書名:ドンネルの男 北里柴三郎(上)
著者:山崎光夫
発行所:東洋経済新報社
発行年月日:2003/11/06
定価:1700円+税
書名:ドンネルの男 北里柴三郎(下)
著者:山崎光夫
発行所:東洋経済新報社
発行年月日:2003/11/06
定価:1700円+税
ドンネルというのはドイツ語で雷のこと。北里柴三郎の生涯を描いた伝記です。明治の時代に生きた細菌学者北里柴三郎の実践から生まれた生き様がなかなか面白い。また明治という時代の混乱期、東大の予科に年齢制限3年過ぎているのを3年年齢を詐称して入学したとか、森鴎外は逆に2年足りなかったのをこれまた年齢詐称。こんなおおらかな時代だったのですね。当時でもやっぱり構造改革が叫ばれて、北里の研究所が東大に乗っ取られて、民間として北里研究所を設立。勿論実績は民間の方が上。また慶応大学の福沢諭吉は北里の細菌研究に大きく後援していた。その関係から福沢が亡くなってから、慶応大学に医学部を作ったのも北里が貢献している。当時細菌学は最先端の学問の時代、その中で自ら伝染病の発生している地に足を運び、病原菌の発見。純粋培養して発生源の特定。血清などの生産。学問と実践がそれぞれ上手くバランス良く機能した時代。頭でっかち、実践のみではないある意味良い時代だった。またコレラを初めとする伝染病の驚異は今とは全く違う位怖い怖い時代。でも人々はそんな恐怖感はない。今はマスコミの恐怖宣伝でちょっとしたことを原因も分からないのに恐怖だけ煽る。よく分からないことは判らないと言える時代。そんな中確りと原因を追及していけた時代は良い時代だったのでは?
恩師のコッホの説であっても間違っていれば間違いを指摘する。コッホもその誤りを認める。こんなやり取りも面白い。知らなかった北里柴三郎のことちょっとわかるような気がする。