When the Fortune rings out
天輪の音が響くとき

〜本格的にニューロエイジに踏み出す方のためのプレイングTips&コラム集〜

天輪の音が響くとき
はじめに
プレイヤー編 Page1】【プレイヤー編 Page2】【ルーラー編 Page1】【ルーラー編 Page2

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経験点の差
役者の経験点はいつもばらばら

 『トーキョーN◎VA』では消費経験点が異なるキャストがひとつのアクトに参加することはあり、実際よく起こります。
 持込みキャストに関しては今までのノウハウを蓄積して、N◎VA-Dルールブックに記述があります‥‥注意すべきは消費経験点数そのものではなく、特技コンボや最大達成値、装備などなのです。
 例えば貴方だけ経験点を3桁消費したキャストで、他のプレイヤーが作り立てほやほやのレベルだったら、アクトの中で不平は出るでしょうか?
 もし貴方がリサーチで毎シーン毎シーン高経験点キャストの強みを見せびらかし続けたり、延々とキャスト自慢を語っていたら、そりゃ誰でも嫌がるでしょう。(キャスト自慢をどれぐらいするかで、その人が人間としてどの程度なのかはよく推し測れます。機会があったら観察してみましょう。)
 しかし、ここぞという自分の見せ場やキャスト陣の生死が掛かった戦闘の一番大事なところで、高経験点ならではのスーパーコンボが炸裂しても、場は盛り上がり、むしろ感謝されることさえあります。

全体を見渡し、平等を実現しよう

 要はアクト全体リソースを意識して自分の見せ場をわきまえつつ、その中で表現しようということです。そして周りのキャストの能力が低いなら、全員が平等に活躍できるように気を遣いましょう。

 オフィシャルのリプレイ『ナイトブレイク』でも、鹿島アスカ巡査が30点、クロイツェルと千早怜呀が約300点という格差の中でアクトが行われていますが、結果は御覧の通りです。
 筆者も経験点0点の龍一族の少年と経験点1818点の吸血鬼神祖を一緒に相手にRLしたことがあり、しかもアクトは盛り上がったことがあります。
 これはかなり極端な例ですが、参加者が互いを尊重しあう気持ちを持っていれば、キャストの経験点差はあまり問題にならないということです。

消費経験点の目安

 N◎VA-Dのキャストは作り方が実に様々なので、目安を算出できません。非常に雑な概算ですが、慣れていない方の為に列挙してみましょう。

消費経験点の目安

0点:
 作りたて。ルールの穴をついたデータ的な作り込みが激しいと実は0点でもかなり強いキャストが作れるが、全体的にはまだ弱い。データ的な勝負になると回りのキャスト/ゲストに比べて劣る。設定としても若く未熟な少年少女のキャストや、周りに助けられながら進んでいく主人公に向いている。
50点〜:
 この辺りから、だんだんキャストのやりたいことができるようになってくる。作り込み方によっては強くなる。
100点〜:
 多くのアクトで安心して運用できるライン。リサーチ/カット進行でも当初から構想していた特技コンボが一定のスートで安定して出せる。作り込んでいると業物級の装備や奥義が出てくる。
200点〜:
 一般に強いと言われるライン。敵が強いシナリオでもこのラインのキャストがいてくれると安心できる。顔キャスト、代表キャストや名物キャストにはこのラインも多い。また、必要最小限ではなく趣味に走ったキャストの場合は、構想を実現するために100点台ではなく200点台の経験点が必要になることも多い。
300点、400点〜:
 趣味のライン。戦闘能力はだんだん拮抗し全員が十分に備えているため、経験点はやりたいことに注ぎ込む形になってくる。設定の再現、特技数オーバーの特技や追加装備、ブランチ、さらなる強さの追及、代表キャストの体面、などなど。
500点〜:
 キャスト数減少のライン。300点台、400点台のキャストはまだ比較的存在するものの、500点台を超えると数が少なくなる。構想を実現するには経験点的には既に十分であるため。これ以降は、顔キャストだから、長く使っているから、「目指せ1000点」など特定の目標があるから、などの目的があって使い続ける場合が多い。
1000点〜:
 レジェンド級のライン。ここまで来るともはや何でもありのため、どんなキャストになるか予想がつかない。貴方のN◎VAライフの中でも見かけるのは稀だろう。目撃も数人に留まるはず。

 この表は参考までに留めてください。N◎VAプレイヤーにも様々おり、ルールをキチキチと読み込んで低経験点で強いキャストが作れる人もいます。一方でどんなに頑張っても強いキャストが作れない人もいます。
 また作り方にもよる所があり、エニグマやトループ、腹心などに経験点が必要なキャストは消費経験点が多くなります。ウェットなど制限を入れているキャストもそうでしょう。
 また、一般に支援系キャストは完全戦闘系のキャストに比べ、低めの経験点でも十分使える傾向が多くなります。《プリーズ!》1回や<※盾の乙女>の1回が戦局を変えることも多いからです。
 スタイルによっても差があります。例えば実際に使っている多くの人が感じていますが、<※消沈>や<※ポルターガイスト><※母性本能>などに頼らずに他人が守れる、正統派のカブトを作ろうとすると経験点が多めに必要になります。


キャスト陣構成を考えよう
スタイル構成

 さあ、ある面白そうなシナリオのプレイが近付いてきました。プレアクトの調整段階に入ったとしましょう。
 誰でもアクトをする時、スタイルが同じような被ったキャストは避けるはずです。これはこれでよいことです。しかし防御系神業や打消し系神業など、幾つあっても困らない神業もあります。また戦闘系スタイルはたとえスタイルが同じでも、コンボや愛用の得物がまったく違ったりしており、二人いてもまったく問題ない場合もあります。他のキャストの情報が分かるなら、事前に見渡してみましょう。

年齢構成

 スタイルのほかにも考慮すべき事項はいろいろあります。
 例えば候補に上がってるキャストが全員図ったように20代半ばだったら‥‥それよりは若さ一杯の10代のストリートキッズと、渋い初老の探偵と、何百年生きてるのか分からないようなアヤカシがいた方が、対比が出て面白いかもしれません。
 女性が二人いるなら同年代でチームを組むのも楽しそうですが‥‥大人のお姉さんと少女というのも対比になるでしょう。

性別構成

 候補キャストが全員男性でした。よーくアクトトレーラーを見たら、シナリオコネまで全員オヤジだったら? まあそんなシナリオはあまり見かけませんが、なんというかこうムーンと男気が全開な予感(悪寒?)がするなら、女性の一人や二人いたほうが華やぐでしょう。
 逆に登場人物が女性ばかりだったら? ブラックハウンド機動捜査課オンリーで『逮捕しちゃうぞ』ならぬ『《制裁》しちゃうぞ』がやりたいとか、真教系ミッションスクールの女子高で先輩が妹を指導する制度が(以下略)だとかでもない限り、あまり考えられませんが‥‥男の子の一人や二人いたほうが健全に(?)見えるでしょう。
 どんな物語も、男女両方いたほうが自然に見えるものです。

その他の構成

 例えば考え方。レイ巡査のように悪いことは見過ごせないウェットな熱血漢がいるなら、4人ともウェットで熱くなりすぎるよりは、ニューロエイジの乾いた現実こそが似合う冷たいキャストもいた方がいいかもしれません。年少のキャストがウェットな主人公格で、回りを支えるのが大人というのがパターンです。
 他にも所属勢力や設定、立場、外見の差など、キャスト構成で差をつけた方がよい要素はいろいろとあります。

 キャスト陣が揃ったら、アニメやコンシューマーゲームなどの設定資料によくある身長対比図のように、彼らが並んで思い思いのポーズで立っているところをちょっと想像してみましょう。
 なるべくバラエティに富んだ個性的な面々が揃うようにした方が、アクトはたいてい面白く、またN◎VAらしくなります。
 勿論、時には全員ブラックハウンド所属など、縛りがあるアクトもそれはそれで面白いでしょう。イヌ縛りの『スリードッグナイト』はまさにこれですね。他で考えてみると‥‥全員後方処理課縛りだと何か抑圧された闇の仕事人ストーリーぽくなりそうですね。トーキーやフェイトで縛るのは神業の性質上難しそうです。
 このキャスト陣構成に関しては、世の中に存在する様々なストーリーの登場人物構成が参考になります。小説の書き方の本なども役に立つでしょう。


他の登場人物を知ろう
う〜ん、本当に表現できているのだろうか?

 現実世界でも、他人というものは自分が期待するほど自分のことを理解してはくれないものです。ゲームの中のニューロエイジ世界もまた然り。貴方のキャストは自分の想像の中ではイメージが固まっていてものすごく格好よいかも知れませんが‥‥外世界への表現ができていなくて‥‥他の参加者はジツは全然違うイメージを抱いていた、なんてこともあるかもしれません。
 コンベンション等やあまり面識のない人とのプレイで、他のキャストの一人とアクトの最後まであまり接触できずに終わってしまい、結局どういうキャストなのか最後までよく分からなかった、なんてこともあります。よく日記系サイトで自分のキャラクターが今日のセッションでどんなに活躍したかがオレカッコイー成分全開で綴ってあって、でも実際には卓を囲んだ他人から見たら全然違ってた、なんてことも時にはありえます。
 キャストの持っている能力、設定などは1回のアクトでは全ては表現しきれないことが多いですし、たまたまその日のアクト前の自己紹介では言い忘れてしまったこともあるでしょう。

他者を理解しよう

 アクト全体を見渡せる余裕ができたら、その外世界の他者側の方からも、できるだけ他のキャストを理解するように努めましょう。相手がどんなキャストなのか分かれば、それで対応できることもあります。
 例えばシリアス系のキャストがPC2枠にいたとします。ロールプレイとしては決して自分からは言わないので分かりにくいけれど、過去に大切な人を失って復讐を誓っているとしたら。他者側に位置している貴方のキャストからできることはあるでしょうか。
 何かのきっかけでその事情を知ったのなら、励ましたり協力することもできるでしょうし、貴方のキャストが異性でその失った人に面影が似ているなら、ちょっといい話になるかもしれません。
 何も友好的なものではなくてもいいのです。ハードな世界に生きているキャストならそういうウェットな心を嘲うこともあるでしょうし、実は貴方のキャストはむしろ捜し求める仇に似ているのかもしれません。いずれにせよ互いを理解しあうことで、そこには以前にはないドラマが生まれるはずです。
 例えばオフィシャルのリプレイ『スリードッグナイト』に登場する“黄金の記憶”メモリは、自分と母を捨てた父であるウィリアム多聞に復讐するためハウンドに入ったという設定です。これが父の背中を求めているレイとの対比を出すためであるのは、恐らく事前に狙ってのことでしょう。実際、作中でもその対比がうまく生かされています。こんな風に、他者を理解しているから成せることもあるのです。

キャスト紹介の活用のススメ

 N◎VAを扱ったウェブサイトは1999-2000年頃に爆発的に増えたことがあったのですが、そんな中でいわゆるキャスト紹介というのはどこでもよく見かけるありふれたコンテンツでした。かく言う当サイトにもあります。
 初心者が見るのに例として適切、面白い技能コンボを使っている、経験点も入っててとにかく強い、設定が格好いい、イラストが綺麗、人物として魅力的、そのキャストが登場するリプレイがある、そのキャストになりきりChatやBBSで会える、あるいは実際のアクトで会える‥‥などなどなど、売りがあるものもあれば、本当にただ単に載っているだけで目的がさっぱり分からないものもあり、実に様々なのですが。
 活用してみるとよく分かるのですがこのキャスト紹介、単なるキャラ自慢の他に「プレアクトの打ち合わせで使える」という隠れた長所があります。
 互いのキャストのイメージを掴むには口で説明してもらうよりはるかに楽ですし、RLから見れば各種データのチェックにも使えます。BBSでプレアクトの打ち合わせをするなら、毎回紹介文を書き込む手間もなくURLを貼り付けるだけで済みます。ネットに繋げる環境の人同士で遊ぶなら、活用してみると良いでしょう。特に、オンラインアクトで遊ぶ際は用意しておくとすぐ参照できたりして何かと便利です。
 Web上に掲載するならフォーマットは様々です。自作もできますしフォーマットを公開しているサイトもあります。

公開されているキャストフォーマット

★D-Dragonさんの【D-Dragon's Cave

 当方のサイトでも頼まれてフォーマットを贈呈したこともあります。ここまで読んでくれた貴方のためのおまけですが、ジツはブランクシートは こんなところ にあります。(笑)
 Webからブラウズでき、ユーザーに技術がなくても複数登録と更新、削除が行える機能がCGIで実装されている‥‥という点では、【ガニメデごすぺらーず】さんにある『N◎VAキャラデータベースCGI』がRR版ながら今でもよく使われていますね。データをテキストベースで持ち、Perl によるCGIアプリケーションで更新する方式ですが、稼働率が高いところというと以下があります。

稼働率の高いキャストDB

★揚紅龍さんの【《難攻不落》っ!!!】のCharacter Data Base
★c-sagiさんの【WIRED EDEN】のcast personalitiez
★助清さんの【極東世界征服社/ニューロの轟音!!】のキャストDB
★はたはたさんの【SwordDancer】の一心不乱キャストDB

 中にはソースコードを改造して検索機能が強化されているところもあります。本コンテンツRL編の『■電脳のばを考えるの所。』に載せたツールリンク集の中にも、HTMLでプロファイルシートを吐き出せるものがあります。

 また、俯瞰しているとこのキャスト紹介、Detonationの時代にはよりアクトでの実戦を意識したものが増えました。アクトでの参照を意識したもの、拾える導入が追記してあるもの‥‥などなど。このへんもノウハウの蓄積ができてきたと考えてよいでしょうか。特に想定導入が書いてあるのはRLさんから見ても助かりますね。
 また、2004年頃からのblog系サイトの普及により、トレンドがあります。プレアクトの調整に使える簡単なキャスト紹介やプレアクトテキストを、日々の日記のようにエントリとして追加していくというものです。blogサービスによっては検索性にやや欠けるのが難点ですが、BBS上などでもURLを貼り付けられますし、これは便利ですね。

そして、シナリオのことも知ろう

 そしてこの「他の登場人物を知ろう」というのは、そのままRLサイドの登場人物にも、アクト全体にも当てはまります。貴方がよく知らないオフィシャルゲストがシナリオに出てきそうで、しかも重要な役回りでありそうなら、思い出しておくとアクト中に役に立つでしょう。
 プレアクトのテキストにシナリオコネで書いてあったり、RLが説明してくれた人名はきっとそのシナリオの重要ゲストで、貴方のキャストとの接触が極めて重要な役割を果たすのかもしれません。

 一生懸命準備してハンドアウトも用意してきたシナリオが、いよいよ始まろうとしている時。あらかじめ説明しておいたはずの重要ゲストの人名が出た時に「そいつ、誰だっけ?」などと言われたら、どんなRLさんだってゲンナリしてやる気が失せます。これはRLを尊重する観点から言ったら、かなり失礼な行為です。
 逆に「ハンドアウトは全部読んできました。じゃあ僕のキャストとの関係は過去にXXだったことでどうですかね‥‥」という流れになれば、RLサイドだって「おお、今日のPC1はヤる気だ。こっちも本気でヤるぜ!(くわっ!)」と思います。ちゃんと名前を覚えておいたり、どんな人物なのか質問したりすれば、きっとRLさんは喜んで対応してくれるでしょう。
 気分を盛り立てるアクトトレーラーも読んでおきましょう。アクトが始まる前から面白そうだと思ったアクトは、たいてい実際に面白いアクトになります。

 アクト直前の段階でトレーラーやハンドアウトを実際に参照するには手段がいります。電子データとしてWeb上に公開されているなら、携帯電話やその他端末からアクセスすることもできるでしょう。学生の人には馴染みが薄いでしょうが、手帳サイズのPDAに電子データとして保存しておくと便利です。
 RLサイドから準備するとしたら、書式にはあまりこだわらず、トレーラーとハンドアウトと付加情報をB5版かA4版1枚ぐらいにまとめて印刷し、コピーをPL全員に配っておくのがよいようです。
 配り方には方法があって、その枠担当分だけをはさみで切り取って各PLに配るRLさんと、全員分の情報を全員に配るRLさんがいます。
 本稿では後者を勧めます。ここまでお読みならお分かりでしょう――アクト全体を見渡して、他のキャストの情報、他のキャストの導入を知っておくことも重要だからです。


他のプレイヤーとキャストを尊重しよう
不完全なゲーム

 N◎VA-Dの時代が来る遥か以前、もはや手に入らない1stの時代からず〜っと同じですが、『トーキョーN◎VA』シリーズはルールに穴を残していたり、解釈を一定に定めないでユーザー任せにしていたり、高い自由度を残して間口を広く取っていたりする部分があります。プレイヤーの自己陶酔を増長しやすい部分もありますし、N◎VAだから許されても他のゲームシステムでは(より正確に言えば、FEAR系システム以外では)許されないこともあります。
 Detonation時代でだいぶ整備はされましたが、穴をついた「ルール上可能なこと」と「実際にやっていいこと」の間には、相変わらず曖昧模糊とした灰色の境界で分かたれたラインがあります。その分、遊ぶ側にもモラルが必要です。

汝、相手を尊ぶべし

 貴方のキャストは強いでしょうか。強いとしたら、「負ける」ことはできますか? 自分のキャストに陶酔するのは誰でもできますが、他のキャストを立てる、引き立て役を演じることはできるでしょうか。
 シーンプレイヤーを尊重することはできるでしょうか。相手が低経験点キャストだったりN◎VAに不慣れな人だったら、気を遣ってあげることはできますか? 相手のプレイヤーが自分と違う考えの持ち主だったとき、それを尊重することはできるでしょうか?

 技術的に上手いプレイヤーの条件には「かっこいいキャストを演じられる」だけではなくて「相手を立てるのが上手い」ことも入っています。
 本当に面白いアクトは、参加者が一丸になってよいアクトを作り上げようとした時にこそ生まれるものです。筆者も過去の様々なアクトから、これを強く感じます。貴方も本当は分かっているでしょう。なんだかんだ言ってTRPGで一番大事なのが「一緒に遊ぶ面子」であることを。この事実はきっと、これからもずっと変わらないでしょう。
 例え舞台の上では裏世界の誇りを掛けた銃が二人の間に向けられていたとしても、現実世界のプレイヤーは紳士的に。レディ&ジェントルマンなプレイで行きましょう。

 そして自分の出番がない時に関係ない話をしたり漫画を読んだり、果ては寝ちゃったりするのは一般的にTRPGのマナーとしてよくないと言われていますが、実際そうです。
 人間の集中力には限界がありますから息抜きは必要です。が、それでも、裏舞台で出番がない時は他のキャストが表舞台で何をしているのか、耳を傾けましょう。プレイヤーは俳優ですが、同時に観客でもあるのです。
 PL全員が他のキャストの表舞台には一切注意を払わず舞台裏で好き勝手。自分の表舞台でだけそれぞれがまとまりなく自分では格好いいと思うロールプレイをして、他の誰も見ていない‥‥なんていうアクトは、RLの視点から見るとよく分かるのですが、ただの烏合の衆で少しもスタイリッシュではありません。


ルーラーを尊重しよう
やっぱり、RLの方が大変なのだ

 TRPGという遊びが生まれてから数十年経ちますが、今も昔もあまり変わらず、そしてN◎VA-Dでも変わらない事実があります。なんだかんだ言っても、やはりプレイヤーよりルーラーの方が大変なのです。

 PLはアクトに何を用意してくるでしょうか。レコードシートのコピーを持ってきたり、自分のキャストを作ってきたり、あとはせいぜいアクト中の自分のキャストの格好いい活躍を夢想しているぐらいでしょう。
 ではRLは? シナリオを作るにも手間は掛かりますし、アクトの準備もあります。そして一旦アクトが始まれば、物語の中に登場する世界の全てを、一人で担当しなければなりません。
 N◎VA-Dを始め様々なFEARエンジン搭載ゲームでは、RLの方が経験点を多めに貰えたり、負担を軽減できる様々な仕組みが工夫されてきています。それでも、RLの方が大変なのは今も昔も変わりません。

アクトの中で応えよう

 RLは確実に、PLより多くの手間を掛けてアクトを準備してきます。できるところはどんどん助けましょう。願わくば経験点が貰えるからだけではなく、RLを尊重するために助けましょう。

 RLは何を用意してきたのでしょうか? それは空白だらけのニューロエイジ世界を埋める、素敵なオリジナル設定が出てくるシナリオかもしれません。オフィシャルゲストが霞んで見えるような、格好いいゲストかもしれません。夜叉やエリスや千早牙門でも逃げ帰るような奇妙奇ッ怪な最凶コンボや、すごい仕掛けのあるシナリオかもしれません。読んだら誰でも震えてしまうような、どうしようもなく格好いいアクトトレーラーなのかもしれません。
 RLが用意してきたものには、アクトの中で応えましょう。何かとんでもないことが起こるイベントがシナリオに用意されているなら、覚悟を決めて進んで飛び込みましょう。ニューロなことには素直に驚きましょう。
ドラマチックなシーンやロマンスが用意されていたなら‥‥たとえRLの思惑や陰謀通りには行かなかったとしても‥‥気の利いた台詞のひとつぐらいは言ってあげましょう。

 こうすることで、貴方が得られることもあります――立場が逆の時です。貴方がRLでそのRLさんがPLに回った時。相手もきっと、貴方を同じように尊重してくれます。自分のアクトにPLが応えてくれた時の喜びを、その人も知っているからです。


アクト全体を見渡そう
役者にして同時に観客である

 さてN◎VAのプレイにある程度慣れてきたら、貴方は「素晴らしい活躍をした」にチェックが入るようになったでしょうか。貴方のキャストはカッコ良かったですか? うむ、それは何より。
 他の項でも何度か触れてきましたが、プレイヤーが取れる視点は「自分のキャストの目を通してアクトの中の世界を見る視点」より上位に、もうひとつあります。「参加者と観客の目を兼ねて、アクト全体を見渡す」視点です。
 自分の動き方に満足できるようになったら視点を広げて、この上位の視点にシフトしてみましょう。自分に浸るのは誰でも出来ますが、その上があるのです。

 アクト全体を見渡してみましょう。物語全体は大団円を迎えていますか? 他のキャストが活躍したり、うまく物語をまとめようとしたとき、それを手助けしたり立てたりするようなことはできていますか?
 貴方のキャストは貴方の中では超☆カッコよかったかもしれません。でも後になって冷静に考えると、物語全体からの視点から見たら――舞台をぶち壊すようなことをしてたりしませんか? 横にいるキャストにスポットライトが当たる大事なシーンで邪魔をしていたりしませんか? 思い出してみると冷や汗がでてきたりして‥‥? プレイに慣れてきたらこのへんも考えてみましょう。
 そして、何もキャスト同士が安っぽいオトモダチで助け合っている必要はありません。キャスト同士は殺し合いをしていても、「他のプレイヤーを助けた」にチェックが入る可能性はあるのです。

 そしてちょっとでもいいですから、全員が楽しめるように、物語がより面白くなるように、配慮しましょう。上でも述べましたが、参加者が一丸となってよいアクトを、よい物語を作り上げようとした時こそが、本当に楽しいアクトになります。筆者の経験からも、これは断言できます。

どうやったらできるだろう?

 ではもし貴方が初心者で、そろそろ慣れてきたしヒトツ、アクト全体を見渡す視点を養ってみようと思い立ったら。どうすればよいでしょう。
 簡単な方法がひとつあります。RLすることです。N◎VA以外のシステムのGMもよいでしょう。
 ゲームマスターというのは物語を全体から見ています。PCとNPC、シナリオに出てくる要素や舞台の世界、その全体です。その視点を知ることは、PLをする際にも大いに参考になります。
 また、プレイの記録を取ってみるのもよいことです。録音にせよメモにせよ貴方の記憶にせよ、作成する時は後になってアクト全体を思い出しますから、きっといろいろと気付く点があるでしょう。
 楽しいリプレイ、あるいはプレイレポート、それから最近流行りのプレイ日記。TRPGはまず楽しくあるべきですから、反省メインになる必要はありません。楽しい思い出を記録に取る中でも、気付いた点はあるはずです。
 ネットの世界でもトレンドがあって、2003年後半〜2004年頃にblogが普及し、TRPG系でもずいぶん増えました。TRPG日記を書いている人もかなりの数に昇ります。これらを参考にもできます。
 さあ、貴方の友達は楽しかった今日のアクトのことをTRPG日記にどう書いているでしょうか。アクト全体をきちんと見渡しているでしょうか。それとも自分のキャスト自慢ばっかりだったり‥‥?


ルーラーもしよう!
Be Ruler!!

 前項でRLは大変だと書いたのは残念ながら事実ですし、アクトの完成度は、PLの腕よりもRLの腕によって左右される部分が大きいのも事実です。自分はあんまり上手くないし‥‥と尻込みしてRLするのを遠慮してしまうのも分かる気はします。実際、ネット上で活動している人でも、なかなか立派なことを言うわりに割合とPLしか遊んでいない人、PLからRLに回ると実力ががくっと下がる人も見受けられます。
 それでも、RLもして遊びましょう! TRPGの楽しみの半分を体験していないのは、もったいないし片手落ちです。ある程度の技術があった方がアクトが面白くなるのは真実ですが、遊びなんですし気張らずにやってみましょう。
 それに、『トーキョーN◎VA』シリーズは明らかに、参加者が持ち回りでRLしていく遊び方を想定してデザインされています。

RLをすれば分かるもの

 そして――RLをして初めて分かることもあります。その楽しみも苦労も分かるでしょう。
「自分がPLの時、こういう場面でこうすればRLは助かるんだ」「こう進めていけば状況が打開できたんだ」「こういうことをしてしまうと、RLの準備を殺してしまうことになるんだ。ていうかあの時あのシナリオでやっちゃったよ! ボクってダメじゃん!」というのが段々分かってくるでしょう。
 実際、RL経験の豊富な人はPLで入る時、RLを困らせるようなキャストや困らせるような行動をあまり取らないものですし、概してRLに協力的です。ここでRL経験の有無が見分けられます。
 この見えない協力関係が進むと、分かっているRLとPLの間では、何も言わずとも心が通じる阿吽の呼吸のようなモノが生まれてきて、プレイが一層スムーズになります。


リソースを意識しよう
リソースは有限なのだ!

 「リソース (Resource) 」には資産や手段や機知、Web上の情報源や環境問題でおなじみの資源‥‥などなど様々な意味があります。ここでは、1回のアクトで消費することができるものの総量、特に時間の総量と位置づけます。

 時間無制限でゆっくり遊べることもあるでしょうが――大抵のアクトでは時間はある程度有限で、リソースは一定のはずです。制限になるのはコンベンションの終了時間だったり、家の門限だったり御家族の都合だったり、公共施設やカラオケボックスの時間制限だったり、ポストポストアクトのお食事その他大人の飲み物の会の予約時間だったりするでしょう。
 主人公が複数人、例えばキャストが4人いるアクト。貴方の分身が1アクト内のリソースを消費して活躍できるのはどれくらいでしょう? 約1/4ですね。キャストが5人だったら約1/5になります。
 そうです。リソースは有限で、その中でキャストはみな平等に活躍した方がよいのです。厳密に計算はできないことですが、見せ場を奪い合わないように、でしゃばり過ぎないように時には退くことも考えて、互いに配慮しあいましょう。

 例えば貴方の隣にいるPLさんのキャストが、シナリオコネで過去の仇が設定されていたとします。復讐を誓うきっかけになった過去のシーンは、降りしきる雨の中で倒れる最愛の人と、その脇で冷たい微笑を浮かべる浄化派能天使の図。ぽわぽわ〜んとばっちり妄想も済んでいて、アクト中でもヤる気満々だったとします。
 ここで聖母殿の密名を受けてN◎VAに来ていた貴方のエージェントが実は強いとしたら。アクト中で獅子奮迅の大活躍をし過ぎて、<※旋風撃>が絵札で炸裂してトループと一緒にうっかりその仇の能天使も一緒に倒してしまったらどうでしょうか。
 仇を討つはずのだった彼がもう瀕死で貴方に「後を頼む」とオートアクションで言ってから [気絶] しているならともかく、これはその人の分のリソースを侵食しているし、観客の目から見たら物語としても盛り上がりが半減ですね。

 高経験点を消費した強いキャスト。エグゼクやクロマクなど組織上層部に属するキャスト。都合のいい設定のあるキャスト。そしてPLが目立ちたがりだったり、何かしらPLレベルで人間として問題のある人だった時。これらの場合に、つい他人の分までリソースを侵食しがちです。ある程度は意識しましょう。

参加人数によって変わってくる

 こう考えるとすぐ分かりますが、PLが5人の時よりは4人の時、4人の時よりは3人の時の方が、1アクトで1人当たりが使えるリソースは多いことになります。突き詰めるとPL1人、さらに究極はPL0人でRLが脳内妄想するだけが最強となりそうですが、それは寂しいのでやめておましょう。(笑)
 オフィシャルシナリオや、ゲーマーズフィールド・コンベンションなどのオフィシャルイベントでは、大抵PLは5人を想定しています。まあイベントは一人でも多くの人にセッションを遊んで欲しいのですから多いのも当然ですが、5人用のオフィシャルシナリオをプライベートで遊ぶときは――導入を調整して4人で遊んだ方が丁度いい場合が非常に多くなっています。(N◎VA以外のFEAR系システム全般のシナリオでもそうですね。)
 全てが文字情報でしか伝わらないオンラインアクトの場合は、さらにリソース的に最適なPL人数は少なくなります。PLは2〜3人でも十分、逆に4人以上では多くなってきます。


他のキャストと絡んでみよう

 GFコンでは同席した互いのプレイヤー、互いのキャストを認知させるためにキャスト間コネをアクト前に持たせる工夫は長らく実行されていましたが、Revolution にはルールとしてはその記述はありませんでした。(というのは1998年に Revolution が出た後で、ゲーマーズ・フィールドが本格稼動したからですね。)
 その後GF誌の記事でこのテクニックが紹介され、RRではルールとして記述され、N◎VA-Dの時代ではこのキャスト間コネはすっかり御馴染みになっています。
 Dの時代にずいぶんソフト路線にはなりましたが、ニューロエイジはサイバーパンクRPGの伝統を受け継ぐ厳しい世界です。みんな仲良くオトモダチでダンジョンに向かう安っぽい仲良し関係になる必要はどこにもありません。それでも多くのアクトではキャスト間コネはつきますし、お友達以外にも関係は考えられます。

ある名もなきオトコたちの例

 たとえば貴方の分身が、カーライル全盛の今でもなお行方不明のボスの消息を捜し求める、紅蓮所属の孤高の殺し屋だとしたら。コネの相手は前のヤバい仕事が見つかりそうだったイヌだったり、裏社会でその腕を認め合った河渡のカタナなのかもしれないのです。

 『★リソースを意識しよう』で述べたリソースの話と一緒に考えてみましょう。キャストが4人のアクト、貴方はレッガー導入。貴方のそのキャストが他の誰とも接触せず、孤独に仕事を果たして舞台から消えていったとします。
 きっとオープニングでクーゲルが殺しの依頼をしてくるのでしょう。貴方の実力をせせら笑うマーダー・インクのエキストラ面々の前でとりあえずシーンの背景にいる裏切り者を一人撃ち殺し、孤独な物語は始まります。
 リサーチシーンでいろいろあって、クライマックスで目標を倒して、エンディングでは「この街への復讐には、お前の力が必要だ」という復讐の魔弾の誘いを断り、孤独な殺し屋は独り去っていくのです。う〜ん、オレのキャストカックイ〜。ヽ(@▽@)ノ
 この場合、乱暴に計算するとリソースを消費して活躍した量は1アクト総量の1/4になります。

 では、他のキャストの河渡連合あたりのカタナも同じような導入で舞台に上がっていたとします。まあよく考えるとレッガー導入が2つあるシナリオというのは珍しいですが、どちらかがカタナ導入だったとしましょう。二人の間に出会いがあったらどうでしょうか。
 リサーチで何か盛り上がる出会いのシーンがあって、反発しつつ渋々とある程度協力しあって、クライマックスの戦闘で互いが助け合う一幕があったりして。エンディングではきっと2人が互いの腕を認め合う格好いいやり取りがあって、別々の方向に去っていくのです。
「次に会う時は俺の銃の向く先に、お前も含まれているだろう」「‥‥楽しみにしている」とかとか。う〜ん、やっぱりオレたちのキャストカックイ〜。ヽ(@▽@)ノ
 この場合‥‥おや、1/4+1/4でアクト総量の1/2、貴方たちが活躍する量がずいぶん増えているではありませんか。

 ここで、1/2をコンビの2人の2で割ったら元の1/4と同じじゃんという考え方もできますが‥‥1つのアクトで4人がそれぞれ完全にばらばらの独立した物語を体験していくよりも、互いの接触、介入があった方が、活躍できる量は確実に増えます。

レッツ・コンタクト!

 機会があったら他のキャストに絡んでみましょう。他のキャストが3人いたら全員に絡むのは難しいし不自然な場合も多いですから、コネが繋がっている1人2人に絞ってアタックしてみましょう。そこから生まれる予想外のドラマやちょっといいシーンもあるはずです。『スリードッグナイト』の欄外にも、ロールプレイの基本は「自分も相手もカッコよく」だとこっそり書いてありますよ。

 それに――面白かったアクトを思い返すとよくあるのですが、一番盛り上がったり笑いを取ったり、記憶に残ったりするのは、シナリオの本筋とはあまり関係ない、キャスト同士の絡みの場面だったりすることはよくあります。


事前の準備をしてみよう

 N◎VA-Dのルールでプレアクトは説明されており、特にRLには欠かせない作業ですが、PLにも大切です。
 プレアクトはアクト開始直前の準備段階と定義されていますが、ここでは直前よりも以前の段階も含みます。いわゆる「プレプレアクト」と言った方がいいかもしれません。

準備もまた楽しみ

 参加者がみなインターネットに繋げる環境にあるなら、コンテンツやBBSで導入の提示もでき、キャストの調整もできるでしょう。メールやチャットでも打ち合わせはできます。繋げない環境でも、携帯電話や携帯メール、直に会うなど、方法はあります。

 さあ、他のプレイヤーは、そして他のキャストはどんな面子が揃ったでしょうか。
 貴方の分身と一緒に、彼らが運命の舞台に立っているところをちょっと想像してみましょう。彼らとはどんな関係になりそうでしょうか。彼らとこんな台詞をやりとりしたら楽しくなりそうだったり、キャスト間コネに相応しいちょっとした過去の設定を思いついたり、なんだかワクワクしてきませんか?
 そしてどんなアクトトレーラー、どんなハンドアウトが用意されているのでしょうか。形になって提示されていれば、シナリオもある程度想像できるでしょう。親切なRLなら事前にどんな話なのか、ムードや、どんなゲストが出てくるのか、ほんのちょっとだけ教えてくれるかもしれません。
 貴方の分身はそのシナリオのムードに相応しいでしょうか。きっとあんなシーンがあってそこに登場したり、きっとこんなことをしてくるゲストが登場して、そこにこんな台詞を言ったらきっと盛り上がりそうだったり‥‥。
 よし、今回は弱いけど気に入っているSSS追加アウトフィッツのあれを使ってみよう。前にも別のアクトで会ったツッコミ所満載のあのキャストには、あのタイミングで絶対この台詞を言ってやろう。あれこれ考えていると、なんだか余計にワクワクしてきませんか?

 そうです。そうやって遊んだアクトは何倍も楽しくなるのです。プレアクトやプレプレアクトの事前の準備には、「気持ちが高まる」という重要な効果があるのです。近年ではよく「モチベーション」という言葉が使われますが、モチベーションを高めるのとほぼ同義でしょう。本格的なシナリオや記念すべきアクトを遊ぶ際には特に、事前の準備を多めに整えましょう。

 まったくの余談ですが、当サイトのセッション・レポートに掲載されているアクトでは、本格的なものの多くは見えないところでこの事前の準備を行っています。プレアクトが明文化される以前からずっとそうでしたね。


獲得経験点にこだわりすぎないようにしよう

 厳密に経験点消費を数えてプレイしている方には、この項目は除外になります。
 N◎VA-Dの経験システムは、経験点を貰えるような行動を取ればよいプレイになるように工夫されています。経験点がたくさん入って万事めでたしめでたし。とはいえ、常にそれが働くとは限りません。経験点のためだけではなく、よいアクトのためにアクトを遊びましょう。シーン登場回数が埋まらなかったり、神業を使い切れなくても、面白くて仕方のなかったアクトというのは存在します。
 例えばよく言われますが‥‥《死の舞踏》が余ったからと言ってエンディングでなんの脈絡もなくそこらへんの人を斬るのはちょっとナニでアレでしょう。[0以下:ダメージなし]が自由に選べるようになったN◎VA-Dでもやっぱりちょっとナニでアレです。えっ、桜華道場に行って悠羽との練習試合で使った? それは‥‥ニューロかも。

真の達人は‥‥エンディングで神業を使う! (注:うそ)

 シナリオ構造が定式化したN◎VA-Dの環境では、神業が余るというのは多くの場合クライマックスの戦闘において起こり、残った神業を使うのは各自のエンディングフェイズ‥‥ということが多いでしょう。
 経験点が入るにせよ入らないにせよ、どんな使い方をするか頭をひねるのも面白いでしょうね。


カメラの前は人でいっぱい

 リサーチシーンが始まれば様々なことが起こります。様々なシーンがあって、様々なゲストやエキストラが出てきます。
 キャストは次々と登場したり、カードだけ出しておいて予約したり、虎視眈々と機会を伺いながら夏王朝四千年の歴史に伝わる“登場判定の構え”(嘘)に入ったりするでしょう。
 シーンではどこかでカメラが回っています。登場人物がたくさん出てくると一人一人が色褪せてしまったり、元々のシーンプレイヤーが誰なのか忘れてしまったり、キャスト/ゲストが入り乱れて誰が誰に向かって喋っているのか分からなくなったり‥‥混乱することもあります。
 実際、例えばキャスト5人が同じシーンに登場し、PL5人が独立して喋っていると。PL一人一人は格好いいロールプレイをしているつもりでも、シーン全体を眺める視点にあるRLから見れば、ただの烏合の衆にしか見えずにぜんぜん格好良くなんかないこともあります。

 そんな時は、出番は次のシーンでGetしようと登場判定の構えは解いて、他に譲るのも手です。そしてそんな時、一旦シーンを閉じて改めて次シーンに行くのも、ルーリングのテクニックです。
 ここで言うカメラとはなんでしょうか‥‥次の話で、詳しく述べることにしましょう。


演出の助け舟:銀幕の向こう側を意識してみよう

 さて貴方はアクトの中で自分のキャストのロールプレイをしたり、演出を考えたりしていくことでしょう。何か指針はあるでしょうか。ここで助け舟をひとつ。

すごい、このアクトが映画になるんだって?!

 そのアクトが映画になったと仮定してみましょう。想像するだけですから出来について心配することはありません。きっと、アカデミー賞が貰えるくらいものすごく面白い映画です。いや、N◎VAはB級っぽさが各所に漂っているのでアカデミーは無理っぽいですが‥‥とにかく面白い映画としましょう。
 ならば各シーンでは、どこかでカメラが回っているはずです。カメラがレンズの中に捉えているものは様々です。
 スティンガーとの約束の店を探し、うらぶれた危険なストリートを彷徨うPC4を遠景から写しているかもしれません。PC2が右手の先にエニグマを召喚する時は、そこにズームアップするでしょう。そこでPC3が登場したり、闇の中から敵ゲストがゆっくりと登場したら、カメラはそちらに向くでしょう。きっとシーンプレイヤーのキャストの方には、優先してカメラが向くことでしょう。
 そして、出来上がった映画を、銀幕の向こう側で観客が見ているはずです。

すごい、このアクトがリプレイになるんだって?!

 あるいはそのアクトがリプレイになると仮定してみましょう。こちらも想像するだけですから出来は無問題です。きっと同人誌として買ったり、Webコンテンツとしてアクセスしてきて読んだ人はみんなまた遊びたくなるような、ニューロで超☆面白いリプレイでしょう。地の文でシーンが描写されて、次に貴方たちが交わした会話が文章となって読み手に伝わっていきます。読み手は仮想的な銀幕を通して、その向こうのキャストたちを見ています。
 貴方はどうするでしょうか。きっと読者の目を意識して、行動が分かりやすいように、カッコよさが伝わるように、頑張るでしょうね。

すごい、このアクトが(以下略)

 あるいは演劇の舞台でもいいです。舞台でキャストたちが演技して、舞台と観客席の間の仮想的な銀幕を通し、一段下の観客席で観客たちが見ています。
 あるいはコンシューマーゲームのRPGの戦闘シーンを。自キャラとモンスターたちが対峙していて、プレイステーションのアナログスティックみたいな物をぐりぐり回すと視点が変わるところを。この時はテレビの画面が銀幕になります。

 これらに共通するのは、仮想的な銀幕やカメラがあり、その向こうに観客がいるということです。この銀幕やカメラを意識して、その向こう側の観客に分かるように仕草や台詞を言ってみましょう。別にカメラ目線になれと言っているのではありません。(笑)
 そのシーンで自分たちのキャストは今どんなふうに映っていて、カメラの焦点は今どこに向いているのだろう‥‥? このシーン、読者から見たらどうだろう。さっきの台詞はなかなか良かったかな。ダラダラ続くよりもここで終わった方が締まって見えるかな‥‥?
 そんなことを想像しながらロールプレイすると、なんとなくうまくいくことがあります。シネマティックな映画的アクトを遊ぶなら、意識してみるのもいいですよ。
 偶然ですがこの話は『ストレイライト』のRL講座「●スクリーンを意識する」にも、まったく同じようなことが書いてあります。


ライブラリーを増やしていこう

 多くのTRPGゲーマーは小説を読んだり漫画を読んだり、映画を見たりTVを見たりコンシューマーゲームをやったり音楽を聴いたり、その他諸々、様々なものから、ストーリーやシーンの断片、イメージの欠片を得ています。N◎VAを遊んでいる人も大概そうです。

内なる図書館の引き出し

 貴方もきっとそうでしょう。それでいいのです。現実世界でさまざまな人生経験を得ていくのも同様に役立ちます。そうやって自分の中の図書館に、蓄積されたものを増やしていきましょう。単一の作品の単一のキャラクターをそのままコピーして演じたらそれはパクリでしょうが、複数の作品の様々な断片が交じり合い、更に貴方の独自の部分も入っていたら、それはもうオリジナルです。
 そうやって内なる図書館に蓄えられたライブラリーが充実し、『ストレイライト』にも記述のある「引き出し」が増えてくれば、自然と大事な時に引き出せるものも増えてきます。こんな場面でこんなことをすれば盛り上がるんじゃないか、こんなことを言えばちょっと格好付くんじゃないか、やっぱりここはこうするのがセオリーだろう、そういうものが自然と出てくることが多くなります。PLをする際にもRLをする際にも、これは役に立ちます。
 観察しているとやはりプレイ経験の豊富な人、年齢層的に人生経験のある人(例えば、社会人)ほど、PLとしての動き方やキャストのロールプレイにも幅や深みがあるようです。
 もちろんTRPGを楽しむ権利は誰にでもありますから、貴方がもしまだ経験が足りなくとも、別に尻込みする必要はありません。様々な機会に貴方の内なる図書館を広げていきましょう。


PC村の話
出典

 多くのシナリオではハンドアウトが整備され、キャストの枠が固定で用意されているN◎VA-Dの現在。PC1枠、PC2枠、‥‥の枠ごとにだいたい共通点があることからPC1村、PC2村などと揶揄されるこの話。
 これはまだハンドアウトがないR時代、N◎VAに先駆けてPC1〜PC5のハンドアウト制度があった『アルシャード』や『ブレイド・オブ・アルカナ』のシナリオで枠ごとに共通点があることから、一部の日記系サイトで話題にされていた言葉でした。PC5はいつも聖グラディウシア騎士団やエクスカリバー所属で「我れ我が道を行く」枠であることを笑い話にしたりするものです。
 Dの時代になってN◎VA-Dもハンドアウト制を取る他のFEAR系システムの仲間入りをし、この言い回しはN◎VAの世界でも時折見られるようになりました。
 このゲームではご存知のようにプレイヤーキャラクターのことは「キャスト」と呼称しますが、この話題に限ってはキャスト1村やキャスト2とは呼ばすにPC1村、PC2と呼びます。面白いですね。

 ちなみにN◎VA-Dルールブックの用語集をよく調べると、ゲストやトループ、エキストラの3種類をまとめて「NPC」と定義していますが、、「PC」という用語は本当にこのゲームにはどこにも出てきません。
 従ってルールを曲解すると、アクトシートに書いてあるRL経験点算出の『÷3(もしくはPC人数)』は、3で割らない場合は常に0もしくはヌルで割ることになり、ジツはRLさんは残念ながら結局1点も獲得できません。AI生命体にRLをしてもらった日にはこの演算を行った時点でエラーが発生しそうですが‥‥肝心の話を進めましょう。

出身村の特徴

出身村とその特徴

PC1村:
 主人公。過去の重大な秘密がアクトの中で設定として追加されたり、アツい主人公台詞を言いまくったり、シナリオコネになっている味方の重要ゲストを救ったりする役。比較的若い年齢のキャスト向け。ヒロインを助けてラヴな展開になりそうなシナリオでは、未婚の男性キャストが想定で、なぜかフェイトの場合が圧倒的に非常に多い。
PC2村:
 準主人公。PC1の次に見せ場が多く、PC1とは協力関係にあったり、ライバル的な関係にあったり、キャストの中のヒロインであったり、様々。スタイルはクグツであったりイヌであったりカタナやカブトであったり、様々。またPC2〜3あたりがPC1より戦闘能力が高い場合も多い。PC1に比べると比較的年上のキャストを想定している場合もある。
PC3村:
 脇役1。多くの場合は主人公たちをサポートして物語を繋げ、進めていく役。PC3〜4のあたりになるとシナリオコネがオープニングで依頼をしてくるだけのチョイ役有名ゲストだったり、キャストにお願いをしてオープニングでもう死んでしまうエキストラだったり、だんだんおざなりになってくる。主人公たちの陰で地道に捜査をすることになるイヌなど。PC1〜PC2が依頼人からのお願いなど人間関係、感情から来るモチベーションであった場合、PC3〜PC4は組織系のモチベーション(所属企業の指示など)が多い。
 番号の大きいPC3〜5を、俗に「ビッグナンバー」と呼ぶN◎VA方言もある。数字が大きいほど、シナリオに関わっていくモチベーションが弱くなっていく。
PC4村:
 脇役2。シナリオとの関係度が低い役。PC1〜3がシナリオの本筋に関わる場合、本筋とは違う理由でシナリオに関わる場合が多い。事件捜査を命じられたイヌ、事件の報道を目指すトーキー、企業世界からの密かな調査任務を受けたクグツ、敵ゲストがたまたま殺害目的だったカタナなど。脇役相応の見せ場しかなくなるが、その分自由に行動できる。PL人数が多い場合、もっとも削られやすいのがPC4〜5。
 またPC4とPC5はほぼ似たような意味合いで用いられることが多い。差があるとしたらPC4はシナリオとの関係度が多少なりともまだあり、PC5はそれすらまったくなかったりする。
PC5村:
 その他の外野。シナリオとの関係度がさらに低い役。ひどい言い方をするといてもいなくても話は進む役。《暴露》がされてもされなくてもシナリオ上はどちらでもいいトーキー、戦闘力補強の目的でおざなりなハンドアウトが用意されているカタナなど。特にトーキーに多く、「永遠のPC5」と揶揄される。
 またPC5はシナリオとの関係度が最も低いことから、キャストの自由度がもっとも高い。導入を拾い難い特異なキャスト、人外の存在、俗に超人病と呼ばれる強い(あるいは強いと言い張っている)キャスト、これら超人奇人魔人に神の類は、とりあえずPC5に放り込んでおくと無事な場合が多い。これも俗に「超人はPC5」などと揶揄される。

 村の話はよくフィーリングで語られますし、シナリオによってもかなり差があるのでこの特徴は必ずしも正しくはないのですが、まとめると上のような感じになります。

出身村は免罪符ではない

 上のような特徴を用いて、「どんな妄想だよ。とりあえずPC5にでも逝っとけ」「今日の主役はすごいPC1力だったなー」「いやーボクのキャストPC3村ばっかなんですよ〜」「いやー、真のPC1は違うなぁ〜 (´ー`)y-~~」などとネタとしてよく会話に使われるわけですが。
 ひとつ注意するべきなのは、何でもかんでも出身村を言い訳にしてはいけないということです。「ボクはPC1だから美味しい所は全部貰うよー。ヒロインも見せ場もみんなボクのものだ! お前ら脇役は引っ込んでな!」とか「今日のオレはPC5だから、シナリオがどうなろうが知ったこっちゃないね〜」などという態度は慎むべきですね。
 キャストは全員が平等に活躍してこそ、よいアクトです。平等な上で、ある程度の主役級や脇役級の差を意識するのはよいことです。

貴方は何村?

 思い返してみて、貴方はPC何村を遊ぶことが多いでしょうか。貴方のキャストたちは何村出身のことが多いですか? 一緒に遊んでいるお友達はどうでしょう? おや、改めて集計してみるとけっこう偏っていたりして‥‥?
 ニューロエイジに様々な人物がいるのと同様、プレイヤーにも様々なタイプがいます。いざとなるとスイッチが入ったように、端から見てると赤面するような恥ずかしい台詞を垂れ流す主人公属性が強い人もいます。そこにいるだけでシーンを引き締めてくれる渋い大人が得意な人もいます。主人公の影で堅実に一行をサポートし、物語を完成に導いてくれる脇役がピカイチの人もいます。
 比較的年齢層が高く経験のあるPL陣ほど、脇役を選んだりする傾向があるようですね。(というのはキャストの中の人のPLも大人になってくると、言うのも聞くのもハズカシイあまりに若々しい台詞がだんだん苦手になってきたりするからです。)
 『キャスト陣構成を考えよう』にて、個性的な面々が揃った方がアクトは面白くなると述べました。構成を考えるとき、出身村も合わせて考えると面白いかもしれませんね。


リサーチの楽しみ方

 さて、調査方法を思いつかなくても、誰でも技能判定だけで情報が入手できる、いわゆるSSS形式、情報項目形式のルール。N◎VAの過去の歴史の中では紆余曲折あったのですが、N◎VA-Dの現在においてはすっかり定着しました。俯瞰すると、若い世代の人ほどこの形式に抵抗がない場合が多いですね。
 これについてはRLのマスタリング技術に負う所が多く、RL編の『情報項目形式を考えてみるの所。』で長所と短所について取り上げています。PL編でも取り上げてみましょう。

 この形式のリサーチがつまらないという話を時折聞きます。確かにルールを額面通り受け取ってそれだけを実行すると、無味乾燥なものになるかもしれません。
 登場したはいいけど別にすることなし。適当に1回<社会:N◎VA>の判定をしたら情報が入ってきた。そのまま退場。なーんだ、これなら舞台裏で1回判定しても同じじゃないか。そして次のシーンも、その次のシーンもまた同じ。モチベーションがどうのと言い訳しながら登場しないシーンが続いたら、いつの間にかクライマックス。おっとっと、シーン登場回数が足りていないぞ‥‥? う〜ん確かに、これでは何のためにN◎VAを遊んでいるのか分かりませんね。

RLも、全てのシーンを用意しているわけではない

 RL技術のある人はアドリブを駆使したり、PLをフォローしたりして、キャストが登場したシーンを演出していきます。本当はシナリオに何も書いていないのにイベントを起こして、全てがシナリオに書いてある通りであるかのように予定通りの顔で振舞える人もいます。
 とはいえ――世界をたった一人で担当していて忙しいRLも万能ではありません。時にはシナリオや頭の中に、用意が整っていないシーンもあります。
「うーん、あの情報を手に入れたら次は重要イベントなんだけど、もうちょっとだな。まあこのシーンは何もないし場所も自由、シーンプレイヤーの好きに行動させて、適当に情報収集でもしてもらおうか」‥‥そんな風に考えている場合もよくあります。
(注意してRLさんの反応を見ましょう。相手の素振りで分かります。あるいは「このシーンはこっちから場所を設定していいですか?」と聞いてみましょう。)
 そんな時は、PLサイドからシーンに関わる提案を何かしてみましょう。トーキョーN◎VAは災厄の街ですが、そのシーンは恐ろしい黒服軍団が襲ってくるわけでもなく、安全が(おそらくは)約束されています。自由に動けるんだからこんなにありがたいことはありません。
 そして、RL編の『にゅうろなことはなるべく採用すべし。』にも書きましたが、TRPGのマスタリングの鉄則として『PLのやりたいこと、面白そうだと思ったことはやらせてみる』というものがあります。相手が優秀なRLさんなら、きっとOKを出してくれます。承認が出たということは、そのシーンは何か面白くなる可能性があるということです。

 どこへ行きましょう? ブラックハウンド基地本部に戻って考えをまとめるのもいいでしょう。機動捜査課のゆかいな仲間たちの誰かが、背景に登場してくるかも知れません。これから行う情報収集の<社会:ストリート>の判定はBARで人に聞いたことにするのもよいでしょう。そこが“ヤロール”やキャストの一人が経営している店だったら、ただカクテルを傾けているだけでもなんとなくカッコつくかもしれません。
 いずれにせよ貴方が何か発言し、RLがうまく合いの手を入れて描写してくれた所で、それまで無色透明で何もなかったシーンは一気に鮮やかになります。災厄の街かはたまた何処か、そこには背景があり、人々が行き交い、色と音があるわけです。
 参加者にとってこれらがイメージできるかできないかでは、大きく差があります。そのシーンは何か予想もしなかったイベントが起こるかもしれないし、興味を感じて他のキャストが登場してくるかもしれません。そのシーンで行う予定だった行動がルール的には1〜2回の社会技能判定だけだったとしても、アクトに参加し、世界の中で生きている気分はずっと増すでしょう。

 また、貴方がもしN◎VAに慣れているなら逆にここで注意なのですが――こうしたPLサイドからのアプローチは、ほどほどにしておきましょう。たいていの場合は問題ないのですが、問題はPL/RL双方が知り合いでだらだらと馴れ合いになっている時、RLが優秀で人を乗せていい気分にさせるのが上手かったり、シーンのハンドリングを自分から放置してPLが勝手にやりたい放題にやっている時です。
 PLからのアプローチが度を過ぎると、中にはRLを無視してシーンを勝手に進めたり、ゲストを乗っ取って(N◎VA方言で「ハックする」とも言います)一人二役で勝手に台詞を言わせたり、なんだかヒドイ大惨事に陥ることもあります。
 FEAR系システムはオフィシャルが出しているリプレイでこういう悪いプレイを増長させている部分もあるのですが‥‥これはあまりよいプレイングとは言えませんね。もはや自己満足の域ですし、裁定者が不在ですからもはやゲームではありません。世界の裁定権は常にRLサイドにあることは、心に留めておきましょう。

技能判定に演出を加えてみよう

 ルール的には貴方は社会技能判定を行い、その結果として一定の情報が返ってきます。結果は同一ですが、その過程を演出して表現してみましょう。これもキャストの個性を表現するよい機会だと思って、やってみましょう。
 『キャストに魂を吹き込もう』で述べてきたことは、もちろんすべてを実行する必要はありませんが――ある程度参考にすることにしてみたり、自分なりにいろいろ考えているなら、貴方はキャストのイメージを持っているはずです。それに沿ってそのキャストならどうするか、考えてみましょう。

 貴方がもし稲垣機関や天津機関、北米に名高いMIDのような諜報機関員やセニットの裏工作担当だったら、その情報はスパイにしか分からない何かすごい方法で手にいれたのかもしれません。
 貴方がニューロだったら、ニューロお得意の技でどこかのデータベースに侵入して得てきた情報かもしれません。(組み合わせに<電脳>を入れるだけでも、ずいぶんそれっぽくなります。達成値の上昇が認められなかったら気分だけでもよいのです。)
 技能判定をする際に、「今日のアクトは判定の時に何か理由をつけてみよう」と自分なりに縛りを入れるのもよいでしょう。考え込みすぎてアクトが停滞するのも問題ですから、全判定に必ず理由をつける必要はないですが、こういう工夫のあるシーンは盛り上がります。リサーチシーンもキャストの個性を表現するよい機会だと考えて、トライしてみましょう。

他の技能も使ってみよう

 <※ニュースソース>や<※風の噂>などの達成値上昇系は除外しますが‥‥情報項目形式に慣れきっていると、ついやってしまうのがこれ。戦闘以外の状況で役立つ特技を使わなくなることです。
 情報項目形式を突き詰めると、Dのルールでの強いキャストの条件は以下のようになってしまいます。

Dルールにおけるつよいキャストのじょうけん

★しゃかいぎのうをいっぱいもっていてリサーチができる
★せんとうでつよい

 これはこれでまったくもって正しくはありますが、架空世界に命を持って生きているキャラクター達の個性は、そんな薄っぺらいものだけなのでしょうか?
 面白そうなことを思いついたらどんどんやってみましょう。ゲストが目の前にいたら‥‥味気ない社会判定でなく<知覚>や<心理>でも何か分かるかもしれません。<※シャープアイ>を持ったフェイトは普通のキャストより目が利くでしょうし、<※シャーロック・ホームズ>があれば絶対分からないようなことも分かるかもしれません。マヤカシが<※伝心>を使うのはどうでしょうか。
 敵のアジトのアドレスを得る必要があったら、社会判定の代わりに<※霊査>するのはどうでしょう。<※神託>や<※隠れバディ>が助けてくれたら、必ず何か一定の演出を加えたらどうでしょうか。
 特技以外でも様々に考えられます。社会技能の代わりに<芸術:占い>で何故か情報が入手できたらどうでしょう。今度の敵が<社会:テクノロジー>でないとスペックが分からない超☆新型ウォーカーだったら‥‥世界の戦場を渡り歩いた傭兵なら、<社会:軍事>で何か知っていてもカッコ良くはないでしょうか。

 相手が優秀なRLさんなら、そういう予定外の新鮮な行動は、多くの場合に採用してくれます。(何故なら、『にゅうろなことはなるべく採用すべし。』だからです。TRPGにおいて、セッションが面白くなりそうなことはやらせるべきなのです。)
 その場が受けて盛り上がるかもしれません。ニューロな思いつきなら、親切なRLさんなら達成値は15だったけど18の情報までオマケして教えてくれるかもしれません。調査方法や演出の工夫で目標値が上下する‥‥というのはN◎VAのルーリングではあまり行われませんが、これをしてくれたのなら感謝して先に進みましょう。
(この場合、あとでシナリオを読んだら何のことはない、18の情報として教えてくれたのはジツは15の情報だったとしても、怒ってはいけません。RLさんはアクトを盛り上げるために嘘をついているのです。RLの仕事は「PLを騙すこと」だからです。)
 つまらないリサーチの多くは、単純な技能判定とその答えというルーチンワークの繰り返しを行っているからでしょう。TRPGは元来クリエイティヴな遊びです。頭を使って、ニューロなことを考えてみましょう。

コネも使ってみよう

 社会技能だけで全情報が入手可能になると、時々忘れがちなのがコネ技能を使うこと。コネも立派な情報源で、社会技能判定と同じように結果を得ることができます。
 親しい仲間内でのプレイでなければ、リサーチを面白くしようと思って使うならばオリジナルのゲストなどではなく、オフィシャルゲストの――しかも参加メンバーがみな知ってそうな有名人の方が盛り上がりやすいでしょう。
 表舞台ならきっとその人物に会いに行くなり、電話が繋がるなりするでしょう。出てくるのは誰でしょう? ブラックハウンドのゆかいな仲間たちなら、同僚のよしみで何か教えてくれるかもしれません。
 別件で企業間闘争に偶然関わっていたイワヤト深海のあの人なら、上の方の事情については「君が知る必要がない」と言いつつもシナリオに関係する情報を教えてくれるかもしれません。
 あるいは、月の裏側に幽閉されているはずの某大宇宙の人が、シナリオの重要情報を何故か知っていたら? 「なんでそんなのと知り合いなんじゃ〜!」と回りから総ツッコミが入りそうな、奇妙奇天烈なコネを貴方のキャストが持っていたら?

 また、ゲストのロールプレイはRLによってまったく様々です。今日の雅之社長や冴子課長はいつもの仲間うちのアクトとは一味違ったり、それどころか見違えるような別人かもしれません。あるいはたまたまコネで連絡がついたアルドラ女大公が、たまたま今日のRLさん的には萌え度No.1で、なんかこう妙に力が入っていたり‥‥?
 いずれにせよ、そのシーンは何らかの形で盛り上がるでしょう。キャスト/ゲスト/エキストラなどを問わず、人と会うシーンというのは演技の機会になります。

キャスト同士で出会ってみよう

 また、シーンプレイヤーのキャストが1人だけ登場し、さしてイベントも起こらず適当に情報収集などをするだけのシーンは、大したロールプレイをする機会もなくすぐ終わってしまいがちです。他のキャストも登場してみましょう。
 大抵はキャスト間コネが繋がっている2人のキャストのどちらかだったり、あるいは繋がっていないキャストの場合もあるでしょう。『カメラの前は人でいっぱい』でも触れましたが、ここで全員が登場して勝手に喋り始めるとシーンが混乱してきます。シーンプレイヤー以外に1人か、もう1人ぐらいにしておきましょう。(『★リソースを意識しよう』はアクト全体の中のリソースについて触れていますが、シーン毎にもリソースはあります。そのためにシーンプレイヤーのルールがある訳です。)
 ここでのコツはGF誌に書いてあるのと同じように、「相手を立てる方向で動く」ことです。『カウンターグロウ』の欄外にも、こっそり「基本は自分も相手もカッコよく」とあるでしょう。
 別に登場した回りのキャストがシーンプレイヤーのキャストにお世辞を言う必要はありません。ゲーム内世界のキャスト同士は台詞ではいがみ合っていても、ゲーム外世界のアクトのレベルから見ればキャストと中のPLを立てている行動、というのは取ることができます。

「さすがはXXね。でも、あなたの探しているXXが、現在XX社が始めようとしているXXと関係しているとしたら、どうするかしら?」
「‥‥何故お前、XXを知っている!」

とか、
「まあ利害が一致するようだし、XXに関しては協力してやってもいいが‥‥しかしお前さん、一体どうやってXXがXXなのを掴んだんだ?」
「簡単だよ。僕のXXはXXなのさ!」


などなどなど、ごく普通の会話からも思わぬシーンが演出されることもあります。

 いかがだったでしょうか。ここに上げた項目はどれも考えてみれば当たり前のことですが、貴方のリサーチが楽しくなるかもしれません。


周知プレイの楽しみ方

 公式シナリオなり同人誌やWebコンテンツなりお友達のシナリオなり、1度プレイした知っているシナリオをPLとして再度遊ぶことを指すこの言葉。
 元はR時代に発生した言葉で「羞恥プレイ」というちょっとオトナな言葉と引っ掛けていたのですが、便利なので広まり、N◎VA界全体で使われるようになりました。2回目、3回目のプレイはシューティングゲームの最終面クリア以降の呼び方になぞらえて2周目、3周目と呼びます。
 1シナリオ、1アクトに掛かる時間が全体的に減少し、1回の集まりで2アクト遊ぶことも多くなったD時代。多くのユーザーのアクト回数は増加しました。そんな中で、面子の都合などで知っているシナリオの卓に2周目以降として入ることもあるでしょう。特にプレイ頻度の高い学生さんのサークルなどに多いですね。OFF会などで1本目のアクトが短く終わって時間が余り、2本目は周知で突入‥‥などという状況もありえます。
 まあ筆者も古いロートル世代なので最初は信じられず、どうにも馴染めなかったのですが、Dの時代になってやっと多少は慣れてきた感じがします。本コンテンツでも取り上げてみましょう。

汝、周知なることを悟られるべからず

 コツは周知であることをなるべく表に出さないことです。アクト前に「今日は周知なんで、PC4に回るよ〜」などと言うのは構いません。問題はアクト中です。
 貴方も周知プレイ経験者ならきっと経験があるでしょう。「このシーンのXXで出てくる敵のXXのデータのXX、XXなんだよね〜」とか「このゲスト、台詞のXXもまんまXXのパクリだぜ。どうかと思うね」とか「ほんとはここでXXなんだけど、今日はXXXだな」とか、ついシナリオに関係あることを口走ってしまったことが。(これ、注意していても、人間ついやってしまうものです。) もっと酷くなると、シナリオのネタバレをしてしまったり‥‥?
 RLにしてみれば、自分が統括している世界に文句をつけられているのと同じです。非周知のPLにしてみても、自分が知らないことを語られるのはよい気分ではありません。
 また、たとえ周知PLが脇に回って非周知PLを立ててくれていたとしても、回りからあまりに周知周知と言われると何だかやりにくくなってきます。
 ひとつ、「非周知プレイヤーのロールプレイ」をするぐらいのつもりで、極力口に出さないようにしてみましょう。

脇を固めてみよう

 一般に見せ場が多く、重要な役回りであるPC1を周知プレイでやるのはよくないと言われており、多くの周知プレイヤーはPC2〜5の脇役‥‥特にPC番号の大きな枠、いわゆるビッグナンバーに入ります。
 これはまったくその通りです。話の筋を全部知っており、どんな台詞をゲストに言ったらよいか、どんな行動を取ったらシナリオ上成功するのかを全て知っている人が主人公をやるのは反則でしょう。もはやゲームではなく自分のキャストへの自己満足の域に入ってしまいます。

 さて今まで何回か触れてきましたが、プレイヤーとして上手いことには、人を立てるのが上手いことも入っています。「かっこいい主人公が上手い」ことと同様、「脇役が上手い」ことにも同等の価値があるのです。
 さあ、貴方は何ができるでしょう。シナリオの筋をおぼろげにでも覚えていれば、アクト中は的確な動きができることでしょう。周知で脇役をやっても、周知で主役をやるよりは違和感が少なくなるものです。
 数々の選択に迷う主人公たちや非周知プレイヤーのキャストをそれとなく正しい方向に導く、賢者の役もできるでしょう。あるいは何でもかんでもシナリオの想定通りに進むのがつまらないと思ったら、貴方が1回目のプレイで辿ったのとは逆の方向にトリックスターとして導くのも、意外性があって面白いかもしれません。あるいはシナリオの本筋は非周知メンバーに任せ、永遠のPC5として最後まで異彩を放つこともできるでしょう。
 アクト中に的確に動けるなら、非周知メンバーのキャストを助けたり、盛り立てたりするのもきっとうまくやれるはずです。実際、RLが不慣れだった、ハンドリングが難しいシナリオだった、オフ会など大事なアクトだった、などの場合に、周知PLが一人サポートに入ってくれたお陰でうまくアクトが回った‥‥という状況は起こります。
 きっと貴方の今日のレコードシートには『素晴らしい活躍をした』『RLのストーリー進行を助けた』にチェックが入ることでしょう。ひとつ、入るのが当たり前ぐらいの気持ちで、その上を目指して頑張ってみましょう。

観客としても楽しもう

 TRPGのプレイヤーは、役者にして同時に観客であるという多面性を持っています。アクト中はPLもいろいろ忙しいものです。行動したり、技能を使ったり、シナリオに出てくる情報を整理したり、シナリオの話の筋を理解したり、危険をくぐりぬけたり、良いロールプレイをしたり、悪いロールプレイをしたり、やることは沢山あります。
 おぼろげでもシナリオの筋を覚えている周知プレイヤーなら、このへんは慌てることなく対応できるでしょう。その分、落ち着いて周囲に目を向ける余裕も出てくるはずです。今日はゆっくりと、観客としても楽しむことができます。
 当たり前ですが、シナリオが同じでも面子が違えばアクトはまったく違います。今日のキャスト陣はどんなメンバーが揃っているのでしょうか。彼らはそれぞれどんなキャラクターで、どんなロールプレイをするのでしょうか?
 そして彼らの存在で、貴方が遊んだ1回目と比べ、今日のアクトはどんな風に違ってくるのでしょうか。きっと全然違うはずです。観客の目からしてみれば興味津々ですね。

 そしてこれも当たり前ですが、シナリオが同じでもRLが違えばアクトはまったく違います。観客の目をRLサイドにも向けてみましょう。マスタリングには人それぞれスタイルがあります。今日のRLさんはどんなアクトを作り出しているのでしょうか。シナリオは密かに極限までチューンされているかもしれません。
 貴方が周知であることを知っているなら、それを見越してゲストのデータも変わっているかもしれません。貴方が戦った時はしょぼかった敵も、全員ブランチで完全武装して迷光環境の強敵に変貌しているかもしれません。
 あるいは演出やロールプレイはどうでしょうか。貴方が知っている元のシナリオでは月並みの台詞しか書いていなかったゲストも、今日は見違えるようにカッコいい別人に変貌しているかもしれません。あるいは貴方のお気に入りの有名ゲストが、なんか今日は全然ダメな別人になっているかも‥‥? 観客としても楽しめそうな点は多そうですね。

 本項で取り上げた話題は、一般的なシナリオの場合です。シナリオ構造が変わっている特殊なシナリオには、元から周知でもあまり気にせず楽しめるものもあるでしょう。(公式シナリオだと、例えばカゼSSS『Lightning Tour』はミニゲーム風の変わった趣向になっていて、周知非周知を問わずに遊べます。)


リプレイを書いてみよう

 TRPGの紹介として商業誌でもよく使われ、同人誌やWebコンテンツとしてもよく題材にされるリプレイ。貴方もきっと『カウンターグロウ』収録の3編はお読みのことでしょう。古強者になるとR時代の『トータルエクリプス』を覚えていたり、もっと古強者になると伝説の『振り向けば死』を知っていたり‥‥?
 リプレイが日本のTRPG界に与えた功罪云々はよく論考系のサイトで見かける題材ですが、まあそれはさておき、本項では貴方がN◎VAのリプレイを書いてみようと思い立った時の話を取り上げようと思います。PLの際、RLの際両方に当てはまりますが、PL編にまとめておきます。

準備は多めにしておこう

 リプレイ化を考えているなら、きっとその日は特別に念の入ったシナリオだったり、キャスト陣も夢の豪華ドリームチームが揃ったり、きっと特別なアクトになったりするでしょう。わくわくしながら気持ちを高めておくのはよいことですし、それに見合ったアクトになるように準備はしておきましょう。他のキャストの把握、アクトトレーラーやハンドアウトなどのプレアクト情報の把握、準備はいろいろとあります。

個性の定まったキャストを使おう

 リプレイにするなら登場人物の魅力は重要です。新造よりは使い込んだキャスト、代表キャストなど、イメージと個性が定まっていて演じやすいキャストを使いましょう。絵心のある人にイラストを書いてもらうつもりなら、外見イメージやイメージカラーも定まっているキャストの方が良くなります。

キャストの差別化を図り、構成はよく考えよう

 『名前』のところで触れた通り、互いに区別しやすい名前やハンドルであることは重要です。『言葉』で触れたとおり、登場キャストの口調がそれぞれ違い、一人称が違うことも望ましくなります。
 また、『キャスト陣構成を考えよう』にある通り、構成もよく考えましょう。スタイル、年齢、性別、所属勢力、ビジュアルイメージなどなど、ばらけた方が絵的に映えます。もっとも、大抵のPLはプレアクトのキャスト調整段階でキャストの被りを避けてきますから、ここはいつも通りでも大丈夫かもしれません。
 登場人物構成については、市販TRPGのリプレイ類も参考になります。例えばサイバーパンクから離れてファンタジー系RPGのリプレイを見ると、グループSNEの出している諸作品はパーティ構成にいつもSNE伝統のお家芸めいたものが見えますね。主人公っぽいのがいたりヒロイン役がいたり、明らかに読者人気を狙ってるのがいたり。挿絵の美しさを狙ってエルフの綺麗なお姉さんや可愛い女の子がいたり。脇のボケ役担当がいたり。こうしたものも参考になります。
 ぶっちゃけた話をすると、リプレイには華の一人や二人はいたほうがやっぱり人気が出るのです。

ルール適用、戦闘など

 最近のFEAR系システムではルールを間違えた場合の裁定がルールブックにちゃんと書いてあります。謝罪して次からは正しい適用にすることはあっても、ゲーム内時間で遡って適用し直すことはしないというものです。
 これで安心ですが、リプレイ用のアクトでもルールの細かな間違いやらはあまり気にしないで、全体の進行の方を考えましょう。作品になった暁には、読者は正しいルール裁定ではなく面白いリプレイをこそ求めて読むのです。欄外に注釈で正しいルールではこうだった云々と書くこともできます。
 また、ビジュアル的な映え方を重要視するなら、戦闘も誰かが本当に死ぬほどギリギリの長時間のガチバトルではなく、綺麗にまとまって終わるぐらいにしておく方が読み物としては映えます。
 そして、録音媒体を元にリプレイを起こすなら、乱数発生結果や後で思い出しにくいその場の状況はきちんと記録に残しましょう。ダイスを使うRPGならダイスの出た目、N◎VAならトランプのスートと番号、最終的な達成値をマイクに向かって口に出しましょう。(これ、つい忘れてしまいますね。)
 ネット時代の近年は下で取り上げるオンラインセッションも盛んになってきました。オンラインのアクトはテキストを加工すればすぐにリプレイ化できますから、これもお勧めですね。

描写の補強

 文章のリプレイはキャストやゲストの台詞の改変、地の文章の補強で、いくらでも描写や登場人物のかっこよさを補強できます。これをどこまでやるかは、リプレイのスタイルにもよるし思案のしどころですね。筆者も小説形式のリプレイを書いた際は、キャストの台詞は大体そのままに地の文を補強して、雰囲気を出そうと試みたこともありました。

 2005年夏現在の最近出た文庫の市販リプレイをちょっと見てみることにします。『ソード・ワールド』のぺらぺらーずのシリーズはいつもの伝統的なSNEスタイル、PC毎にスポットライトが当たる明確なシーン制もなくパーティ物で全員登場、プレイヤー発言やGMの返事、その場でのツッコミや心の声など、セッションのその場が想像できるものになっています。
 再販された『アルシャードff』はこちらはいつものFEARゲー、ノリ最優先でNPCハックや自分勝手演出に熱い台詞ありあり、(笑)満載で突っ走るものになっています。
 『ガンドッグ』は現代ものガンアクションがどんなリプレイになるのかと思っていたら‥‥意外にも、セッションのその場のPL発言の方を大事にした、どちらか言うとSNEスタイル寄りのものでした。

 さて貴方の書くリプレイではどうかというと‥‥うーんこれは書き手によるので難しいですね。
 筆者の考えを言うと、N◎VAはやはりシネマティックでスタイリッシュなゲームです。『カウンターグロウ』収録の3編のように、現実世界でのアクトの様子よりはゲーム内世界の登場人物の台詞や描写に力をいれ、多少の補強はありではないかなと思っています。


オンラインアクトを遊ぼう

 さて、インターネットが普及してから様々なシステムで遊ばれるようになったオンラインセッション、略して「オンセ」。N◎VAでも遊ばれており、N◎VA-Dの時代には前より活発になってきました。N◎VA用語ではオンラインアクトになりますが、略して「オンア」では発音しづらいのでやっぱり「オンセ」と呼びます。
 実は各プレイグループのプレイスタイルによって差があります。当サイトのセッション・レポートに載っているオンラインリプレイは全般的にかなり演出に気合が入っていますが、そこまでやらずに数やスピードを優先して遊んでいる方もいます。まあとにかく、本項ではひとつ貴方が初めてオンラインに踏み出すとして、コツなどを述べていきたいと思います。

プレアクトはしておこう

 各地のログを拝見するとIRCのチャンネルに集まって会話が進み、アクトが開始される際の自己紹介でしかキャスト情報を提示していない遊び方もありますが、これはあまりお勧めしません。たった数行の自己紹介程度で初めて見るそのキャストがイメージできるでしょうか。アクト中にうまく絡んでいけるでしょうか?
事前の準備をしてみよう』で触れたように、BBSなどを使って準備は整えておきましょう。トレーラーとハンドアウトを確認し、他にどんなキャストがいるのか押さえておきましょう。特にオンラインアクトでは細かい設定を持つキャストなどでも、その個性を発揮することができます。全員がネットに繋げる環境にあるのですから、『他の登場人物を知ろう』で述べた通り、キャスト紹介をWeb上に乗せておくのも非常に役に立ちます。

キャストの作り込みは深くしておこう

 RL編の『五感に訴えるを考えるの所。』でも触れますが、オンセを遊ぶと普段我々がオフラインではいかに、文字情報以外からも情報を得ていたかを痛感します。身振り手振り、声の調子、表情、アイコンタクト‥‥。
 オンセでは全てが途絶します。貴方の表情の変化で表していた若者の苦悩も、ロールプレイで示していた可憐なヒロインも、すべて文字情報のみで伝えなければなりません。
PC1:それでも、僕はこの災厄の街を救いたいんだ‥‥(悩)」とか
RL:彼女の小さな手がぎゅっとあなたの袖を握ります。『わたしを、守ってくれるのですか』」
などと実際に書かないと、他人にはまったく伝わらないのです。
 『キャストに魂を吹き込もう』で様々なことに触れてきましたが、貴方のキャストがどんな人物なのかイメージを固め、それを文字で言い表せるようにしておきましょう。

 口調の決定も大事です。『言葉』で触れましたが一人称を決めておくのは必須です。実際にどんな口調で喋るのかも考え、例をテキストに打ち出しておきましょう。
 オンセでは反応を尋ねる発言、それに応える発言の繰り返しが多くなります。

RL:という話なのですが、この依頼を受けますか?
PC2:「いいよ」
PC3:「ああ」
という無味乾燥な返事よりは、

PC2:「分かったよ。あたしは困った人たちの味方だ。その依頼料が相場かどうかは今回は置いとくから、この依頼は請け負った。ま、ニューロ厄介な調査になりそうだけどね」
PC3:「ああ。後にして長いとは言え、祖国の危機だ。すぐに発とう。災厄の街に名高い騎士の砦とて、星の都のKRKやナイトブレイドほどには魔法の使えるメンバーは少ないだろう」

などと答えた方が遥かに分かりやすく、人間味も出てきます。
 また、感情を表すならネット上で使われる方法を上手く使って表現もできます。お馴染み「(笑)」や「(w」、「(汗)」「(爆)」、顔文字やアスキーアートを使って「(・∀・)ニューロ!!」などもできますね。 オンセ(・∀・)イイ!

書式には従い、台詞は用意しておく

 オンセのコミュニティにもよるのですが、テキスト打ち込みの中でルール的な処理の書き方が決まっている場合もあります。カードのスートはスペードやクローバーなのか、それともRPLMなのか。技能名は<>か<>で囲うのか、特技や奥義に※を入れるのか? 神業の括弧は《天罰》のようにするのか? 台詞は「」内に入れるのか?
 これらが決まっているなら、事前にきちんと読んでレギュレーションに従いましょう。従うことで他の参加者にも分かりやすく、あとでログをリプレイにする際も編集しやすくなります。
 筆者が今まで参加したオンラインアクトでは
PC2:「あたしの台詞には続きがあるよ >>
PC3:「いや、これで終わりだ。死者の王国で安らかに眠れ! /
 のように、発言が終わりなのかどうかを表す記号を使っていました。こういった工夫も役に立ちます。

 そして、台詞は用意しておきましょう。戦闘が起こることが確実なら、スリーアクションからのマイナーアクションの発動順、メジャーでのいつもの組み合わせコンボなど、キャストによって定型の宣言があるはずです。これらは準備しておきましょう。
 トレーラーやハンドアウト、数回に分けたアクトなら途中の展開から、キャストが言うであろう台詞も用意できます。これらも用意しておくとスムーズです。台詞ストックのあるテキストファイル上を作業エリアにして、そこから常にチャットソフトにコピー&ペーストする形で打ち込むと楽です。
 テキストで台詞を発言するのですから準備しておけば、オフラインより長く格好いい台詞もトチらずに言えます。呪文の詠唱など長台詞の演出ができるのもオンセの強みでしょう。
 また口調の問題を逆手にとって、オフラインではできないこともオンセではやることもできます。古語口調、カタカナ混じり、方言など変わった口調で喋るキャスト、PLと異性のキャスト、いつもよりオトナな台詞、などなど‥‥。このへんはオンセの醍醐味ですね。

台詞に加えて描写も混ぜるとよい

 これは、シンプルなアクトの数をこなすのではなく演出にも力を入れて遊ぶ場合ですので、全ての方には当てはまらないのですが。
 オンセはとかく台詞による返事だけになりがちです。そこで、台詞と台詞の間などに、貴方のキャストの描写をちょっとずつ入れてみましょう。サイバーウェアや武器の起動、ちらりと目をやったりする仕草の描写、服装や顔、持っている小物類の描写。これらを挟むことで、だいぶ違います。参加者にも読者にも、貴方のキャストがイメージしやすくなります。
 コツは、『演出の助け舟:銀幕の向こう側を意識してみよう』で述べたように、読者の目を意識することです。このオンラインアクトが素敵なリプレイになったら? そんなつもりでやってみましょう。

タイムラグ、誤字脱字は気にしすぎない

 参加者の思考速度やキーボードの打鍵速度の差、ネットワークの速度、マシンの性能、ネットワーク障害による断線と再度のチャンネル参加による遅延、あるいはまったくの偶然‥‥これらが原因で、オンセではタイムラグが起こって発言が前後することがあります。
 これはオンセの宿命です。必ず起こるので諦めましょう。ログをリプレイにするなら、後で編集するとよいでしょう。
 また、タイムラグ発生を減らすには、自分の台詞が続いている状態なのか相手の反応を待っている状態なのか、あるいはRLの発言を了解したのかそれとも考え中なのか、など、自分の状態を明確にするとよいです。発言相手を「>」で指したり特定の記号を使ったり、工夫しましょう。

 また、人間がキーパンチをする以上、誤字脱字もいつかは起こります。これも人間がやっている以上仕方ないでしょう。整形されたきれいなリプレイにしたければ、後で編集するとよいでしょう。
 慣れていないなら、キーパンチの練習をしておくとよいです。Web上のソフトや、ブラインドタッチの練習ソフトなども使えます。
 またICQやMSN Messengerなどチャットソフトがあれば、チャットでの会話の練習をしておくと役に立ちます。お友達とチャンネルを開いて、簡易なりきりチャットをやってキャスト間の会話の練習をしてみましょう。

鉄則:オンセ3倍速

 ジオン軍でもザフト軍でも破れない鉄則があります。そう、オンセはオフラインのアクトに比べて時間が掛かるのです。これは宿命です。常に念頭に置いておきましょう。
 ゆえに、戦闘も軽めにしたほうが良くなります。情報を項目形式で用意するなら、数も目標値もオフラインに比べたら少なめにしたほうが良いでしょう。
 オフラインでは「この情報は<社会:企業>で20までか‥‥ほんとは手札にいい札があるけど、まだリサーチ1シーン目だし、ここは14までにしておこう」などと考える場合があると思いますが、オンラインではここでいい札を出してしまうべきです。情報は早めに全項目をゲットして、キャスト間の交流なりイベントなりに時間を使いましょう。
 オンセは時間が掛かりますが、その分描写や演出に力を入れられたり、オンセならではの醍醐味もあります。普段のアクトがTVシリーズだとしたら、オンセは豪華な映画版だと思って楽しみましょう。

 いかがだったでしょうか。何かを始めるには先人の残した者を見るのが一番。N◎VAでも、他のシステムでも、オンセのリプレイはあちこちで公開されています。こうしたものを参考にしてから、あなたのオンセに挑んではいかがでしょうか。

N◎VA-Dのオンセリプレイを見ることのできるサイト

★揚紅龍さんの【《難攻不落》っ!!!
★助清さんの【極東世界征服社】のニューロの轟音!!
★龍崎巌さんの【千早海運停泊所
★井上(仮)さんの【TRPG BANK
★堀野さんの【ロケット屋ダンデライオン
★おまけ:貴方が見ているこのサイト



究極的な勝利とは:全員の勝利である

 TRPGは勝敗のないゲームだとも言われますが、勝利はあります。そしてそれは――全員で勝ち取った勝利です。N◎VAでもこれは変わりません。
 PLとRL間のくだらない対立とか、些細なルール解釈の議論とか、そういうものは脇に置いて全員で勝ちましょう。みんなが活躍でき、みんなが楽しめるようにしましょう。ちょっとした気配りや譲り合いの精神で、アクトはずっと楽しくなるものです。

 本コンテンツは初版を2004年初めに公開しましたが、同時期に発売されたオフィシャルのリプレイ『カウンターグロウ』には偶然ながら似たようなことがけっこう書いてあり、偶然とは不思議なものだと思うところなのですが。
 稲葉義明氏のあとがきにこう書いてあります。「掲載されたリプレイはいずれも“参加者全員が楽しむ”という精神を持ってアクトを運営されている」と。
 これは当たり前のようでつい忘れがちで、意外に多くの人が知らないままでいることです。この精神があればN◎VAのアクトの勝利条件も自然と上のように定まってきます。この気持ちを忘れないようにしましょう。


困ったら基本に返って:楽しく遊ぼう!

 さて、PL編も最後になりました。様々な事項に関し述べてきましたが、全てを常に意識しつつ、N◎VA-Dの正しいルールも正確に適用しつつ、周りの参加者とキャストを認知しつつ、全てを同時に実行しながらプレイヤーとして遊ぶのも大変でしょう。
 筆者もプレイ時に気をつけていることはいろいろありますが、どんなアクトの際も全てが実現できているとは言い切れません。ヽ(´▽`;)ノ
 そんな時は基本に返って――そうです、楽しく遊びましょう! TRPGは趣味で、我々は楽しみを得るために時間その他のリソースを消費して、取り組んでいるのです。
 TRPGは他の趣味に比べると手間が掛かる遊びです。せっかく時間を消費して遊ぶのですから、楽しい時間にしましょう。そしてTRPGは遊び方次第でいくらでも楽しくなります。貴方のイマジネーションをニューロエイジまで伸ばし、とびっきりのアクトを作ってやりましょう。
 楽しく遊んでいる人は、周りから見ていても楽しくなるものです。そして願わくば、貴方の回りも一緒に楽しくさせましょう。


 以上でプレイヤー向けのプレイングTips&コラム集は終わりです。
何か少しは役に立ったところはあったでしょうか? あったとすればそれを筆者の喜びといたしましょう。
 それでは、貴方の分身たちの集う舞台の上に、天輪が恵みをもたらしてくれますように‥‥
 
 

When the Fortune rings out

天輪の音が響くとき
はじめに
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Delirium
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