書名:新・平家物語(一)吉川英治全集33巻
著者:吉川 英治
発行所:講談社
発行年月日:1967/8/20
ページ:486頁
定価:680円+税
講談社から吉川英治全集が発売されたときに、購入して読んでいたシリーズです。ただ新・平家物語は出版待ちでそのままになっていました。何十年ぶりかでようやく読み始めました。ベースは平家物語、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を顕はす。奢れる者久しからず、ただ春の世の夢の如し。猛き人も遂には滅びぬ。偏に風の前の塵に同じ。」平安時代末期、武家としてはじめて政権を樹立した平清盛の20年ほどの絶頂期の人生双六を物語っています。
勿論吉川英治流の編集、語りが入っています。第一巻は貧乏武家としての清盛の青年時代、清盛とは全く関係の無いところで起こった保元の乱。そしてその後の平治の乱、この乱によって清盛が源義朝をはじめ、源家一族を失脚させる。そして義理の母である池の禅尼に懇願に負けて頼朝、義経を生かしてしまった。そして女が政治に口を出す、いや出させた清盛。これが20年後の「奢れる者久しからず」を予兆させる。政治家、政権を持ったものが家族、女の言うことで政治を左右させる。
公私混同をさせてしまったことが、平家の失敗があった。権力争いは大義名分で御輿に担ぎ上げる事が出来る者は必ず抹殺しておくというのが古今の常識。それを池の禅尼の仏心に惑わされてしまった。ここに平家の衰退への道を歩み始めた。でもこれは現代から歴史を見ているからで、当の清盛はどう思っていたか?興味ある。吉川英治の話の展開はどの作品も面白い。この新・平家物語は6巻まであるのでじっくり読んでみたいと思う。