SAMMY HAGAR
THE BEST OF ALL WORLDS 2024 TOUR IN JAPAN







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Sammy Hagar - lead vocals, guitar
Michael Anthony - bass, vocals
Joe Satriani - guitar
Kenny Aronoff - drums
Rai Thistlethwaite - keyboad, guitar, vocals












 9/1に行われる予定であった田川ヒロアキさんの単独ライヴが台風の影響で延期となり、意気消沈となってから20日。

 いよいよ やってきたサミー・ヘイガーの単独公演。

 1995年のVan Halenの来日公演(東京、大阪、福岡)以来、なんと29年ぶりの来日となるサミー・ヘイガーは Van Halen時代の曲、ソロ曲、Van Halenクラシックを演奏するツアーを7月からアメリカで開始していた。

 今回、サミーは勢いそのままに日本へと上陸を果たした。

 エディ・ヴァン・ヘイレンが2020年10月6日に亡くなり、それ以来 エディを追悼するライヴ、ツアーが噂される/計画されるなどあったがいずれも実現することはなかった。
 だが、そんな状況下でいち早く動いたのが 元メンバーという立ち位置にあったサミー・ヘイガーマイケル・アンソニーである。
 元々、仲が良くチキンフットでもバンドメイトであったこの二人は 同じチキンフットで活動していたジョー・サトリアーニを誘い、ドラムにはジェイソン・ボーナムを選んで「The Best of All Worlds Tour」というタイトルでツアーを始めたのだった。

 「The Best of All Worlds」というネーミングはもちろん、サミー・ヘイガーが初めてVan Halenに参加したアルバム「5150」の収録曲と2004年に再加入した際に発売されたベストアルバム名をヒントに採られているのだが、サミーにとって思い入れの深さが感じられた。
 サミー・ヘイガーはこのツアーを『コンサートというよりもエディ・ヴァン・ヘイレンと俺が創ってきた音楽の"セレブレーション"だ』インタビューで語っている。
 そんな姿勢が受け入れられたのか、アメリカでのライヴを伝えるYouTube上の動画は盛況を伝えていた。

 しかし、アメリカ・ツアーも大詰めとなった8月下旬。
 ジェイソン・ボーナムが 母(ジョン・ボーナム妻)の昏睡状態によりバンドを離脱するというニュースが伝えられた。
 もうこれには我々が何かを言う立場ではないが、ただただ残念である。
 日本公演初日が始まる数日前に、改めてジェイソン・ボーナムのツアー不参加が伝えられたが、その代役はアメリカ公演でも急遽その役目を果たしたケニー・アロノフであった。
 ケニー・アロノフと訊いても、どのようなドラマーであるかを知る人は少ないと思う。
 もちろん自分もそうであった。
 だが、チキンフットの動向を追っていた者なら なんとなく知っているのかもしれない。
 チキンフットの正ドラマーは 言うまでもなくレッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスである。
 ただレッチリに参加しながら、チキンフットにも参加するには当然 スケジュール的に無理が生じるのも仕方がないことであった。
 そんな時、チキンフットのライヴ・ツアー(2011年〜2012年)の助っ人としてドラマーを務めたのがケニー・アロノフであったのだ。
 ケニー・アロノフの経歴はツアーの公式サイトによればローリング・ストーンズ、レディー・ガガ、ボブ・ディラン、ブルーノ・マーズ、ポール・マッカートニー、デイヴ・グロールなどの数々の大物ミュージシャンと共演 ― とあるぐらい輝かしいものである。
 しかもサミー・ヘイガーの話によれば、ライヴの助っ人として参加要請してから僅か24時間余りで演奏を覚え、ライヴを遂行したというのだから凄い。
 数多くの著名なミュージシャンと共演してきたという実力は伊達じゃなかったということである。
 (つまり、サミー・ヘイガーのソロ・ライヴであると同時に チキンフットのライヴでもあるという側面を持つに至ったのである)

 サミー・ヘイガーのアメリカ・ツアーを終えて20日間。その準備に抜かりはなかった。

 それが初日である名古屋公演で見事、証明されるに至った。




 9月20日、金曜日

 平日ゆえに開場18:00、開演19:00と今回の日本公演では最も遅い時間帯のスタートとなった。
 また昨今、激化する物販の列に加わらなくても良いというのもあって余裕を持って会場入りすることが出来たのだった。
 (要は事前に発表されていたライヴグッズに購入したいものがなかったのだ。パンフレットもなかったことだし....笑)
 とりあえず開演30分前入場を目指し、地下鉄に乗ったが車内で会場に向かうファンらしき人を見掛けることはなかった。
 これがアイアン・メイデンとかなら、判りやすいのかもしれないのだが。
 地下鉄金山駅から 会場のNiterra日本特殊陶業市民会館(旧名:名古屋市民会館)へは地下道で繋がっており、名古屋市内の会場では最もアクセスしやすい処である。
 人もまばらなその地下道を辿っていき階段を上ると、日本特殊陶業市民会館のもうひとつのホール−ヴレッジ・ホールが見えてきた。
 その正面玄関を通り過ぎると、驚いたことに本日のヴレッジホールの予定がサンドウィッチマン単独ライヴであるのが判った。
 大人気の二人だけに、こちらもチケットは争奪戦であったのだろう。

 ヴレッジホールの上の階が 今夜の会場であるフォレストホールである。
 フォレストホールはエスカレータで上がることも可能であるが、どうやらそちらの入り口はVIP席専用であるとスタッフが口頭で説明していた。
 一般席の自分は仕方なく、ヴレッジホールから一旦 外に出て、改めて階段を上りフォレストホールの正面玄関へと向かった。

 思えば前回、ここに来たのは昨年7月のMr.Bigのフェアウエル・ツアーの時であった。
 あの時は、入場するまでに会場を何周も列が取り囲み人、人、人で溢れていた。
 あれから比べると拍子抜けするほど気楽さである。
 あの時が異常すぎた。と云えばそうなのだが、あれが最後だと思ったMr.Bigが"本当に最後の最後"とまた来年2月に帰ってくる事が決定した。
 しかし、来年の来日公演に名古屋の予定は無い。
 フェアウエル・ツアー最後は日本で−というのはずっと噂されてきたことからさほど驚きはないが、最後と謳った昨年のジャパン・ツアーの名古屋だけを削って"本当の最後のライヴ"を行うのはやはり釈然としない。

 あの時の気持ちはなんだったんだと思うのも仕方ないことだろう。

 急激に気持ちが冷めてしまった私は 大阪公演に参加する気もなくなっている(名古屋があったのなら納得して参加を決めていたとは思うのだが。しかし延期されている昨年の武道館公演のライヴ作品『The Big Finish Live』はどうするのだろう?あれが最後の武道館公演と謳っていた筈だが?)

 まあ ここで愚痴を書いても仕方ないが......。

 気を取り直してサミー・ヘイガーである。
 正面玄関からNiterra日本特殊陶業市民会館へと入館。
 係員にチケットをもぎってもらい、入念なカメラチェックを受けて入っていった。
 今回『スマートフォン及び個人用コンパクトデジタルカメラの使用は可能』となっていたため、普段よりもチェックに時間が掛かったようである。
 思えばエディ・ヴァン・ヘイレン生前最後のVan Halen日本公演(自分は最終日の大阪公演に参加)もコンデジの使用可能であった。
 なんと奇遇なことであろうか。
 入館してすぐ視界に入ってきたのは 2階へとつながる階段にズラッと並んだグッズ購入列。
 その列は昨年を思い出せるぐらいの賑わいであった。
 今回、この列に加わることなく開演時間まで過ごせるのはホント、気持ちが楽である。

 いよいよフォレストホールへと入場すると、ステージ全景が目に飛び込んできた。
 ステージバックの大型スクリーンには お馴染みのアイコンと「The Best of All Worlds」のツアー名をあしらった画像が投写されていた。
 私は自席を確認するよりも早く 真っ先にステージに向かって駆け出していった。
 センターにドラムセット、ステージ上手をサトリアーニのアンプやラック類の諸々装置が陣取り、下手をマイケル・アンソニーのベース・アンプが並べられていた。
 その後ろの一段、高くなっている処にはマーシャルアンプも置かれていた(これはサミー・ヘイガー用か?)
 またドラム・セットの右隣にはキーボードもセッティングされていた。
 キーボードを担当するレイ・シッスルウェイトの定位置がここである(ライヴが始まって判ったことだが、レイ・シッスルウェイトはギターも演奏した。だから、キーボードの横にもマーシャルアンプがあったのだ)。
 ひとしきりカメラにステージセットの画像を収め、私は自席に戻っていった。


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 今夜の席は14列目である。

 それほど近くもなく、遠くもないというポジションだ。
 7列目までがGOLD席という\35,000のVIP席ゆえ近距離と感じるには難しいが せめて、もう2〜3列ほど前だったら見え方も違ったのではないかと思われた。
 しかし、数年前まではプロモーターなどの会員になればそれなりの良席を確保出来たのに、今や大枚はたいて高額なVIP席を購入しないと近距離では見れないとは厳しい時代になったなと思う。
 ミート&グリートやリハーサル見学が付いてくるなら まだ納得は出来るのだが......(今回は特別なグッズが付いてくるだけだったようだ)

 また愚痴になってしまった(苦笑)。
 開演まではあと20分あまり。
 おとなしく その時がくるのを静かに待った。




 腕時計の針が19:00を示した。


 騒然とした場内の雰囲気が一変したのは ヴァン・ヘイガー時代の名曲「Dreams」が響き渡った時だった。
 一斉に湧き上がる歓声と手拍子。
 あちこちで鳴り響く口笛。そして合唱。
 この心憎い演出に心躍った。
 最高のライヴの始まりであった。
 だが、それと同時に本編のライヴではこの「Dreams」は演奏しない。と決まってしまったと寂しくも思ったのも事実である。
 「Dreams」が終わり、再び大歓声と拍手が湧き上がる。
 客電が落とされた。それと同時にステージバックの大型スクリーンには数々の映像が映し出された。
 サミー・ヘイガーのこれまでを紹介するヒット曲MVの集大成という内容なのだが、我々世代には懐かしいMTV的な映像コレクションがたまらない。
 ソロ時代のMV(もしかしてモントローズ時代もあったか)、Van Halen時代はもちろん、チキンフットのMVも網羅しバラエティー番組の出演時の様子や途中にはエディ・ヴァン・ヘイレンやヴィニー・ポール(PANTERA)も顔を出すという演出には泣くしかなかった。
 最後はマイケル・アンソニー、ジョー・サトリアーニ、ケニー・アロノフを紹介しステージが暗転した。
 唯一、鼓動音だけがライヴ・スタートのカウントダウンを示すように鳴り響いていた。

 やがて暗闇の中、ステージに人の動きが感じられると客席は大歓声で湧いた。

 「Hello Baby !!」

 掛け声と同時にステージが明るくなると、サミーがセンターステージのマイクに寄っていく。

 1曲目はアメリカ・ツアーと同様に「Good Enough」
 記念すべきヴァン・ヘイガー時代の幕開け「5150」アルバム、トップを飾る曲である。
 このライヴのコンセプトを考えるなら 歴史を振り返る上で相応しい曲といえるだろう。
 センターマイクを中心に踊りながら勢いよく熱唱するサミー・ヘイガー。
 クロームのシグネイチャーを操るジョー・サトリアーニは 時折スポットライトがギターに反射してまばゆいばかりの光を放つ。
 ギターソロに入れば、サトリアーニ独特のタッピング・プレイを披露する。
 "決してエディ・ヴァン・ヘイレンの真似ばかりをするわけではない"というサトリアーニの矜持が見えるようだ。
 マイケル・アンソニーのハイトーンな雄叫びも飛び出し、大きく盛り上がって1曲目を終えたのだった。
 サトリアーニがセンターに立ち、電動ドリルをギターに近づかせた。
 ドリルの回転音をギターのピックアップが音を拾い増幅、爆音を響き渡らせた(ドリルはマキタ製か?)。
 爆音の度に何度も客席に向かって煽るサトリアーニ。
 大型スクリーンでは、ドリルのアニメーションが踊っていた。
 曲はもちろん「Poundcake」− 1991年にリリースされた「For Unlawful Carnal Knowledge(F.U.C.K.)」アルバムのこれもトップを飾る曲である。
 あの頃を思い出させるパフォーマンスに胸が熱くなるばかりであった。


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 3曲目も「For Unlawful Carnal Knowledge(F.U.C.K.)」アルバムから「Runaround」
 サミーは歌唱の前に「1992」と叫んでいたが、正確には「1991」である。
 この曲でも高いパートの歌唱はマイケル・アンソニーに任せて、いい感じでパート分けが出来ているようだ。
 また曲タイトル「Runaround」に合わせてサビの部分で、手首をグルグル回すアクションも会場全体で見れば かなり壮観な光景となっていた。
 歌い終えると、ここで初めてのMCタイムとなった。
 かなり饒舌にしゃべるサミー。
 なんとなくでしか意味が判らないのがもどかしい(苦笑)。
 やがてサミーへ赤いギブソン・エクスプローラー(シグネイチャーモデル)がスタッフから手渡された。
 おもむろに歪んだ音でブルージーで激しいフレーズを弾き始める。
 やがてジョー・サトリアーニのギターが雄叫びをあげると、お馴染みの曲へと繋がっていった。
 それはサミーのソロ・ヒット曲「There's Only One Way to Rock」である。
 この曲を初めて聞いた時のことも忘れることは出来ない。
 それは1986年にリリースされたVan Halen初のライヴ・ビデオ「Live Without a Net」でのことである。
 今のようにYouTubeで気軽にライヴ映像を見ることが出来なかった時代。Van Halenが動いている姿、ライヴ映像を見るのはかなり困難を極めていた。
 せいぜい洋楽MVを流す「ベストヒットUSA」「SONY MUSIC TV」で数少ないMVを見るくらいであった。
 あの頃は ほぼVan Halenのライヴ映像など見たことはなかったと思う。
 そんな状況で、Van Halenが遂にライブビデオを発売する。
 エディ・ヴァン・ヘイレンの神懸り的なギター・プレイが見れる!
 もう買うしかない!
 発売してすぐ購入したと思う(今も大切に保存している)。
 この時のライヴは1986年8月27日、コネチカット州の都市 New Heaven(ニューヘブン)の会場で行われたが、ビデオの冒頭にはサミー・ヘイガーの入った"新しいVan Halen"をアピールする為か、New Heavenを"New Halen"と書き直して印象づけている。


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 そのビデオの1曲目が 正に「There's Only One Way to Rock」であったのだ(実際のライヴでは 2曲目であったらしい)。
 ここまでのセットリストを改めて見ると「5150」アルバムの1曲目「Good Enoughを筆頭に、「For Unlawful Carnal Knowledge(F.U.C.K.)」アルバムの1曲目「Poundcake」、記念すべき初ビデオであり新しいVan Halenをアピールした「Live Without a Net」の1曲目を次々に披露するという演出に サミーのヴァン・ヘイガー時代を真剣に振り返るという強い意思が感じられ感動してしまった。
 サミーのギターとサトリアーニのギターでのソロの掛け合いからユニゾンでのエンディング。
 ライヴ・ビデオで見たあの頃のエディ・ヴァン・ヘイレンとサミー・ヘイガーを思い起こさせたのだった。

 サミーが次は「Favorite Old Van Halen's Song」と紹介し始まった5曲目。
 みんな大好き「Panama」であった。
 それを表すように 赤いシグネイチャー・ギターに持ち替えたサトリアーニが奏でるリフの1音目から場内は手拍子と歓声で大熱狂である。
 「Nagoya Make Some Noise (騒げ、盛り上がれ)!!」と何度も客を煽るサミーもカッコいい。
 曲が終わり、ブラックのシグネイチャーへ持ち替えたサトリアーニがあの曲のリフを弾き始める。
 やがてサミーがお馴染みの掛け声を掛ける。

 「5150 Ti〜me !!」

 個人的には 今回のライヴで最も聞きたかった曲の一つ。
 この曲に合わせ、後ろの大型スクリーンには「5150」アルバムのジャケットが大写しにされた。
 その演出に 予想以上に心躍る自分がいた。
 またこの曲の間には、中央の客がサミーに「5150」アルバムを手渡したことから、それを高く掲げ強烈にアピール。
 ギター・ソロの間にサインをして客に返すという余興も見せてくれた(下手の客も同じようにアルバムを手渡したことからサインをして返している。それは まるでサイン会であった)。
 それからライヴとは全く関係ない話だが、この日、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手はホームラン・盗塁のメジャーリーグ記録「50-50」を超えて「51-51」を記録
 サミーに「5151 Congratulations !」と叫んで欲しかった−と思ったりもした(笑)。
 「5150」が終了し、マイクを持ったサミーはここでも饒舌であった(相変わらず、意味は判らないが 苦笑)


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 サミーに促されサトリアーニのギター・リフが先導するように始まった7曲目は「Summer Nights」
 これも「5150」アルバム収録曲である。
 当然ながらサビの「Summer Nights」で場内は大合唱となった。
 またステージ後方を見れば、レイ・シッスルウェイトがドラム・セットの横でギターを楽しそうに弾いている。
 ここで初めてレイのマルチプレイヤーぶりが明らかになったのである。
 「Summer Nights」終了後のMCも、積極的に客との交流に勤しむサミー・ヘイガー。
 下手側の客がサミーへケーキを模した「バースデイ・ハット」を手渡したことから、自ら被った上でサインをして返すというお茶目な行動も笑いを誘っていた。
 (しかし、本日がサミー・ヘイガーの誕生日ではない。サミーの誕生日は10月13日である。どうやらMCで来月、誕生日パーティをやると発言した為 ハットを手渡したようだ)
 するとステージ袖へ消えたマイケル・アンソニーが有名なジャック・ダニエルズ・ベースを抱えて再登場した。
 サミーがこれを紹介すると会場は当然ながら大きな歓声が湧いた。
 しかも、そのベースに装着された(?)ミニボトルのジャック・ダニエルズを取り出し 1本軽く飲み干すというパフォーマンスも大いに客席を盛り上げた。

 再びサミーが「マイケル・アンソニー!」とコールすると あの曲が始まった。
 今夜、演奏する曲で最も歴史ある曲と言っていいのではないか。
 Van Halen Classic「Ain't Talkin' 'bout Love」である。
 しかもこの曲を歌うのは そのマイケル・アンソニーなのである。
 腕を上げ大きくアピールするマイケル
 イントロからハイトーンでスクリームし場内を熱狂に叩き込む。
 ジャック・ダニエルズ・ベースとマイケル・アンソニー。
 日本では見ることが出来なかった80年代 デイヴ・リー・ロス時代のVan Halenを思い出させるものであった。
 今夜の見所の一つであったのは間違いないだろう。
 「Hey Hey Hey」のコール&レスポンスも実に楽しいものであった。


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 9曲目は「Top of the World」
 「For Unlawful Carnal Knowledge(F.U.C.K.)」アルバム収録曲である。
 サトリアーニのギター・ソロ時には、最前の客との握手会のようになってしまっているのも微笑ましい。
 そして10曲目は、サミーの缶ビールによる乾杯からスタートした。
 曲は「5150」アルバムから「Best of Both Worlds」
 大好きな曲だ。
 またよく見ると、レイ・シッスルウェイトがキーボードの定位置から離れ 一段下のステージに降りてきている。
 サミーと云えば、再び「Cheers!(乾杯)」で独り、缶ビールで独り飲み会状態。
 リフに合わせてサミー、レイ、マイケルで 超懐かしい"行進"をする。
 あのライヴビデオで見られたエディ&サミー&マイケルの行進を再現しているのだ。
 (昔のセットリストを調べていて判ったのだが、そのライブビデオのNew Heaven公演ではロバート・パーマーの「Addicted To Love」を合間に挟んで演奏していたようである(残念ながら、オフィシャルビデオではカットされている)。
 なるほど映像を見ると違和感なく挟んでいる。
 もしかして、この曲のヒントになったのはロバート・パーマーだったのか!と合点がいったのだった(「Addicted To Love」は1985年リリース、「5150」は1986年リリース))。
 兎に角、懐かしいという他なかったが、曲中、サミーが「ナゴヤ、今夜は音楽のセレブレーションだ!」と叫ぶと
 レイが Kool&The Gangの「Celebration」のサビを歌って盛り上げる。最後はコール&レスポンスだ。
 正に「Addicted To Love」を組み込んで演奏をした時と同じような構成になっていたのだ。
 ライヴで見た時は気付かなかったが、こんな処にも あの頃のVan Halenへのサミー・ヘイガーの敬意が感じられて嬉しくなった。


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 「エイリアン!ジョー・サトリアーニ!」とサミーが叫び、ステージを捌けていった。
 その途端、クロームのギターが唸りを上げた。
 自分にとってG3以来19年ぶりの ジョー・サトリアーニのソロ・タイムである。
 曲はサトリアーニの代名詞的な1曲「Satch Boogie」
 この曲を聞くのはなんと2002年の来日公演以来 22年ぶりなのである。
 前回はクラブクアトロの小さな箱で見られたが、今やもうそれは貴重な経験になってしまった。
 ジョー・サトリアーニには 昔のようにライヴハウスでツアーをやって貰いたいと切に願っているが もう無理なのだろうか?
 22年という数字が表すように これまた懐かしいというばかりだったが、Van Halenという箍(たが)が外れ 勝手知ったる自作曲の披露はやはり余裕が感じられ これぞ「ジョー・サトリアーニ!」という演奏であった。
 ラストは"歯弾き"まで披露するハッスルぶりもソロコーナーならではだろう。
 またマイケル・アンソニーのベースに合わせるというのも 非常に貴重であると思う。


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 「Satch Boogie」が終わると、大型スクリーンにはクラシカルな映画の映像が映し出された。
 それを始まりの合図としてケニー・アロノフが激しくドラムを縦横無尽に連打。
 ちょっとしたドラム・ソロのコーナーのようだ。
 だがそんな時間もほんの僅か、サトリアーニがリフを刻み始めると12曲目の曲「The Seventh Seal」が始まった。
 アルバム「Balance」収録のこの曲。
 随分、地味目な選曲であると思うがサミー・ヘイガーはインタビューで

 『ライブでは珍しいディープ・カッツ(深掘り曲)もプレイする。ディープ・カッツといって俺がイメージしていたのは「セヴンス・シール」のような曲なんだ。シングルになっていないし、MTVで流れるようなタイプではないからね。でも、俺のお気に入りの曲のひとつだよ。このツアーをやることが決まったとき、まず頭に浮かんだのが「セヴンス・シール」だったんだ。』

 と答えていた。
 簡単に言うとロッカ・バラード、パワー・バラードに類する曲だと思うが、お気に入りゆえかサミーの熱唱ぶりが印象的であった。
 また同じくインタビューで

 『この歌詞はイングマール・ベルイマン監督の映画『第七の封印』からインスパイアされたんだ。この曲を歌うとき、特別なエネルギーに包まれるんだ。とても誇りにしている曲だし、日本で歌うのが楽しみなんだ。』

 そう、大型スクリーンに活写された映像は映画『第七の封印』であったのだ。
 (「The Seventh Seal」よく考えたらその意味は七番目の封印。そのまんまであった 苦笑)
 サミー・ヘイガーにとってお気に入りの曲を、そのアイデアの元となった映画と共に演奏する。
 Van Halen時代にはおそらく 出来なかったことだろう。
 サミーの熱意のほどが伺える選曲であったと云える。
 13曲目はレイ・シッスルウェイトのピアノ音色によるキーボードでスタート。
 「Right Now」である。
 この曲の披露でユニークだったのは 大型スクリーンに映し出された日本語(文章)の数々であった。
 曲名と歌詞から『今』という単語が何度も表示されたのを筆頭に

 『サミーは29年ぶりに日本で演奏をします』
 『チャンスがあなたの目の前を通り過ぎています』
 『現在生まれているほとんどの子供は 100歳を超えて生きるかもしれません』
 『カボでは天気がとても良いです』
 『陸上速度記録は時速1,227.93キロメートルです』
 『時間が過ぎ去っていきます』
 『あなたはこの曲を初めて聞いたときのことを考えています』
 『私たちの中にエイリアンが住んでいます』
 『ジョー・サトリアーニはエイリアンです』


 と次々に 羅列されていく。
 およそ、歌詞を訳したとは思えない文章に頭には「???」が駆け巡る。
 極めつけの『私たちの中にエイリアンが住んでいます』映画「ゼイリブ」か!)『ジョー・サトリアーニはエイリアンです』には笑ってしまった。
 最後は『この音楽は生きています』と奇麗に曲を纏めたが、このヘンテコな日本語ばかりが印象に残ってしまった感じではあった。


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 14曲目は「Why Can't This Be Love」
 「5150」アルバムからの当時、先行シングル曲でもあった。

 この曲に関しても思い出がある。

 フジテレビの「夜のヒットスタジオ」でVan Halenが衛生生中継で出演し新曲を(世界初?)披露するとなったのだが、その新曲がこの「Why Can't This Be Love」であったのだ。
 流石に演奏パフォーマンスは撮影済みの映像を流すという番組構成だったと思うが、メンバーは服部まこ(?)さんのインタビューに生で答えていたような記憶がある。
 演奏は上記を見ていただけば判るとおり エディはずっとキーボードを弾き続け、ギター&ボーカルはサミーが中心の意表を突いたもので 当時の新生Van Halenにエディの掛ける想いが伝わるものであった。
 思えば、TVとはいえ生でVan Halenを見るというのはこれが初めての経験であった。
 サビでは当然、大合唱になったが当時を思い起こさせる郷愁に駆られた1曲となった。
 次のMCでは あらためてキーボード&ギターのレイ・シッスルウェイトを紹介。
 またドラムのケニー・アロノフについても、前任のジェイソン・ボーナムが家庭の事情で英国に帰らなくてはならなかった時、24時間で駆けつけてくれてこのツアーを救ってくれたんだ。彼はチキンフットにもいたんだ。と紹介した。
 そんな紹介もあってか 15曲目はサミーのソロ曲である至極のパワーバラード「Eagles Fly」
 この曲はVan Halenのライヴ・アルバム「Live:Right Here,Right Now」の初回盤CDに付いてきたボーナス・シングルCDにライヴ・ヴァージョンが収録されていたことを思い出す。

 前述のインタビュー記事でも

 『一度野外会場で、大雨のせいで中断しなければならなかったけど、それは不可抗力だった。でもその日は「Eagles Fly」を始めたところで稲光が走って、まるでステージ効果のようだった。会場にいるみんなにとって忘れられない光景だったよ』

 と言うぐらい、サミーにとって思い入れが強い曲なのだろう。
 それが伝わる力強い熱唱であった。
 ジョー・サトリアーニがギターをエディ・ヴァン・ヘイレンのフランケン・シグネイチャー(改造済)へチェンジして始まったサミー(Sammy Hagar and the Wabos)のソロ曲「Mas Tequila」は開始早々から客席前方を中心に慌ただしかった。
 なんと冒頭から曲タイトルよろしく−サミーが自身のブランドのテキーラをプラスチックコップに入れ、配りまくっているのだ。
 (サミーが着ていたTシャツの文字から このテキーラを配っていたのかもしれない。)
 曲中にサミーは 瓶からテキーラをガブ飲み、マイケルにもお裾分けするという徹底ぶり。酒飲みロックンロールそのものであった。
 曲終わりにはサミーは再びギターを手に持ち、新たなリフを刻み始めた。
 17曲目もソロ曲の「Heavy Metal」
 全体的にはミドルテンポでありながら サビではテンポアップする曲調が心地良い。
 ここでもマイケルと部分的にレイと歌唱を分け合うという見せ場もあった。
 ギターを持ったサミーとベースのマイケルが一つのマイクで一緒に歌い合うというロック・バンドならではの美しい姿も様になっていた。


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 「Heavy Metal」の勢いはそのままソロ曲「I Can't Drive 55」へと繋がっていった。
 この曲を知ったのも、ライヴ・ビデオ「Live Without a Net」であった(と思う)。
 しかし勢いよく始まったものの、なにやらサミーは浮かぬ顔。
 ステージ袖のスタッフに合図を何度もするが....。
 どうやら機材トラブルがあったようだが、曲は普通に進んでいく(何が悪いのか結局、判らなかった)。
 そんな時、盛り上げたのが あの高い声で歌い上げるマイケル・アンソニーであった。
 曲の壮大なエンディングと共にメンバーの名前を叫ぶサミー・ヘイガー。
 まるでライヴの終焉を告げるかのようであった(もちろん違う 笑)。

 その後のMCでサミーは

 『日本に行くことが決まってから、あの曲やこの曲をやって欲しいという声があった。でもそれらをやったらセットリストは24曲を超えてしまう。でも この1曲だけはやらなければいけないと言われた。だから今夜、3時間前にバックステージで君たちの為にリハーサルをしたんだ。だから失敗しても怒るなよ。俺は歌詞さえ覚えていないんだ』

 と言ってサトリアーニがコードを掻き鳴らして始まった曲は「Can't Stop Loving You」であった。
 インタビューでも『日本ですごく人気があって、1995年の『バランス』ツアーで会場の全員が大声で歌ってくれた。あの感動をもう一度味わいたいんだ』と語っていただけに やるだろうとは思っていたが、その最初のコードだけで客席からは大歓声が上がった。
 しかもオリジナルではエディ・ヴァン・ヘイレンはイントロのリフのメロディラインをライヴでは弾いていないが、サトリアーニはCD音源通り 弾いて再現してみせたのだ。
 それだけで感激も一入である。
 確かに高音部はサミーも苦しそうで、サビは主旋律をキーボードからギターに持ち替えたレイ・シッスルウェイトが歌っていたが それでも客席の誰もがサミーをサポートするように歌い、大合唱となった。
 歌い終えるとサミーに安堵の表情が浮かんでいたのだった


 いよいよライヴも終わりが近くなってきた。
 レイ・シッスルウェイトにスポットライトが当たり大型スクリーンにその姿が大写しになると、聞き慣れたメロディーが会場を包み込む。
 「Jump」だ。
 つい最近も、証券会社のCMでこの曲のカバーが使われていたことがあり、一年中 どこかしらで耳にしていると言っていいクラシック・ロックの金字塔。
 客席はそれこそ お祭り状態であったが、そんな観客の心を盛り上げたのが大型スクリーンの映像に重なるエディのあの赤白黒のストライプであった。
 フランケンシュタイン・ギターに施されたあのお馴染みの模様である。これだけでも泣けた。
 ステージセンターでギター・ソロを披露するジョー・サトリアーニは、上記したようにエディとは違う独特なタッピングを行うが 当たり前だが演奏は完璧である。
 ジョー・サトリアーニ・ファンとしては また貴重なものが見れたと嬉しかった。


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 ライヴはそのまま途切れること無く、サミーの掛け声でいよいよラストの曲「When It's Love」が始まった。
 それと同時に大型スクリーンには「When It's Love」のPV映像も流され始めた。
 ここでもサトリアーニは エディがキーボードを弾いていたイントロのメロディをギターでなぞりオリジナリティを出していた(エディもかってライヴではギターで弾いたこともあったようだ)。
 流石に最後は声に疲れを感じ取られるようになったサミーであったが、最後まで熱唱し続け我々に感動を与えたのだった。
 曲が終わりを迎え、再びバンドメンバーを紹介するサミー(サミーを紹介するのは もちろん盟友マイケル・アンソニーである)。
 5人で肩を組み、一堂礼をするメンバーに我々、観客は大きな拍手で感謝を伝えた。
 その時、彼らの頭上の大型モニターでは大きく「THANK YOU」という文字が発光・点滅を繰り返していたのだった。


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 やがてサミーをはじめとするメンバーはステージから捌けていった。
 が、そのメンバーの跡を追うように場内に流れ始めたのが名曲「Love Walks In」であった。

 「Dreams」で始まり「Love Walks In」で終わる。

 この曲たちが実際に演奏されなかった事は 残念であったが、ファンに寄り添った心憎い演出に嬉しくなるばかりであった。
 サミー・ヘイガーはこのライヴを『エディ・ヴァン・ヘイレンと俺が創ってきた音楽の"セレブレーション"だ』と答えたのは前述した通り。  セレブレーションとは日本語で"祝祭"という意味になる。
 その"祝祭"という言葉に相応しいライヴであったのは間違いないだろう。



 私は 1998年のゲイリー・シェローン(現:Extreme)をボーカルとしたライヴ、デイヴィッド・リー・ロスが復活した最後の来日公演・最終日(2013年))と2回、Van Halenのステージを見てきた。
 デイヴィッド・リー・ロス、ゲイリー・シェローンというVan Halen歴代二人のボーカリストのライヴを見たことになるが今回、サミー・ヘイガーのライヴを見たことによってVan Halenのパズルが完全に埋まったという感じである。
 エディ・ヴァン・ヘイレンという不世出の天才が今はもう居ないという現実を未だ信じることは出来ないが、今までライヴで聞くことが出来なかったヴァン・ヘイガー時代の名曲の数々を マイケル・アンソニーを加えて最高のレベルで再現し 浴びるように音を直接 感じる事が出来たのは最上の経験だったと思う。

 そしてあらためて Van Halenという偉大なバンドの楽曲の素晴らしさを感じる事が出来たのは幸運であった。






 楽屋の様子 @EddieTrunk
https://x.com/EddieTrunk/status/1837037568543838322


 ステージの様子 @EddieTrunk
https://x.com/EddieTrunk/status/1837136018568520184







SET LIST
Opening S.E. Dreams(Van Halen)                
1Good Enough(Van Halen)
2Poundcake(Van Halen)
3Runaround(Van Halen)
MC
4There's Only One Way to Rock
5Panama(Van Halen)
65150(Van Halen)
7Summer Nights(Van Halen)
MC
8Ain't Talkin' 'bout Love(Van Halen)(Michael Anthony on Lead Vocal)
9Top of the World(Van Halen)
10Best of Both Worlds(Van Halen)                    
11Satch Boogie(Joe Satriani Guitar Solo)
12Drum Solo 〜 The Seventh Seal(Van Halen)
13Right Now(Van Halen)
14Why Can't This Be Love(Van Halen)
MC
15Eagles Fly
16Mas Tequila(Sammy and the Wabo's)
17Heavy Metal
18I Can't Drive 55
MC
19Can't Stop Loving You(Van Halen)
20Jump(Van Halen)
21When It's Love(Van Halen)
Closing S.E. Love Walks In(Van Halen)               






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