<カクテルパーティー:第3日目>


「大丈夫」

これが私の信条であり、すべての始まり。

新しい歌にチャレンジする時

ステージの前、いつも自分に言っている。

きっと大丈夫よ、と。

どんな時にでも、この言葉は私に優しく、勇気と自信を与えてくれる。



1.本日のカクテル:ブラディ・マリー


ウォッカ・・・・・・・・・・30〜45ml
トマト・ジュース・・・・・・・・・20ml
レモン・ジュース・・・・30〜45ml

好みで塩、スパイス等を加える(スパイスにはタバスコ、ウスター・ソース、コショウなど)。
材料を砕氷と共にシェークして、大型のカクテル・グラスまたはゴブレットに注ぐ。



2.本日のお客さま:阿木燿子さん

作詞家。モデル、編集者を経て、’75年「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で作詞家デビュー。
現在は、作詞のみならず、女優、エッセイストとしても活躍中。著書は、恋愛小説集「棘のあ
るシーツ」(マガジンハウス)など多数。


大人の女性の励みでいて欲しい・・・・

切なさとセクシーさが混じりあった高橋さんの声が好きです。その歌声には女性の生き

方が見え隠れしているので説得力があります。それは意識的に表現している部分と、無

意識の部分があるから、聴く側が自然に自分の中の”女の部分”を膨らませていけるん

じゃないかしら。きっと、高橋さんご自身、女性の心理をよく知っていらっしゃるから

なんでしょうね。

日本では一般的に女性は若くなくてはいけないみたいな風潮がありますよね。ショー・

ビジネス界でも次から次へと人を発掘して、大人の女性が活躍できる場所が少なくなっ

てしまう。人生の深味を表現できるようになると、新鮮味がないと言われて、メジャー

からあまり声がかからなくなる。それでは音楽や文化が成熟しませんよね。そんな状況

の中、高橋さんは他人との競争を必要としないところまで昇りつめ、独自の世界を築き

上げていらっしゃる。それを維持するのは大変なことだと思うけど、だからこそ、高橋

さんには大人の女性の希望と励みでいて頂きたいと思っています。

私はこの年になっても、大人になりたいという願望が強いんですが、女性がいつでも可

愛らしさにこだわると時間を止めてしまう気がするんです。変わっていくことを恐れな

い生き方のほうが、女性を素敵にするんじゃないかしら。変わるということは、その人

をいつまでも若くいさせるし、また成熟もさせてくれるような気がします。どちらにし

ても高橋さんのように、自分のオリジナリティを大切にして、自分らしく生きるって、

素敵なことですよね。



3.本日のメロディ:MR−NK03

TODAY'S PROGRAM


曲名 時間 Vol. 音源
・はがゆい唇 4:20 17 '92 original album
・ヒ・ラ・ヒ・ラ淫ら 4:36 15 '92 LIVE
・モダン・デジャブ 4:51 '84 original album
・十六夜 4:56 14 '89 original album
・DANCEはひとり 3:51 15 '90 original album
・祥寺クィーン 4:54 '84 original album
・桃色吐息 3:30 '93 VICL-375
・デスティニー 4:03 11 '86 original album
・夕暮れにルージュ 5:12 17 '92 original album
10 ・黄昏人 4:27 11 '86 original album
11 ・背中から撃たないで 4:16 '84 original album
12 ・嵐ケ丘 4:40 11 '86 original album
13 ・蜃気楼 4:28 10 '94 VICL-507
14 ・はがゆい唇 オリジナルカラオケ
15 ・桃色吐息 オリジナルカラオケ


4.本日のおはなし:オキ・シローさん

妖しいブラディ・マリー

赤い熱い炎の色。女は、男たちの目を焦がしたいと、その赤い色をアクセントに使うこ
とが好きだった。
シルクの灰色の服に、黒いエナメルのバッグと靴。黒い髪もきっちりとひっつめ、モノ
トーンでまとめた今日のアクセントは、手にした真っ赤なカクテル。ほっそりと背の高
いコリンズ・グラスに、氷と一緒に満たされたブラディ・マリーだった。
昼下がりに、ビュッフェ・スタイルで開かれた友人の婚約パーティー。シャンパンでの
乾杯が終わると、女はすぐ会場の隅のバー・カウンターに行った。そして、ウォッカと
トマト・ジュースをステアした、この赤いブラディ・マリーをつくってもらったのだ。
「おめでとう」
女は主役の二人に声をかけた。
「ありがとう。嬉しいわ、来てくれて」
ピンクのドレスに身を包んだ友人が、改めて婚約者を紹介してくれる。
「シャンパンはお嫌いですか」
婚約者が女の赤い酒を見ながらいう。
女はシャンパンが大好きだった。しかし今日は、酒の味より色の方が大切だった。
「ごめんなさい、天の邪鬼で」
女がとっておきの目で男を見つめる。
色っぽい視線に射すくめられた男は、慌てたようにシャンパンをあおった。そのどぎま
ぎした婚約者の様子に、友人の顔がちょっと引きつったように見えた。
「それじゃ、またのちほど」
女は婉然とほほ笑み、二人から離れた。
シャンパンばかりがいきかう会場で、グレーの服を着た女の持つ、細長いグラスに入っ
た赤い酒はいやでも目立つ。
おや?と、酒と女に目をとめる男たち。
その視線が、次にタイトなスカートの左脇に入っているスリットに移るのを、女はたっ
ぷりと意識しながら歩いた。そして、壁際の椅子のひとつに腰を降ろし、自慢の脚を斜
めに組むと、酒のグラスを少しずつ傾けた。
ブラディ・マリーの色に合わせて引いた濃いルージュ。ほんのりと酔いに染まった細い
首をのけぞらせ、その赤い唇に赤い酒を流しこむ度に、男たちの熱い視線が集まるのが
わかる。
諸説あるブラディ・マリー誕生秘話の中で、女は、イングランドの女王マリー・チュー
ダーの名前からとったという説がいちばん気に入っていた。新教徒たちを惨酷に迫害し
たことから、血まみれ(ブラディ)のマリーと呼ばれ、恐れられた女王だという。
そう、わたしは恋のマリー・チューダー。男たちを次々とトリコにし、のたうちまわら
せ、ハートから赤い血を流させる。
そして、最後は惨酷に捨てるのがわたしの夢。
友人の婚約者を狙うのは、ちょっと悪趣味すぎるかしら。
ブラディ・マリーの赤い酔いが、女の目にめらめらと炎を燃え上がらせ、妖しい妄想を
ゆっくりとふくらませていく。


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