書名:スピカ -原発占拠-
著者:高嶋 哲夫
発行所:宝島社
発行年月日:1999/12/15
ページ:413頁
定価:1429 円+ 税
高嶋哲夫の書き下ろし第一弾「スピカ-原発占拠-」である。北陸の海岸に建てられた世界最大(出力570万キロワット)の原子力発電所をソ連崩壊後共産党再建を狙う旧ソ連のゲリラと日本赤軍と旧ソ連の軍隊の連合軍が占拠し、機動隊、自衛隊を攻撃し、日本政府と交渉を行う。原発を「人質」に世界に脅しをかける、というストーリーです。主人公は原発の設計者で若き原子力の権威である学者(日野)と、その恋人で環境保護団体の女性記者(仁美)。
占拠側は本格的な軍備(バズーカ砲など)と正規に訓練された兵士が人類を滅亡され得るほどの原子力を「人質」に立てこもる。日本政府と自衛隊はこのクーデターに対して戦争を行うのと同じように戦略を立てる。しかし占領側には日野の尊敬する原発の権威ソ連の科学者サリウスが参加していることが判る。この原発の情報は日野を通じてサリウスに渡っていた。全自動運転の原発を動かすプログラムはサリウスが改ざんしている。絶体絶命の中このクーデターは成功するか?ただこの占拠の目的がよく分からない。もう少しはっきりした方が判りやすいかなと思う。
著者は実際に原発で勤務していた科学者であり、作中の原発に関する展開は見事です。また環境保護団体の観点からの原発反対派の意見など原発というものを考えるヒントをいろいろ与えてくれる。著者の意見はかなり薄い、事実をただ提示しているところは押しつけがなくて良いと思う。