When the Fortune rings out
天輪の音が響くとき

〜本格的にニューロエイジに踏み出す方のためのプレイングTips&コラム集〜

天輪の音が響くとき
はじめに
プレイヤー編 Page1】【プレイヤー編 Page2】【ルーラー編 Page1】【ルーラー編 Page2】

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にゅうろなことはなるべく採用すべし。
ニューロ!

 TRPG全般のマスタリングのテクニックで、PCが行動しようとした際に可能かどうか微妙なことは、「それはダメ」と頭ごなしには決め付けずに、たとえダミーでもいいからまずダイスを振らせるなりやらせてみた方がいい、というのがあります。
 N◎VAでも同じことが言えます。RLしていて認めた方がいいのか迷うような局面は多いと思いますが、ニューロなことはなるべくやらせましょう。ニューロタングのニューロ、すごい、カッコいいのニューロです。面白そうな技能コンボやふだんと違う神業の使い方が出てきたら、厳密なルール解釈はさておきやらせてみましょう。(ルール上の利点より、演出効果を狙ったりした時は特に。)
 [タイミング:セットアップ] の特技をリサーチフェイズで使ったり、ちょっとぐらい拡大解釈したりしたっていいのです。ニューロが何か面白い電脳演出をやって大事な情報を入手しようとして――入手の目標値にたった1点届かなかったら、届いたことにして回りを沸かせてもどうせPLには分かりません。(後でも述べますが、RLの仕事のひとつはPLを騙すことです。) 特に神業は、少し拡大解釈したぐらいの方が盛り上がります。

裁定後に反応を見よう

 「うーん、認めてもいいんだろうか?」と悩んでから「いいよ」と答えることにした後は、一同を見渡してみましょう。
 PL陣は満足したり、笑っていたり拍手したり、貴方に大感謝していますか? 全員が受けてその場が盛り上がったりしていますか?
 もしそうなら、RLである貴方の選択は正しいのです。貴方の選択は「アクトを成功させること」に繋がったのですから。ニューロ!


情報項目形式を考えてみるの所。

 さてシナリオ中の重要なキーワードや情報を抜き出して一覧にし、社会技能やコネ技能の達成値に応じて得られる情報を列挙しておく、いわゆるSSS形式、情報項目形式のシナリオの記述方法も現在はすっかり一般化しました。
 これも一般化するまでには長く掛かりました。昔は公式シナリオもこの方式ではなかったですし(手に入るならRevisedでないRevolutionを見返してみましょう)、GFコンや各種イベントで使われたシナリオも、昔は実験的にこの書式を取り入れたりした所から始まりました。何年も経って紆余曲折の後に、ようやく現在の整ったフォーマットが事実上の標準となったのです。
 この方式には旧来のN◎VAファン層からは戸惑いや反発の声もありました。判定するだけの「自販機プレイ」だと揶揄され、西方のさるかつての有名サイトの地雷原BBSで熱すぎる議論が行われ、最後は業界人まで乱入してきて激しいバトルとなり、あとでログが公開できないほど危険すぎて埋葬されたこともありました。おっとっと、デンジャラスな黒歴史ネタですね。
 そんなこともありましたがDetonationの今の時代、この記述は一般的になり、ユーザの誰もが受け入れるようになっています。

情報項目形式の長所

 改めて情報項目形式について考えてみましょう。
 長所は、見ての通り、表舞台で長くなってしまう行動を簡略化することができ、短い時間で情報を配布できることです。
 またシナリオプロットに登場する重要キーワードやら人名やらが多い場合、シナリオ構造が複雑な場合、この形式で列挙しておけば、初めて読むRLもいっそう理解しやすいことがあります。
 書いてある通りにプレイすれば誰でも一定の効果が得られますから、アドリブの必要量がかなり減ります。RLやPLが初心者の時にも有効でしょう。予想外のことが起こりませんから、アクトの進行管理も楽です。
 何を調べればいいかが全て分かっていますから、リサーチフェイズで次にどうすればいいか完全に分からなくなってしまう、いわゆる「行き詰まり」「詰む」の状態も防ぐことができます。
 いつもの仲間でなくオフ会やコンベンションなど不確定要素の多いアクトでも、いわゆる「事故」を防いで成功の範囲でアクトを終わらせることができます。そして、オフ会やコンベンションではたいてい時間制限があるので、時間内にアクトを終わらせるためにも重宝します。

情報項目形式の短所

 では短所はなんでしょうか。
 まず地道に足で稼ぐ私立探偵のフェイトや、真実を捜し求めるトーキー、情報を生業とするニューロなどなどなど、情報系キャストの立場が弱くなることです。コネや社会技能を持ってさえいれば全てが解決できるなら、スタイルは戦闘系のみでもまったく同じことができてしまいます。
「社会技能が多い=その筋に強い」というのは、キャストのコンセプトによってはなんだか変に思える時があります。経験点300点のカタナがあり余る経験点に物を言わせて「オレは業界に顔が利くんだぜ〜」と何の演出もなしの<社会:N◎VA>で次々に情報をさらっていったら‥‥その横にいる経験点0点のハードボイルド系調査専門のフェイトは、何か理不尽なものを感じずにはいられないでしょう。
「みんなが戦えてみんなが情報収集できる」というのは、N◎VAの重要な要素である“キャストの個性化”を狭めてしまう原因にもなりますね。
 またニューロエイジ世界には現実世界同様、情報を生業としている人たちもいるでしょう。ストリートの情報屋、治安維持軍や巨大企業の情報部、あるいは国家の諜報機関員などなどなど。彼らの立場も非常に弱くなってしまいます。リアルに描かれたその筋のスパイ小説などを読めば分かりますが、そういう世界の人たちはとてつもなく優秀です。
 そうして長年守ってきた北米連合の秘密が、たまたま報酬点を上乗せして判定しただけで出た達成値20で出席日数の足りない新帝大付属高の学生一般人キャストに分かってしまうなら、ヴァージニア州ラングレーより移りニューフォートのMID作戦本部の工作担当官たちは、もう嫌になって転職を考えるかもしれません。

「あっ、その項目は調べられないんだ」

 また、PLが単に技能判定を行ってRLがそれに答えるだけのプレイというのは、まさに自販機プレイでワンパターンになりがちです。キャストが世界の中で行動しているという実感が沸いてきませんし、アドリブや想像力、種々の工夫が入る余地がないので、PL技術/RL技術の向上には実は役立ちません。
 貴方も情報項目形式で遊んでいるならきっと経験があるのではないでしょうか。「じゃあ、次は〜〜を調べるよ」「あっ、その項目はないから調べられないんだ」と答えてしまったことが。
 これはN◎VA-DのRLとしては正しいかもしれませんが、TRPGのゲームマスターとしては完全にRLの負けです。こういう場合、平然とさもシナリオに書いてあるような振りをして、でっちあげた答えを平然と言えてこそ、アドリブの巧い優秀なGMだからです。
 そして情報項目形式に慣れきってしまうと、PLが頭を使わなくなります。
「街に着いたよ」「じゃあ調べる」「何をどうやって調べるんだよ。TRPGはドラクエとは違うんだ!ヽ(`Д´)ノ」
というのはよくコンシューマーRPGとTRPGの差を語る時に例に出されますが、これと似たようなことが起こります。
 ‥‥大してロールプレイが上手い訳でもないしカード出してるだけ。そのくせ自分のキャラのオレカッコE演出とやらだけは延々とやる。おいおい、N◎VAやFEARゲーを遊んでるヤツらってのはこんなのばっかなのか? ――他のシステムに慣れ親しんでいる人から見たら、こんな風に思われても仕方のない一面もあります。

結論:長短を補い、柔軟に、臨機応変に行こう

 ではこのプレイングTipsコンテンツからのアドバイスはというと――どちらが正しいと一方的に決め付けるものではないのですが、前々項で述べた『ルール適用は柔軟に』をここでも上げておきましょう。
 もし貴方が遊ぼうとしているのがイベント満載の大作シナリオだとしたら。調査のための単調なリサーチシーンなんてなくったってキャストは大忙し、表舞台でたくさんの事件や運命の邂逅を待つゲスト、その他諸々の大冒険が待ち受けているのだとしたら。あるいは、今回アクトに掛けられる時間が少ないのだとしたら。
 今こそ情報項目形式の強みを生かす時です。情報は舞台裏や簡単な技能判定で済ませ、表舞台はとっておきのイベントにこそ使いましょう。

 逆に最近は見かけなくなりましたが、昔からのシナリオによく見られるような、プロットだけがおおまかに記述してあるシナリオ、イベントが皆無で得られる情報だけが列挙してあるシナリオの場合には。
 情報項目形式の短所を補えばいいのです。技能判定だけでなくどうやってその情報を得ようとしているのか、PLに演出させましょう。キャストが馴染みの情報屋に会ったり、BARで集結して情報を交換し合うようなシーンをどんどん作り、ロールプレイさせるようにしましょう。(キャスト/ゲストを問わず、人と会うシーンというのは演技の機会になります。)

 クライマックスで剣技が炸裂するであろう経験点300点台のカタナにはリサーチフェイズでは与える情報を少なめに厳しめに、リサーチフェイズこそが見せ場でそれらしい演技と共に調査を進めていく経験点0点の老練な私立探偵には情報を多めに渡したりと、キャスト毎に差をつけることもできます。
 PLが情報入手にニューロな方法(電脳ではなく、すごい、面白いの方のニューロです)を演出したら情報を多めに、ただ単に手札を出すだけなら少なめに与えたりと、差をつけてアクセントを持たせることもできます。
 このキャスト間の情報入手量の格差の問題は、PLサイドからも互いを尊重しあい、見せ場を譲り合う気持ちを持つことでも解決できます。完全にシナリオが項目形式になっているのなら‥‥「じゃあ、こっちはST☆Rには不慣れだし、その重要情報はあえて探らずにそっちに調べてもらおう」「次のイベントシーンで聞きに行こうと思うけど、どうかな?」‥‥などなど。
この気持ちがあれば、上のカタナとフェイトもきっと仲良く活躍できるでしょう。

 また、PL編の『リサーチの楽しみ方』で詳しく列挙していますが、リサーチを面白くするクリエイティブな試みがPLサイドから出たら、積極的に採用しましょう。
 上手い演出のついた技能判定が出たら、それに合わせて演出を付け加えましょう。情報を多めに渡したり、あるいは大目に渡す振りをするとPLも喜びます。
 社会技能だけでない、他の特技も一緒に使ったらキャストの設定に合わせて答えを変えましょう。「じゃあ<※戦術>も組んでるから分かるけど、この傭兵部隊は相当錬度が高いね。M○●N傭兵部隊の最精鋭に匹敵するぐらいだ」とちょっと付け加えるだけでも、相手の満足度はずいぶん違います。トループやエニグマが情報を仕入れてきたら、マスターのキャストに報告するシーンを作ってあげましょう。
 こうしたアドリブの工夫を加えることで、情報項目形式のワンパターンさも軽減することができます。


情報は貴公の意のままに操るべし。

 上の『■“自販機ぷれい”なるものを思い返すの所。』で情報について触れたので、今度は情報の与え方についてもう少し詳しく考えてみましょう。

バーチャルな情報置き場

 N◎VA以外のゲームを問わず、たいていのアクトやセッションではシナリオに必要な情報はだいたい一定です。それには重要な情報もあまり重要でない情報も、時には嘘も混じっています。シナリオに書いてあったりメモに書いてあったりRL(GM)の頭の中にあったり、いずれにせよ仮想的にはひとつの“情報置き場”のようなものがあって、ここに集約されて全部まとめて置いてあるとします。
 アクト中、RLは必要に応じてこの仮想的“情報置き場”から取り出した情報をPLに配っていきます。アクトを解くためにどうしても与えなければいけない情報は優先して配るでしょうし、達成値が高かった社会技能判定や神業の時に与えたり、時には無条件でゲストの口から語らせたりするでしょう。自然な調査の流れから行ったら、一般的な情報を配ってからもっと詳しい情報を配って然るべきでしょう。
 そして与える過程はバラバラであっても、最終的にこの“情報置き場”は空っぽに近い状態になって、アクトは無事終了するわけです。
 シナリオの終わり方はたいてい、敵を倒したり一種類ないし数種類に決まっていることがほとんどです。しかし、この途中の情報を与える過程に差があることで、PLたちはあたかも自分たちの選択から無限に物語が分岐していったように錯覚します。
 つまり情報の総量は「常に一定」であり、「アクトを成功させる」という課題を最優先目標としているRLである貴方に「都合のいいように」配っていくべきなのです。

杓子定規に情報を与える必要はない

 もしも貴方がRL初心者で、情報が列挙されているおなじみSSSの情報項目形式のシナリオを遊ぼうとしているなら。上のことをちょっと意識してみましょう。PLが判定で出した達成値に、ただ単にそのまま正確に対応して杓子定規に情報を与えていく必要はないのです。
 何も分からないアクトのオープニング時点では情報は少なめにし、巨大企業の陰謀が徐々に分かってくる中盤からどんどん渡すようにしてもいいのです。シナリオ上分かって貰わないと困る大切な情報はホントは達成値が1点足りてないんだけど教えたり、コネのあるゲストの口から直接語らせても構いません。味気ない判定のみではなく実際に調査をしたり、人と会ったりするシーンでは情報は多めに渡した方がスムーズに進行します。
 そうして“情報置き場”の中がだんだん少なくなり、最終的には空になるように、アクトを進行させている貴方にとって都合のいいように情報は配っていきましょう。
 R時代のイヌの追加特技に舞台裏がLv回判定できる<※聞き込み>という特技がありました。Detonationの<※クローン>も同じようなことができます。
 アクトにおける情報の総量がだいたい一定なら、「なんだ、この特技ってあってもなくても結局最後にもらえる量は同じなんじゃん」と思い当たるかもしれません。RLやGM経験の豊富な人はみんなきっと黙ってますが、実はその通りなのです。

PLを騙すのも仕事のうち

 また、上で達成値が足りていない場合にごまかすのもありだと述べました。もしも貴方が本当にRLが初めてで知らないのならば、ここで触れますが――程度の差はあれ、こういうごまかしはマスタリングの立派なテクニックです。RLやGMの仕事には明らかに「PLを騙すこと」も含まれています。
 ふだん分からないのは、このテクニックを実行しているRL(GM)は自分からは明かさないからです。(そう、奇術師は手品の種を明かさないものです。)
 もちろん、「俺は馴れ合いは嫌いだから戦闘は一切ごまかしなしのオープンダイス。死ぬときは死ぬぜ〜♪」なんていうGMポリシーもそれはそれでありです。有限乱数のトランプで乱数要素の少ないN◎VAとは違う、ダイスを使った無限乱数のゲーム、D&Dなどで生きるか死ぬかのバトルをやるのもそれはそれで似つかわしいでしょう。

鉄則:人間は自分に都合がよく、忘れっぽい生き物である

 PLには記憶力のよい人も忘れっぽい人もおり、レコードシートその他に丁寧にメモを取る人も取らない人もいます。千差万別ですが、アクト中に与えられた情報というのはえてして混乱していくものです。オフィシャルのリプレイ『ナイトブレイク』でもそんな一幕がありましたね。
 はて、自分はこの事件についてもう調べたんだっけ、<社会:ストリート>では調べたはずけど<社会:警察>ではどうだったかな? そもそも達成値はどこまで出したんだっけ。あれ、前シーンで判明したあの敵ゲストの情報はMyキャストは知らないけど知ってるのはどのキャストだったっけかな‥‥??
 ‥‥などなど、だいたい不正確さが混じってきます。

「キャストの知っている情報とPLの知っている情報は別である」というのもTRPGの常識としてみんな頭では分かっていますが、実際にはアクトが進むにつれてだんだんあやふやになってきます。
 人間なんてそんなものですし、人は自分に都合のいいように物事を考えるものです。PL陣がそんな誤りをしていたら、RLである貴方は特に突っ込んで訂正させる必要はありません。そんなことよりアクトをスムーズに進行させる方を考えましょう。そう、最優先目標は「アクトを成功させること」です。
 実際、RLをしていると、ついさっきも調べたことをPLがもう一度調べてきた、なんてことはしょっちゅう起こります。そんな時は何食わぬ顔をして同じことを教えてあげたり‥‥調査し忘れている大事なことをこっそり付け加えてあげましょう。

感じよ。場の雰囲気を。

 与え方にもテクニックというかコツがあって、場の雰囲気を読むという方法があります。
 たとえばあるアクトがあったとしましょう。イマイチだれてきたリサーチシーン後半、PL陣はあれほど大事な情報を調べ忘れていました。そこで新人の機動捜査課隊員のキャストが一大決心します。
「分かった! じゃあなけなしの報酬点を全部使って<社会:警察>を21に伸ばす。本部のメモリ巡査に頼んで過去の犯罪記録を全部洗ってもらうぞっ!」
 そして場を見渡せば、PL一同の期待が一心に集まっているのが見て取れる。さあ、この行動は行き詰まった状況の打開策となるのか‥‥??
 ここで、RLである貴方だけは不幸な事実を知っているとします。<社会:警察>で分かることは15までしかなくて、とっくにN.I.K.所属の私立探偵が調査済みで、あれほど「これ以上の情報はないようだ」と伝えてあるのにっ‥‥! (でも、こういうことはよく起こるものです。)

 こんな時、どう答えたらいいでしょうか。
「駄目だなあ。その情報はないってあれほど言ったじゃん (´-`)y-~~~」
などと答えると、たぶん手札を出したそのPLはそのまま卓に突っ伏してPL陣はよけい意気消沈し、いっそう陰鬱な空気がどんよりと場に満ちるでしょう。しばらく休憩でも取った方がいいかもしれませんね。

 では機転を利かせて、
「なるほど! では不平を言いながらも彼女は君に協力してくれる。炎の剣を持った天使のアイコンはハウンドのデータベースの奥深くにもぐりこむと、なんとそこには‥‥!」
などと言いながら、本当は<社会:企業>で分かるはずでみんな調べるのをうっかり忘れていた超☆重要情報を伝えたら。
 確実に歓声が上がってその場は盛り上がることでしょう。きっと場の雰囲気もリフレッシュしてクライマックスへの道が開くはずです。
「まったく、いつも人に頼まないでください。救世主はこう仰いました。『汝、自らの記憶にのみ頼ることなかれ』と」などとプンプンしているメモリ巡査の様子でもついでに描写すれば、眼鏡が好きなPLがいたら喜ぶでしょう。(えっ、キーファー巡査か睦島千歳の方がいいって?)
 不思議なものでこんな時、「そういえば、なんで<社会:警察>でこんな情報が分かったんだろう」という疑問はPL陣からはたいてい出てこないものです。(そう、人間は自分に都合のいいように物事を考えるのです。)
 仮に思い当たるPLがいたとしても、きっとRLの意を汲んで黙っていてくれます。

 余談ですが、この場の雰囲気を読む能力というのはTRPGにおいていろんな場面で役に立つことがあります。TRPGやコンベンションの話題でよく語られる、いわゆる「困ったちゃん」はこの能力に欠けている場合がよくありますね。
 TRPG以外の現実世界でも必要になる場面が絶対にありますから、養っておくとよいでしょう。


褒美は他者にはないものを与えるべし。
冴子警部曰く「この仕事は、キミでないと頼めないの」

 『■きゃすとの視点を交えて描写すべし。』で他人にはない特別な褒美を与えるのはテクニックだと書きました。これについてもう少しまとめてみましょう。
 キャストを通しアクト内の世界に登場するPLが求めるものは何でしょうか。いろいろあると思いますが、そのひとつは他者にはないもの、独自性だと思います。
 キャラクター作成も同じルールには従いますが、例えメイクアップでも何がしかの工夫を入れて出来上がるのは「他のプレイヤーが作ったのとは違う」キャストです。ハンドアウトが用意されているシナリオなら、そのキャストが受け持つのは「他のキャストとは違う」導入です。
 アクトコネクションでシナリオコネが用意されているなら、そのキャストが受け持つのは「他のキャストは持っていない」人物に対するコネです。実際、そのコネの人物に優先して接触する権利を持つのは、その導入を受け持つキャストであって然るべきでしょう。
(よくシナリオに出てくる無力な女の子の依頼人など、ヒロインぽい味方ゲストをキャスト全員で取り合うのは、非常に見苦しいアクトになります。)
 シナリオに関わることになる経緯や動機も、たいていは多かれ少なかれ「他のキャストとは違う」ものになります。そのキャストがアクトの中に存在する理由も、「他のキャラクターとは違う」その人物だからということもあるでしょう。
(オフィシャルシナリオでも思い返してみましょう。後方処理課に腕利きは沢山いるはずなのに美沙っちが「これはあなたにしかできない仕事なの」と言ってきたり、冴子たんが機動捜査課の面々からレイたちを選ばずにイヌのキャストを呼んで「その理由は3つあるわ」と言うような場面があるでしょう。)
 つまり、「他者とは違う」ことに何か意味があるわけです。

独自性を意識してみよう

 アクト中にRLとして話を進めたりキャストを誘導したり褒美を与える時、この「他者と違う」ことを意識してみましょう。実際に行えることは、実は他項で既に述べていることとほとんど被っています。

 あるシーンで描写をするとしたら‥‥『■きゃすとの視点を交えて描写すべし。』で述べましたが、キャストごとに違うことを教えてあげるのはよい考えです。氷の宮の奥深くに秘せられた聖母殿で訓練を受けたからこそ、目の前の敵は魂が穢れた神敵であることを教えてあげればPLは「オレの神父キャストってすごいんだ!」と思います。

 あるシーンで情報を与えているとしたら‥‥『■情報項目形式なるものを思い返すの所。』でも述べましたが、キャストごとに違う情報を与えるのはよい考えです。ニューロのキャストが単に手札を出すだけではなくデータベースをハッキングする面白い描写と共に行動したのなら、達成値ごとの情報項目は無視して情報を多めにあげれば、PLは「ワーイ、ニューロってやっぱり強いんだ!」と思います。
(この時、そのキャストだけに分かったこと、そのキャストだからこそ分かったことを強調しましょう。)

 あるイベントシーンで敵が襲ってくるとしたら‥‥『■技あればそれは披露させるべし。』でも述べましたが、キャストごとにその特徴を生かせる演出を付け加えるのはよい考えです。
 襲撃を防がれたエクストラクションチームのクグツは無言ではなく、
「ほう、(キャストのハンドルが入る)‥‥ナイトワーデンは腕利きを送り込んだようだ。では、こちらも本気を出さざるを得ませんな」
とぞっとするような笑みを浮かべれば、PLはたとえ初心者でも「うお、ボクのカブトってもしかして有名なのだ?!」と思います。

 オープニングやエンディングその他、キャスト一人ひとりに何か別々のシーンを用意しようと考えているなら‥‥『■貴公のあれんじをこそ加えよ。』で述べたようにキャストごとにアレンジを加えるのはよい考えです。
 そのキャストがコネにしている馴染みのゲストが出てきたり、そのキャストの設定が活かせるシーンにしたり、キャストのイメージにぴったりの場所が舞台だったり、キャストがいつも口にするお決まりの台詞がシーンの最後で言えるような場面だったり‥‥こういう工夫をすると、ほぼ100%のPLが確実に喜びます。

 アクトが終わって経験点の計算をする時もそうです。「素晴らしい活躍をした」は「ああ全員つけていいよ」と投げやりに言うのではなく、たとえ嘘が混じってもいいですから、RLである貴方から見てどう「他者と違って」素晴らしい活躍をしたからチェックしていいのかを言えば「言われてみればその通りだ。楽しかったー!」と満足することでしょう。


たろっとを使ってみるべし。

 高名なる秘密結社G∴D∴、即ち『黄金の夜明け団』がカバラ的解釈を整備し、20世紀最後の魔術師アレイスター・クロウリーがデザインしたトート・タロットを元にした、通例のタロットとは並びが若干異なる大アルカナ。そこに謎の絵師K◎JIがイラストを描いた『トーキョーN◎VA』のタロット。鋼とサイバーが支配する捻じ曲がった未来世界においてもニューロエイジ世界は運命に支配され、タロットの神秘的な暗示が天輪の行く末を示しています。
 この札が変わっていくことで物語は進み、タロットがめくられるという行為が、参加者の面々にシーンが変ったという事実を認知させ、タロットがシーンにある程度のイメージを与えます。
 何度か絵が変ってきたこのタロットに関しては、皆さんもいつも使っているでしょう。時にはタロットをめくり忘れてしまうこともあるでしょう。筆者も時々やってしまいます。

魔術師はタロットを仕込む

 キャストのキーとなるタロットがリサーチ以降で出るようにタロットを仕込んでおくのは、以前からRLのテクニックでした。腕に覚えのあるRLはよく見えないところでやっているもので、「おぬし、できるな?」と技ありの人を知る手段にもなっていたのですが。N◎VA-Dからはこれはルールブックに記載されたテクニックとなりました。
 それ以外にも、特定のシーンで特定のタロットが出るように仕込んでおくこともできます。
 アクトは予想通りには進まないものですから、RL自身がマヤカシで<※神託>が使えるのでもない限り、全シーン仕込むのは無理というものです。
 しかし、オープニングだけそのシーンに合うタロットを仕込んでおくだけでも、ずいぶんと雰囲気はそれっぽくなります。キャストを待ち受けるであろう運命に合わせたタロットで、未来を暗示してあげるのもよいでしょう。
 中には豪の者もいて、オープニングでキーが出るとPL全員が見ている前で山に入れ直してしまうRLもいます。あるいは、キーカードはPLの前に置いておき、見せ場で使いたいと思ったシーンで宣言して、シーンカードと取り替えるというハウスルールもあります。
 方法はどうあれ、タロットはアクトに神秘的な雰囲気を増してくれます。

開演前の観客は、魔術師を見ていない

 タロットを仕込む場合はアクトの前にこっそりとやらなければいけませんが、大丈夫です。アクト前のたいていのPLはRLのことなんか気にしていません。
 たいていのPLはレコードシートやアクトシートに書き込んだり、キャスト間コネのスートを思案したり、ルールブックを再確認したりプレアクトの買い物をしたり雑談をしたり、自分のキャストは果たして格好いいだろうか再確認したり、自分のキャストって格好いい〜!と浸ったりするのに忙しいものです。その隙に準備を整えて、貴方の支配する運命の扉を開いてやりましょう。いざ幕が上がれば、貴方の魔術がすべてを支配します。


出会い系しぃん演出はほどほどにすべし。
アクトに於いてもっとも口にされる台詞ベスト1:

 「久しぶりね」「お久しぶりです」――アクトで幾度となく聞いてきた台詞です。「2秒だ」「XYZ」などのニューロタングが最近使われなくなったD時代、この台詞が回数的に一番多いのではないでしょうか。(笑)
 キャスト間コネが繋がっていたり、以前のアクトで面識のあるキャスト同士が出会うと、いわゆる出会い系シーンが展開されることもあります。
 綿密なプレプレアクトで過去の経緯の設定が組み上がっていたり、あるいは初対面のキャスト同士でも、そこに素晴らしいドラマが生まれることもあります。しかし、やりすぎるとくどくなる時もありますよという話です。
 キャストが3人なら1対1で出会うパターンは 2+1=3通り あります。三様の出会いがあるのも良いでしょう。キャストが4人なら 3+2+1=6通り、キャストが5人なら 4+3+2+1=10通りもあります。6回や10回も運命の邂逅があったら、これはさすがにだれてくるでしょう。
 時にはほどほどにして切り上げるのも手です。またPLの方もアクト後半の出会いであれば「そちらは? ほう、君の知り合いなのか」ぐらいのロールプレイで軽く流してしまうこともできます。
 筆者の経験だと、キャストが4人でリサーチ中に2人、2人でチームを組んで最終的に合流するような流れだったら――過去の設定を交えた本格的に長い出会い系シーンがあるとしたら、それぞれのチームで1回づつ合計2回ぐらいで十分かなと思います。


戦に於いては兵に休息を与えよ。
人間の集中力の限界

 人間の集中力の限界は1時間だとか1.5時間だとか2時間だとか様々に言われ、学校の授業時間が45分や90分なのはそれを考慮していると言われています。
 TRPGのセッション、そしてN◎VAのアクトもその中では説明や思考、ロールプレイやルール裁定、様々なことが起こり、頭を非常に使うので集中力も磨耗してきます。PL陣の顔を見渡していると、集中力の減退の度合いは大体分かります。RLから率先して宣言して、適度に休憩を取りましょう。
 ちょっと古いゲームですが『天羅万象・零』には幾つかの場(≒シーン)からなる「幕」があり、幕と幕の間の幕間には休憩を入れる(30分〜1時間に1回10分程度)となっていました。

休憩してリフレッシュしよう

 N◎VA-Dでは指定はありませんが、貴方の考えるきりのいいところでちょっと一休みしましょう。オープニングが一通り終わった、リサーチが一周した、重要なイベントがこれから起こる/あるいは終わった、クライマックス突入前、これからエンディング、などなどがきりのいい切れ目です。参加者各自がばらばらに休憩を取るよりは、参加者全員でまとめて休憩した方が効率的です。
 伸びをしたり、お菓子を食べたり、お手洗いに行ったり、(大人なら)一服したり、一休みすれば、気分もリフレッシュし、自然と休憩後のシーンには力が入ります。特にクライマックス前など、大事なシーンの前には休憩を取ると有効です。
「次のシーンでは重要なイベントが起こるんだけど、それが終わったら休憩ね」「ではこれが片付いたらいよいよクライマックスですが‥‥その前に休憩を挟みましょう」などと前もって宣言しておくとスムーズです。


五感に訴えるを考えるの所。

 アクトの中での情報伝達はメインは発声した言葉による聴覚、紙の上の文字や身振り手振りや表情などの視覚で行われます。
 マスタリングの記事やゲームマスターの解説書などでよく取り上げられる話題ですが、人間が感じる五感について訴えられることはないか考えてみましょう。キャストの五感が感じたことを描写するのもよいテクニックですが、ここではルーラーとプレイヤーの五感について取り上げています。

視覚:

 よく芝居で「演技はオーバーに」と言われますがその通り、表情や身振りから伝わるものもあります。ものの本によると人間の意志疎通の6〜7割は、言葉ではなくボディランゲージで伝わるともいいます。
 一般に我々日本人は、地球上の人種の中では身振り手振りによるコミュニケーションが下手だと言われています。これは人前で感情を露にしたりするのを恥とする文化が背景にありますから、仕方がないですね。ニューロエイジに暮らしている日系人には変化が生じているのかというと、変わらないような気もします。
 さて、マスタリングが上手い人は見ていると大抵、ちょっと大げさ気味な身振り手振りで状況を説明したり、ゲストの反応を表したりしていることがあります。話の上手い学校の先生や大学の教授、仕事でプレゼンテーションの上手い営業の人も同じようなものです。テレビのバラエティー番組の司会や落語家もそうですね。真似してみましょう。
 文字情報でしか情報が伝わらないオンラインアクトを遊ぶと、オフラインでは我々がいかに言葉以外のところから多くの情報を得ていたかがよく分かります。身振り手振り、目線、表情の変化、などなど‥‥
 今度オフラインでRLする際、PLの目線を観察してみましょう。貴方がシーンタロットに手を伸ばした時、ゲストの演技として銃を抜く仕草をした時、シーンプレイヤーを手で指し、そちらに向けて姿勢を直した時‥‥etc。彼らの目線は自然とそちらに向きます。人間は声による会話以外からも、沢山の情報を視覚から得ているのです。
 コミュニケーションに関しては、現実世界で学んだことがTRPGの中でも大いに役立ちます。学校や職場であなたが説明が上手いと思った人の話し方、企業の新入社員研修でやるコミュニケーション入門なども、ゲーム内できっと役立つでしょう。


 大抵の実際のアクトにはプロファイルシートやレコードシート、アクトシート、タロット、トランプ、何冊かのルールブックが目の前の机の上に揃っているでしょう。我々は視覚を通しそれらを参照します。トレーラー&ハンドアウトをまとめたプレアクトのテキストや、必要ならそのシナリオの背景や設定なども、紙に出して人数分をPLサイドに渡しておくと便利です。フィギュア類で互いの位置をざっと示しあうのも、多人数が入り乱れて戦う戦闘では面白いかもしれません。特にウォーカー同士の戦闘などは駒を使うと盛り上がります。

 キャストやゲストやその他諸々のイラストがあるのも有用です。絵心があるなら書いたり誰かに書いてもらったり、モデルになった元の作品や画集なども役に立つでしょう。一枚の絵は時として、何千の言葉よりも多くのものを語ってくれます。
 同人誌やオフィシャルシナリオなどのように体裁が整っているシナリオなら、プレアクト分と一緒に挿絵などもPLサイドに置いておくと役に立ちます。シナリオを広げて他を手で隠してそこだけ見せるのは手間ですから、あらかじめコピーしてそこだけ切り取るなりしておきましょう。
 人間というのは手元に何かあるとそれで遊ぶものです。付属シナリオのイラストを渡してRLが放っておいても、やれイラストの中のハイランダーの腹筋がどうだとか眼鏡っ娘+悪魔っ娘+シスターのハイブリッドがどうのとか、どうでもいいことで盛り上がったりしてくれます。
 ルールブック内の顔つきパーソナリティからそのシナリオに出てくる人物の分をコピーして渡しておくというのも、役に立ちそうですね。

聴覚:

 RLの声は聴覚を通してPLに伝わります。それ以外に‥‥コンベンションでは迷惑ですから完全に無理でしょうが、環境によってはBGMを流すというアイデアがあります。ルールブックにもちょっと書いてありますね。
 CDラジカセを持ってきて、BGM集として焼いたCDを流すアクトを見たことがありました。頭出しが簡単なMDを使う手もあります。
 古き時代に夢想されたニューロエイジに負けないぐらい、現在の現実世界は技術が進んできていますから、媒体は様々でしょう。MD、CD以外にもUSBフラッシュメモリやハードディスクなどなど‥‥。ファイル形式もMP3など様々です。話を聞くとSONYのPSPも音を流すのに向いているらしいですね。人気のiPodはどうなのでしょうか。
 筆者はCDから読み込んでノートPC上に保存したソフトウェア上から、よくBGMを流して使っています。あるいは遊んでいる場所がカラオケボックスだったりしたら‥‥クライマックスに似合う歌を選曲してみるとか。(アクトそっちのけで歌い出しちゃったりして?)

 BGMで貴方のお気に入りの曲でも流せば、なんとなくリラックスしてそれだけで普段通りの力が出せます。
 N◎VAっぽいと共通認識できる音楽をBGMに使えば、それだけでも雰囲気は出ます。ありきたりな例ですが、たとえば『攻殻機動隊S.A.C.』のサントラを流すと、多くのN◎VAプレイヤーはN◎VAっぽさを感じますね。
 またアクトの事前に考えて、シーンの雰囲気にマッチした曲を流せば‥‥ムードも盛り上がり、自然とロールプレイもしやすくなります。言葉や文章ではなかなかうまく伝えられないものも、音楽は見事に伝えてくれます。特に喜びや悲しみ、愛、疑惑などなど、特定の感情を想起させたいシーンに、音楽は大いに役に立ってくれます。演技志向で遊ぶならば、BGMはかなり有用です。
 サイト【トーキョーN◎VA 100の質問】さんで公開されているプレイヤー向け100質の回答をあちこち拝見すると、BGMを使う方は多いようです。よく使うBGMにも割と似通った答えがあるのが興味深いですね。

味覚:

 キャンディス・フーズ・コーポレーションが販売している合成食料を想定した味の食べ物をどうにかして再現したら、そのアクトはリアリティが増すでしょうか?
 購入レート20のスキヤキの味ならともかく、うーん、アクトに味覚で彩りを加えるのは難しそうですね。
 N◎VA内外を問わず、セッション用にジュースやお菓子やのど飴を用意することはよくあるでしょう。N◎VAはカードを使いますから、手が汚れないお菓子にするというのも大事ですね。

嗅覚:

 夜叉が本気で戦った後のストリートのむせ返るような血の匂いをどうにかして再現したら、何か楽しいでしょうか? うーん、嗅覚で彩りを加えるのも難しそうですね。
 むかーしですが、東京都内で、各卓にハーブを置いて香りを漂わせているコンベンションを見たことがありました。
 大人同士のプレイの際になりますが、かっこいい大人のマネキンを演じる日は香水もつけてきたりすると、エレガントになるかもしれませんね。

触覚:

 重汚染地帯で生まれオーサカM○●Nに攻めてきた、それはそれは恐ろしい異形のヒルコのキモーい手触りをそのまま‥‥と同じネタはやめておいて、触覚も難しそうです。
 しかしN◎VA始めカードを使うTRPGは手触りでそのカードが自分の元にあることを認知していますから、触覚をうまく利用しているとも言えるでしょう。

第六感:

 なんと貴方自身がマヤカシでしたか。道理でマスタリングが上手いわけです。すごーい ヽ(´▽`)ノ


 これら五感に訴える小道具類は準備や持ち運びが必要なのが難点ですが、アクトに彩りを与えてくれることもあります。


電脳のばを考えるの所。
現実は未来を超えた

 科学の進化は、夢想の速度を超えていました。日本語版は1993年に登場したクラシックな『サイバーパンク2.0.2.0.』に登場する携帯電話やコンピュータの大きさや性能が、2020年以前の現実世界を基準にとっても既にだいぶ遅れているのは、古参ゲーマーには有名な話です。
 N◎VAでもそうです。かつて1993年に出たツクダ版1stでは情報量単位クリス [Krs.] が用いられ、1クリス=1メモリでポケットロンが3メモリ搭載、標準的なタップが30メモリ搭載でした。1クリスはテキスト1億文字、音声50時間相当となっていたので半角英数字テキストで変換すれば1クリス=現実世界の約 95[MB] 相当、漢字を含んだテキストならその約1/2、Unicodeなら1/3〜1/4程度になります。(おっとその頃はまだUnicodeが存在していないですね。)
 1995年の2ndでは実は目安の記述がなく、1998年のRevolutionではポケットロンが1メモリ搭載、タップは20〜50メモリ程度搭載。1クリスは映像2分音声15分相当で、1クリス=現実世界の約 40[MB] 相当と実は減っていました。2002年のRRでは目安は変わらないものの、 40[MB] という値が消滅。
 そして現実が未来に追いついた2003年、近未来らしさを出すのに苦労し始めたN◎VA-Dでは御存知の通り――メモリやクリスという単位自体も消えて、タップに搭載可能なソフトウェアの数で数えるようになりました。雑に概算すればソフトウェア1つ=RR時代の10メモリ分ぐらいでしょうか?

ハードウェアを使ってみよう

 と余談はさておき電脳の時代は現実になりました。これらを活かす方法を考えてみましょう。
 ビジネスマンがよく使う手帳サイズの PDA(Personal Digital Assistance) は、プレアクトのテキストやトレーラー、その他アクトの情報などを参照するのに便利です。ものによってはキーボードがついたサイズになったり、WindowsCE で動いて Excel も読めるくらいの大きさになるでしょう。あるいは現在の携帯電話も凄い速度で進化し続けていますから、テキストデータの参照に使えるかもしれません。
 実際、このページを御覧の貴方が学生であればあまり縁がないであろうこのPDAは、日本ではビジネスマン層以外にも普及するかどうかは微妙で、進化した携帯電話が取って代わるのではとも言われています。

 PDA以上のノートPCサイズになると様々な用途に使えます。シナリオが一式入っていたり、いろんな画像も入っていたり、BGMも完備できたりするでしょう。
 ちなみにたいていのRLは、立ったりPL一同を見渡したり身を乗り出したり、あれこれ姿勢を変えながら、シナリオを読み上げたりアクトを進行させたりしていきます。
 それを考えると、姿勢を低くして小さな液晶画面とにらめっこしながら進めるよりは‥‥シナリオ自体は電子データではなく紙で出して手元に置いておく方が良いのかな? とも思います。(PDFもかなり進化してきましたが、まだ紙のドキュメントの方が読み易いですしね。)
 ノートPCならマスタースクリーンの代わりにもなりますね。ちなみに、N◎VAシリーズはマスタースクリーンなしで遊ぶことを想定してデザインしていることを製作陣がはっきり述べていますので、これからもマスタースクリーンがサプリメントとして出ることはないでしょう。
 コンベンションやイベントでも、ノートPCを使う人はよく見かけます。ジツは筆者はあまりモバイルしないので、モバイラーの方の意見も伺いたいところです。

ソフトウェアを使ってみよう

 ではハードウェアは終わってソフトウェアの世界では‥‥。プロファイルシート類もPDFで配布される時代になりました。ファンサイドで作った方もいます。
 またJavaScript で動的に変化するメイクアップ作成 HTML、HTML 吐き出し式のキャストプロファイル、Excel の Macro を利用したプロファイルシートやメイキングツール、IME 用の辞書などなど、主に2chを通してアンダーグラウンドで流れたものも多いですが、アンオフィシャルながらN◎VA-Dが出てから様々なツールが生まれました。これらも利用できます。
 R時代も手製のアクトシート類をWeb上で公開しているサイトがありました。このあたりは色々と自作や工夫もできますね。例えば筆者は自分がRLする時は、Excelの手製のキャスト管理シートをよく使います。

電脳のばツールのリンク集
  • raiさんの【Gamemaster.jp
     D対応のIME辞書があります。
  • トーキョーN◎VA-D@2ch過去ログ倉庫
     オフィシャルゲストとルール用語に対応したIME辞書があります。
  • Mana†Cryptさんの【霧之冥府
     Excel版フルスクラッチ作成用シートがあります。
  • 早城菱人さんの【のば通.communication
     オリジナルのPDF形式ゲストシートがあります。
  • D-Dragonさんの【D-Dragon's NEST
     オンライン用のHTML式プロファイルシートがあります。
  • えめどんさんの【Tokyo NOVA The Detonation TackyTooLBox
     Excel版プロファイルシート、HTMLとJavaScriptで動くメイクアップツール、オンライン用シート作成ツール、トループのオンライン用シート作成ツール、ランダムスタイル決定ツールがあります。
  • c-sagiさんの【WIRED EDEN
     各スタイルを題名にとったMP3形式の自作BGM集があります。クール!
  • FEAR Online
     改めて取り上げるまでもないですが、オフィシャルサイトではエラッタ&FAQ、PDF版シート類がダウンロードできます。

武芸者なれば他より学ぶべし。
人を観察し、学ぼう

 貴方がここはひとつ初めてRLをしてみようと思い立ったら、その道はなにも孤独ではなく、先人も仲間も大勢います。
 身近にマスタリングが上手いと思う人がいたら観察したり、技を盗むのも手です。逆に下手だと思ったら、その人はどこが下手だと思ったのか考えて反面教師にしてみましょう。貴方がRLの時は、その人と違うことをすればよいのです。
 コンベンションやイベントなり、OFF会なりオフィシャルコンベなりで、技術のある人を見て参考にすることもできます。
 昔からよく「コンベのN◎VAは地雷」だと揶揄されてきました。N◎VAを始めとするFEAR系システム全般にはユーザの悪い部分を増長させるような部分もあり、この話もまんざら嘘でもないのですが。世の中は常に移り変わり、今はネットの時代です。
 不特定の人間が集まるコンベンションでなく、ネットで活動している熱意のある人、力のある人が中心になってのOFF会などの集まりも活発になってきました。特にD時代はN◎VA-Web界でも勢力争いや衝突などが少なくなり、全体的な友好のムード、ゆるやかなプレイグループでの参加メンバーが誰であれ成功するスムーズなプレイが可能になってきました。トレーラーとハンドアウトの提示などアクトの進行が一元化したこと、環境の成熟、そしてBlogでの情報発信のし易さなども影響しているでしょう。人のマスタリングを参考にするなら、そうした機会を生かしてみてはいかがでしょうか。

 筆者もネットとオフラインで何年か活動してきましたが、やはり完全に閉鎖された環境よりも様々な人と接触のある人、外部と遊んでいる人の方が多くを学び、上達も早い傾向にあります。(学ばなくてもいいモノまで吸収してしまう場合もありますが。/笑)
 特に若い世代の人ほど、年長の人から様々なものを吸収して変化が早い傾向にあります。これは人間の教育と同じですね。

本から学ぼう

 最近はあまり見かけなくなりましたが――TRPG関係書籍でも、マスタリング関係を扱った本は過去けっこう出版されてきました。大きいゲームショップや古本屋に行けばまだ見つかるかもしれません。
 TRPG雑誌でも過去、マスタリング関係の記事は色々と取り上げられてきました。ただ、雑誌は時期を逃すとなかなか手に入らないのが難点です。
(例えばリプレイ『振り向けば死』のオリジナルであるサイバーパンク2.0.2.0版リプレイが載った伝説のRPGマガジン――1992年2月号と判明しました!――を今でも持ってる方はいらっしゃるでしょうか。筆者でもさすがに持ってません!!)

 と昔話はさておきTRPGの現在の雑誌では。『Role&Roll』誌vol.3 では特集で初心者向けの『テーブルトークRPGを遊ぼう!』という特集、vol.4では『はじめてのゲームマスター』があり、2005年夏現在のvol.13では『はじめてのコンベンション』がありました。月刊化した後も、GM向けの記事が載ってくれるかもしれません。
 連載ではゲームマスター講座として朱鷺田裕介氏の『こんなゲームがしてみたい!』が当初連載されていましたが、残念なことに終了してしまいました。
(余談ですが同氏が執筆した誌上記事や書籍には、マスタリングの参考になるものが多数あります。個人的にはかなりリスペクトです。当サイトが冗談で掲げているモットー「粋な貴方を応援します」は、同氏作の「粋なゲーマー妖精講座」が元ネタになっています。)

 『RPGamer』は‥‥元から大人向けというか自分をロートルと言ってしまうような世代向け(ゴホゴホゴホ)なせいか、マスタリング自体の記事はないですね。N◎VA-Dを遊んでいる学生さんの世代だと、この雑誌は高いですし読んでいない場合も多いでしょう。

 そしてN◎VAのおおもとのサポート誌である『ゲーマーズ・フィールド』には、毎回様々な記事やシナリオが掲載されています。
 R時代の連載記事『Take Your Revolution』は当初は鈴吹太郎氏/遠藤卓司氏執筆で始まり、2000年2月号から中村知博氏に交代し、様々な記事やRLのテクニックが語られてきました。中にはRL経験のある腕に覚えのある人から見れば「そんなの当たり前じゃん」というような内容も最初の頃は多かったのですが(そうです、その経験がない人のために書いているのですから)、これも有用ですし、実際RRとDetonationルールブックには、この連載での過去の蓄積が活かされた記述があちこちに存在します。
 この記事はDetonationが出た後は『Carry out D』とタイトルを一新して現在も好評連載中、こちらも役に立ちます。扉絵のタイガーリリーたんの次のコスプレが何か予想している方も多いでしょう。えっ、それとも追加データしか見てないって? おっと、マスタリングの話をしているんでした。

ネットから学ぼう

 そして、ネット。かつてサイバーパンクを愛する人の多くが参考文献の筆頭に上げた『攻殻機動隊』の1995年の映画版の終幕で草薙素子が呟いた言葉は、「さあて、これからどこへ行こうかしらね‥‥。ネットは広大だわ」でした。
 あれから8年あまり、世界はその言葉と同じようにネットの時代になり、公安9課の面々は『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の中に生まれ変わって活躍しています。映画版『イノセンス』も公開されましたね。
 インターネットを通じてTRPGの世界も大きく変わりました。権力のあるサークルではなく、力ある個人の時代になりました。オンラインでちょっとGoogleで検索すれば様々なものが見つかる便利な時代です。貴方が今見ているこのページもWeb上に公開されていますし、マスタリングやルーリングの参考になるものは、ネット上のあちこちで発見できるでしょう。
 Webサイトを通して情報発信もできますし、近年はBlogの登場でさらに垣根が下がりました。Blogを用いてキャスト紹介やアクトトレーラーやゲーム日記を残すのは、今のN◎VA-Web界のトレンドになっています。
 かつては雑誌で募集をかけたりコンベンションで一本釣りしたり口コミを手繰るしなかった優秀な人間の確保方法も、ネットが普及した今では変わっています。
 Webサイトを通した付き合い、Webを中心としたプレイグループや緩やかなコミュニティ、Web上やオフラインでの評判や名声‥‥それらを通し、一緒にTRPGを遊ぶ仲間、自分と波長の合う仲間、意欲のある人や実力のある人も、昔に比べればずいぶん探しやすくなっています。
 筆者も様々な人と遊ぶ際、相手が人間としてどうなのか、そして実力の方はどうなのかは必ず観察してきました。今は力ある個人の時代、カリスマ・プレイヤーとカリスマ・ゲームマスターの時代なのです。

プレイングについて見ることのできる、まとまったWebコンテンツ
(たくさんある日記系を除く)

★堀野さんの【ロケット屋ダンデライオン】のトーキョーN◎VA Tips50
★ジニアさん&紅河さんの【Gray Room】のサポートコラム
★井上(仮)さんの【TRPG BANK】のトーキョーN◎VA The Detonation


困りし折は初心に戻り、楽しく遊ぶべし。

 ここまで様々なことを述べてきましたが、全てをいきなり全て実践するのも難しいでしょう。世界全体を操り、アクト中に様々なことを同時にこなしていかなければならないRLには、1人でやれることに限界もあります。

最優先目標はアクトの成功。では、そもそも遊ぶ目的は?

 PL編Tipsの最後に述べたことを繰り返しておきましょう――そうです。困ったら、基本に戻って楽しく遊びましょう!
 TRPGもN◎VAも趣味で、我々は楽しみを得るためにわざわざ時間を消費して実行しているのです。RLだって楽しいですし、何より、RLが率先して楽しそうにルーリングしているアクトは自然と楽しくなります。PL陣も、自分もこんなルーリングがしてみたいと思うことでしょう。
 よくRL(もしくはGM)の仕事は「PLを楽しませること」だと言われますが、それだけではなんだか一方的に奉仕するボランティアで、RL/GM側には何ら楽しみがないようにも聞こえます。巧い人は人を楽しませるのも巧いというのは事実ですが、貴方自身も楽しみましょう。

 トーキョーN◎VAのキャストは世界を変える力を持ちます。運命の天輪を操ることができると、たびたびこのコンテンツでも述べてきました。本当にそうでしょうか。実際には嘘です。あたかも世界を変え天輪を操ることができるかのように、RLである貴方が「見せて」いるのです。
 TRPGは映画や小説と違い、参加者の無限の選択から物語が無限に変わっていくように言われますが、それも嘘です。実際には道の終局点は一本ないし数本しかなくても、貴方の力でそうではないかのように「見せて」いるのです。RLの仕事には「PLを騙すこと」も含まれていて、しかもそのウェイトはかなり大きいんですよ。この大仕事に漂う悪の香り。なんて素敵な仕事でしょう!
 PLの時は諸々の問題からアクトには投入できないようなキャストやゴイスーな技能コンボだって、RLの時はまた問題が違います。どんなはっちゃけた大悪党や千早俊之会長の某チャクラご子息のようなアレな人物も、ゲストとしてなら操ることができます。貴方の意志、声と指先ひとつで世界の全てには命が生まれ、生き生きと動き出すことができるのです。貴方はすべての造物主であり、すべての法則を司る神なのです。

 そしてRLは裁定者だけではなく、時には観客にもなります。放っておいてもキャスト同士がちょっといいシーンでちょっといい会話を始めたら、アクト進行はひととき脇において休憩の時間です。何かとエネルギーを消費してしまうRLの力は節約し、貴方も観客としてそのシーンを楽しみましょう。


貴公の技は確かなり。動かざること不動の如く、常に自信を持つべし。

 さて最後には、非常に多くのマスタリング解説で述べられているアドバイスを上げておきましょう。すなわち「自信を持つこと」です。

最強ルーラーになる方法

 N◎VAが生まれるより少し前に、先祖である『サイバーパンク2.0.2.0.』で語られた“サイバーパンクになる方法”と同じです。どんな時も、何が起こっても、さもそれが予定通りであるかのように平然と振舞うのです。すべては貴方の掌の上で起こっており、すべては宿命づけられていたことです。どんなにキャストが暴れても、それは釈迦の手のひらの上の孫悟空と同じなのです。そんな気持ちで、恐れずにアクトを進めていきましょう。
 さあ、貴方が口を開けばアクトが始まり、全てが始まります。高経験点キャストがたくさんいる? 大したことはありません。世界を味方につけている貴方の方が絶対に強いんです。プレイヤーがこっち見てて緊張する? なに、有機生命体の3人や4人大したことはありません。プログラム・カオスが勝てるんだから貴方にだって勝てます。アクトの前に緊張したら、自分は無敵、怖いものなしのルーラーだと心の中で暗示を掛けましょう。

 自信を持って語られたことは、たとえ嘘でも真実味を帯びるものです。リサーチ中にリサーチ項目に書いていないことを調べてきた? だったら慌てることなく、さもシナリオを読み直すような振りをして、適当な目標値をでっち上げましょう。達成値が出たのなら、これまたでっち上げた適当なことを答えてやりましょう。それどころか「うんいい調査だね。実はそれがクライマックスへの鍵のひとつなんだ」と嘘っぱちまで付け加えてやれば、PLは自分の選択に満足することでしょう。
(もちろん、アクトの時間が限られている時に、「それに関してはもう調べられることはないんだ」と答えてしまうのは、それはそれでテクニックではあります。)

嘘がバレたら?

 貴方の偽装がバレたりしないでしょうか? 心配することはありません。RL経験のあるPLはこういう時、たいていRLの意を汲んで黙っていてくれます。
 RLの裁定が最上位であることはルールにもはっきり書いてあり、全てのTRPGにおいて共通の不文律です。貴方は世界の王で一番偉いのです。
 自信を持ち、‥‥そして、民たちに見放されてしまう独裁者には堕落しないように心に留めながら、落ち着いて対処していきましょう。
 
 


天輪の音が響くとき

 さて、こうしてRL編のTipsも結びを迎えました。果たして何か得たものはあるでしょうか。貴方が既に腕に覚えのある方なら、至極当たり前のようなことも書いてありますし、逆に貴方がこれからRLする方なら、参考になったところもあるかもしれません。あったとすればそれこそを筆者の喜びとしましょう。

 アクトが始まるまで、各PLが想像する自分のキャストのイメージ、シナリオのイメージ、世界のイメージはそれぞればらばらの欠片に過ぎません。
 貴方こそがいることで、全ての欠片がひとつに組み合わさるのです。イマジネーションがひとつになり、世界が形を取り、その背後で運命の天輪が音を立ててゆっくりと巡り始めます。その妙なる音色は開幕の時が来たことを貴方たちに伝えることでしょう。
 天輪の音が響くとき、貴方の物語の幕を上げましょう。貴方の思考、貴方の声、貴方の指先ひとつひとつが振るわれるたびに、世界は動き始めます。地軸が傾いた架空の未来世界は鮮やかな色で彩られ、そこに住む人々とそこに在る光景、その全てに命が吹き込まれて動き出すのです。
 その中を旅するキャストたちの前には、きっと驚くような冒険が待っています。そうして形を取ったアクトは時に、本当にいつまでも心に残るような、素晴らしい物語を生み出すこともできます。

 さあ、この次は貴方がRLすることもあるでしょう。恐れずチャレンジしてみましょう。
 大丈夫、きっとそのアクトは盛り上がってうまくいくはずです。

 どうしてかって?

だって貴方がRLだからですよ! (*^ー゚)b



 以上でプレイングTips&コラム集コンテンツ『天輪の音が響くとき』は終了です。長らくお付き合いいただきありがとうございました。

When the Fortune rings out

天輪の音が響くとき
はじめに
プレイヤー編 Page1】【プレイヤー編 Page2】【ルーラー編 Page1】【ルーラー編 Page2】

Delirium
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