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向上訓練の研究
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集団討議法

■概略
集団は、その構成員に有形無形の影響を与えながら、集団の風土を形成します。一方で、構成員はその集団に帰属することによって安定を求めるという相互依存関係にあります。

つまり、人はその集団のもつ発想と行動から、強い影響を受けるという性質を、教育の場に活用しようと言うのが集団討議技法です。 グループ討議の活用は、研修技法という観点から大別すると、つぎのように分類することができます。

  1. フリーディスカッション技法(Free Discussion)
     リーダーレスディスカッション技法とも呼ばれているもので、管理者が特定のテーマについて自由に考え方を述べることによって「情報」「発想」「価値観」「経験」などを共有し合うことを目的とした技法です。

  2. パネルディスカッション技法(Panel Discussion)
    代表討議法とも呼称されています。管理上の特定テーマについて、専門的知識やリーダーシップを持った人(パネリスト)が、司会者のもとに討議を行います。そのとき、他の人々はそのパネリストの討議を聞く側に立ちます。
    一応の討議がなされた段階でそのプロセスを通じて提起された課題について、聴衆も参加した全体討議に発展させる技法です。

  3. コロキー技法(Colloquy Method)
    専門家陪席討議法とも呼ばれているものです。パネルディスカッション技法と同様ですが、聴衆の質問や意見に対して専門的立場からの見解を述べる専門家を配して運営する技法です。

  4. ダイアローグ技法(Dialogue Method)
    対話法です。二人のメンバー間の討論を受講者が聞くことによって、管理上の問題を理解する技法です。

  5. フォーラム(Forum)
    特定のテーマについて聴衆が判断するに必要な情報を提示することによって、そのテーマに関する関心度を高め、特定の態度を明らかにさせようとするものです。
    @レクチュアフォーラム(Lecture Forum)
    特定のテーマについて、まずレクチュアを行います。つぎに全体討議を発展させる方法をとります。

    A対話フォーラム
    特定のテーマについて対話をしたあと、全体討議に発展させます。

    Bディベートフォーラム(Debate Forum)
    最初に特定テーマのディベートを行い、そのあとに全体討議に発展させます。

    Cフィルムフォーラム(Film Forum)
    最初に特定のテーマに関するVTRなどの映像媒体を見たあと、全体討議に発展させます。

    Dダイアローグフォーラム(Dialogue Forum)
    二名の講師が特定のテーマについて討議したあとに、司会者を中心に講師と受講者が討議をする技法です。

  6. シンポジウム(Symposium)
    特定のテーマについて、複数の専門家が考えを述べます。そのあと、受講者より質問・意見を受けてから全体討議に発展させます。


  7. バズセッション(Buzz Session)
    特定のテーマについて、司会者のもとに、受講者全員が自由に発言できる機会が与えられることによって、受講者相互の気づきを通して、創造的問題解決を図ることを目的とした技法。

  8. 情報交換会議

  9. 拡大討議法
    討議を通して、討議参加者を拡大して、集団的問題解決と合意を図ります。

  10. リスク討議法
    職場内の不安感、不満を解消するために、受講者全員参加による自由討議法により、その解消を図る技法です。

  11. 三者構成討議法
    受講者を三グループに分け、グループ間の討議を通して、問題解決と合意形成を図ることを目的とします。

  12. 対向討議法
    受講者を二つのグループに分けます。つぎに二つのグループを通して問題の本質を明らかにしながら解決策と合意形成を図る技法です。

  13. シンジゲート討議法(Syndicate Method)
     特定のテーマに対して、互いに不足している分野を補い合うメンバーを選任して、討議を行う技法です。




■特徴と効果

討議法では、グループ・メンバー同士の相互作用を通して、各メンバーの持つ知識・経験・長所・持ち味などが互いに刺激しあって、相互啓発の効果を生むことが期待できます。
前項の各種討議技法を機能別に分類すると、

@ 非構造的なやり方
A 課題討議法
B 問題解決討議法
C 発展的討議法
D その他
などに分けられます。
進め方には配慮が必要です。声の大きいメンバーにグループが引きずられたり、グループの中で主導権争いや不毛の葛藤が生じたり、それをさけるために、おざなりな表面的な討議で終始したり、など、様々な弊害が生じやすいからです。このような弊害が生じないように予防措置を工夫することが、討議法を研修技法として成功させる要点であるといえます。



■活用の仕方

研修技法の観点から、グループ討議の活用の仕方について解説します。
  1. 非構造的なやり方

    テーマもリーダーも決めない非構造(アンストラクチャー)な方式で討議するやり方。フリー・フローティング・ディスカッションともいいます。エンカウンター・グループ、センシティビティ・トレーニング、ラボラトリー・トレーニングなどがその例としてあげられます。

    受講者の態度や行動の変容を促進する上で効果の大きいことが実証されていますが、このような方式のトレーニングを効果的に展開できるためには、指導担当のファシリテーター(またはトレーナー)として、特別の修練を積んだ優れた人材が必要です。

  2. 課題討議法

    グループ討議の課題をあらかじめ設定しておくやり方。ディスカッションのテーマとしては、次のようにいろいろなものがあげられます。

    @学生生活と企業人生活との相違点は何か。
    A中堅社員として果たすべき役割は何か。
    B部下後輩を指導育成する上で留意すべき点は何か。
    C新人を早く戦力化するには、どうしたらいいか。
    D部下のやる気を起こさせるには。

  3. 問題解決討議法

    問題解決技法と呼ばれるもの(ブレーンストーミングKJ法、特性要因図法など)を活用してディスカッションを進めるやり方のことです。

    ブレーンストーミングは、全員から意見が出やすいような自由な雰囲気を作るのに有効です。KJ法や特性要因図法は、ブレーンストーミングなどで出てきた意見を整理、図解することによって、ディスカッションのための共通の土俵づくりの作用をすることになります。

    特性要因図とは、QCサークルなどでQC7つ道具の一つとしてよく使われているもので、問題とその要因との関係を「魚の骨(フィッシュ・ボーン)」のような図解にして分析していく技法のことをいいます。


  4. 発展的討議法

    デベロプメンタル・ディスカッションともいいます。
    ミシガン大学のノーマン・R・F・メイアー教授が提唱したもので、あらまし次のような要領で討議を進めていきます。

    あるテーマをめぐって、ブレーンストーミングの要領で多角的に意見を出し合い、それを分類整理して、KJ法や特性要因図法などによって図解して、その中からさらに討議を発展させたいと思う重要なテーマを選定します。 その後、さらに多角的に意見を出し合います。

    こうしたことを何回も繰り返しながら、全員が納得できる質の高い結論を導き出そうとするやり方です。 注:「下図、NEXTで次ページへ続く」