japanese
line

PAGE5
きみのためにできること
メッセンジャー洗濯機は俺にまかせろ鉄道員/ぽっぽや
あの、夏の日/とんでろ じいちゃんホーホケキョ となりの山田くん
お受験コキーユ/貝殻カラオケ菊次郎の夏

PAGE4PAGE6HOME

line

きみのためにできること
録音技師の高瀬俊太郎(柏原崇)は、ドキュメンタリー番組の撮影のため、
他のクルーらと東京から沖縄・宮古島へとやって来た。
一行を出迎えたのは、番組のレポーターを努める美人ヴァイオリニスト鏡耀子(川井郁子)。
しかし撮影が始まっても、せわしないクルーと芸術家肌の耀子は気持ちが噛み合わず、
レポーターという役に不慣れな耀子にクルーも苛立ち、撮影は上手く進まない。
そんな中、俊太郎は、大人の魅力を持つ彼女に、どこか魅かれるものを感じとっていた。
一方、実家で造り酒屋を手伝っている俊太郎の高校時代からの恋人・日奈子(真田麻垂美)は、
遠く離れた俊太郎とEメール交換をしながら、
彼の気持ちが自分以外の女性に傾いていることに気づき、苛立ち始める。

『月とキャベツ』『洗濯機は俺にまかせろ』の篠原哲雄監督作品。
篠原監督らしく、微妙な気持ちの揺れの表現は、相変わらずの上手さです。
特に、私が痛いくらいによく分かったのが、俊太郎の恋人・日奈子の気持ち。
遠く離れた場所で仕事をしている恋人からの、ほんの些細な言葉に傷ついたり、
彼を嫉妬させてやろうと、意地になって他の人とデートしてみたり、
母親が倒れて精神的に頼りたい時、それを拒絶されて苛立ったり、
無理だと分かりきっているのにわがままを言って、相手の気持ちを確かめようとしてみたり・・・・。
きっと私自身が、日奈子にとても良く似ているからなのだと思います。
私が日奈子に感情移入してしまい、物語の中心である俊太郎の気持ちに同調出来なかったため、
じっくり時間をかけて見せた耀子との絡みが、長く退屈なものに感じられてしまいました。
また、ストーリー上ではとても重要な役割であった耀子役の川井郁子の演技があまりにも稚拙で、
せっかくの作品を台無しにしている感もありました。
彼女がインタビューするという、ドキュメンタリーの部分も長過ぎて、げんなり。
『ワンダフル・ライフ』でもそうでしたが、フィクションの中にドキュメンタリーを取り入れ、
それをいかに観客に退屈させずに見せるかというのは、とても難しいことだと思います。
そのドキュメンタリー部に興味が沸かない観客にとっては、ただ苦痛なだけなのです。
レベル3

line

メッセンジャー
高級ブランドのアパレルのプレス・尚実(飯島直子)は、
会社のお金で贅沢な生活を送る自信過剰な女だった。
しかし、ある日突然会社が倒産し、債権者から身ぐるみを剥がされて無一文になってしまう。
恋人だった岡野(別所哲也)からも見放された尚実は、車で取り立て屋から逃げようとする途中、
バイシクル・メッセンジャー横田(矢部浩之)と接触し、彼を骨折させる事故を起こす。
彼の入院費も支払えない尚実は、事故を示談にすることを条件に、
渋々ながら横田の代わりにメッセンジャーになることを引き受けた。
横田と共にバイシクル・メッセンジャーの会社を営んでいる鈴木(草なぎ剛)の指導の元、
嫌々、自転車便を始めた尚実だったが、次第にその面白さにのめりこんでいくのだった。

『私をスキーに連れてって』『彼女が水着にきがえたら』のホイチョイ・プロダクションズが、
91年の『波の数だけ抱きしめて』から実に8年ぶりに贈る新作。
ベタな展開なのですが、これが意外と楽しめました。
飯島直子、草なぎ剛、矢部浩之と、主役がみんなお世辞にも演技が上手いとは言えない面々。
その上、ギャグもストーリーも、みんな先が読めてしまうのですが、
なんとなく安心して観ていられた作品です。
「そんなバカな!」と思わず声に出してしまうような上手く行き過ぎのシーンが
随所にちりばめられているところや、主人公万歳のお約束通りの展開などは、
ハリウッド映画や香港映画のコメディものに通じるものがあるように感じました。
成り行きで自転車便を始めることになった、飯島直子演じる高飛車な女・尚実が、
いつの間にかその魅力に取り付かれてしまい、過去の自分を振り切ってしまうというくだりや、
東京の町をマウンテンバイクで失踪する画が実に気持ちよい作品でした。
日本映画独特の湿っぽさが全く無い、カラッとした作品。
お気楽ムービーが好きな人には特にオススメです。
レベル4

line

洗濯機は俺にまかせろ
漫画家を目指して関西から上京してきた青年・木崎(筒井道隆)は、
下町の商店街の小さな中古電器店で、店番と修理の仕事をしている。
ある雨の日、社長の一人娘で落ち目のDJ、おまけにバツイチの節子(富田靖子)が、
突然店にやって来て、そのまま居着いてしまった。
電器店の向かいのパン屋でアルバイトをしている娘・秀子(百瀬綾乃)は、
木崎にほのかな恋心を抱いているが、木崎は奔放な節子に次第に惹かれていく。
しかし節子は、木崎の先輩社員で、今はしがないタクシー運転手をしている
大紙(小林薫)のことが忘れられないでいた。

まず、タイトルに強く惹かれました。
『洗濯機は俺にまかせろ』
“俺にまかせろ”とまで自信たっぷりに言いきるカッコよさと、
その対象がお世辞にもカッコいいとは言えない“洗濯機”であることの言葉の微妙なバランス。
それに、中古の電器屋さんを舞台にし、なおかつ得意分野を“洗濯機”に限定している面白さ。
そこから生まれてくるイメージは「ああ、この人になら洗濯機をまかせても大丈夫かな」
と思わせる安心感と信頼感だったりするわけです。
第65回小説現代新人賞を受賞した宮崎和雄の原作を『月とキャベツ』の篠原哲雄監督が映画化。

洗濯機に青春を賭ける青年・木崎に扮する筒井道隆が、何ともいい味を出していました。
人が良くて、思ったことを強く他人に強要出来ず、気づけば他人のペースにまんまと巻かれている。
優しくて、心から他人を思いやれる気持ちを持っている。
でも芯が強く、言うべきことはちゃんと言う、するべきことはちゃんとする。
洗濯機修理に関しては、誰にも負けない自信と誇りを持っている。
漫画家を目指して上京してきただけあって、絵はとても上手いが、描く話が面白くない。
器用さと不器用さを上手く持ち合わせた、ちょっと抜けたところが彼の魅力なのです。
こんな魅力的な男性だからこそ、彼の周りに自然に人が集まってくるのも分かる気がしました。
そんな木崎を中心に、電器屋の社長の出戻り娘・節子と、木崎に思いを寄せるパン屋の娘・秀子、
木崎の尊敬する元洗濯機の修理職人・大紙の4人が複雑に入り組んだ恋模様を見せてくれるのですが、
どの気持ちを取っても、上手く噛み合わず、観ていて切なくなってしまいます。
もっとストレートに気持ちを表現出来ればいいのに、それが出来ないもどかしさや、
相手にもっと近づきたいのに近づけず、やり場の無い嫉妬心に苛立つ気持ちが、
痛いくらいに伝わってきました。
コメディ部分も面白く、木崎の関西弁の友人・吉田がすごくいい感じ。
彼と木崎とのとぼけたやりとりが何とも可笑しかったです。
レベル4

line

鉄道員/ぽっぽや
北海道のローカル線、幌舞線の終着駅・幌舞。
雪に埋もれたこの駅には、一日中数本の電車がやってくるが、ほとんど人の乗り降りはなく、
幌舞線は近く廃線になることも決定している。
そんな幌舞駅の駅長・佐藤乙松(高倉健)は、幌舞線と運命を共にするかのように定年を目前にしていた。
45年間「ぽっぽや」として仕事ひとすじに生きてきた乙松は、
17年前、生まれたばかりの娘・雪子が死んだ時も、2年前、妻・静枝(大竹しのぶ)が病死した時も、
職務に忠実のあまり、愛する家族に寄り添ってやれぬまま病院で淋しく死なせていた。
誰一人身寄りのない乙松に、同僚の仙次(小林稔侍)は、定年後の仕事として
トマムのリゾートホテルで一緒に働かないかと持ちかけるが、
「ぽっぽや」以外の仕事が考えられない乙松は、頑なにそれを拒否する。
そんなある日、乙松の目の前に不思議な少女が現れた。

究極の男のエゴイズムを描いた作品だと思いました。
確かに高倉健はシブいですし、寡黙で誠実な乙松の役どころに非常にぴったりと来ていました。
映画としての出来は悪くないと思います。
でも、私はこの作品を好きにはなれませんでした。
きっと乙松の生き方は、男性のロマンの象徴であり、世の男性たちの憧れなのでしょうね。
でも女の立場から観ると、自分の理想を追求し、どんなにワガママ勝手に生きてきても、
周りの全ての人に許してもらえるなんて、都合が良すぎです。
それは、乙松が自分の仕事を全うするために、子供の死や妻の死に立ち会えなかったことが
悪いと言っているのではありません。
彼がその死に遭遇したとき、「ぽっぽや」である自分を恨まなかったことが許せないのです。
「自分はぽっぽやだから」と開き直ってしまうことが許せないのです。
彼は、家族と仕事を天秤にかけたとき、もっと心の葛藤がなければいけないと思うし、
それで仕事を取ってしまったことに、もっと苦悩しなければいけないと思うのです。
彼女たちを幸せに出来なかったことに、もっと自分を責め、
もっとみっともなく許しを乞わなければいけないと思うのです。
仕事に自分の全てをかけてしまう、乙松の人生って何なんでしょう。
それに付き合わされた妻・静枝の人生って何だったんでしょう。
そして、雪子が生まれてきた理由は?
人生には、もっと楽しいことがたくさんあるはずなのに、そんなことを知ろうともせず、
閉鎖的な世界に自分と家族を閉じ込めて、自分に酔っているだけのような気がします。
私には、このお話は日本男児を気取った男の悲劇としか受け取れませんでした。
確かに泣ける映画でした。
でも、私が泣いたのは、乙松の行き方に感動したからではありません。
あまりにも可哀相な人生を送ってしまった乙松・静枝・雪子の3人が気の毒で泣き、
そんな乙松を許してしまえる、静枝と雪子がけなげで泣けました。
レベル2

line

あの、夏の日/とんでろ じいちゃん
夏休み、東京に住む小学5年生のユウタ(厚木拓郎)は、
広島・尾道に住むおじいちゃん(小林桂樹)のところにひとりで行くことになった。
どうも最近ボケぎみになったのか、変な行動をとるようになったおじいちゃんの見張りを
パパ(嶋田久作)とママ(松田美由紀)に頼まれたのだ。
新幹線のホームにひとりで降り立ったユウタを、おばあちゃん(菅井きん)が迎えに来てくれた。
そして、おじいちゃんの家に向かう電車に乗ったユウタは、
窓の外で空を飛んでいるおじいちゃんの姿を目撃し、驚く。

大林宣彦監督の『ふたり』『あした』に続く、『新・尾道シリーズ』第3弾。
小学生の少年の夏休みの体験を描いた作品といえば、北野たけし監督の『菊次郎の夏』
どうしても比べてしまい、『菊次郎の夏』がとても好きな作品だった分、
この作品にはあまりピンと来なかったというのが正直な気持ちです。
単純に好みの問題なのかもしれませんが、私は大林監督が描くファンタジーの世界とギャグセンスに
どうしてもついていくことが出来ませんでした。
小学生の男の子が、夏休みにおじいちゃんの家に行き、そこでおじいちゃんと過ごす・・・
という、あまりにも現実的な設定の中で、唐突に繰り広げられるファンタジーにあっけに取られ、
とうとう最後まで、その世界観に入りこむことは出来なかったのです。
「まきまきまきまき、まきましょう」と呪文を唱えて空を飛んでしまうあのじいさんは、
結局何者だったのでしょう。
レベル2

line

ホーホケキョ となりの山田くん
山田家は、父・たかし(声・益岡徹)、母・まつ子(声・朝岡雪路)、祖母・しげ(声・荒木雅子)、
長男・のぼる(声・五十畑迅人)、長女・のの子(声・宇野なおみ)の5人家族。
彼らは「いい加減」な毎日をのほほんと過ごしている。

スタジオジブリが、大ヒット作『もののけ姫』の次の作品として世に送り出した、アニメーション作品。
今までのスタジオジブリ作品と比べると、明らかに毛色が違うこの作品は、
朝日新聞に連載中の、いしいひさいち原作の4コマ漫画の映画化。
4コマ漫画を1本の映画にしてしまおうという企画だけで、その大胆さに驚きますが、
この作品では一切セル画を使わず、15万枚の作画をコンピュータでフルデジタル処理するという
斬新な方法で作られ、制作費はアニメ至上最高なのだそうです。

“全編デジタル処理”と聞くと、とても機械的な冷たいイメージがありますが、
その言葉が持つイメージとは逆に、この映像は水彩画タッチの優しいもの。
どこにそんな技術が使われてるのか分からないほどシンプルな画像です。
巨額の制作費と莫大な時間を投じていながらも、それをひけらかすではなく、
あえてこんな地味な作品を作ってしまおうとするスタジオジブリのチャレンジ精神に、
まず感動しました。
ほのぼのとしながらも、ブラックなギャグが小気味いい4コマ漫画風の
短いエピソードを連発しているだけの作品ですが、
小市民的な一家族の生活を覗き見している感覚にとらわれ、何とも面白かったです。
どこにでも居そうなのだけれど、実はどこにも居ないくらい個性的な家族のお話。
子供でももちろん楽しむことは出来ますが、この作品のユーモアセンスは、
やはり大人を対象にしたものでしょう。
特にチャンネル争いのエピソードと、結婚式のスピーチのエピソードは、涙が出るほど笑いました。
逆に“病気”や“死”をテーマにした3つほどのエピソードには笑うことが出来ず、
全編的に軽いタッチの笑いの中で、何か妙に重いものを感じてしまったのが残念でした。
キャラクター的には、おばあちゃん“しげ”がとてもいい感じ。
家族の中でおばあちゃんとおかあさんだけが関西弁を話すので、ふたりの会話のやりとりも面白いです。
ただ、1時間41分という上映時間は多少の中だるみがあり、やや長さを感じました。
後半以降にあった、少々長めの暴走族のエピソードは、力が入っているのは分かるのですが、
正直言って退屈でした。
こういうスタイルの作品は、1時間30分以内でもいいような気もします。
レベル3.5

line

お受験
45歳の富樫(矢沢永吉)は、陸上部の選手として実業団でキャリアを積んできたが、
現在は年齢のためか思うような成績を残せないマラソンランナー。
限界を感じた彼は、11月7日の湘南マラソンを、自分のラストランにしようと心に決めていた。
しかし、妻の利恵(田中裕子)はひとり娘・真結美(大平奈津美)の小学校受験で頭がいっぱいで
そんな富樫の事など気にもとめていない。
ある日、富樫は役員待遇を条件に子会社への出向を言い渡されるが、そのその子会社はすぐに倒産。
しかもそれは本社の債務を押し付けられての計画倒産であり、
富樫は計画的にリストラされたのだった。
無職になった富樫に代わり、それまで専業主婦だった利恵が働き始める。
彼女はどんなことをしても真結美を「お受験」に合格させたいのだ。
会社を辞めたのを機に、走ることもやめてしまった富樫だったが、
廃部が決まった本社陸上部の部員たちと顔を合わせた席で、
市民ランナーとして湘南マラソンに参加する決意をする。
しかし、その日は娘の受験日と同じだった。

ロック・ミュージシャン矢沢永吉が初主演したハートフル・コメディ。
タイトルが表すとおり、メインは娘の小学校受験のお話・・・・と思いきや、
長い間マラソンランナーとして実業団で活躍してきた永ちゃんの、ラスト・ランのお話で、
“お受験”に翻弄される両親の話を想像していた私は、ちょっと拍子抜けといった感じ。
最近は『英二』の長渕剛、『共犯者』の内田裕也、『のど自慢』の大友康平、
『ラッキー・ロードストーン』の高橋ショージなど、
ロックミュージシャンの映画俳優としての進出が目に付きますが、
この永ちゃんの役柄は『のど自慢』の大友康平に近いものがあるように感じました。
『のど自慢』の大友康平は、自分の就職試験と、自分の夢であったのど自慢大会出場の
日にちが重なって悩む父親を演じていましたが、
『お受験』の永ちゃんは、娘の小学校入試と、自分の夢であるマラソンの日にちが重なります。
つまり、やってることは『のど自慢』と一緒。
それも、『のど自慢』では脇で語られていたストーリーをメインに持ってきただけのことで、
ストーリー的には目新しいものは感じられませんでした。
『のど自慢』で三枚目に徹して成功した大友康平とはちょっと違い、
永ちゃんの役どころは三枚目になりきれない、二枚目半といったところ。
もう少し自分を捨て切ってもらえれば、もっと面白い作品になったのかもしれないのに、
どうも中途半端な感じがします。
脇を固める個性的な俳優たちの演技に助けられ、観ていて退屈はしませんが、
“可もなく不可もない普通の映画”というラインを超えることが出来ない作品、という印象でした。
しかし、ラスト15分で凄い展開があります。
永ちゃんが「最後のゴールは自分で決める」というセリフを吐いた瞬間、
私が望んでいた、自分を捨てきった矢沢永吉が画面の中に登場!
私は大爆笑してしまいましたが、作り手側が下手に感動を誘おうとしているのが見え見えのため、
周りの人はその可笑しさに気づかないのか、誰も笑っていません。
どうせなら、最初からこれくらいのはじけ方を見せてくれればよかったのに。
最後だけあんなふうにはじけわれても、観ている普通の観客は戸惑ってしまうのではないでしょうか。
観方をちょっと変えれば、面白い作品。
でも、ストーリー自体は大したことないし、
やっぱり矢沢永吉を魅せるだけ映画という印象も拭いきれないので、
レベル3

line

コキーユ/貝殻
中学校の同窓会で浦山(小林薫)は、30年ぶりに直子(風吹ジュン)と再会する。
離婚してひとり娘を育てながら、『コキーユ』というスナックを経営している直子に、
30年前の恋心と、今も変わらぬ気持ちを伝えられ、激しく動揺する浦山。
その日まで平穏な家庭生活、品行方正でまじめな会社生活を送ってきた浦山だったが、
直子との再会をきっかけに、次第に彼女に惹かれていく。

中学の同窓会ものでは『カラオケ』を観た直後です。
『カラオケ』のシチュエイションが、あまりにもリアルで共感出来たため、
こちらの作品は、あまりにも美しすぎて、嘘っぽい気持ちがしてなりませんでした。
中学の同級生との再会では、もっと気持ちが子供に戻るものだと思うのに、
彼らはあくまで大人のままなのです。
例えばカラオケに合わせてチークダンスを踊るシーンなど、全くリアリティが感じられません。
私だったら、とてもじゃないけど中学の同級生とチークダンスなんか踊れないぞ、という、
少し冷めた目を持って観てしまいました。
その他にも、納得いかないシチュエイションが多々あり、その度にシラけてしまいました。
また、平穏な生活を送っていた男の前に、突然現れてその心を翻弄させる直子が、
ただの自分勝手な女性に思えて仕方なく、私はどうしても彼らの恋を応援出来ませんでした。
そして、エンディングのワンカットでも、片山と直子の出会いは一体何だったんだろうという印象。
この作品で描きたかったものが何だったのか、よく分かりませんでした。
レベル2

line

カラオケ
とある小さな町で写真屋を経営している児玉泉(段田安則)は、
ふと目に飛び込んできたテレビのワイドショー番組に釘づけになってしまった。
アイドル歌手・星野のぞみ(矢田亜希子)が、ドラマのロケでミクロネシアに行った際に知り合った
42歳の林洋平(佐野史郎)という男と結婚したというのだ。
泉は、その名が中学時代の無二の親友と同じなので、もしやと思う。
洋平は同じ高校に行ったのだが、一年の夏休み前に中退し、それ以来、音信不通になっていたのだ。
その夜から泉をはじめ、同じ町に住む彼の中学時代の同級生たちに
洋平の中学時代を尋ねるべく、マスコミからの取材が殺到する。
しばしの間、中学時代の懐かしい思い出にタイムスリップした彼らは、
洋平を呼んで中学時代の同窓会を開くことを計画する。

俳優の佐野史郎が初監督したハートフル・コメディ作品。
主役が段田安則という、超地味なキャスティングの上、出演している俳優たちは、
みんな何かのテレビドラマで脇役として出演している人や、お笑いタレントばかり。
ともすれば、テレビドラマの延長のような作品かと思いきや、
これがきっちり“映画”していて、しかも面白いのです。
いくら大人になっても、中学の同級生と再会した時は、大人である自分はどこかに行ってしまい、
その気持ちだけが中学時代に戻ってしまうという感覚は、誰もが持っているものでしょう。
例えば、相手の名字を呼び捨てにしてみたり、アダ名で呼んでみたり、
相手との微妙な距離感を当時のままに保ってみたり・・・・。
そんな表現がとても素晴らしく、とても共感できた作品でした。
伏線で語られている、主人公・泉の息子、渚の物語は、本筋に直接関係ないにしろ、
とても効果的にストーリーに織り込まれています。
特に、渚が本屋を出てから踏み切りまでたどり着くシーンは、私の最高のお気に入り。
画面から伝わる緊張感、絶妙の間合い、コメディセンスで、佐野史郎の監督としての才能を確信しました。
お金をかけなくても、スター級の俳優を使わなくても、良い脚本と監督の腕と次第で
面白い映画は作れるのだと実感した作品。
彼の次回作がとても楽しみです。
レベル4

line

菊次郎の夏
楽しい夏休みが始まった。
しかし、小学校3年生の正男(関口雄介)の心は少しも弾まない。
友達はみんな家族で出かけてしまうし、サッカー教室もお休みになってしまう。
正男のお父さんは、正男が生まれてすぐ交通事故で亡くなり、
お母さん(大家由祐子)はどこか遠くで働いていて、写真でしか顔を知らない。
正男はおばあちゃん(吉行和子)に育てられていたのだった。
おばあちゃんがパートに出掛けている隙に、正男はお母さんの住んでいる住所を突き止め、
そこまでお母さん探しの冒険旅行に行こうと決心する。
出発しようとした正男を偶然見かけた近所のおぱさん(岸本加世子)は、
正男を心配して、遊び人暮らしのダンナ・菊次郎(ビートたけし)に付き添いを促す。
かくして、正男と菊次郎の母親探しのふたり旅が始まった。

北野監督作品では、暴力描写がなくてたけし自身がキャスティングされていない
『あの夏、いちばん静かな海。』と『Kids Return』が大好きです。
今回の作品には暴力描写はありませんが、たけし自身がキャスティングされているということで
期待半分、不安半分で臨みましたが・・・・。
観ている時は、ビートたけしが素のままにギャグを連発している作品にしか思えませんでした。
たけし軍団も何人か出ていて、素のままのギャグを飛ばしたりしていますし、
コメディアンとしてのたけしを知っているだけに、そう思わざるを得なかったのです。
子供の“お母さん探し”をネタに、たけしが“お遊び”で楽しんで作っている作品のような気がしました。
しかし、これは最後まで観ると、印象がガラリと変わってくるのです。
タイトルは『菊次郎の夏』。
つまり主役を子供に見せかけてはいるものの、実はたけしが演じる菊次郎の物語なのです。
菊次郎がどんな気持ちで子供を連れて旅をして来たのか、最後まで観たところでそれが分かるのです。
テレ屋で自分の気持ちを素直に表現出来ない大人(菊次郎=たけし自身?)の物語。
やはり、北野武はタダものじゃないことを実感しました。
おそらく、そんな菊次郎の気持ちを踏んでもう一度最初から観たら、大好きな作品になることでしょう。
いつもながら、この人の作品はラストシーンがとても印象的で、静かな余韻を残してくれます。
今回の色調は爽やかな緑色が中心になっていて、観終わった時にすがすがしい印象をも残してくれました。
レベル4

主人公・菊次郎のネーミングは、北野監督の実父・菊次郎さんからとったものだそうです。

line

home back next