When the Fortune rings out
天輪の音が響くとき

〜本格的にニューロエイジに踏み出す方のためのプレイングTips&コラム集〜

天輪の音が響くとき
はじめに
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 さて以下では、ルーラー向けのプレイングTipsを幾つか述べていこうと思います。
PL編で最後に「究極的な勝利は全員の勝利である」と述べておきながら、本稿の幾つかではRLの勝利についても書いてあります。
 矛盾しているようですが、これはPLに対する勝利ではなく、「アクトを成功させよう」という課題に対する勝利だと思ってくださいませませ。
 それではしばし見ていくことにいたしましょう。殿、いよいよ戦の時が参りましたぞ!

敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。

 RLである貴方はこれより戦に赴こうとしています。敵は自由度の高いN◎VAシステムの下で様々な可能性を持って存在する“キャスト”という輩で、なかなかに厄介です。殿、油断めされるな!

敵を知るべし。

 可能であればプレアクトやプレプレアクトを行って、敵が何者か詳しく知りましょう。間に合わなかったらアクト直前の段階でも構いません。貴方の世界に立ち入らんとしてくるキャストは一体如何なる人物たちなのでしょうか。この先の項目で詳しく述べますが、敵が事前に分かれば、それによって対応できることが数多くあります。

己をも知るべし。

 そして‥‥格言になぞらえただけですが、自分も知りましょう。貴方にもプレイスタイル、マスタリングのスタイルがあり、得意なことや不得意なことがあるでしょう。『ストレイライト』のRL講座の結びにも、「RLの武器を持とう」と題し、同じようなことが書いてありますね。
 貴方は演技や演出は苦手なんだけどルールはきちんと把握しており、かっちり運用できるのかもしれません。あるいはまったくその逆かもしれません。恐らく過去何百回かあったであろう、N◎VA滅亡の危機や世界滅亡の危機がまたも迫る大きな話が好きかもしれませんし‥‥逆に、大風呂敷は苦手でも情緒のあるささやかな話が得意かもしれません。
 銃の口径がどうのとうるさいガンマニアのPLにはついていけなくても、日本剣術を語らせたらちょっと詳しいのかもしれないし、戦闘は苦手でもオカルト関係なら強いのかもしれません。ゲストが持つ26のスタイルの中にも、演じるのが得意なものと不得手なものがあるでしょう。
 だったら得意なところで勝負しましょう。ダブルクロスよろしく領域に誘い込むのです。
 もし貴方がアルファ=オメガたんのようないかにもヒロインぽい女の子の演技が苦手で、逆に鉄大和艦長のような漢気のある親父の演技を得意としていて、これから遊ぶシナリオにはそんな感じのゲストが両方出てくるなら。ヒロインの子は添え物にして漢同士の対決をメインに持ってきたっていいのです。本来どちらがメインだったのかは、どうせPLには分かりません。アクトは貴方のコントロールの元にあるのです。


敵の中の人も知るべし。

 ちょっと受け売りですが――相手のプレイヤーの“色”を知ろうという話です。

中の人は何色ぞ。

 さあ、今日のアクトの相手のプレイスタイルはどうでしょう。ルールには細かい方でしょうか。それとも演出重視で来るのでしょうか。どんなプレイをするのでしょう。落ち着いた大人のプレイでしょうか。それとも回りの人がついてこれないようなハジケたプレイでしょうか。
 好みは? N◎VAで学園ものやラブコメをやるのが好きでオフィシャルゲストやPC1用のヒロインゲストとよく恋仲になってしまったり? あるいは妄想全開の超人キャスト? それともどんな時でも弾は切らさず、ドラゴンには手を出さずエルフは信用しないシャドウランナーを演じるつもりでしょうか。
 N◎VA以外の好みはなんでしょう。キャストのイメージソースはどのへんを原材料としてるっぽいでしょうか。“焚書経典”を取ろうとして18禁ゲームの『月姫』の話をしていますか。それとも“ハードワイヤード”や“ニーモニック”、“ストレイライト・ラン”という単語に反応する由緒正しいSFファンですか?
(余談ですが『ストレイライト』発売後、Googleでストレイライトを検索すると書評よりN◎VA系サイトのほうが先にHitするようになったのは面白いですね。)

汝、情報を制すべし。

 コンベンションのベテランGMのテクニックで、「セッション前の雑談を大事にする」というのがありますが、これはまさに中の人の色を探っているのです。
 アクトの前の雑談もいいし、相手が普段からのお友達なら改めて相手の好みを思い出すのもいいでしょう。使っているキャストのプロファイルシート集を見せてもらったり、Web上に公開されているキャストデータを偵察すると、その人がどんなプレイするのか、何が好きなのか見えてくることもあります。というのも、大抵のキャストにはプレイヤーの趣味や願望、理想、好み、好きな異性のタイプなどが(多くの場合、全開で)詰まっているからです。解析するのにこんな適切な材料はありません。
 あるいはネットで活動している同士で遊ぶなら、相手がWebサイトを持っていたらどうでしょう。コンテンツを見ていれば、創り手の人となりもそれとなく見えてくるものです。あるいは日記サイトや流行のblogでは? Webコンテンツであれば頑張れば隠せても、日々の日記では隠せないものもあります。BBSの挨拶ではいくら丁寧口調で誤魔化せても、いつも日記を書いている人はやはり内面の本性が表に出てくるものです。

 ただ単にちょっと話を聞いているだけでも、様々なことが分かります。例えばブラックハウンドの名物コンビを聞いたら誰が返ってくるでしょうか。レイ&メモリか、機動捜査課が脚光を浴びるようになった頃の里見隼人&キーファーか、昔のりうじと牙王たちか、それともゼロ&レンズの最凶コンビが返ってくるかで相手のN◎VA歴も推測できます。
 SSSと聞いてスーパー・シナリオ・サポートを連想するか、影が薄くなりっぱなしのシノハラ・セキュリティ・サービスを連想するかで世代の差も分かります。(ちなみにさらに影が薄いですが、ナンブも一応企業警察でした/笑)
 多数ある黒歴史ネタのモスト・デンジャラス・ゾーンである「レンズは何故悪者になったか」「竜二は何故ハウンドを離れたか」あたりを語っていたり、“ヤロール”に入るとXYZを頼んで夜叉ごっこを始める人はかなりの古強者と見て間違いありません。
 ルール運用においても実は傾向があって――今以上にいい加減だった1st〜2nd時代を知っている年上の人ほどルールには大らかで、逆にRやD時代から始めた若い人ほどルールをちゃんと読む傾向にあります。


 アクトを一緒に遊ぶ相手を知っておくことは、貴方の助けになります。
 現代戦と同じ――情報を制する者は勝つのです。


しなりおはよく読むべし。

 さてここから幾つかの項目は貴方の脳内や、いかにも何か書いてありそうで実は走り書きでしかないメモを元にRLをする時ではなく、比較的きちんと記述されたシナリオをプレイする場合です。シナリオは同人誌だったりWeb上に公開されていたものだったり、友人が作ったものだったり、あるいはオフィシャルシナリオの場合があるでしょう。

 至極当たり前のことですが、シナリオは事前によく読みましょう。物語の流れは把握し、重要なキーワードを押さえ、どんなイベントがあるのかを把握しましょう。
 読む際のポイントを幾つか上げておきます。

人物

 さて、シナリオにはどんなゲストが登場するでしょうか。テキストとして整理されているシナリオなら、プレアクト情報や最初のあらすじに書いてあることもあります。整理されたシナリオであれば、重要ゲストの数は数人に収まっているでしょう。
 彼らはどんな名前で、どんな人物で、シナリオの中でどんな役割を果たすのでしょうか? 特に名前はちゃんと覚えておきましょう。RLの貴方が言い間違えたり混乱していると、PL陣はさらに混乱すること必死です。
 難しい漢字を使っていて読み仮名が分からなかったら、貴方がふりがなや呼び方を決めてしまうのも有用です。(なに、PLはRLから聞くんですからそれでいいのです。アクトの中では貴方が正しいのです。)
 オフィシャルゲストの場合も押さえておきましょう。サプリメントの片隅にひっそり載っていてあまりにマイナーで知らなかったり、割と有名だけど貴方の好みじゃないのでよく読んでいなかったりした場合は、どんな人物なのかアクトの前に思い出しておくと本番で役立ちます。

キーワード

 SSSの情報項目形式に完全に整理されたシナリオなら、よく情報項目に上がっているものです。キーワードリンクとしてあちこちに登場することもありますね。最初のあらすじなり前書きに書いてあることも多いでしょう。
 キーワードは極秘計画の名前だったり超☆新型ウォーカーのコードネームだったり、シナリオの名前と関係していたり様々な固有名詞だったりします。これもRLの貴方が把握していないとPLは理解してくれません。それぞれがどんな名前で、何を表しているのか。押さえておきましょう。

あらすじ

 これも当たり前ですが、シナリオはどんな流れなのでしょう? それぞれの人物はどんな役割を果たし、キーワードは何として働き、物語全体はどんなものでしょう。重要なイベントシーンでは何が起こるのでしょうか。最初の前書きにまとめてある場合もあります。
 RLがこれらをきちんと把握しているアクトは、途切れることなく整然と進み、スムーズに終幕に向かうことができます。逆に把握していないアクトは、アクト中の随所でRLのシナリオ読みによって中断され、コンシューマーゲームの「Now Loading...」が頻発するよう状態になってしまいます。盛り上がった所でこれが起こるとテンションも下がりますね。
 今初めて入手したシナリオを読みながら同時にRLするなんてことは、不可能ではありませんが、アクトの質はそれなりに低下してしまうことでしょう。

神業

 作り込んであるシナリオでは途中のイベントシーンやRLシーンでゲストが神業を使い、クライマックスの戦闘では神業が欠けた状態でキャストと対峙することがよくあります。ゲストのスタイルをPLが推理しやすくし、戦闘の末にキャスト側の神業が決まって綺麗に終われるように工夫してあるわけですね。
 ゲストの数が多いとこの神業、誰がどこで使ったか混乱しがちです。PLが混乱してゲストの残り神業をあれこれ悩むのはおおいに結構ですが、RLの貴方は把握しておきましょう。「イベント1でPC3を《制裁》で指名手配する」「残り。戦闘で即死系に使う」など、メモしておくと意外に役立ちます。
 神業と並んでスタイルも把握しておきましょう。オープニングやリサーチの描写でペルソナが何であるかを強調したり、「任務を告げる千早雅之のミラーシェードの奥に、一瞬だけ危険な光が走った‥‥」などというように一瞬だけペルソナを変えて本性を露にする様を見せておくと、PLの印象に残ります。PL陣のスタイル推理も進んで一挙両得ですね。
 登場するなら味方ゲストが使える神業も押さえておきましょう。キャストに助けを求めるゲストのスタイルは――やはりミストレスやマネキンが一番多いですね。依頼人が女の子であることがやけに多いわけです。これらお助け神業が最大で何発可能か把握しておくと、キャストが弱くても意外と何とかなることもあります。

特技、装備、ルール‥‥

 シナリオに登場する敵の細かいデータは書いていない場合も、全て決められている場合もあります。ずらりと4Lvで並んだ特技の数々。そして装備、ひょっとしたらブランチまで‥‥
 それらの効果を、貴方はそらで全て言えるでしょうか? N◎VA-Dは スタイル 26 * 15個 = 約390 の特技があり、『カウンターグロウ』が出た後は 26 * 17個 = 約442 に増えました。おまけにブランチもスタイル 26 * 6 = 156 + さらにGF誌の追加分の数だけあって‥‥
 貴方が [ライフパス:AI] 持ちで驚異の記憶力を持っていれば楽ですが、人によっては覚えられないこともあるでしょう。別に恥じることはありません。筆者も時々忘れます。RLの技術があって上手いこととルールを暗記していることはまったく別ですから、別に構わないのです。
 もし忘れていたら、今回のゲストとキャストが持っていて、アクト中に必要になりそうな特技や装備だけを事前に確認しておけばよいのです。そして本番の時は戸惑うことなく呪文のようにすらすらと技能コンボが流れていけば、アクト進行もスムーズに進みます。(特に、流れるようにコンボを出す敵ゲストは、PLに「ヤツは強い!」という印象を与えやすくなります。)
 同じことはルール全般にも言えます。人間誰しも、やらないことは忘れていくものです。貴方がふだんやらないのに社会戦やヴィークル同士のチェイスが今度のシナリオには出てくることが分かっているなら、そこだけ再確認しておくと本番でずいぶん違います。


推奨すたいるとは、時に軒先の飾りの如きものなり。
推奨枠は常に必須なのか?

 これは特に市販されているオフィシャルシナリオの場合ですが‥‥シナリオをよく読んでみましょう。推奨されているスタイルはシナリオ内でその神業がひとつ使いどころが用意されているだけだったり、ただ単に導入に有名ゲストが出てくるだけだったり、よく読むとスタイルや所属設定その他を変えても別に問題ない場合が多々あります。(特に上から数えて3、4、5番目辺り、いわゆるビッグナンバーに多い)
 そのシナリオの導入が固定だからといって、わざわざ急いでキャストを作ってもらうと、設定もロールプレイもデータもありきたりのキャストでしかなかったりと、ワンパターンに陥ったりすることもあります。

チューンの出番だ!

 そんな時こそ貴方の腕の見せ所です。『ストレイライト』におけるシナリオチューンの出番です。シナリオをアレンジして作り変えて調整してしまいましょう。誰だって急ごしらえより、お気に入りのキャストで遊んだ方が面白いものです。導入と違うキャストが意外性という楽しさをもたらすこともあります。
 また、そのためにシナリオは事前にきちんと読んでおきましょう。

 各スタイルによって推奨スタイルの導入頻出度がどれくらいか、それぞれどんな導入パターンが多いのかは、当サイトではテキストコンテンツ『アクトに参加する26の方法』として別途まとめてあります。こちらもご参照ください。


戦の前にその様をいめぇじしてみよ。

 これも実際のアクトまではまだ間があり、準備ができる場合の話です。
 プレプレアクトは行って、キャストは決定しているでしょうか? PL陣とキャスト陣が把握できているなら、アクトの様子がちょっとだけでもイメージできるでしょう。もちろん、イメージするのはアクトが盛り上がっている様子です。キャストが決まっているならきっとあの場面でこんな行動を取ってくるだろう、あのプレイヤーのことだからきっとこのゲストがこの台詞を言ったら受けるだろう。よし、こんな台詞を言ってやろう。
 シナリオの中で面白いのはどこだろうか。きっとこのシーンはみんなに受けるだろう。この敵は自分で言うのも何だがどうかしてるのでそこを強調しよう。おっ、なんだかボクって凄いRLに思えてきたぞ。などなどなど‥‥。

勝利を幻視せよ

 イメージしておくのは大事です。実際のアクト中で貴方が行うであろう行動も固まってきますし、自信も湧いてきます。
 この成功のイメージについてはTRPG『アルシャード』のサプリメント『アメージング・ワールド』のゲームマスターガイドに興味深いことが書いてあります。『アリアンロッド』の上級ルール、そしてお馴染みN◎VA-D『ストレイライト』にも同じことが書いてありますね。
 ちょっとイメージしてみて、ここはと思った所は下で触れるアレンジで、どんどん付け加えたり変更したりしましょう。


貴公のあれんじをこそ加えよ。

 TRPGは遊ぶ人が作り上げるクリエイティヴなものであり、N◎VAもまた然り。アクトはシナリオの通りに自動生成されるものではなく、貴方とPL陣が作り上げるものです。シナリオという原料は同じでも、完成したアクトは毎回どこか必ず違うはずです。
 シナリオはあくまで土台です。このPL面子にこんなことをやったら面白そうだ、受けそうだ、などと思ったら、面白そうなシーンを追加したり台詞を変えたり敵のデータを強くしたり弱くしたり、その他細部をアレンジしてみましょう。

チューンせよ。これは汝のアクトなり。

 登場ゲストの外見などが決められていなかったら、貴方が好きに決めたっていいのです。貴方のお気に入りの有名ゲストがちょい役で出てくるのに、台詞があまりに月並みだったら変えたっていいのです。
 もし事前にキャストが無事に確定しているなら、キャストに合わせてゲストの演出を変えたり増やしたりするのはよい考えです。『ストレイライト』で「設定を拾う」と表現されているものですね。
 軌道刑務所アスガルドを脱走してきた名うての犯罪者も、相手が機動捜査課の新米隊員か隊長がオメガだった頃からの超古参かによって、反応が違うはずです。潜伏先のテラウェア・ナンバーズの巣窟から姿を現す浄化派の能天使の生き残りも、千早重工の技術の粋を集めた身長2mの完全義体フルボーグと14歳のハイランダー美少女には、別の台詞を言うかもしれません。
 シナリオに矛盾点やツッコミ所を発見してしまったら、目立たないように貴方の力で隠蔽したり、逆にRLから率先してツッコんで笑いを取りながら堂々と遊ぶことだってできます。(なに、オフィシャルシナリオにいつもあるって?/笑) 洋上の地獄は正しく演出「する」と読み上げてもいいし、開き直って演出「するさせる」してもいいのです。

 時には――こうして自分なりのアレンジを加えた部分が、実際にアクトをやってみると元のシナリオよりも一番受けたりすることもあります。それでよいのです。これはもう貴方のアクトなのですから。


いざ鎌倉。準備は万端に整えよ。

 プレアクトやプレプレアクトでの事前の準備がよいアクトに繋がることは、プレイヤー編で述べました。RLにとってもこれは重要です。何も準備しないでアクトに臨み、たまたまうまくいったならそれはそれで良い事ですが――可能であれば、準備はしておくに越したことはありません。

「いや――勝負は既に始まっている!(シュタッ!)」

 今までのノウハウの蓄積から、N◎VA-Dルールブックには様々なことが述べられています。必要な防御系神業を示しておけば死人が防げます。気分を盛り上げるトレーラーやプレアクトテキストも良いですし、アクトの雰囲気に適合したキャストの選定に使えます。
 他にも少しづつ情報を提示すると有用です。PLがこんなキャストを使いたいと言って来たらそのシナリオに似合うかどうかを考えて答えてあげたり、シナリオのムードや、出てくる重要ゲストのことをちょっとずつ教えてあげたりするのもよいでしょう。事前情報があった方が実際のアクトはスムーズに進みますし、始まる前から気分はいやが上にも高まっていくはずです。


きゃすとは平等に扱うべし。

 リソース総量の意識については、プレイヤー編の『★リソースを意識しよう』でも述べました。セッションコントロールを行うRLにとっては、さらに重要になります。アクトのリソース総量は常に一定、その中で全員が平等に活躍できるように気を使いましょう。

 アクトの前に少し話をしたり、いざ実際のアクトが始まれば様々なことが分かります。
 落ち着いて一同を見渡してましょう。PLのタイプは実に様々です。口数が多かったり、声が大きかったり、目立ちたがり屋だったり、自分のキャストへの陶酔が大きかったり、逆に大人しかったりシャイだったり、回りを冷静に見ていたり、人に出番を譲れる度量の広い大人だったり、様々な人間がいます。

天秤は均衡であれ

 TRPGは「言ったもん勝ち」というのは明らかな誤りです。プレイヤー全員に平等に出番があるように話を振りましょう。N◎VAに不慣れな人がいたら優先的にサポートしたり、そのキャストだけに重要な情報を渡して他のキャストが聞きに行くように仕向けるのもよい手です。
 シーンプレイヤー制度を利用するのもよく使われます。ルールでは原則、RLの左隣から時計回りに回っていくことになっていますがあれはあくまで原則、オフィシャルのリプレイでもよく順番を変更しています。イベントがあったり誰かがそのシーンに登場してそれなりに活躍したら、次シーンは順番を無視して舞台裏が続いた面子に振ったりするのもよく使われる手法です。
 貴方がアクトの中の表舞台をイメージするときにユメで護法サングラスを掛けているなら、ミラーグラスの視界の片隅にキャスト全員の“リソース消費メーター”が表示されたりしてくれたら便利そうですが――残念なことに現実世界の技術はそこまでは進んでいません。なのでそう厳密に考えることはないのですが、ある程度意識するようにしましょう。

 落ち着いて気持ち一歩下がって、上からアクト全体を見渡すような気持ちでいると、見えてきますよ。


きゃすとに不平等はありえることなり。

 そして、平等を実現しようと言っておいてすぐに矛盾したことを言います。(笑)
 世の中の物語では、全ての登場人物が完全に平等ということはほとんどありません。たいてい主役がいて、脇役がいます。トーキョーN◎VAのアクトをただのゲームではなく、アクトを通して物語が作り上げられているのだと捉えたら、やはりそこには主役と脇役がいます。

主役と脇役

 RLサイドで言えばトループやエキストラは脇役で、重要ゲストは主役級でしょう。キャストにも主役と脇役はいます。シナリオの中で危険を冒して大事な人を助けにいくPC1枠が主役で、その姿をカメラに収めつつ同行を決めたPC4枠のトーキーが脇役なのかもしれません。ストリートキッズ出身の元気な10代の若者のキャストが主役で、彼に慕われる落ち着いた大人が脇役なのかもしれません。
 オフィシャルのリプレイ『ナイトブレイク』では、鹿島アスカたちが主役を張って、千早怜呀は脇役だからこそ映える行動をよく取っています。『ナイト・アフター・ナイト』でもレイとクーゲルが物語の中核を疾走していて、ウィスパーと仏の重蔵は脇役ならではの味を出しています。
 これは仕方のないことですし、脇役には脇役の楽しみ方もあります。主人公より脇役、いわゆるPC3〜5が好きだというPLも存在します。(余談ですが、筆者もどちらかいうとそのタイプですね。) キャストは、杓子定規に完全に平等にはなりきれなくてもいいのです。
 慣れたプレイヤーだとこれが分かっていて、今日のアクトで果たすべきは脇役の立ち位置と分かれば、自分から脇に控えてくれたり、主役を立てるロールプレイで場を光らせてくれたりもします。そういう時は心の中で感謝しつつ、その線でアクトを進めましょう。


東京新星における戦闘の鉄則:

きゃすとは豪の者、故にげすとはいずれ敗れるが定め

 さてRLをしてアクトを進行させていれば、キャストとゲストの間で戦闘が発生し、カット進行の中で肉体戦/精神戦を行うこともよくあるでしょう。

彼我の有利差は?

 無限乱数のダイスではなく有限乱数のトランプを用いるN◎VAシステムは、元から偶然性が低くなっています。手札交換の機会もPLの方が圧倒的に多く、慣れたPLならクライマックス戦闘前にはたいてい得意スートの大きい数字、特に絵札やエースを手札に揃えてきます。
 また、カット進行中でもキャストは奥の手として経験点を消費し、成長することができます。奥義や業物級装備、そして戦闘中に使われると変動の激しいブランチ。ゲストは成長できないとは書いてありませんが‥‥封印解除など特別な場合を除き、ふつうはやりません。
 そして、ゲストは見られただけでまずペルソナは看破されてしまいます。神業や特技の使用で確実に、後はアクト中に得られた情報や描写から推測されたりして‥‥いずれ、残りのスタイルもばれます。数字に強いプレイヤーなら、そこから制御値を計算して低い所を狙ってくることもしてきます。
 お分かりのように、キャスト側は圧倒的に有利なのです。キャストは強く、ゲストはいずれ負けます。これがゲストの宿命です。キャスト陣の強さに合わせてゲストデータを調整するのはよい考えですが、強化し過ぎてアクトが終わらなくなってしまっては意味がありません。決定したデータに従ってせいぜい派手に戦い、そして散っていきましょう。

戦いの時、来たれり!

 緊迫した戦闘はN◎VAの華のひとつであり、多くのシナリオで1回以上用意されています。気分もアクトの雰囲気も変わり、PL陣も身を乗り出してプロットをどうしようか考え始めます。だらけてきた時にリフレッシュするために戦闘を入れたり、逆に休憩して気合を入れ直してからいざクライマックスの戦闘へ、というのも良いでしょう。
 次々に行動宣言と実際の行動を行っていく必要のある戦闘では、RLの采配が重要になってきます。「セットアップ。今の<※戦術>以外には‥‥ないね?」「ではアクションランク3から」「はい次」とRLの方から指して、どんどん進めていきましょう。
 Detonationではルール的処理の発生する「セットアップ」「クリンナップ」プロセスもRLから明示的に宣言した方がスムーズです。「イニシアチブ」「メイン」「チェック」プロセスの3つは結局はRevoluton Revised時代と同じようにアクションランク&席順に行動していくだけなので、これは宣言しなくても大丈夫ですね。

 常にキャスト側が先攻になるルールが不公平だと感じたら、2nd時代からハウスルールとしてよく使われていましたが、アクセスカードでランダム性を入れることもできます。すなわち戦闘開始前あるいは各カット開始前に、各PL1枚RL1枚(あるいはゲスト毎に1枚)づつアクセスカードを配り、数字の小さい順に行動していくというものです。敵があまり強くなかったり戦闘にアクセントを持たせたい場合に有用です。
 あるいはサイト【Gray Room】さんにてのハウスルールにありましたが‥‥アクション後もそのカードをアクションランクとして数えられるようにするのも、アクションランク差で一方的に押し切られるパターンが多いと感じたら面白いかもしれません。

勝負の決まる瞬間は‥‥

 N◎VAシステムでは以前から1カット目が本番前、2カット目でアクションランクが増大して本気を出して戦い合って神業も飛び交って戦闘終了‥‥あるいは場合によっては3カット目まで続くことも、というのがだいたいの戦闘の流れでした。
 Detonation では見切り系特技の弱体化により、防御力を計算したデスナンバーを狙ったピンポイント攻撃がやり易いこと。防御力を上げる手段に比べると攻撃力を上げる手段の方がより多いこと。以上から、勝負が付くのがより早まっています。1カット終了時や2カット目前半〜中盤でだいたい確実に終わるでしょう。

オンラインアクトでの戦闘

 N◎VA以外のシステムのオンラインセッションにも全て当てはまりますが、オンラインでは戦闘は極力軽くしましょう。
 ただでさえオフラインのアクトの3〜4倍の時間が掛かるオンラインでは、リソースを消費しすぎる戦闘は鬼門です。最悪神業だけでも勝ててしまうぐらいでも問題ありませんから、敵ゲストの強さや人数は抑え目にしましょう。
 位置関係の把握が難しいので、至近〜超遠までの距離や範囲攻撃が入り乱れたりする混戦の状況も避けた方が良くなります。手札からリアクション系や<※自動防御>などのアクションランク増大系も控えておき、互いがそれぞれの必殺コンボを撃ち合って綺麗に終わるぐらいに留めておきましょう。
 オフィシャルのリプレイを例に挙げると‥‥と書こうとして例がないので、非常に手前味噌ながら当サイトの場合を例に挙げますが。(てへ)
 当サイトの セッション・レポート に掲載されているRR版最後の記念となったオンラインリプレイ『偽りの聖歌』の【第三夜】。『Scene:15 鋼の軍勢』にて短くも激しいカット進行が行われています。後で流して見直すとたった1カットなのですが、実際のアクトではここだけで2〜3時間掛かっています。
続々編のD版のリプレイ『竜のすむ星』の【巡礼の旅 第3夜】も気合の入ったクライマックス戦闘とエンディングフェイズだけであるにも関わらず、6時間掛かっています。(おそらくその中で戦闘は4時間程度)
 オンラインアクトとはそういうものなのです。

バッドボーイズの作り方

 敵ゲストの作り方については『ストレイライト』に記述があり、また公式シナリオの敵データも参考になります。執筆者の好みや流儀が出ますが、人の作ったシナリオのデータも参考になるでしょう。

 PLをする時、戦闘中の動き方について貴方はいろいろ考えるでしょう。マイナーで3アクションからあれとあれを起動、タイプDは次のアクションでもいいから後回し、この特技で最後の1回は手札交換も。隠し玉はガルーダ。
 メジャーアクションで使うのはこのコンボ、実は奥の手を使うとこれも組んでサイバーウェアで達成値も上がってさらにドラッグ、そして1スートだけオーバー特技で持ってるこれがうまく組み合えば‥‥などなどなど。
 キャストはそれが楽しみなのですから、それはそれでよいのです。しかしながら、シナリオの敵ゲストには同じことは当てはまりません。

 オフィシャルシナリオがよい例です。大抵の敵ゲストは高い能力値順の2〜3スートあるいは全スートで、同一の特技コンボが安定して行えるようにデザインされています。装備による+1、+2などの小さな上昇が重なって大きくなる達成値上昇も控えめにして、<※猿飛>や<※居合>などなど特定の特技のみで安定して達成値が底上げできるようにしてある場合も多くあります。オーバー特技がどうのという制限もありませんから、スートもたいてい全部埋まっています。
 貴方が敵ゲストを自作する時も、バラエティ豊かな特技コンボを揃えすぎないようにしましょう。PLは1人のキャストを操るだけなので楽ですが、RLはその3〜4倍を同時に、さらにアクトの進行ルール裁定その他諸々も一緒に行わなければならないのです。凝りすぎると貴方の大切な脳内CPUの処理速度を超えてしまい、また実際超えてオーバーヒート気味になることはよくあります。

 また、可能なら敵の外見もある程度イメージしておきましょう。武器や装備からある程度分かりますし、強そうなレジェンダリーの魔剣やらワン・オブ・サウザンドの特別なライフル銃やら、特定の武器を使うゲストは印象が強まるものです。キャストを作る際のように、いろいろと決めておくこともできます。
 同人誌や公式シナリオでイラストが用意されているならそれを示せますし、RLによってはプロットしたカードの傍に顔イラストを置いたり、空いているタロットを使ったりする人もいます。

 戦闘の情景をイメージしやすくすることで、演技もしやすくなります。
「どっちを攻撃する?」「何人いたっけ」「トループは2体ってさっき言ったじゃん」「じゃ、そっち」
という味気ないやり取りよりは、
『銃を構えたキャストの前には、揃いの黒服に身を包んで単分子鞭を取り出す不気味なクグツの一団と、BIOSの研究所で作り出された粘液にまみれたおぞましい人造ミュータントの群れが奇怪な唸り声を上げている‥‥』
という情景がイメージできる方が、行動しやすいでしょう。(ついでに言うとこの例だと、《天変地異》があったらキモいヒルコトループがきっと先に片付けられます)
 実際、特技コンボや神業の演出を考える際に、その場面が想像できるかどうかは重要なのです。余談ですが筆者は今までセッション・レポートを記録に残した際、敵の外見が分からなくて困ったことが何回もあります。

 そして、敵ゲストはそこに存在していることを見せ付けましょう。ゲストの強さを表現するにはデータ以外にも方法があります。描写や演出です。
 RLシーンで顔見せをしたり、イベントシーンでワルいコトをするなら、思いっ切りやってPLたちに印象づけましょう。バッド・ボーイズの強そうな外見を説明したり馬鹿でかい武器を抜いたり、なんだか凄そうな演出を交えてコンボを繰り出しましょう。神業も「うまく使った」かどうかはゲストには関係ありません。《難攻不落》で防がれると分かっているなら、どこまでも格好いい一撃を食らわせてやりましょう。そして、それを防いだキャストの行動には大いに反応しましょう。これは貴方の勝利に繋がります。

戦いに負け、アクトで勝つ

 さあ、戦闘が終わりました。ゲストはいずれ敗れるが定めですから、きっと彼らは倒れているでしょう。キャストと、PL陣にはどうだったでしょうか。そのゲストたちを強く印象づけることができたでしょうか。
 反応は「コイツ、けっこう強かったな‥‥」「まさかブランチがあれだったとは‥‥」「正直どうかと思う」「イイ奴だったね!」「XXさんの出す敵はいつもこうなんですよ〜」といったPLレベルの呟きかもしれません。
 あるいは、「能天使の生き残りに、ここまでの腕を持つ者がいたとはな」「恐ろしい相手だった」「でも、ボクは誰にも負けないぜ!」「その見果てぬ野望を夢に、永遠に眠るがいい‥‥!」といったキャストレベルでのロールプレイかもしれません。
 そんな反応を引き出せていれば、貴方の勝ちです。貴方の最優先目標は「アクトを成功させること」であり、ゲストが印象に残ったのならばそれは成功の証です。故に、戦闘には負けても、RLである貴方は勝利しているのです。‥‥一本!

何てこった‥‥ボクのゲストはカッコ良すぎだぜ!

 NPCだけで物語が完結しPCの介入の余地のないセッションは、いわゆる吟遊詩人GMと揶揄されて避けるものなのですが、その怖れはないものとしてさておき。
 戦闘で散っていくであろう重要ゲストをデザインし、もしも貴方が上のように思った場合。そのアクトは大丈夫でしょうか?
 PL参加者が全員初心者であったりする場合を除き、心配する必要はありません。ゲストが格好いいアクトは、たいてい面白いアクトになります。PL陣もきっと喜びます。「くっ、俺たちも同じぐらいカッコ良くならなきゃ!」といつも以上に頑張ってくれるかもしれません。
 それに――大抵のPLは、心の奥底の何処かでこう思っています。「でも、一番格好いいのは自分のキャストだ」と。人間なんてそんなものです。さあ、万全の構えでアクトに臨みましょう。


場面の描写を行うべし。

 オープニングなりリサーチなりエンディングなり、タロットを示してシーンが始まりました。RLとPLの共同幻想の上にあるそのシーンには、最初は無があるだけです。RLが口を開き、描写をしていくことで‥‥透明だった世界に色が付き、キャストの周りを取り巻く世界が見えてきます。
 時々、RLが何も言わなくても勝手に周りの世界を彩色して、キャストに行動を開始させてくれるPLもいます。
 まだ頼んでいないのに自分から危機に陥ってくれたり、いつの間にか現れた怪しい黒服のお兄さんたちに追いかけられてくれたり、それどころかいつのまにか黒服のお兄さんたちのボスになっていたり、キャストが如何に凄いのかを勝手に演出しだしたり‥‥。
 これらは笑いを取れたりRLから見て助かる時もありますが、ストリートに名高いラルフ医院の分類(嘘)によると「超人病」や「オレカックイー病」と呼ばれている病気――おそらくは重症の――に掛かってしまっている場合もあるので、一概に良いとは言い切れません。

背景を描くべし

 リサーチシーンの場所は問題なければシーンプレイヤーが決定できますが、RLも場面場面で、できるだけ周りの描写をしましょう。
 どんな場所かシナリオで用意されているイベントシーンでなかったら、別に格好よくなくても口からでまかせだっていいのです。貴方がそうすることでシーンには色彩が生まれ、全てが命を得て動き出します。その方がPLが行動や演出を思いつきやすいですし、人は目の前の状況が分かってから行動するものです。
 ニューロに乗っ取られたロボタクが突っ込んでくれば誰だってよけますし、雑踏の中から占いじじぃが突然話しかけてくれば誰でも反応します。困っている女の子がいるのが分かったら必ず助け‥‥るかどうかは分かりませんが、そちらに注意を払うぐらいするでしょう。
 結局リプレイ集『カウンターグロウ』には掲載されませんでしたが、ゲーマーズ・フィールド誌の記事『Carry Out The D』第3回にこの場所の設定の記事が載っています。こうしたものを参考にするのもよいでしょう。

 また、舞台がキャストの自宅やキャストが経営している店だったら、貴方の力は節約してそのPLに説明させたりするのも手です。例えばBARだったらどんな曲が流れていて、どんな内装でお酒はどんな種類が出てくるのでしょうか。勿論、参加者が全員未成年だったらカクテルの名前なんて適当で良いのです。
 そのシーンは舞台裏で手の空いているPLがいたら、エキストラの店員の役をやってもらったりするのも面白いでしょう。うまくいけば、RLは適宜合いの手を入れるだけで、シーンはPL主導で勝手に進行してくれます。
 情報収集のみが目的の、重要でないリサーチシーンには有効な手段です。何かと忙しいRLの手は休めて、貴方も観客としてそのシーンを見ることができます。


きゃすとの視点を交えて描写すべし。

 ニューロエイジ世界の人物たちは様々な目で世界を見ています。あるシーンの同じ情景を見ても、エキストラの一般人の目と“ナイトウォッチ”相当の埋め込み式ミラーシェードと、聖母殿の司教たちに祝福を受けた“法具眼”の目では、違うものが見えるはずです。

幾千の瞳、幾千の視点

 どこにでもいそうなクグツの群れが歩いていたら、本当にクグツの群れとしか認識しない世間知らずのキャストも、ライバルのテラウェア社の工作員や天津機関員かと疑う後方処理課員もいるでしょう。
 エキストラの群れの正体が実はマーダー・インクの懲りない面々で、銃を振りかざして暴れ始めたとします。怖いと思って逃げ出す一般人も、絶好のネタだと乗り出すトーキーもいるでしょう。しかし腕に覚えのあるキャストなら、彼らの銃の取り扱い方から、冷静に相手の腕を推し量ったりするかもしれません。<社会:北米>をハートで取っていて北米連合を母国とするキャストなら、雰囲気から相手が同郷の人間であることに感づくかもしれません。
 適当な知覚系特技や<知覚>の判定をさせたり、あるいはただ単にRLからアレンジしてキャストごとに微妙に違うことを伝えるだけでも、こういう時にちょっと工夫して描写するのはキャストの個性化に役立ちます。
 曰く、敬虔な真教徒である君には彼らの穢れた魂が見えるようだった、世界の戦場を巡ってきた君には彼らの銃の抜き方がバラバラに見えた、ストリートでやばい場面を何回も乗り越えてきた君にはこれから起こる大惨事がはっきり予想できた、などなどなど‥‥
 例えばそのマーダー・インクの面々の中に一人だけ重要な敵ゲストが混じっていて、しかもバサラらしいとしたら。N◎VAに不慣れな人が今日はバサラをやっているなら、「そして君だけには分かるんだけど、彼らの中には炎の元力使いが一人混じっているようだ」とその人だけに(会話自体はPL全員に、ですが)教えてあげれば、「ああ、自分のキャストには特別な力があるんだ!」と実感するきっかけにもなります。
 他者にはない特別な褒美を、その人だけに与えるというのもテクニックです。


演技の機会を与えるべし。

 アクト中、しんと静まり返った何もないところから演技をするのは、誰だって恥ずかしいものです。これは人間として当然の反応です。逆に恥ずかしさがひとかけらもなかったら、それはそれで人間として問題があるでしょう。例えアクト中はそれでよくても、その人はアクトの外の社会生活で何か致命的な問題を抱えているかもしれません。
 RLサイドから、演技の機会を与えましょう。前で述べたように回りの状況を説明したり、ことあるごとにRLから質問したり、話しかけて反応を待つのです。『アルシャード』のサプリメント『アメージング・ワールド』にも、同じようなことがテクニックとして載っています。

キャストはそこに在るべし

「今はどんな格好? じゃあ豪華客船上に集まった周りのセレブな客たちから特に浮いてないね」「〜と、スピーチを待つ間にドレスを着た隣の女の人が言ってきたけど、なんて答える?」「ちなみに君のキャストは飲み物は何が好きかな?」
‥‥などと、質問形式で問いかけるのがよいでしょう。ロールプレイがしやすい環境を整え、キャラクターの特徴を表現させやすくお膳立てするのも、RLのテクニックです。
 また、シーンの状況の説明文、ゲストの長い台詞‥‥などが続くと、PLも流れをさえぎっていつ演技に入ってよいのか困ってしまう場合があります。適宜切って息をつく、その都度相手の顔に目線を向けて反応を見る、などして間にキャストの反応を待つ余裕を挟みましょう。慣れたPLだと、こういうRLの目線や呼吸の合図を汲み取ってくれます。


技あればそれは披露させるべし。

 キャストの特徴や得意技はなんでしょうか? このTipsを参考にしてみることにして事前に準備したり、ルール通りの直前のプレアクトを行ったりしていれば、RLである貴方はある程度把握しているはずです。
 それらは使う為にあるのです。技があるなら使わせましょう。設定があるなら、それを活かせる場面を作りましょう。お決まりの台詞があるなら、言わせる場面を作りましょう。キャストが格好いいハンドルを持っているなら、ゲストにその名を呼ばせましょう。キャストが恥ずかしいハンドルを持っているなら‥‥それもやっぱりゲストか本人に呼ばせましょう。使い込まれた愛用の武器やスーパーコンボは、<※斬裁剣>ですぐには壊さずに戦闘で華麗に発揮してもらいましょう。敵にはその強さを認める台詞を言わせてやりましょう。
(もちろん、たまには趣向を変えて全編ホワイトエリアでいつもの武器が使えないようなアクトというのも、それはそれでありです。)

 神業でも同じことが言えます。アクトという一定のリソースの中で、神業は各自が無条件に3回活躍できる権利なのです。使える神業は使わせましょう。しかし‥‥無理にキャスト側の神業を全部使わせようとして敵が変に撃ってくると物語の流れ上ぎくしゃくする時もあるので、神業に関しては無理しなくても良いような気もします。(D世代のユーザーがRLの時に、時に起こる状況のような気がします。)
 ゲストはオープニングやリサーチ中の演出シーンで神業を使ってしまい、クライマックスの戦闘ではキャスト側の方が神業が多い状態で対峙させる、というのもシナリオではよく使われる手です。カブトの護衛相手に即死系神業を撃って《難攻不落》を使わせるのに飽きたら、神業でないと防げないような強すぎる通常攻撃で攻めることもできます。


きゃすとの行動にはよく反応すべし。
反応こそが認知の鍵

 シーンカードを表にすることで、シーンが変わったという事実が周囲に認知されます。
登場判定のカードを出して達成値も一緒に宣言することで、「ああ、そのキャストは登場したんだ」という事実が周囲に認知されます。
 アクトコネクションのキャスト間コネも制御値が抜けるかどうかは実は重要ではなく、「ああ、自分以外にもこのキャストがこのアクトには存在しているんだ」と認知するところに意味があります。
 キャストの行動全般にこれは当てはまります。RLである貴方が反応することで、キャストの行動が実際に行われたことが認知されるのです。
 積極的に反応しましょう。ゲストに台詞を言ってきたらそれに答えましょう。戦闘中にすごいコンボや神業が炸裂したらゲストが「ほう‥‥聖母殿も使える奴を送り込んできたようだな」と答えてやりましょう。
無念にもトループがやられてしまったら、隊長が「馬鹿な‥‥1個中隊が全滅だと?」と驚愕してから、やられてしまったトループの様子を描写しましょう。
 キャストがちょっと格好いい二つ名を持っているなら、敵にその名を呟かせてやりましょう。「貴公、名を聞いておこうか」「私もその名を聞いたことがある‥‥噂通りのようだな」と。ヒャッホウ!(゚∀゚)
 RLは自信を持ち、冷静であるべきですがこういう時は別です。強いゲストがやられてしまったら、たとえ貴方は少しも悔しくなくても、ちょっと悔しがるふりをしましょう。(大抵のPLはそれで喜びます。)

吉野大尉こそ模範的なN◎VA軍人であるッ! (注:嘘)

 懐かしのRevolution時代のCDドラマ『ナイフ・エッジ』という作品があります。黒歴史に埋葬されたのか気になる里見クンや、人気健在の冴子課長、眼鏡っ娘同士としてメモリに人気を奪われるのか気になるキーファー巡査はさておき、この話には、登場した瞬間に「お前絶対悪役だろう」とツッコミたくなるような吉野大尉という印象深い人物が登場します。
 この大尉殿、最後に退場していくまで、「馬鹿な! ヤタガラスが全滅したというのかッ?」「なにいッ? 弾丸で、弾丸を弾いただとっ?」などなど、トーキョーN◎VAのゲストの鏡のような台詞を多数言ってくれます。(笑) RL経験がある方なら何かこう、しみじみと共感せずにはいられないでしょう。(つか筆者は大好きなんですが、駄目?)
 これは極端な例ですが、キャストの行動にはことあるごとに反応して、盛り立ててあげましょう。

PLの行動にも反応すべし。

 上ではアクトの中のRL対キャストのレベルについて話しましたが、これは実世界でのRL対PLのレベルにもそのまま当てはまります。
 今日初めて使うキャストの設定の自己紹介で緊張している時。そのシーンが、味方重要ゲストとそのキャストだけが登場し、淡いラブに発展しそうな触れ合いを描く重要なイベントシーンだった時。PLは何にも増して、RLである貴方の方を向いて喋ってくるでしょう。
 反応してよい聞き手になりましょう。別に特別なことをする必要はありません。きちんと相手の方に目線を向けて、ところどころで「さあ」「ふむ」「おお」「それで」「来たね!」とか、なるべく肯定的な相槌を打ったりして反応すれば良いのです。
場合によっては「なんだってーー!(;゚∀゚)=3」とか「キタ━━(゚∀゚)━━!!!!」とか「(・∀・)イイ!」とか「(ノ∀`)アチャー」とか言うような場面もあるかもしれません。
 とにかくそれで、相手は自分の行動が好意的に認知されたことを確認し、安心するのです。

 同じことはPLとしてでアクトに臨んだ場合にも言えます。トレーラーが激しく燃えた、ゲストがかっこよかった、他のキャストが素晴らしいロールプレイを見せた、そんな時には何かしら反応を見せましょう。楽しいことは心の中で思っているよりも、外に表現してみんなで分け合ったほうが楽しくなります。
 人を楽しませるのが巧い人はみな、多かれ少なかれ驚き上手です。そして上のようなことを、無意識の内に、あるいは意識して行っているものです。


粗雑かつ繊細に。心技一体、るぅる適用は柔軟にせよ。
クルード&テクニカルに

 N◎VA 2ndのこのルールはウィリアム・ギブスンの有名なSF小説『記憶屋ジョニィ』の台詞から取られたものでした。世の変遷と共にN◎VAも変わってきました。Detonationから始めた世代の方だと、もう『ニューロマンサー』を知らない人も多いでしょうね。こういうのをロートルの呟きと言います。

 絶対無敵のRL判断が最上位にあり、存在自体が未完成であるN◎VAシステムのルール解釈は本コンテンツの論ずるところではないですが、この話をちょっと。
 TRPGのルールはどんな時も遵守せねばならない教科書や辞書のようなものではなく、よいセッションを創造するためにあるものです。N◎VAでもまったく同じです。時には破ることも考え、柔軟な考え方でいきましょう。
 ゲームマスタリングの真髄はルールを超えたスピリチュアルな部分にこそ存在します。実際、ルーラー(及びゲームマスター全般)が上手い人はみな一様にルールに細かいのかというと‥‥実はあまり関係なかったり、時にはむしろ逆だったりすることさえあります。
 世の中には、"There are no Rules" (ルールなんてない)を Golden Rule (黄金率)としてルールの一番最初に定めている、実に潔いTRPGさえ存在するのです。(審判の時が来てアメリカでは2.0シリーズが始まった、World of Darknessシリーズです。)

 例えば、ゲストのスタイルはふつうは見ればペルソナは分かります。(<隠密>で隠すこともできそうですが。) 使用を宣言した神業、特技から残りのスタイルは推理でき、それ以外では正しいルール適用上は、フェイトの<※スタイル感知>やカゲムシャの<※慧眼>などでしか知ることはできません。

電脳の救世主を巡った、あるアクト

 あるアクトでこんな場面があるとします。物語はいよいよ佳境を迎え、キャストたちはとあるゲストの女性の奪還を誓い、そこへ疑惑をかきたてるBGMが流れる中、ある正体不明の電話が掛かってきました。キャスト陣には光の元力を操るフェイトがいましたが、<※スタイル感知>は持っていませんでした。

電話の主『やあ、君だね、あの女と一緒にいたタタラというのは』
あるキャスト「(静かな怒りを含ませながら)‥‥誰だ」
電話の主『僕かい? そうだね、君たちがアルファと呼ぶ存在と同質の存在、とだけは言っておこうか。それより、急いだ方がいい』
あるキャスト「マリアの居場所を知っているのか?」
RL「ポケットロンのスクリーンに映る電話の相手は銀髪に赤い目をした少年です。そして尊大な少年にはこの街の住人ではないような‥‥何か異質の、別の世界の雰囲気があります」

↑スタイルにハイランダーが入っているとは言っていないが、この後の演出も含めて事実上そう伝えている。PLたちはそうだろうと予想し、最後の戦闘で実際にそれが正しいのが分かり、「ああ、なるほどやっぱり」と納得する。


 もしも<※スタイル感知>を持ったフェイトがいるなら、ここはこんな風に変えるべきでしょう。

RL「では、彼には独特な雰囲気があるのだが、君には分からない。う〜んそうだ、<※スタイル感知>のあるフェイトの誰それならきっと分かるだろうね」

↑こうすればフェイトのキャストに接触するだろうし、そのフェイトがスタイルにハイランダーが入っていることを看破すれば、見せ場にもなる。


 この例では「ルール上正しいか」どうかではなく、「キャスト陣の特技の有無」によってルール適用を変えています。プレイした方も多いでしょう、変革の時代が来たる間際の、さるシナリオを実際にRLした時の話です。

最優先目標を忘れず、ルールは柔軟に

 他にも例えば‥‥武器持ち込みの携帯判定は実行する機会も多いと思いますが、「ルールに記載されているから」ではなく「シナリオの方向性」に合わせて適用を変えてもよいのです。
 セキュリティが厳重に守られたホワイトエリアでの、姿なき暗殺者の探索。であれば厳しく武器持ち込みを制限するのは至極もっともですし、何年も捜し求めてきた親友の仇との対決がクライマックスであれば、判定なんて野暮なものはいいから親友が託した一振りの刀ぐらい抜かせてあげましょう。
 実際、すごくテンションが盛り上がってこのまま一直線にクライマックス突入! という場面では、ルール処理が必要でテンションが盛り下がってしまう可能性のある携帯判定は余計な場合もあります。
 オフィシャルシナリオをよく読むと携帯判定をしなくてよいように、用意されているクライマックスがレッドエリアだったり、敵が予め《不可触》を使って好きに暴れている話もあるでしょう。N◎VA-Dで効果が大幅に強化された<※戦術>もこのあたりを考えているのかもしれませんね。
 こんな風に、ルールは柔軟に適用したっていいのです。
 困った時は貴方の最優先目標を思い出してみましょう。「ルールの厳密な適用」でしょうか? そうではなくて、「アクトを成功させること」ですね。


When the Fortune rings out

天輪の音が響くとき
はじめに
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Delirium
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