、ヴィオラ・ダ・カンバ2、通奏低音)
第2曲c:アリオーソ(バス、リコーダー2、通奏低音)
第2曲d:合唱とアリオーソ(合唱/ソプラノ、リコーダー2、ヴィオラ・ダ・カンバ2、通奏低音)
第3曲a:アリア(アルト、通奏低音)
第3曲b:アリオーソとコラール(バス/アルト、ヴィオラ・ダ・カンバ2、通奏低音)
第4曲:合唱(合唱、リコーダー2、ヴィオラ・ダ・カンバ2、通奏低音)     
備考
ミュールハウゼン時代のカンタータ。成立の経緯は不詳であるが、1707年8月14日に行われた、母方の伯父 T.レンマーヒルトの葬儀のために書かれたとするのが古来の説。音楽は北・中部ドイツの先人たちの面影を強く残しており、編成もリコーダーとガンバを主体とした、古風で簡素なもの。とはいえ、そこに盛り込まれた感受性の豊かさは比類がなく、のちの傑作以上にこの作品を愛する人が少なくない。
テキストは上記のJ.オレアーリウスの詩集を手本に聖書の引用を綴り合わせ、そこにコラールを組み入れたもので、旧約的な恐怖の対象から新約的な救済の契機へと、死が捉え直される経緯を語る。
旧全集はオルガンの高いピッチ(コーアトーン:変ホ長調)、新全集は管楽器の低いピッチ(カンマートーン:ヘ長調)でスコアを統一しているため、曲は見かけ上2つの調で流布している。こうした2つのピッチの共有は、ミュールハウゼン/ヴァイマル時代のカンタータの基本的特徴である。今回(2002年)のBCJの演奏におけるピッチについてこちらにまとめたのでご覧いただきたい。(02/10/18) 
BCJ定期では第9回(93/10/17)第21回(95/11/6,7)で演奏されており、95年のプロダクションがカンタータCD第2巻に収められている。第9回定期のデータこちら! 
BWV106の「Bach Cantatas Website」のデータはこちら

 


 《イエスよ、汝はわが魂を》 BWV78  
 
初演 1724年 9月10日、ライプツィヒ                       
用途 三位一体節後第14日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :ガラテヤ 5,16-24
福音書:ルカ 17,11-19(イエスがらい病人を癒す) 
歌詞 作者不詳 
(引用:全曲にわたってJ.リストのコラール「イエスよ、汝はわが魂を」(1641)より) 
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:ホルン、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約21分
(ラミン:25分、リヒター:26分、ヴェルナー:26分、ゲンネンヴァイン:24分、マウエルスベルガー:24分、
 ロッチュ:26分、コルボ:26分、アーノンクール:21分、リリング:21分、リフキン:22分、
 ヘレヴェッヘ:23分、トーマス:21分、リューシンク:22分、パターソン:24分、コープマン:22分) 
構成 第1曲:コラール合唱(合唱、ホルン、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:二重唱(ソプラノ・アルト、通奏低音[ヴィオローネ])
第3曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第4曲:アリア(テノール、フラウト・トラヴェルソ、通奏低音)
第5曲:レチタティーヴォ(バス、弦楽、通奏低音)
第6曲:アリア(バス、オーボエ、弦楽、通奏低音)
第7曲:コラール(合唱、ホルン、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ2、弦楽、通奏低音)     
備考
J.リストの同名コラールに基づくコラール・カンタータ。完成度の高さ、全編にあふれる美しさゆえ、バッハのカンタータの中でも特に愛聴される作品のひとつ。
福音書章句の語るらい病人の治癒をふまえ、より本質的な癒しとしての「キリストの犠牲死による魂の救い」をテーマとしている。
第1曲のラメント・バスを思わせる足取りによる受難の悲劇性が、第2曲の喜ばしいデュエットで救い主に帰依するものの喜びに転じる。第3曲ではさらに視点が「われ」の内面に転換され、次の技巧的なトラヴェルソを伴ったアリアと続くバスのレチタティーヴォでキリストの十字架上の血の意義が噛みしめられる。第6曲のバスによる信頼のアリア華麗なオーボエのオブリガートがいろどり、簡素なコラールがこの多彩なカンタータを閉じる。
BCJにとってこの曲はまさにはじめの一歩結成後最初の演奏会で演奏されたカンタータなのである。その時(1990.4.25)の記録はこちら。13年の時を超え、今BCJの78番が再び響く!
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 《神なしたもう御業こそいと善けれ》 BWV99  
 
初演 1724年 9月17日、ライプツィヒ                       
用途 三位一体節後第15日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :ガラテヤ 5,25-6,10
福音書:マタイ 6,24-34(衣食のことを思い煩わず、まず神の国と神の義を求めよ) 
歌詞 作者不詳 
(引用:全曲にわたってS.ローディガストのコラール「神なしたもう御業こそいと善けれ」(1674)より) 
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:ホルン、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ・ダモーレ、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約18分
(リリング:17分、アーノンクール:18分、リフキン:17分、リューシンク:17分、コープマン:18分) 
構成 第1曲:コラール合唱(合唱、ホルン、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ・ダモーレ、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(バス、通奏低音)
第3曲:アリア(テノール、フラウト・トラヴェルソ、通奏低音)
第4曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音)
第5曲:二重唱(ソプラノ・アルト、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ・ダモーレ、通奏低音)
第6曲:コラール(合唱、ホルン、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ・ダモーレ、弦楽、通奏低音)     
備考
S.ローディガストの同名コラールに基づく3曲のカンタータのうちの最初の作品。(他はBWV98、100)
日常の思い煩いがいかに無益なものであるかを述べる福音書章句との密接な連携をはかりつつ、神に信頼すべきことを勧める内容。
協奏曲風な器楽パートを持つ愉悦感に満ちた冒頭合唱曲はケーテン時代の協奏曲の転用とも考えられる。第3曲のテノールアリアを導く技巧的なトラヴェルソは、半音階進行をまじえた音型と通奏低温の休止符によって、「十字架の盃」の苦さにとまどう魂の動揺を描いている。
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 《ああ、愛しきキリストの徒よ、雄雄しかれ》 BWV114  
 
初演 1724年10月1日、ライプツィヒ                       
用途 三位一体節後第17日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :エフェソ 4,1-6
福音書:ルカ 14,1-11(水腫患者の癒し。婚宴での末席選びの譬え) 
歌詞 作者不詳 
(引用:全曲にわたってJ.ギーガスのコラール「ああ、愛しきキリストの徒よ、雄雄しかれ」(1561)より) 
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:ホルン、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約24分
(リリング:27分、レオンハルト:24分、リューシンク:24分、コープマン:22分) 
構成 第1曲:コラール合唱(合唱、ホルン、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:アリア(テノール、フラウト・トラヴェルソ、通奏低音)
第3曲:レチタティーヴォ(バス、通奏低音)
第4曲:コラール(ソプラノ、通奏低音)
第5曲:アリア(アルト、オーボエ、弦楽、通奏低音)
第6曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第7曲:コラール(合唱、ホルン、オーボエ2、弦楽、通奏低音)     
備考
J.ギーガスの同名コラールに基づくコラール・カンタータ
人の罪を背負って死んだキリストのとりなしによって「幸いな死」を迎えることができるのだから、死による滅びという罰はキリスト者にとっては決して恐れるべきものではないと説く原コラールの主題を、ト短調を主調とする真摯な曲想で掘り下げた作品。
第2曲のテノール・アリアでは、「涙の谷」における悲嘆が歌われるが、中間部で魂はイエスの御手に逃れ場を見つけ、明るい足取りを得る。この曲で華を添えるトラヴェルソ・ソロのパート譜は第3曲以降が欠損状態になっている。
第4曲のコラールでは死の意義を語る「一粒の麦」の譬えが述べられる。この曲の通奏低音の動きをシュバイツァーは「(麦を)播く人の腕が地面に散らす動きと穀粒が落ちるさま」であるとしている。
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