last updated:Friday, July 17, 2009               

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2 文章表現のコツ 

 わかりやすいく・読みやすい文章の大前提は,読者の知識,技能に見合った文章表現にあります。どのような文章構成を取り,どのような言葉遣いをすれば,自分の思いが正確に相手に伝わるかを考え,読み手の知識や技術水準に見合った文章表現とします。
 

2−1 わかりやすさ・読みやすさの基本3原則

 自分の言いたいことを短くまとめ,しかも説得力ある文章にするには,事前準備が重要です。文章を書く本人がその目的や意図を完全に詰めていないと,筋道がキチンとせず,文脈もあいまいとなりがちです。
 やみくもに文章を書くというのではなく,書く前にテーマに沿って,全体のバランスを考え,構想をたてます。
 特に200字〜300字程度の短い文章は,わずかな文言を加えたり削ったりすることで,全体のニアンスが変わってしまいかねません。そこで,執筆にあたりじっくり構想を練ることが何より大切です。そのポイントは,次の3点です。

@短い文章とする−−1センテンスは35〜55文字程度 

 文章の書き出しから,文末の「。」までの1つのセンテンスの長さに基準,制限はありません。また,伝える内容により,一律に長さを定めるというわけにもいきません。
 しかし,1文(センテンス)が長文になると,読者は読み進むにつれて,文章のはじめの部分を忘れてしまったりして,意味が読みとり難くなります。
 といって,短い文章がいくつも続くと,ぶっきらぼうな感じを読み手に与えます。そこで,長めの文章より,1センテンス35〜55文字程度の文章の方が読みやすいといわれています。 

  • 接続詞の使い方に注意を- 「そのうえ」,「さらに」,「しかし」など,接続詞で文章をつなぐと,めりはりのない文章になりがちです。

  • 「ので」「・・・が」の使いすぎに注意:この書き方は因果関係をハッキリさせる上では効果的ですが,反面,センテンスが長くなってしまいます。

  • 読点(とうてん)の使い方− (,)は,1つの文の中で,文の組み立てや語句の切れ目を明瞭にするため打つ符号です。主語には原則として読点(,)をうちます。こうすることによって主語と述語の関係が明確となります。これにより読み手の意味の取り違えや,読み誤りを防ぎます。

   

A 漢字は少なく−−漢字とかなの割合は3対7を目安とする

 漢字とかなの比率も文章の読みやすさを左右する大きな要素です。漢字の多用は堅苦しい文章になりがちです。文章中の漢字の割合は3〜4割を目安とします。

  • 「漢字1つに,かな2つの割合」を,目安にする

  • 代名詞(いつ,だれ,どこ)は,平仮名表現が望ましい-例外として(彼女,彼,何,私)については,漢字を使う 。

  • 接続詞(ただし,ならびに,または),助詞(〜くらい,〜まで),助動詞(〜できる,ください)などは,平仮名表現とする

  • 名詞以外のものを修飾する副詞(ついに,ますます,ふたたび)は,平仮名表現が望ましい。例外として,(大いに,少なくとも,主に)ついては,漢字を使う。

かなと漢字のつかい分けの例

いう →

指定・伝聞を示す(連語)

ここでいう規格とは

言う →

発言を示す(動詞) 

使用目的を言う

〜こと →

抽象的な現象

エラーが発生することがある

〜事

具体的な現象

このような事が起きた場合

とき →

限定的条件,仮定的条件

上位機種に移行するときには

時   →

時期・時刻の明確化

運用を開始した時から

もの →

抽象的なもの

省略されたものとする

→者

人間のみを対象 

18歳未満の者


漢字を使ったほうが読みやすい語の例
  ばあい  → 場合  おもに → 主に  つぎに → 次に
  名詞の場合  → 便利,機能,時間
  動詞の場合  → 読む,使う,言う
  形容詞の場合 → 忙しい,新しい
  副詞     → 一般に,単に,決して

漢字は内閣告示の常用漢字の音訓の範囲内で使う
×誰でも → ○だれでも   ×脚註  → ○脚注 
×挨拶 →  ○あいさつ    子供  → こども
×大人  →  おとな  

B 目的によって文体を使い分ける        

 「である調」は,事実を正確,簡潔に表現するのに適した文体です。が,読者に高圧的,威圧的で押しつけがましいとの印象を与えかねません。対して,「です,ます調」は,冗長で間延びした印象がある反面,読み手が親近感を持つ表現であることから,読み手の動機づけ,共感を得るのに適しています。
 こうした文体の特性から,解説,説明部分は,語りかけるような「です・ます調」とし,操作手順,指示事項は「である調」で簡潔に言い切るといった工夫が,読みやすさ・わかりやすさを増すとともに,読者の共感,理解を促します。
 ただし,ひとつの文章の中に「です・ます」と「である」を入れ混ぜることは避け,文体は統一します。

「である」調のメリット・デメリット
  メリット:簡潔表現,文章の意味が伝わりやすい
 デメリット:高圧的・威圧的との感を与える
「です・ます」調のメリット・デメリット
 メリット:親しみ,共感を呼ぶ表現
 デメリット:冗長な文章となりやすい,文意が明確に伝わりにくい



2−2 読者の知識・技術水準に合わせた言葉を用いる

 書いた内容が,読み手(相手)に伝わらなければ,文章の用をなしません。そこで,読み手の知識や理解能力・技術レベルを想定し,それに見合った文章を書きます。 
 なお,読み手の知識,能力レベルが不明の場合は,中学卒業者が理解できるレベルを想定し,文章を書くようにします。

  • 専門用語の使い方は,読み手の知識・技術水準に合った表現をする

  • 専門用語,技術用語などは,最初に記述した箇所で説明をつける

  • 抽象的な表現を避ける

  • 重要な事柄は文頭に書く

2−3 分かりやすい文章−−文章の組み立て方

 物事をおおづかみにつかんで,まとめた文章を書くのは大変難しいことです。特に,仕事の手順のように連続して起きる動作・事象をキチンと文章に仕上げるには,幾つかの工夫が必要です。

@1つのセンテンスに一つのことだけを書く

Simple is bestです。文章の書き出しから,文末の「。」までの一つのセンテンスのなかにあれも,これもとつめこむのではなく,1つの事柄だけを書きます。
A全体像から入り部分的な記述に移る
 文章組み立て方には,各論を述べ,それを基にして総論を導き出すボトムアップ方式,最初に総論を述べ,これを論証する形で各論の説明に入るトップダウン方式があります。

  • トップダウン方式で書く-わかりやすく伝えるためという点からは,「全体像」から切り出すトップダウン方式が適しています。

  • 重点先行型で記述する-

 説明を先に書いてから,最後に結論を示すという文章構成は,まわりくどさを招きコミュニュケーションの円滑さを欠きます。冒頭で結論や重要な事柄を書き,以下にその論拠を記述するというトップダウン方式の文体により,読み手は結論やポイントを短時間で理解することができます。同時に,必要な箇所だけを拾い読みすることも可能となります。
 論文は,「全体像」から切り出すという,「重点先行型」の書き方が読みやすさ,わかりやすさから有効です。

 A文章表現上の工夫  −−等,思う

「・・・等」といった言葉は,含みを持たせた意味で使われます。この他にも,「・・・と思われる」といった断定を避けた言い回しは,当事者にとって極めて便利な言い回しであることから,ビジネス文書では多用されています。しかし,これらの言葉は,曖昧かつ正確さを欠き,さらには誰の意見かわからない責任回避表現でもあることから,使用は避けるべきです。

  とかく予定通り,あるいは筋書き通りに物事は,運ばないモノです。そこで,「・・・です。」と断定口調ではなく,「・・・と思います」と,語尾をあいまいにぼかした方が,後々,何か起きたときいいわけがしやすい。こんな理由から,「・・・思います」が重宝されています。

 いま多くの人が,言葉の語尾に「〜と思います」を連発しています。テレビ番組でもレポーター,あるいはパーソナリティと称する人たちも同じくです。例えば,料理番組などでは,「これから○○レストランに行ってみたいと思います」「○○を食べてみたいと思います」など,「思います」が慣用句となっています。
 テレビの番組などは,あらかじめ編成された台本やプログラムに沿っているのであるから,個人の裁量や思いつきが入り込む余地はほとんどないはずです。こうした場合は,「〜します」とした方が簡潔明解な言い回しとなります。

 「〜したいと思います。」とは,“そうしたいとは思っているけれども,できるかどうかは定かではありません。あるいは,「100%の約束,または断定はできない」,さらに,「この事に関して,そう思うけれど責任までは取れない」といった責任回避のニアンスを含む,あいまい表現でもあります。
 断定して言いきることにためらいがある時,自分の意見に確信が持てない場合,つい「思う」をつかいがちです。その結果,文末のほとんどが「思う」になってしまいます。そこで,できるだけ「思う」を用いないように文末に工夫します。

  • あいまい表現を避ける

     × 多数の・・・・・・・400〜500の
     × ・・・と思われる・・・・・・〜である。

     
  • まわりくどい表現を避け,簡潔表現の工夫を・

     × どういうふうに表現するか →  ○ どう表現するか
     × 解決方法としては     →  ○ 解決方法は
     × 〜することは避ける    →  ○ 〜しない
     × 〜しないようにする    →  ○ 〜しない
     × 〜所定の方法によって   → ○ 決められた方法で

  • 抽象的な言葉を避ける
    問題,検討,確認,改善,処理,対策,指導,向上,管理,徹底,点検,調整,編集

 
  • 事実を説明した部分と事実に基づく解釈や意見は分けて書く


 

B形容詞の使用を押さえる     

具体的にとの観点から,形容詞より数字で示すようにします。

から

○基準点を含んで用いる。

1992年以降は

→1992年からは

まで

○基準点を含んで用いる
 10日以内  →10日まで

より 

○基準点を含まないで用いる

C主語と述語を対応させる

 注意しないと,「主語=一人称」のない文章になりがちです。主語と述語の対応を正しくとってこそ,とくに,主語と述語の位置が近いほど,読みやすくわかりやすい文章となります。主語と述語の位置が近いほど,わかりやすい文章となります。

◆例
 ジョブの実行は,オンライン,オフラインといった処理形態にかかわらず,システム内部では一貫して処理される。
    
 オンライン,オフラインといった処理形態にかかわらず,システムの内部では,ジョブは一貫して処理される。

D 文章表現の統一

 表現の質を高めるとの観点から数字,かな遣い,記号,外来語などの使い方と表現方法のルールを定めます。
              
1 数字の書き方を統一する 
 マニュアルの場合,一般的には固有名詞や熟語などを除いて,算用数字(1,2,3……)を使います。
  例)単2乾電池3本,4番目のボタン

数または数値に意味のある場合は,算用数字を使う  
 例)・・・・,第一の問題点は・・・"という場合は,第二,第三と続く可能性があることから,『第1』と算用数字を使うようにします。
 例)毎月十五日に実施します。 → 毎月15日に実施します。
2 漢数字を使用
 次のような場合は,漢数字を用います。
  概数:数十回,数百人,数キロ
  紙幣,貨幣:一円玉,一万円札
  熟語:一連の,一流の,一部,四捨五入,四輪駆動,二重価格
  固有名詞:二重橋,四日市,五線譜

3 外来語(カタカナ語)の書き方を統一する
 外来語はカカナで書きを採用し,できるだけ原音に近く,同時に日本人に読みやすい標記とします。なお,使い方が慣例化している言葉については,慣例に準じます。

  • 語尾がer,or,arなどの場合は,“ー”をつける- 語尾がer,or,arなどの場合は,長音符号"ー"を付けるのが一般的です。    例)computer(コンピューター ) user(ユーザー )

  • 言語の語尾の"y"は,原則として長音符号で表す

  • 2つの言葉から成る複合語には,原則として語間に「・」をつけない:-2語から成る複合語には,原則として語間に「・」をつけません。ただし,判読が困難な場合は,この限りではありません。プロダクト・ポートフォリオ・アナリシスといった3つの言葉から成る複合語には,原則として語間に「・」をつけます。

  • 子音字+yで終わる語は,原則として長音符号を表す -library(ライブラリー) memory(メモリー)

  • あえてカタカナ語で表現する必要がない言葉 は,日本語を使う
        キーワード → 重要語句  モード → 様式
        サイズ   → 大きさ     インプット →入力  
        アウトプット→ 出力      コピー → 複写 

なお,英語や英略語を「使う時,留意すべき点は,英語や英略語の長所は,ある物事を簡潔にまとめて表現できる(できたような気になる)ことです。短所は,その物事の意味や本質が,曖昧表現なになってしまいかねないことです。

4 記号類−−句読点,記号・符号−−の使い方
 電子メールや携帯メールの普及で,「記号・符号・しるし」といった記号類は,新たな意味・用法を生みだし,「漢字/平仮名/カタカナ/アルファベット」に続く“5番目の文字”として市民権を獲得しつつあります。インターネットを媒体とした書籍や携帯小説などの普及は,こうした動きを加速させています。

 記号類を使い,文字の記述では伝えきれない感情やニュアンスを表現するばかりでなく,芸名や書名などの固有名詞に「記号・符号・しるし」を使用して個性をアピールする例も見られます。こうした使い方は,今後一段と盛んになると予想されます。

 しかしながら,その使い方は,これまでの記号類の標準的な使い方から逸脱しているものも少なくありません。記号類には本来備わった意味・用法があります。それを知って使いたいものです。


▼ホームページ『記号類−−句読点,記号・符号−−の使い方』
 そこで,ホームページ『記号類−−句読点,記号・符号−−の使い方』を,1月13日(火)に新規掲載を予定しています。ここでは,「記号・符号・しるし」について,基準・範となる意味・用法をとともに,新しい用法,パソコンによる記号類の入力方法を付記します。

2−4 ら抜き表現

 「ら抜き表現」とは,本来「食べられる」,「見られる」,「出られる」などとすべきところを,「ら」を抜いて,「食べれる」「見れる」「でれる」とする口語的表現です。今の文法では,「…られる」を接続するのが正しいとされており,NHKの放送用語をはじめ,新聞・教科書なども,この「ら抜き」表現は認めていません。
 しかしながら,「ら抜き表現」の流れは止まりません。だが,ら抜き表現には違和感を覚える人がいることや,まだ「ら入り表現」が正当な表現とされていることから,「ら入り表現」は極力避けるべきでありましょう。 

 「公文書作成の要領(1952年)」が内閣官房長官から各省庁に通達されています。それによれば,句読点は横書きでは「,」および「。」を用いるとしています。 

2−5 常日頃(つねひごろ)から正確な言葉遣いを意識する

 言葉は常日頃(つねひごろ)から正確に使うことを意識すること。一度間違えて覚えると、なかなか修正できません。
  言葉を正確に記憶するには、棒暗記ではなく、その意味を理解することが効果的です。機転が利くことを意味する「目端が利く」を「目鼻が利く」と覚えないように。「目が利く」「鼻が利く」とは言いますが、両方が利くという言い方はありません。「目端」は、その場の様子を見計らう才知のことです。それぞれの言葉の持つ意味を考え、確認することを積み重ね、言葉に意識的に向かうことが大切です。

 昔の人は常に文章を手で書き、「この字は読めるか」と周りに教えたり、新聞を声に出して読んだということです。すぐに言葉の上手な使い手になるのは無理ですが、間違っていた言葉を正し、知らなかった言葉を覚えるという努力を継続することが大切です。



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