債権法改正 要綱仮案 情報整理

第14 受領遅滞

4 受領遅滞中の履行不能

 受領遅滞中の履行不能について、次のような規律を設けるものとする。
 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

中間試案

第35 売買
 10 買主の義務
   買主は,売主に代金を支払う義務を負うほか,次に掲げる義務を負うものとする。
  ア 売買の目的物(当該売買契約の趣旨に適合するものに限る。)を受け取る義務
  イ …

 14 目的物の滅失又は損傷に関する危険の移転
  (1) 売主が買主に目的物を引き渡したときは,買主は,その時以後に生じた目的物の滅失又は損傷を理由とする前記4又は5の権利を有しないものとする。ただし,その滅失又は損傷が売主の債務不履行によって生じたときは,この限りでないものとする。
  (2) 売主が当該売買契約の趣旨に適合した目的物の引渡しを提供したにもかかわらず買主がそれを受け取らなかった場合であって,その目的物が買主に引き渡すべきものとして引き続き特定されているときは,引渡しの提供をした時以後に生じたその目的物の滅失又は損傷についても,上記(1)と同様とする。

(概要)

10 買主の義務
  本文は,売買契約による買主の基本的義務として,代金支払義務(民法第555条参照)のほか,目的物の受取義務及び目的物の対抗要件を具備させる義務の履行に必要な協力をする義務(対抗要件引取義務)を条文上明記するものである。括弧書きは,買主の受取義務の対象が契約の趣旨に適合した目的物でなければならないことを明らかにするものである。その違反の効果として,債務不履行の一般原則に従い,債務不履行による損害賠償請求権又は契約の解除権が発生する。

14 目的物の滅失又は損傷に関する危険の移転
  …
  本文(2)は,売主が目的物の引渡しを提供したにもかかわらず買主がそれを受け取らなかったときに,その引渡しの提供をした時点を危険の移転時期として規定するものである。受領遅滞(民法第413条)の効果として売主から買主に危険が移転することは異論のない解釈とされており,これを踏まえたものである。種類物売買については,危険の移転の効果が発生するには,引渡しの提供があったのみでは足りず,目的物が特定(同法第401条第2項)されている必要があると解されているが,引渡しの提供時以後に生じた目的物の滅失又は損傷のリスクを買主が負担すべきと言えるためには,滅失又は損傷が生じた時点でも引き続き特定されている状態が維持されている必要があると考えられる。そこで,「買主に引き渡すべきものとして引き続き特定されているとき」との要件を設けている。これは種類物売買を念頭に置いた要件であり,特定物売買においては実際上問題となることはないと考えられる。

赫メモ

 要綱仮案は、受領遅滞後に、当事者双方に帰責事由のない事由によって履行不能となったときは、その不能は債権者の帰責事由によるものとみなすものとする。かかる履行不能の場合に、@債権者が履行不能による解除をすることができないことは、要綱仮案第12、3の規律により、A債権者が反対給付の履行を拒むことができないことは、要綱仮案第13、2(2)の規律により、B債務者が履行不能による責任を負わないことは、要綱仮案第11、1により、それぞれ導かれる(部会資料83-2、11頁)。

現行法

(受領遅滞)
第413条 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないときは、その債権者は、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり