書名:暁の旅人
著者:吉村 昭
発行所:講談社
発行年月日:2005/4/26
ページ:298頁
定価:1700円+税
松本順(良順)という幕末から明治初期に活躍した医師の歴史時代小説です。松本順を取り上げた司馬遼太郎の「胡蝶の夢」という作品もありますが、また別の視点から描かれています。
実父佐藤泰然(佐藤藤佐の長男)は和田塾(のちの順天堂)の創始者。幕末の長崎、オランダの医官ポンペから実証的な西洋医学を学んだ。ボンベとともに長崎大学医学部の元を作る。幕府の西洋医学所の頭取を務め、新撰組の屯所の環境改善を勧め、戊辰戦争以降、東北の会津若松へ赴き、会津藩で傷病者の治療を指南した。榎本武揚に蝦夷行きを誘われるが、断って横浜へ。政府軍に捕らえられて謹慎処分を受ける。賊軍であったけれど明治新政府に必要な人材ということもあって山県有朋に懇請され初代陸軍軍医総監に、男爵になった。健康のために肉食、牛乳の飲用と海水浴を奨励した。海水浴の適地として大磯を見いだし、別荘地としての大磯の礎を築いた。自らも大磯で晩年を過ごす。
幕末、そして維新の波にもまれながら動乱期を自らの信念を貫いた医家を描く歴史長編です。