……カウンターの傍らに、骨董品めいた年代物のレコードプレーヤーが置いてあるのに気づいた。それは数世代前の代物で、現代の機械と違ってまるでスイスの職人が造った時計の様な、手作りの暖かみを感じた。
プレイヤーの下には、レコードが何枚か置かれている。ということは、このプレーヤー、まだ動くのだろうか。
「今でも動きますよ。」店主が、私の心を見すかした様に言った。
店主は、レコードの一枚を取り出し、プレーヤーに乗せた。ジャケットには、『ZABADAK』と書かれていた。
針がきしみ、微かに音を立ててレコードが音を紡ぎだす。
その異国調の調べは、当然聴いたことがないのに、どことなく懐かしい感じがする。ちょうど、この店の様に……。
ZABADAKの音楽の良さは、アコーディオンやギター、リコーダーなどの生の楽器の息づきや、ボーカルの声の響き、といった各要素だけでなく、その「音楽世界」にあると思います。
詩的な歌詞と音楽が生み出す世界が、たとえ聴いたことがなくても、今の流行の音楽にはない懐かしさを感じさせ、穏やかさと幽かな緊張感を伴って心に迫ってくる。
幻想的で、異世界の様な音楽でありながら、何故か懐かしさと安らぎを覚える、そんなZABADAKの音楽世界に私は惹かれてるのだと思います。
……うーん、いくら言葉で書いてもなんか伝えられないっ。
とにかく、少なくともこの店の雰囲気に好感を覚えられる様な奇特な人は、絶対に聴いてみてくださいねっ!
これまでに発表された、ZABADAKのCDのほぼ全てのリストです。
オリジナル・アルバムについては、独断で個人的な解説と感想を付け加えてみました。
『ZABADAK-1』と『銀の三角』という二つのミニアルバムを合わせた、最初のアルバム。この頃のZABADAKは松田克志さんも参加していて3人のユニットでした。曲調はどことなくユーラシアを思わせ、つい草原や砂漠を旅するジプシーの奏でる音楽を連想してしまいます。(私だけか?)
私のおすすめは、『水のソルティーレージュ』、『風の丘』、『ガラスの森』といったところ。
ちなみに、1991年に再版されたアルバム『ZABADAK』は、曲順が違うだけで内容はこのアルバムと一緒です。
ZABADAK初期の、切り出した水晶の様な純粋さと鋭さをもつ2ndアルバム。ある友人に貸したら、「なんかボーっとして、聴いてる間何も手に付かなかった」とか言ってました。まあ、確かに一番不思議なイメージを持つアルバムではありますが……。
やはり、初期のZABADAKの良さが感じ取れてこそ、ZABADAKの音楽世界の深さが見えてくると思います。特に、水をモチーフにした曲は秀逸です。
おすすめは、『Unreasonable Egg』、『Water Garden』、『Fairly Dreams』。
東芝EMIからMMGに移籍後初のアルバム。全体として澄んだ、浮揚感を覚えさせるアレンジで、曲調は初期から現在への過渡期といったところ。私が初めてZABADAKを聴いたのが、友人が貸してくれたこのアルバムのテープで、なんか個人的に思い出が深いアルバムです。特に、最後の2曲『Walking Tour』『Let There Be Light』を聴いて、「こんな綺麗な曲があったのか」とショックを受けたのを覚えてます
というわけで、おすすめはその2曲と、『砂煙りのまち』。
「治癒」をテーマにした4thアルバム。今までのアルバムが「水」を思わせたのに対し、このアルバムは「森」あるいはもっと大きな「自然の流れ」のイメージを与える気がします。表題作『遠い音楽』や『hervest rain』といった、コンサートでは欠かせない名曲を生み、また、ZABADAKがマイナーながらも口コミで少しずつ広まっていったのもこのアルバムの頃です。
耳あたりの良い曲が多い事もあるので、初めてZABADAKを聴こうという人は、このアルバムあたりから聴くと良いと思います。
おすすめは前2曲と、『愛は静かな場所へ降りてくる』。
「心の琴線に触れる音楽」をめざした5thアルバム。表題作『私は羊』の様な奇妙で楽しい曲を始めバラエティに富んだ構成で、技法もエフェクトなしの一発録音や、変拍子など様々な試みがなされています。
ただ、個人的には、その反面アルバム全体としての完成度がやや低くなってしまっている、という感も無きにしもあらずですが……。個々は良い曲ですが。
個人的おすすめは、『サンタ・サングレ』、『天使に近い夢』、『同じ海の色』かな。
吉良知彦・上野洋子の2人ユニットとしてはとりあえず最後の6thアルバム。熊本県椎葉村の民謡をアレンジした『椎葉の春節』や、夜桜の散る様を想わせる10分程にも及ぶインストォルメンタル『桜』といった日本的な要素も加えて、これまでのZABADAKの音世界をまとめあげた様に思わせます。
個人的に、一番アルバムとしてのまとまりが良くて、一番完成度が高いと思うアルバムです。
2人組でのアルバムがこれで最後かもと思うと、残念で感慨もひとしおですが……。
個人的おすすめは、『五つの橋』、『休まない翼』、『Tin Waltz』です。
ZABADAKが吉良さんのみのソロユニットとなってから最初のアルバム。全体的にロック調の曲が増えてはいますが、やはりZABADAKの音世界はそのまま息づいています。上野さんの音と声がそこにないのは残念ですが……。
このアルバムの中で圧巻なのが、一節の同じメロディを使って、14人のアーティストがそれぞれの個性のままに歌詞を紡ぎ、それを融合した『14の音』。その他にもいろいろと模索され、さらに新しいZABADAKが作られてゆくイメージを受けます。
個人的おすすめは、『星の約束』、『海を見に行く』、『静かに窓を開けよう』です。
ポリスターに移籍・メジャー復帰した2年ぶりのZABADAKとしてのオリジナルアルバム。前作『音』で見せた新生ZABADAKのポップスの色彩をさらに強めて、全体として軽快かつ骨っぽい印象(ちょっとうまく表現できない……)をうけます。
吉良さんの声もある曲では高く軽快で、別の曲では重厚にと、ヴォーカルとしての広がりが感じられます。
ただ、個人的にはかつてのアルバムや『賢治の幻燈』で感じたような生の楽器の息遣いや懐かしさがあまり感じられないのがちょっと残念。
私としては、1ヶ月後の10月14日にでる『光降る朝』(こちらはインストを中心に女性ヴォーカルをフィーチャーしたアルバムだそうです)との両方を聴いてみて、初めて新しいZABADAKの方向性が見えてくるのかな、と思っています。
個人的おすすめは、『観覧車(小さなイーディへ)』、『Mother』、『Tears』でしょうか。
キャラメルボックスの『風を継ぐ者』を見たおかげで、『Tears』を聴くと野球のユニフォームを着た立川くんが浮かぶ……(その他にも、『Poland』を聴くと新選組の殺陣っ!とか)、ってのはまったくの余談。
そして前作『Something in The Air』から一ヶ月後にリリースされた、メジャー復帰第二作。『賢治の幻燈』からの再録のインストゥルメンタルを中心に、さらに小峰公子さん・新居昭乃さんなど女性ヴォーカルをフィーチャーした構成になっています。
こちらはロック傾向の強い前作とは全く異なり、「自然賛歌」との肩書きの通り、宮沢賢治の童話の世界さながらの静かで透き通った、何かせつなさと懐かしさを与える様な印象があります。
対ともいえる、二つのアルバム『Something in The air』と『光降る朝』。
つまりこの二本の糸が、10年目という区切りを迎えたZABADAKの新たな方向性の答えなのでしょう。この二本の糸が互いにより合わさって紡がれてゆく、ZABADAKの音世界をずっと辿ってゆきたい、と私は思っています。……それはそれとして、10曲中半分が『賢治の幻燈』の再録……。もっと新曲をくださぁぃ(涙)
まあ、『賢治の幻燈』の『オツベルと象』の朗読がない分、就寝時のBGMに使えるという利点もありますが。(だって、寝る時に「うららーがぁ!うららーがぁ!」……じゃねぇ。)個人的おすすめは、『銀河鉄道の夜』、『月の瞳』、『光降る朝』REPRISE(吉良さんヴォーカルバージョン)です。
『銀河鉄道の夜』のリコーダーの旋律がとっても良いのです。
ソロユニットとしてのzabadakの4枚目の、そして吉良さんが父親となって初めてのフル・アルバムです。その先入観もあるのでしょうがギターの響きを主体に力強くポップに奏でられる音楽の中に、何処か優しくて張りつめた音を感じます。
特に、「生命」を意味しアルバム全体と同じ題名を持つ曲、『LIFE』。徐々に高く激しくなってゆくその歌声と響き。
初めて聴いた時、何故か、音楽としては全く異なるはずの『let there be light』(『飛行夢』収録)等を昔初めて聴いた時と似た感覚を覚えました。
(吉良さん自ら詩を手掛けた『なかなかおわらないうた』では、むしろほほえましさを覚えてしまったが(笑))4枚目のこのアルバムに至って、新しい吉良さんのzabadakの音の世界も固まって来た気がします。
ちょっと聴いた限りでは昔のzabadakとは全く違って聞えるけどその根底にはどこか、変わらない何かが流れている新しいこの世界も、私は結構好きだったりします
(……ただ、1曲めの『FAKE』だけはあまり好きになれないんだよなぁ……個人的に。)個人的おすすめは、『LIFE』、『僕の贈りもの』、『光の庭で』でしょうか。
すっかりキャラメルボックスにはまった私としては、やっぱり『十二月の恋人』が欲しかったかも。……確かにアルバムに入れたら浮くだろうけど。
……タイトルを知った時と、ジャケットを初めて見た時はなかなかびっくりしました(笑)。
ジャケットは水色のバックにかわいいテディベアのどアップ。タイトルも、前作「Life」の重々しさに比べて、何だか少女コミックみたいな響き。
……というのも訳があって、このアルバムはA.A.ミルンの童話『Winnie the pooh』、つまり『くまのプーさん』をモチーフにしているのです。今回は女性ボーカルにMOEさんこと高井萌さんをフィーチャー。6曲のメインヴォーカルをとっています。
その声は少し甘みがかったキュートな歌声で、「くまのプーさん」をモチーフにした歌詞とあいまって、やんちゃな少年の様にポップに響きます。
特に種ともこさんの詞にはよくマッチして、『CHRISTPHOR ROBIN』はにぎやかで少しさびしい、このアルバムを象徴する様な曲に仕上がってます。また、今回はインスト2曲をはじめとして、久しぶりにギター以外の生の楽器も多く使われているのが嬉しいところ。
特に私は『かえりみち』の前奏の響きが大好きで、こういうところに、吉良さん一人になってからも感じる、zabadakの音楽の変わらない部分がある気がしてしまいます。個人的な感想ですが、このアルバムは、楽しくてさみしい音楽が詰まっています。
そしてそこには、特に2冊目は「さよなら」で始まる「くまのプーさん」という童話がちゃんと息づいている様に思えるのです。
もう行けない「永遠の森」を垣間思い出させてくれる、そんなアルバムです。個人的なおすすめは、『CHRISTPHOR ROBIN』、『かえりみち』、『永遠の森』。
c/w『水の踊り』『水の踊り』はライブアルバム収録のものとは歌詞が別バージョンです。
c/w『砂煙りのまち』アルバム収録とはアレンジが少し違って、冒頭の「ザッ ザッ ザッ」という効果音が不思議。
c/w『夜毎、神話がたどりつくところ』『シリアス・ムーン』通称『よごしん』(=「夜毎信用金庫」(笑))はB面ながらベストアルバムに収められた名曲。この前のライブで久しぶりにやった時は歓喜の声が。
『Harvest Rain』はアルバムより短いバージョンで、冒頭の鐘の音が好き。
c/w『鞦韆(ぶらんこ)』『鞦韆(ぶらんこ)』を初めてライブで歌ったのは、実はzabadakではなく谷山浩子さん(笑)。
c/w『星狩り』『光の人』zabadakはB面に決して手を抜かないのでこのシングルはどの曲を取っても名曲ぞろいです。
なのにB面2曲はアルバム未収録……。『Remains』(後述)出てよかったですよ、本当に。
c/w『十二月の恋人』『十二月の恋人』はキャラメルボックス1996年の公演『不思議なクリスマスの作り方』のテーマソング。二年越しの念願の収録です。
観た方は、これを聴くとライナスがスヌーピーにキャラメルを手渡すシーンがきっと思い浮かぶ……はず。
初期の2アルバム時代からのベスト集。
でも、肝心の曲が抜けていたり、いかにもレコード会社が後から作ったという造りで、あまり好きではないのです……。
本人達のセレクトによる、2人zabadak時代のベストアルバム。一通り収められているので、初めてzabadakを聴く方は、このベストから入られても良いかもしれません。
なお、一部では「ディケイド」ではなく「デイケイド」と呼ばれます(笑)。
後につくられた、やはり2人zabadak時代のベスト集。主に『Decade』に収められなかった名曲達が入っています。
ボーナストラックとして、CM曲も5曲入り。
アルバム未収録のシングルB面の曲全てと、アルバムとは別アレンジの曲のセレクション。
これがあるおかげで、シングルが絶版になったあとも、無事にB面の名曲達が聴けるので貴重なアルバムです……。
ちょっと分類が間違っていますがここに入れました。
吉良知彦さん、楠均さん、青木孝明さんの3人の「トリオ」の編成で、アコースティックに綴られたミニアルバム。
『LiFE』に収められていない新曲『白い紙とえんぴつ』や、吉良さんヴォーカルの『光の庭で』『遠い音楽』が聴けます
インストォルメンタル集
ZABADAK脱退後の上野洋子のソロ・アルバム
宮沢賢治をモチーフとした企画アルバム
「古楽」をポップアレンジしたVita Novaのデビューアルバム。
上野洋子さんがこのアルバムに参加していて、久しぶりの上野さんのボーカルが聴けます。
前述Vita Novaのセカンドアルバム。今回も上野洋子さんが参加。
今回も古楽を中心に、琉歌や讃美歌など様々な地域や時代の音楽をアレンジ。
上野さんの他にも、遊佐未森さんやEPOなどたくさんのヴォーカリストが参加しています。
……こちらはまだ資金不足で購入できず、聴いていないのです。
コメントが作れず、申し訳ありません。
これまでの上野洋子ボーカルの曲のいくつかを全く別のイメージでMIXし直したアルバム。
本人も『五つの橋』のアレンジで一曲参加しています。
上野洋子プロデュースのマザーグースのイメージアルバム。
木管五重奏での原曲のアレンジやオリジナルの音楽に、詩の朗読やなぞなぞをフィーチャー。
遊佐未森さん、原マスミさん、もりばやしみほさん、本間哲子さんなども参加しています。
なんというか、マザーグースのエッセンスに満ちた不思議で奇妙で、そしてなんか楽しいアルバムです。
上野・遊佐ダブルヴォーカルの『不思議の森』や上野さんの子守り歌『明日きっと聞かせて』はファンとしてもうれしい2曲ですねー。
インディーズのレーベルなので、普通の店では置いてありません
東京では、銀座の山野楽器、池袋西武のWAVEなどに置いてあります