この「山の風景」は、私が大学生の頃に撮りためた白山の高山植物や伊吹山、
そして最近は生物部の活動でいろいろと里山を巡っており、その機会に撮影した写真やその他諸々の生き物の写真を紹介するページです。

里山の自然に写真を追加しました(2011/6/19)。

高山植物について

コマクサ 高山植物は一般に高山帯に自生する植物のことを言いますが、一口に高山植物といっても亜高山帯以下にも分布するものがあり、この定義で高山植物をまとめるのは難しいです。高山帯は寒帯にあたり、生物が生息する環境としてはかなりきびしいものです。気温が常に低く、気圧も低く、風が強く、太陽光線が強いなどの特徴があります。高山帯以上では高木は生えず、低木や草本、地衣類などが見られるのみです。
 高山植物はもともと北方系の植物で、暖かい気候ではかえって生息しにくい性質を持っています。新生代の第三紀(7千万年前から200万年前)に北極をとりまく北半球の一帯に今の高山植物の祖先が誕生し、これらが200万年から1万年前の氷河期に南方に移動し、各地で繁殖しました。やがて地球上をおそった氷河期が終わると、地球上が暖かくなってくると、これらの植物は生息しにくくなり、再び北へ追いやられることになりました。低地に生えていたものは絶滅し、高山に移動したものだけが生き残り、現在の高山植物になったと考えられています。
 気温は海抜が100m上がるごとに約0.6度下がると言われていますので、平地と比較して気温が低く、雪に覆われる期間も長いため、植物の生育可能期間が夏の間の3〜4ヶ月に限られています。そのために高山植物は多年草が多くなっています。
 高山植物の名前には「ミヤマ」や「タカネ」とつくものが多く、これらはそれぞれ「深山」「高嶺」を示しています。また「ハクサン」のつくものも多く、これは白山で発見された植物が多いことを示します。

 植物を図鑑で調べる場合に知っておいた方がよい用語がいくつかあります。それらについては、こちらへどうぞ。

標高による違い

標高による違い

山地帯の植物 亜高山帯の植物 高茎草原の植物 湿性お花畑の植物 瓦礫地帯の植物 ハイマツ帯の植物

標高による違いの説明(「詳細情報を開閉」をクリックすると詳しい内容が開閉します。)

山地帯(montane belt) 中部地方では標高600mから1500mくらいまでで、主にブナやミズナラ(落葉樹/夏緑樹林)などが生えており、林内は明るく、多くの動物たちが生息している。ニホンザルやカモシカ・ツキノワグマなども見られます。
 山地帯(Montane Belt)はブナ(Fagus crenata)が代表的な樹木です。ブナ林が発達するのは月平均気温が10度以上の月が4〜6ヶ月続くところです。これは落葉樹で、冬の間葉を落とします。これらの葉の堆積が肥沃な土地を生み、その結果様々な生物がこの森には生活しています。葉は5月頃に開きますが、林床にはブナの葉が出る前に花をつけるかわいらしい植物たちがいます。ブナは樹皮がやや灰白色なためはっきりと分かります。
 ブナは分類学上ブナ科ブナ属に属する植物です。ブナ科にはブナ属の他にコナラ属、クリ属、シイ属など6属あり、世界の温帯から亜熱帯にかけて約600種が分布しています。この仲間は森林を優占する木が多く、大木になるので材は広い用途を持っています。また果実は多くの動物たちの食料として重要です。樹高は30m、胸高直径は1.7mに達するものもあり、寿命は300〜400年と言われています。花は4〜5月に咲き、雌雄同株です。実はよくなる年と少ない年が周期的に現れ、5年前後の周期で豊作が来ることが知られています。
 ブナ林は東北地方を代表する樹木ですが、現在ではブナの原生林は大規模なものは白神山地(青森県・秋田県)に残るだけとなっています。このブナ林も現在開発の手が伸びつつあり問題となっています。ブナ林はその落ち葉の堆積などにより、すばらしい保水力を持ち、上流にブナ林が発達している河川では大雨が降ってもその水は濁りません。そのため、ブナ林は自然のダムと言われています。
 日本のブナ林は林床がササ類に覆われているのが特徴です。このブナ林の林床に生えているササの種類が日本海側と太平洋側では違っていて、日本海側はチシマザサ、太平洋側はスズタケです。日本の山地帯を代表するブナ林は北海道の黒松内低地帯を北限としていて、それより北に行くとミズナラ林に変わります。ここでは林床は主にクマイザサになっています。
(参考文献 白山の自然誌2 ブナ林の自然 石川県自然保護センター)
亜高山帯(subalpine belt)中部地方では標高1500mから2500mくらいまでで、主にオオシラビソやコメツガなどの針葉樹が生えています。
亜高山帯(Subalpine Belt)を特徴づけるのは、針葉樹林です。白山はオオシラビソ(別名アオモリトドマツ)(Abies mariesii)が多く見られ、蔵王の樹氷などもこの木によるものです。球果は紫藍色になり、よく目立ちます。これらの林床にも多くの植物を見ることができます。針葉樹林帯に入ると常緑の大きな樹冠にさえぎられているので、光に乏しく、薄暗くてひんやりとした感じになります。また針葉樹の落ち葉は分解しにくいので、栄養分に乏しく、林床の植物は貧弱です。また雪崩が起きやすい斜面などでは針葉樹が生育できないので、ダケカンバなどの低木林が見られます。
 本州の亜高山帯の傾斜の急な尾根などでは乾燥しやすく、また土壌が薄くなっています。こういったところではコメツガが多くなっています。コメツガよりも高度の高いところではシラビソ−オオシラビソ林となっていて、トウヒが混じっていることがあります。この林にはナナカマドなどの落葉低木林も混じっています。
 北海道の亜高山帯を代表するのはエゾマツ−トドマツ林です。この林は平野部にも見られます。
 この針葉樹林帯を抜けるとダケカンバなどの落葉広葉低木林になります。この林は一般にシラビソ−オオシラビソ林と高山帯のハイマツ林の間に発達します。特に積雪や雪崩に強いため斜面に見られます。山などに行くと曲がりくねったダケカンバを見ることができます。さらに高度が上がると樹高が低くなり生え方がまばらになったりして森林といえなくなってきます。この森林が成立しない高度を森林限界といいます。本州中部ではほぼ標高2400〜2600m付近で、東北地方では1900〜2000m、北海道では1200〜1500mくらいになります。また同じ山でも北斜面と南斜面では北斜面の方が森林限界は低くなります。また山脈よりも孤立した高山の方が森林限界は低くなります。この森林限界を越えてさらに上まで生育する高木もありますが、やがてはまったく高木が生育できないようになり、これを高木限界といいます。森林限界より高木限界の方が高いのですが、両方を混同している場合もよくあります。
高山帯(alpine belt)   中部地方では標高2500m以上(積雪の多い場所ではこれよりも低い−白山では2200mから2300m)。森林限界(これ以上では高木が見られないという境界線)より上で、背の低い木としてハイマツが生えており、その他多くのきれいな花たち(いわゆるお花畑)が我々を迎えてくれます。
 高山帯(Alpine Belt)は砂礫・岩などが存在し、非常に保水力の弱い土地と積雪量が多く湿った土地などいろいろな環境があります。そのため、これらの環境に適応した様々な植物が見られます。高山帯では背の高くなるような樹木は見ることができず、樹木としてはハイマツ(Pinus pumila)が生えています。高さは1から2メートルぐらいで、斜面に沿って横に這うように生えています。積雪のあまり多いところには生えておらず、ハイマツの生え方により、大方の積雪量を知ることができます。ライチョウなどが多く見られるのもこの地帯です。なお、白山には過去にはライチョウがいましたが、現在では見ることはできません。この高山帯に生える植物には名前の頭に「ハクサン」とつくものが多く、これは白山が古くに開かれた山であることを示しています。

ハイマツ林

 ハイマツ(マツ科マツ属 Pinus pumila)は高山帯に生える雌雄同株の常緑の低木で、高山帯を特徴づけるものです。山に登っていってハイマツが現れると、ああ高山帯に来たなという気分になれます。新しい火山である富士山にはありません。日当たりのいいところを好み、乾燥にも強いため、砂礫地などでもよく生育します。尾根筋や斜面では、本当に地面を這って広がっている様子が見られます。
ハイマツの成長
 ハイマツは枝が地につくと、そこから根を出し、先へ先へとのびて自分の領域を拡大していきます。古い株では根元からしだいに枯れていって、その後には白骨のようになった枯れた幹や枝を残します。ハイマツが密生した林では暗いため、ハイマツの種子は発芽できません。そのため、ハイマツ林は1代で終わります。ただ、このハイマツの種子などはホシガラスの好物であり、この鳥が球果ごと運ぶため、場合によっては環境のよいところに種子が落ちることがあります。発芽したばかりの実生は6〜7cmほどで、約10個の子葉がつきます。ハイマツの成長は遅くて、10年たっても幹の長さは5〜9cm、直径は5mmくらいにしかなりません。30年くらいたってやっと長さが1m、直径1.4cmほどになります。 ハイマツ
参考文献(日本の高山植物 山と渓谷社)

高山帯のお花畑

高茎草原
強い雪崩の起きやすい斜面などでは、樹木が生活できないため、地上部が毎年生え替わるような草本が生えています。これらの草原には幅の広い葉を持った大型の草本が多く見られるので広葉草原とも呼ばれます。この草原を構成する植物の数は多くて、しかも1種類が優占して生えるようなことはあまりありません。これらの草原を特徴づけるものはセリ科の植物ですが、どれもこれも同じような感じなので分類は結構難しいです。
湿性お花畑
雪田のまわりは、絶えず雪解け水などが流れ込むので、湿り気のある土地で、しかも有機物が集まってくるので栄養分に富んでいます。こういった場所にはまた特色のある植生が見られます。ただ斜面のところでは、雪解け水などが流れ去り、かなり乾燥します。また雪解け水とともに土壌が流出するため土の質もあまりよくありません。このようなところでは雪解けと同時に光合成できるような常緑の小低木が見られます。
ハイマツ帯
高山帯の下部ではハイマツの成長がよく、ハイマツが1m以上の高さになり、ハイマツの樹海を作ります。このような群落にはハクサンシャクナゲなどが混在します。これらのハイマツの林縁などでは特有の植物が見られます。
瓦礫地帯
高山の非常に風当たりの強いところでは、夏乾燥しやすく、冬は雪が積もらないのでまともに寒気にさらされるといった厳しい条件です。もっとも厳しい環境のもとではイネ科の植物が主体となります。すこし条件が緩やかになると、丈の低い小低木などが生えるようになります。これらの植物は多くが常緑の小低木です。

 白山に登り始めたのは大学時代に自然保護研究会というところに所属してからです。それまでは山に登ったことがなくて山を知りませんでした。現在多くのOB、OGがいますが、メンバーの一人がHome Pageを作ってくれました。左の絵をクリックしてもらうとそちらにいきます。このサークルでは白山に登るとともに、夏の間には室堂センターや五竜山荘において自然解説員などもやっていました。これは登山客について高山植物などの名前を解説したり、あるいは登山客がいないときは、いろいろと登山道をまわってゴミ拾いなどをする仕事です。また、登山道の整備などもやります。現在はどうなっているのか不明ですが。

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