書名:風の墓碑銘(エピタフ)
著者:乃南 アサ
発行所:新潮社
発行年月日:2006/8/30
ページ:492頁
定価:1900円+ 税
隅田川沿いの東京の下町で、古い借家の解体工事が始まった。狭い路地で工事、建物を壊して残骸を片付けたあと整地を行っていたパワーショベルの運転手は、枯れ木のようなものを発見して作業を止める。枯れ木に見えたのは人の骨だった。警察が調べてみると大人2人、その一人の上に胎児、嬰児の一体も一緒に掘り出された。ところから始まる女刑事・音道貴子と滝沢保の名コンビが活躍する。音道貴子は30代後半、恋人はいるが、結婚は未だ。滝沢保は妻に逃げられて3人の娘、息子を育て上げた50歳近い風采の上がらない刑事。
この借家の持ち主の老人が認知症で老人ホームに、以前の借り主のことなどを調べるが、手がかりがつかめない。そうこうする内に認知症の老人が滅多打ちに殴られて殺されてしまう。その犯人捜査に2人も参加する。24年も前にあった事件の影が、殺人の時効が15年から25年に変わった時期と思われる作品です。最近には珍しい話のテンポが凄くスローでなんとなく懐かしくなるような筆の進め方、今流ではないけれどなかなか好漢の持てる進め方かなと思う。乃南アサは初めてちょっと注目してみたい作家です。