2000年5月19日(金)
音楽:ツェザール・プニー
台本:サンジョルジュ、プティパ
原作:ゴティエ「ミイラ物語」
指揮:アレクサンドル・ソートニコフ
振付け:ピエール・ラコット(1862年のプティパのモチーフによる)
美術と衣装:ピエール・ラコット
ゲネプロとは違って、やはり本番は締まっている。
音楽と舞台とのコンビネーションが完成されていて、舞台上のバレリーナも100%
の力を注いでいた。
ただ主役の二人がもの足りなかった。特にルニキナがやはり能面で、それはミイラとしての登場場面ではいいとしても、
夢の世界の王女様なんだからもっとなんとかしてほしい。フェッテでも足元がぐらぐらだし。パントマイムでの「会話」もい
かにも習いました、というレヴェルを越えず、「演技」の域には達していない。思い切り行くのではなく、失敗しないように
小さく固まっちゃっていた。
他方で、アレクサンドロヴァの大家ぶりは見事。
主役の召し使いで、アンドリエンコでみたときにはどうもアスピッチヤを引き立てるためのみじめな役所だなぁ、と思えた役が
生き生きときびきびとして、黒髪のおかっぱ、オリエンタルなエクゾチズムぶんぶんの衣装がぴったり似合うこともあって、華
やかでさえあった。いや、でしゃばって主役を食ってしまうのではなく、「わたしはわたしのバレエ」でそれがきらきら輝いていた。
この役はアレクサンドロヴァのおはこの一つになるのでは、と思わしめる。
このバレエ、音楽の平易さ(プニーはマリインスキー劇場付けの作曲家で数週間でこの大曲を作曲したらしい)、舞台の明るい豪華
さなど、ドンキホーテタイプ(夢をみて王女との恋に落ちるというロマンティックな筋書きはともかくとして)。
部族によるライオン狩りに、緑、赤のチュチュをきたコールドが弓矢をもってたくさん登場するなど、「無理矢理のバレエ化」という
面もないではないが、ボリショイの醍醐味を味わえるという意味で後味のよい舞台でした。
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