書名:世のなか安穏なれ
現代社会と仏教
著者:大谷 光真
発行所:中央公論新社
発行年月日:2007/3/25
ページ:228頁
定価:1200円+税
立命館大学の「現代社会と仏教」という講座で、著者(西本願寺門主)が講義した内容と学生達の質問に答えたものをまとめたものです。
「どうして人を殺してはいけないか」という事を議論しないといけない世の中になってしまった。理屈で考えることの弊害が顕著になってきている。体験から得るものものが大事。
科学技術はずっと進歩発展していますが、人間は進歩しないということを踏まえていないといけない。進歩しないということは限りないいのちであるとか、人間は常に自分に都合良く考える動物であるとかそういう基本的なところは進歩しない。
日本の宗教、悩める問題、宗教の役割などをわかりやすく普通の言葉で語っています。理屈ではなく実践の大切さも加えて語っています。人はいつも煩悩に悩まされている。東日本大震災などが起こる。ソマリアの飢餓が報道される。すると出来もしないのに自分にもなにか出来るのではないかと欲を出す。そして余計なことで悩む。何かやらないといけないとこころ乱して本来持っている大切なものもなおざりに被災者の事のみに煩わされてしまう。これも煩悩のひとつ。此の世はいにしえで繋がっている。ご縁で繋がっている。自分が出来ない事(余計なこと)まで手を伸ばして考え悩むことはない。共倒れしてしまう。余計なものを切り捨てることによって誠が見えてくる。本来持っている自分のこころを素直に見直す見つめる。大河の水音は聞こえない。こころの余裕、豊かさが見えてくる。そんな逆説の中に解決できる道があるのでは。
「世のなか 安穏なれ」は、親鸞聖人が不安と争いの時代にあって、念仏者のめざす道を示されるなかで述べられた言葉
で宗祖の750回大遠忌「スローガン」
(HPより)
戦争への危機感やいのちの軽視、倫理観の欠如などに伴う出来事が相次ぐ現代社会にあって、私たち一人ひとりが自己中心のこころを反省して、同じいのちを生きている相手の存在に気づくことが求められています。
自分一人を善として、相手を排除する考え方に真の安らぎはありません。善と悪に固執する偏見を破り、対立の構図を解消できるのは仏の智慧だけであります。
聖人は、仏法がひろまり、世のなかが安穏であることを願われました。
そのおこころをいただいて、宗祖の750回大遠忌を迎える今、スローガンといたしました。