書名:卑弥呼の殺人
著者:篠田 秀幸
発行所:角川春樹事務所
発行年月日:2005/2/18
ページ:341頁
定価:1200円+税
高木彬光「邪馬台国の秘密」(邪馬台国はなかった古田武彦著の説を盗用したとの論争があった)松本清張「古代史擬」など古代ミステリーを比較検討しながら従来の論争、議論を踏まえ、日本書紀、古事記、魏志倭人伝を紐解きながら邪馬台国の位置を推定していくプロセス、論理展開、古代のロマンを感じさせてくれる。そして現実の殺人事件を絡めながらの物語、ちょっと複雑すぎるという気もするが、推理小説だけではなく、古代史へにも導いてくれる欲張った作品です。魏志倭人伝の中で従来から諸説紛々する「南水行十日陸行一月」をどう解釈するか?「畿内説」も「九州説」も困惑している問題。邪馬台国は人口規模において九州では人が多くいた地域でないと納得できない。従って高木彬光の宇佐などは候補からは外れる。そしてこの本では邪馬台国は水行十日陸行一月位掛かって回ることが出来る領域と考えている。そしてその中心となる地域は移動を重ねていて朝鮮南部の加羅地域から沖の島そして九州北部に「天下った」甘木・朝倉地方に首都を、時代と共に山門郡、卑弥呼が亡くなった後は日田地方へ移動していたのではないかと推定している。邪馬台国の首都移動説が新たな推定。この物語では「九州説」をとって、著者独自の解釈をしています。最近の考古学の世界では大和での色々な発掘の結果「畿内説」が有利になってきているように見えるが、全く逆の立場を取っています。いつまででも楽しめる素材として邪馬台国探しは残しておいて欲しい気もしますが、結論も見てみたいと複雑な気もします。(一里=90mの短里を採用しています。)卑弥呼はそっとして於いて欲しいかも 。永遠に解決しない面白い問題と殺人事件を絡めた作品。以前にも読んだことがある作品です。