<カクテルパーティー:第1日目>


デビューして20年。あまりにも早すぎて実感がない。

特別な苦労もなかったし、私はすごく恵まれているんでしょうね。

これからも同じペースで時は足早に過ぎていくと思う。

そのなかで、ただひとつ。

私が大切にすることは、自分に無理なく生きること。

(1994年)



1.本日のカクテル:ラスティ・ネイル


スコッチ・ウィスキー・・・・・40ml
ドランヴィ・・・・・・・・・・・・・20ml

氷を入れたロック・グラスにウィスキーとドランヴィを注ぎ軽くステアーする。



2.本日のお客さま:尾崎亜美さん

シンガー・ソング・ライター。1957年、京都市生まれ。’76年、「瞑想」でデビュー。
高橋真梨子をはじめ、杏里など多くの人に曲を提供している。現在はソロ活動と並
行し、自分のバンド”椿姫BAND”でも活躍中。


大切な友だち・・・・

歌の上手なお姉さまというイメージの強い真梨ちゃんだけど、私の知ってる真梨ちゃん

は素直で子供っぽい、もちろん(?)、人生経験の豊かな方だから、大人の意見を聞か

せていただくこともあるけれど、話をしたりしていると「まだ、そうかい?」ってとこ

ろがたくさん。イメージとはちょっと違って、ひとりの女性の中に住んでる女の子みた

いなものが外に現れてくる人なんです。

しかも、本当だったら「私はこうよ」って威張ってしまっていい立場なのにも関わらず

そんなことには気にもとめないで、いつでももっと素敵になろうとしている。高橋真梨

子というのは揺るぎのないものだけど、そこに止まらずピュアな気持で何事にもチャレ

ンジしてる。そんな姿を見ていると、私も「見習わなきゃ、いかん」と思っちゃうよ。

私が真梨ちゃんのソロ・デビュー曲「あなたの空を翔びたい」(’78年)を書いたの

をきっかけに仲良くなり、以来、一緒にごはん食べたり、お互いの家を行き来したり・

・・・。突然、真梨ちゃんが夜中に「寂しいのぉ〜」とか言って、私の家に来たことも

あった。友だちとしては、真梨ちゃんが私を可愛がり、私が真梨ちゃんを慕うというの

が普通なのかもしれないけれど、私たちはお互いを可愛がってる関係。真梨ちゃん、甘

えてくれて・・・・嬉しいよ。

密に連絡を取り合っていなくても、すぐに友達会話がポンとできちゃう真梨ちゃんとは

これからもずーっと付き合っていける。



3.本日のメロディ:MR−NK01

TODAY'S PROGRAM


曲名 時間 Vol. 音源
・五番街のマリーへ 4:06 '93 VICL-375
・美しき戯れ 5:26 17 '92 original album
・クロスワード 4:18 10 '85 original album
・ノスタルジアagain 5:06 15 '90 original album
・Come back to me
〜フラワーホテルの女客〜
3:39 '82 original album
・さよならから... 6:52 16 '92 LIVE
・LOVERS BELL〜心のささやき〜 4:43 17 '92 original album
・心揺れて 4:28 14 '89 original album
・SOUVENIR 5:37 13 '88 original album
10 ・忘れない 4:15 '84 original album
11 ・ストライプ 4:15 10 '85 original album
12 ・陽かげりの街 3:30 '93 VICL-375
13 ・TRUE 5:36 14 '89 original album
14 ・五番街のマリーへ オリジナルカラオケ
15 ・LOVERS BELL〜心のささやき〜 オリジナルカラオケ


4.本日のおはなし:オキ・シローさん

深夜のラスティ・ネール

目の高さまで上げたオールド・ファッション・グラスを、女はかすかに揺すった。ウィ
スキーの中の氷山に沿って、リキュールがとろ^りとうねりを見せる。
彼もよくこうしてラスティ・ネールのグラスをかざし、ドランヴィのうねりを眺めてい
た・・・・。ウィスキーの中で、花の蜜のような甘い香りが匂い立つそのグラスを、女
はそっと口に運んだ。
甘苦く、冷たいラスティ・ネールが、じんわりと舌にひろがる。その濃密な風味に、女
は思わず目をつむりながら、ゆっくりとのどに流しこんだ。
「ラスティ・ネール、”錆びた釘”だなんて、おかしな名前ね」
女は彼にそういったことがある。
「うん。錆びた釘なは、古めかしいとか、古風とかいう意味もあるらしいんだが」
「古風? 頑固なあなたにはぴったりね」
あの時、彼は少し苦笑しただけだった。
ラスティ・ネールは、スコッチ・ウィスキーと、これまたスコットランド最古のリキュ
ール酒ドランヴィとのカクテル。なぜか彼は、このかなり甘口のお酒が好きだった。
スコットランドといえば、そうだ、彼はツィードのジャケットも好きだった。そして、
それがまたよく似合った・・・・。
あの頃は、彼のラスティ・ネールにまったくつき合わなかったのに、今になって独りで
深夜のバーで飲むなんて。女は日ごとに好きになっていきそうな甘苦いラスティ・ネー
ルを、またそっと口に流しこんだ。
彼のあの頑固さが、少しだけ窮屈だった。ちょっと解放されたかったし、時にはあから
まに嫉妬もしてほしかった。だから、だからわたしは少々ハメをはずした・・・。
「君らしく生きたほうがいい」
彼はそういって去って行った。
「そうね、そうするわ」
思い出がまたひとつふえるだけ。女もあっさりとサヨナラをいった。
あの時、必死になって弁解すれば・・。でも、いいわけしたり、すがるなんて、わたし
の趣味じゃない。女の舌の上で、ラスティ・ネールが少しずつ苦味をましていく。
ラスティ・ネール、錆びた釘。もう彼の中では、わたしとの思い出はすっかり錆ついて
しまっているのかしら。
人影がまばらな夜ふけのバー。その静かなカウンターに独り止まっている女の耳に、男
の懐かしいバリトンがよみがえってくる。
「この酒は、ナイト・キャップにもすごくいいんだ」
そお、思い出のために飲んでいるんじゃないわ。ただ、ぐっすりと眠りたいから。
女が、重いオールド・ファッションド・グラスを、細い指で持ち上げる。グラスの底に
よどんでいたドランヴィが、またゆったりとうねりを見せる。そのよどみの中に、ぽつ
んと小さな水滴が落ちた。


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