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9.幼体・亜成体の行動圏

 幼体・亜成体は5月・6月・7月と10月・11月に捕獲された。ここでは秋生まれの幼体・亜成体については12月の調査をしていないので春生まれの個体についてのみ見ていくことにする。図14は授乳中の雌と5月に出現した幼体・亜成体の行動圏の変化の様子を示している。5月に授乳中でしっかりとした行動圏を持っていたのは68Bと71・53Bの3匹であり、これらは行動圏の重複はない。幼体は1100メスと1060メス・80オスの3匹で、亜成体は7100メスと3070オス・1080メスの3匹で、これらのうち1100メス幼体と4100オス亜成体(追跡地点数が少なく5月の行動圏は描けなかった)は68Bのみと行動圏が重複しており、また7199メス亜成体は53Bのみと行動圏が重複する。1060メス幼体と80オス幼体・1080メス亜成体・3070オス亜成体が71と行動圏が重複する。これらのうち一番多く重複しているのは1060メス幼体である。6月にはいると多くの幼体・亜成体が捕獲された(幼体は3匹・亜成体は9匹)。その結果、幼体同士お互いに行動圏が大きく重複する。5月に捕獲された7匹のうち、3070オスのみが消失しており、残り6匹は1060メスを除きすべて成体(>=25g)になっていた。これらのう ち、4100オスと1100メスは5月同様68Bの行動圏にその行動圏の半分以上が重複している。7100メスの行動圏は53Bの行動圏に一部重複しているが、68Bの行動圏内へも大きく侵入している。1060メス亜成体および1080メスは71の行動圏とわずかに重複する。7月になると亜成体が新しく2匹捕獲され、また6月にまだ亜成体であった1060メスも7月には成体になっており、これもまた71の行動圏と重複している。1080メスは71の行動圏と重複がなくなる。7月には53Bは捕獲されなかった。8月になると、6月・7月に初めて捕獲された幼体・亜成体はいなくなり、5月に出現した5個体のみになった。53Bはこの月も捕獲されなかった。今までに比べると、雌の行動圏と5月に幼体・亜成体であった個体の行動圏は雌同士の間でほとんど重複がなくなっている。またただ1匹の雄(4100)と他の4匹の雌との間の重複も少ない。幼体・亜成体でよく定住する個体は春仔の場合、春の繁殖期の初期に生まれた個体である傾向がある。これら早生まれの個体は6月に多くの幼体・亜成体が出現する頃にはほとんどが成体になっている。これらよく定住していた個体も交尾期の始まる9月には1100メスと1080メスは消 失し、残りの3個体(4100オスと1060メス・7100メス(ワナ内で死亡))が定住していたが、1060メスはその行動圏を大きく移動させていた(図10参照)。

論文図表

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