Harmonica virtuoso |
1929年にQRSレーベルのセッション10曲でハモニカを吹き、その翌々年、1931年に女性を巡る諍いから亡くなったという。ブルーズマンの面目躍如というところだが、早すぎる死が惜しまれる。
唯一のレコーディングセッションとなった1929年5月(又は6月)のQRSレーベルへの吹き込みは、データの欠落から、実際のところ何日間にわたって行われたのか判然としない。が、おそらく2日間程度、長くとも数日のうちに行われたと考える。(なお、ジョージアのブルーズマン総出演のこのセッション。DOCUMENTのDOCD-5110にその全貌がまとめられている。)
まずは、G/VoのCURLEY WEAVERによる"NO NO BLUES"のセッションに参加。ビートの跳ねたこの曲でのEDDIEのハモニカはなんとも不安定な響きを醸し出している。それもそのはず、Ebのこの曲で、選ばれたハモニカはどうもF。つまり3穴吸音の半音ベンドをトニックとしたポジションで吹いているようなのだ。盤面に刻まれた幾多の戦前ハモニカ芸人の足跡のなかでも、こんな訳の分からないポジション取りは他に聴いたことがない。たまたま、曲のキーに合うハモニカの持ち合わせがなかったのか?それともあやしの効果を狙ったものか?真意は闇の中だが、とにかく一聴をお奨めする。(あまり応用はできそうにないけれど。)
ともあれ、EDDIEの芸の真骨頂は、主に2ndポジションのオクターブを活かした豊かで鋭い音色と、弾むようなタイム感覚。GUY LUMPKINのバックを付けた"DECATUR STREET DRAG"では、その特長が充分に発揮されている。
また、ソロで汽車真似を聴かせる"RIDING THE BLINDS"ではGEORGE "BULLET" WILLIAMSの"FRISCO LEAVING BIRMINGHAM"と共通するフレーズが随所に見受けられ、あるいは影響関係にあったのかも?と思わせる。その一方で、両者を聴き比べてみると、EDDIEの方がリズムが軽快で音も明るいなど個性の違いを感じさせてくれるのが興味深いところ。
他にも、"WICKED TREATIN' BLUES"では、DE FORD BAILEYの"EVENING PRAYER BLUES"に非常によく似た陰鬱な1stポジションの低音使いを披露したり、スタンダードの"CARELESS LOVE"ではWILL SHADEをはじめとするメンフィスのジャグバンド系ハモニカ吹きの影響を感じさせるなど、さまざまな要素を根っこに、エキセントリックな味付けを施した芸が彼の持ち味であるといえましょう。
discography
THE SOURCES
1920年代のアトランタは、周囲の黒人人口を吸収して膨れ上がる一方、黒人演芸の中心としても知られる街になっていた。WILLIE McTELL、BARBECUE BOBなど幾多のブルーズマンがこの街を目指したが、今回の主役、ハモニカ吹きのEDDIE MAPPもその一人。残念ながら生年は知られていないようだが、ともに録音を行なったCURLEY WEAVERらの同世代ないし少々年かさであったとするならば、今世紀初頭の数年間の生まれということになる。
* on DOCD-5110
CURLEY WEAVER; Curley Weaver, g/v; Eddie Mapp, h
Long Island City, N.Y.C. c.May.1929
464-A
NO NO BLUES
*
GUY LUMPKIN; Guy Lumpkin, g; Eddie Mapp, h
Long Island City, N.Y.C. c.May.1929
465--
DECATUR STREET DRAG
*
EDDIE MAPP AND HIS HARMONICA; Eddie Mapp, h solo
Long Island City, N.Y.C. c.May.1929
466-A
RIDING THE BLINDS
*
CURLEY WEAVER AND EDDIE MAPP; Curley Weaver, g/v; Eddie Mapp, h
Long Island City, N.Y.C. c.May.1929
468--
IT'S THE BEST STUFF YET
*
SLIM BARTON & EDDIE MAPP, Slim Barton, g-1/v-2/humming-3; Eddie Mapp, h; James Moore.h-4
Long Island City, N.Y.C. c.May.1929
469-A
I'M HOT LIKE THAT-1
*
470-A
CARELESS LOVE-1
*
471-A
WICKED TREATIN' BLUES-2,3
*
472--
IT'S TIGHT LIKE THAT-1
*
EDDIE MAPP, JAMES MOORE, h duet; acc. Guy Lumpkin, g.
Long Island City, N.Y.C. c.May.1929
476--
WHERE YOU BEEN SO LONG
*
SLIM BARTON & EDDIE MAPP, Slim Barton, g-1/v-2/humming-3; Eddie Mapp, h; James Moore.h-4
Long Island City, N.Y.C. c.May.1929
477--
FOURTH AVENUE BLUES-1,4
*
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