Jean-Michel
〜名古屋編〜 vol.1
ついに名古屋公演もフィナーレを終えた「ラ・カージュ・オ・フォール」。 「ラ・カージュ」これまでの掲載記事
「ラ・カージュへ…」
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−名古屋公演を終えてのご感想は?
圭吾:…「よくやった!」(笑)
4月に一ヶ月やって、その時よりも、この8月やった時のほうが… 少しは成長したんだろうね、自分の知らないうちに。 相手役も変わって、カンパニー自身も新鮮な感じになって。それも、また良かったんじゃないかなと。
−40回、一日もお休みなしでしたね。
圭吾:後半ちょっと風邪ひいて、声がヤバかったよ。 「これは、ちょっと…ヤバいだろう」っていうのが1回だけあってね。もう、ホントに声が出なくって、台詞言ってても途中から、「誰の声?!」とか思うぐらいに、全然違う声になったりして。 必死になったよ。
登場して、ソファから出てって、「僕もさ!」って言った瞬間に、「やばいよこれ!…これから2時間半続くんだよな。やばい…。」とか思って。 なんとかやったけど、それがいちばん怖かったかなあ…。
疲れもたまったりしてたんだろうな。 しょうがないといえばしょうがないんだけど。でもちょっとそれは、不覚だった。それが一番、悔いの残るところかな。
−大変でしたね。
圭吾:いろいろ考えたよ。 怒鳴ると声が出ないから、「どういう風に…怒鳴らない方法で、この役を演じきれるのか」って思った。 「手話?」…とか思ったんだけど(笑)、「いや、それも違うよなあ」と。 「いいじゃん、別に怒鳴らなくても、高い声が出なくても、 役者なんだから何か伝えられる方法はあるはずだ!」と思って、 やったつもり。−公演が終わって、気が抜けてしまいませんでしたか?
圭吾:そうだね…毎日、あれが生活の一部だったからなあ…。 不思議だよね。いつも思うんだけど、やった作品を振り返ってみると、 「よく、そんなこと覚えてられたな」って思うんだよ。 「よくそんなの踊ってたなあ」とか「歌ってたなあ」とか… 「こんなこと、できねえよ」とか思うんだ(笑)。
−緊張の連続ですよね。
圭吾:公演中って、遅刻する夢を見るんだよ(笑)。 それが嫌だなあ。むちゃくちゃリアルなんだよ。 遅刻する夢とか出遅れる夢とか、「もう今からじゃ間にあわねえよ!」っていう夢。 実際にも、遅刻はしないんだけど「ハッ」て起きて、「うわっ!…うわっ!!こんな時間!」っていう時はあるんだ。で、まさにそこから始まるの(笑)。 「ハッ!」て起きて、「えっ?…あぁ、開演5分ぐらいしかない! …うわ、どぉしよー…!」ってとこで目が覚めるんだけど。
−怖いですね。
圭吾:怖いねえ…すっごい怖い。 あと、夢の中で突然「前の作品やれ」って言われたり(笑)。 こないだ出てきたのが「ヴィクター・ヴィクトリア」。もう開演時間が迫ってて、 前に自分がやった、一番始めの出のところを「圭吾、やれ!」って言われて。 全然覚えてないのに(笑)。で結局、なんとか適当にやるっていうところで、 目が覚めるんだけど。…あれは恐怖だね。
−衣装が冬服でしたが、暑くありませんでしたか?
圭吾:暑いよ(笑)。 やっぱり夏なんだね。「アンヌと腕を」が終わって引っ込んで、次にアンヌと会う場面までの間に着替えるんだけど、もう汗びっしょりなんだよ。 2幕だってアンヌたちが出てくるまでに、別に動いちゃいないのにもう汗だくだもんね(笑)。 ジャケットも汗かいて背中が汗ばんでるし…たぶんパパは、抱きつかれるの嫌だったと思う(笑)。
−ちょっとしっとりしていたと(笑)
圭吾:汗だくなジャン・ミッシェル(笑)。ズボンも暑いんだよ。冬用のズボンで、ウールなのかなあ… 厚手の。ズボンまでぐちゃぐちゃの時もあってさ、「なんでこんなに汗かいてるんだろう俺」って思ってた。−客席で観ていて舞台が近いなと感じましたが、舞台からも近いですか?
圭吾:うん、近いよ。客席も真ん中ぐらいまでは見える。
「アンヌと腕を」が終わって、パパに「お母さんを呼んで」って言って、「アルバンはどうするんだ」って言われる場面で、 「愛してるよパパ」って言う時に、必ず、ずっと同じ席を見てるんだ。
下手のブロックの、通路側の前から4番目ぐらいの席。 たまに男の人だと目線をずらすんだけど(笑)、 女の人だとその人を見ながら、「愛してるよパパ」って言ってた。
−名古屋公演では、何かハプニングはありましたか?
圭吾:シャンタルをやってた松澤さんっていう人が、本番前に病気になっちゃって… それで突然NIROがやって、他の場面も他の人達が急遽、憶えてやったりして。そんなことがあったよ。
自分的なハプニングは、そうだなあ…アンヌと待ち合わせして、おしゃべりするとこあるじゃない? で、「がんばるよ!絶対お父さんに気に入ってもらう!」っていうところで、「がんばるよ!」って言った瞬間に、わからなくなっちゃって…何を血迷ったか、「がんばるよ!絶対お父さんの気に入ってもらう!」と(笑)。 「お父さん」「の」「気に入ってもらう」。「…ええっ?!」って自分で吹きそうになって。「『お父さんの気に入ってもらう』ってなんだ?!」。びっくりしたね(笑)。
あと、風邪で体調悪い時あって、その時に…コケた(笑)。ライター持って「でも…この部屋の雰囲気はちょっと変えなくちゃ!飾り付けも」って言って走って、止まった瞬間にスコーンてこけて。マジで、尻餅ついてこけたの。で、尻餅つきながら「あんまり冗談きついところは…」って言ったんだけど。あれも自分でびっくりした。「なんで俺コケてんだろう?」パパもおかしかったと思うよ(笑)。−公演を通して一番思い出深いことはなんでしょうか?
圭吾:市村さんと岡田さんを両親に持って…勉強になったね。 市村さんの器用さっていうか、客を掴むところとか、岡田さんの本当に包むような…愛、を感じ。
おっきいんだね、人間が。そんな大きな人間になりたいと思うよ。 …あの、夫婦の息子で良かったと思うよ。
あとね、ずっと初演から「ラ・カージュ」をやってるスタッフで、 初演からずっと見てる人が、演出の人に言ったんだって。 「ずっと『ラ・カージュ』を、スタッフとして見てきたけども、今回で完成した。ジャン・ミッシェルがいかに大切な役割かっていうことがよくわかった。」って言ってくれてたよって、その演出家から言われたんだ。 それを聞いたときに、「ああ、良かった…」って思って。
だって…もう何百回ってやってるわけでしょう。何百回もやっててそれで、「完成した」って言われたそのメンバーの中にいられたことが凄く、嬉しいよ。
俺が、演じてきたものは間違いじゃなかったかな、と思うし。 それは俺だけのことじゃなくてやっぱり、全部…スタッフもそうだし、役者もそうだけど、それが今回「ビンゴ!」って感じだったんだろうな。 一人じゃできないからね。
「ラ・カージュ」フィナーレから3週間。そんなに経つことが嘘のように、
それぞれの台詞や歌が、今も鮮明に浮かび上がってきます。これから何年経っても、「1999年の夏」といえばあの熱気と笑いと涙を思い出すでしょう。
インタビューは次回に続きます。ジャン・ミッシェルに寄せるたくさんの思いについて、vol.2でもっともっとご紹介していきますので、どうぞお楽しみに!
(ハプニングネタもまだ続きます(^^;))。