Jean-Michel
〜名古屋編〜 vol.2 1999年8月に名古屋で上演されたミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」についてのインタビューです。 この記事はvol.1から続いています。 「ラ・カージュ」これまでの掲載記事
「ラ・カージュへ…」
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−「シェ・ジャクリーヌ」でジョルジュに頭を叩かれますが、あれは痛いのでしょうか?
圭吾:痛くないよ。でも千秋楽は痛かったかな。「マジ痛ぇ…」とか言っちゃったんだよ(笑)。客席から「『マジ痛ぇ』って言ってるよ!」っていう声が聞こえてきて(笑)。(ジョルジュの)指輪してるところが、ちょうどコツンて当たったんだよ。 パパが「大丈夫か」って芝居途中で謝っちゃってさ。「キッ!」て睨んどいた(笑)。
−アルバンの正体がばれた後の場面で、十字架の前ではりつけのポーズを取っているのは、もともと演出にあったんですか?
圭吾:そう。あれは前からやってたよ。あ、そこでもハプニングがあった(笑)。 その場面の出の前に、あの十字架が取れちゃってさ。 付けが甘くって、ちょっと触れたら落っこっちゃったんですよ。 「ああっ十字架が、十字架が!ど、ど、どうしよう!」と思って、 うまく壁に立てかけて、「あっ、引っかかった!」と思ったの。 そしたら全然ダメで、芝居中、俺にだんだん寄っかかって来るんだよ(笑)。
「おい十字架寄っかかってんじゃん!どうしよう…これを持って、『ダンドン議員!』って行くわけにもいかないよなあ!」って思って。 みんなバタバタしてて、俺もうなだれてるのに、十字架を床に置くとか、そういうこともできないよなあ…と。
うまく肩をもたせかけて、まっすぐにしたいまっすぐにしたいと思って寄せるんだけど、「いいかな?」と思って肩を放すだけでもまたズズーってついてくるんだよね(笑)。どうしようかと思った。
で、結局、自分がしゃべり出す前に、「バッ」て持って、置いて、しゃべったんだけど。
−それは怖かったですね。
圭吾:「神様、私にそんないたずらをしないでください、お願いします!」って言ったよ(笑)。大事なところだから、そっちに意識取られるわけにもいかないし。「こんなことは大したことじゃないんだ!それよりもこっちに集中だ!」って途中から一生懸命、思ってた。
…あれ、そのまま持って行ったらおかしかったな。あれ持ちながら「僕が人生に…」って歌うんだよ(笑)。 いろいろ考えた。もし俺がこれを持って出たとして、どこでどうすればいいんだろうって。 ジャコブをやってる真矢さんも、横から「俺が取りに行ってあげたほうがいいのかなあ…」とか考えてたんだって。でも誰も助けてくれなかった(笑)。−「ラ・カージュ」を通して、ジャン・ミッシェルはとても大事な役割を持ってますよね。
圭吾:最初、脚本読んだときに、凄く重要な役だと思った。全部、こいつが持って来た話から始まっちゃうわけだからさ。
…でも、けっこう孤独な役だよ(笑)。そりゃ「ラ・カージュ」の息子だけど…みんなが流れてるところを、凄い勢いで逆行して行ってるんだよ。だから…そう、始めのうちが辛いね。俺だって言いたくないよ、「どっか行っててくれ」とか(笑)。 言いたくないけど、言わなきゃお話続かないし…それが辛かった。
一幕の最後で市村さんが、「ジョルジュがこう言ってるのは、本当なの?」っていう顔で見るんだよ。その顔を見てると辛いんだ… そこで言う「ごめんなさい」は、裏返しの「ごめんなさい」だから。 本当に「ごめんなさい」っていう部分も入ってるけど、 「アルバン、ごめんなさい!」っていう言葉の裏には、「『どっか行ってて』っていう話は、本当なんだよ。」っていう意味が含まれてるじゃない。「アルバンごめんね、今までのことは僕が間違ってた」の「ごめんなさい」じゃないから、辛いんだよ。
…やっぱり、最後まですっきりしないんだよね!なんかこう、ひっぱたかれる場面のひとつでもあれば、すっきりするのかも知れないけど。
お父さんの「見てごらん」の前、親子ゲンカする場面で、歌の途中で飛び出してって、引っ込んだ後、座り込んじゃって、立ち上がれないぐらい「ぐぅっ!」ってなったときもあった。
ホントの親子みたいな…「俺の親父?」って思ったり、「あ、ひっぱたかれるかな?」って思ったときもあったよ。
−本当の親子喧嘩みたいに。
圭吾:うん。「…ああ、やな奴」とか思いながら(笑)。「言いたくないんだけど、口から、勝手に溢れて出てきちゃう!」みたいな、自分だってわかってるけど言っちゃう辛さ。ホント、あそこでひっぱたかれたほうがよっぽど楽だね! でもなんにもしないで、なだめてくれるじゃない。 「うわぁ…こんな親になれるのかな」と思った。俺が親だったらひっぱたいてるよ。でもきっと、ああいうところでひっぱたきになっちゃうと、軽いものになっちゃうのかもな。もっと薄っぺらいものに、なっちゃうのかも知れない。−辛いキャラクターですね。
圭吾:うん。みんなが冗談やってるところで俺一人だけ、まっとうに行こうとするわけじゃない(笑)。
−一方では華やかなショーをやっているのに…
圭吾:盛り上がっちゃあ俺が落として、盛り上がっちゃあ俺が落として(笑)。
ゲイの人たちが観に来た時なんかも、始めの方ではホントに「うわぁ…俺、敵じゃん」とか思うんだよ(笑)。「うわぁ俺、敵だよ。むちゃくちゃ観客を敵に回してるよ…」(笑)。
−でもお客としては「言ってることもやってることもこんなにヒドイのになんで憎めないんだろう」という感覚なんですよね。
圭吾:うん。演出家にもそれを言われた。とにかく、計算してちゃ駄目だって。 「計算してたら絶対、嫌われる。それよりも、アンヌを愛してる気持ちでいっぱいにして、それを正直にぶつけていけば、大丈夫だから」って言われて。「深く考えるな!とにかくアンヌと一緒になりたい思いを、正直に正直に出して行かないと、嫌われてしまう。」
−観客が、ジャン・ミッシェルの気持ちもわからないと。
圭吾:うん。他が派手派手しいからさ、俺はその中で、なんかこう…印象を残すっていうか。
とにかく、流されちゃったらこの話は成功しないなと思うわけだ。 観客の心のどこかに引っかかってないと、 最後まで行って感動を… 「ラ・カージュ・オ・フォール」っていう作品の本当の筋っていうか、俺が伝えたい筋を伝えるには、「とにかくどっかに、引っかかってなくちゃ!」って思うわけだよ。あの派手派手しい、ほかの場面に食われてしまうようじゃ、ダメだなって思った。
春から何回かに渡って続けて参りました「ラ・カージュ」特集も、今回で終わりです。大阪で、名古屋で、この素敵な物語をご覧になったみなさまに、少しでも楽しんでいただけたならとてもとても嬉しいです。
またどこかの街で(できたら東京でもひとつ(T_T))愛情に包まれたジャン・ミッシェルに逢える日が来るのを楽しみにしつつ…
最後は吉野圭吾さんからのメッセージで締めさせていただきたいと思います。
みなさん、こんにちは。吉野圭吾です。
8月の「ラ・カージュ・オ・フォール」ご覧になった方、ありがとうございました。
「ラ・カージュ」、いかがだったでしょうか。
そして、次は「ワルツが聞こえる?」という作品をやります!
それではみなさん、そろそろ… |