書名:明和絵暦 山本周五郎長編小説全集16巻
著者:山本周五郎
発行所:新潮社
発行年月日:2014/6/25
ページ:533頁
定価:1700 円+税
山本周五郎の座右の銘は「人間の真価は何をなしたかではなくて、何をなそうとしたかである」この物語は明和事件という事件をモデルに構成されている。明和事件とは1776年(明和3年)江戸幕府が尊皇兵学派の山県大弐や藤井右門を謀反人として処刑した尊皇運動弾圧事件である。
上野小幡藩の家老吉田玄蕃派と彼の失脚を謀る同藩士松原郡太夫が玄蕃らが幕府転覆を企てていることを表立てた。この事件を扱った小説は吉川英治の「鳴門秘帖」。山本周五郎は「昔から吉川英治という事大主義の大衆作家を嫌悪していた」と言われるほどの吉川英治嫌い。当然「鳴門秘帖」を意識して書かれているが、何となく中途半端で物語としては「鳴門秘帖」の方が格段に面白い。
ただ史実に歴史小説とはという意識過剰で真面目に書いている。それだけかたぐるしいのかもしれない。吉川英治と似たような境遇の山本周五郎、やっぱり意識して居たのでしょう。同時期に大仏次郎なども居た。初期の作品。