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2002.12月30日(月)・31日(火)
・もう大晦日。1年間、おつきあい頂いた方、ありがとうございました。今年は、個人的に色々あった年だった。サイト関連の方は、バラエティ・ブックはじめやり残したことばかり。だが、サイトは続く。
【折々の密室/12月31日】
・大晦日
#095 大谷羊太郎『虹色の陥穽』
 「年忘れ歌合戦」に出場する男性新人歌手が、突然楽屋から消え、本番直前に姿を現した。マネージャー水木が不審な行動を問い質してみると、殺人事件に巻き込まれ、何者かに脅迫されているという。水木は、姿なき脅迫者と対峙するうちに、さらに深みにはまっていき…。お得意の芸能界内幕物だが、サスペンス色濃厚で、最後の方で二重底の構図が明らかになる。著者自身の体験に裏打ちされたマネージャーの造型にリアリティがあり、善人ならぬ小悪党に設定されているところも面白い。
 × × ×
 って、実は、この作品、年末にうってつけと思って読んだら、ひいきめに見ても不可能犯罪物とは言い難い。差し替える暇もなくなってしまった。最後の方でちょっとしたトリックは出てくるのだが…。大谷ブランドということで、お許しを。
 では、よいお年をお迎え下さい。



12月29日(月)
・パラサイト・関更新。
・外泊許可をもらった父親を病院から引っ張り出すのを手伝って実家へ。途中で、2歳の甥に、絵本買う。一冊は、谷川俊太郎訳で、結末が幸せの結末とかなしい結末の二つに上下で分かれている本。O・ヘンリの短編に結末が3あるのがあったよなとか思いつつ。本人はトミカのミニカーの方が遥かに嬉しそうであった。
【折々の密室/12月30日】
・大掃除(我が家)
 のはずだったのだが。
#094 H・R・F・キーティング「消えた少佐」 昭和55.11「EQ」 
 惹句に曰く「ついに出ました、掃除婦探偵!」ついに出ました、といわれたといっても、誰も待っていたとは思えないが。空の英雄だった少佐が風呂でシャワーを浴びている最中に消失。隣の洗面台にいた妻は、仰天して、ミセス・グラグズを呼ぶが。この掃除婦探偵、すべてはお見通し。「ミステリー史上最高のナンセンス密室小説である」と紹介されているのはいかにも過褒だが、女房に頭のあがらぬ亭主はニヤリとすること請け合い。


12月28日(日)
・「彷書月刊」1月号は、「わたしの古本記念日」と題して、著名人の古本コラム17連発。伊藤秀雄エッセイが涙香『幽霊塔』の原作発見の詳細について触れている。末永さんの連載エッセイの方は、海野十三の諜報小説を採り上げているが、前半で、謀略放送のあれこれを題材にしており、いずれも聴いたこともない世界の話で興味深かった。
・「ジャーロ」は、鮎川哲也追悼の小特集。森さんのエッセイ「デテクション2」は、満を持して、三橋一夫に突入。保存版「Yellow Tickets for Fear」は、ダリオ・アルジェントを筆頭とする、イタリア・ミステリ映画特集。全貌が知られていないジャンルだけに、惹きつけられることこの上なし。詳細なリストもついた、これぞ保存版。書評で、小山正氏が『ウイッチフォード毒殺殺人』を採り上げ、文句が言いたくて「A」の枠を借用したにすぎない、と書いて作品に苦言。「きわめて退屈」「どうテキストを読んでも凡作の域を出ていない」の発言は、個人的に『レイトン・コート』よりも面白いと思っていただけに、意外。バークリー好きなら、一も二もなく、喜んでしまう作品だと思うのだが。
【折々の密室/12月29日】
・1891年 エジソンがラジオの特許を取得
#093 愛川純太郎「スタジオ」 昭和27.4 「宝石」  
 アンソロジーに採り上げられることの多い「木箱」の作者の第2作。ラジオ放送局のスタジオでアナウンサーが謎の毒死?ある専門機器を用いた奇抜なトリックが見所だ。「木箱」同様、宇野警部が探偵役。


12月27日(金)
・御用納め。やれやれ。
・パラサイト・関更新。

【折々の密室/12月26日】
・ラジウム発見(1898)
 キュリー夫妻が、ウラン鉱石の中に強力な放射性科学元素・ラジウムの存在をフランス科学学士院で発表
#090 ジャック・フットレル「ラジウム盗難」 『思考機械の事件簿U』 
 ヤーヴァード大学のデクスター教授が、世界に数グレインしかないラジウムをかき集め、そのエネルギー利用の可能性を探る実験を開始しようとしている矢先、一人の夫人の訪問を受ける。彼女は、キュリー夫人からの紹介状を携えており、亡き夫が生産したラジウムを買って欲しいという。持参した量に驚いた博士は、検討を約するが、彼女の訪問後、誰も入り込めない実験室からラジウムが消えているのを発見。ここでは、思考機械は、名探偵であるばかりではなく、デクスター教授の著名なパートナーであり、キュリー夫人に電報打っちゃったりする大御所ぶりを発揮する。思考機械宣わく「この世にあり得ないことは何もないんだ、デクスター君」

【折々の密室/12月27日】
・ビーグル号発進(1831)
 ダーウィンの乗ったイギリス海軍のビーグル号、世界一周のためイギリスの港を出発 
#091  柄刀一「ノアの隣り」 『アリア系銀河鉄道』
 本、出次第。  

【折々の密室/12月28日】
・パリでリュミエール兄弟が映画をスクリーンに映すことに成功(1895)
#092 海野十三「電気風呂の怪死事件」 『海野十三集』
 「近年大流行」の電気風呂を備えた銭湯で起きた怪事件。男湯での感電騒ぎと並行して、女湯で若い女が吹き矢で射殺される。さらに、風呂の天井裏では、三助が殺害されているのが発見されるが、犯人の出入りした跡はない。いわば、二重の密室状況だが、草創期ゆえかあまり意識されている節がない。現代の猟奇も顔色なからしめる真相の猟奇ぶりには吃驚。映画との関連は、読んでのお楽しみ。


12月26日(木)
・忘年会その4で一応終了。
・週刊文春「傑作ミステリーベスト10」。作家の組織票に懲りたのか、今年は書店員の投票も含める。『ロンド』の戸川コメント、『第四の扉』霞コメントが光る。『僧正の積木唄』皆川コメント、ここまでいうか。
・もはや売れ残りのケーキ以下となってしまったが。
【折々の密室/12月22日】
・クリスマス密室特集その2
#086  ディクスン・カー「コンク・シングルトン卿文書事件」 『カー短編集5』
 本出次第。

【折々の密室/12月23日】
・クリスマス密室特集その3
#087  エラリイ・クイーン「クリスマスと人形」 『犯罪カレンダー』
 やっと、「折々」コンセプトの『犯罪カレンダー』登場。といっても、不可能物はこれだけか。クリスマス・イヴにデパートで公開された大型ダイヤをちりばめたフランス皇太子人形。凶賊から盗難予告があり、エラリイたちは鉄壁の防御を固めるが、見学に押し寄せるニューヨークっ子たちの面前でいつの間にか人形はすり替えられていた。御大が余裕しゃくしゃく、怪盗物の定型で遊んでみせる、愉しき哉の一編。凶賊コーマスのキャラがこれ一編限りとはもったいなかった。

【折々の密室/12月24日】
・クリスマス密室特集4 
#088 大阪圭吉「寒の夜晴れ」 『銀座幽霊』
 「クリスマスと人形」の冒頭で、クイーンは、クリスマス物語に要求されると不文律として「子供が登場すること」「物語そのものに〈美と光〉を指向するところがあること」を挙げているが、戦前に描かれた本編は、その意味でも立派なクリスマス・ストーリーといってもいいだろう。クリスマス・イヴの夜更け、地方都市の一家を襲った惨劇。現場からは犯人のものと思われるスキーの跡が付いているが、空地の真ん中で、夜空に舞い上がってしまったかのように、消え失せてしまっていた。息子が待ちわびていたサンタクロースの犯行なのか。すっきりとした謎解きと哀切な悲劇が結合した余韻嫋々た作品。

【折々の密室/12月25日】
・TV実験成功(1926)
 遠くの光景を目の前に再現する“無線遠視 ”を夢見ていた高柳健次郎は、この日、「イ」の文字をブラウン管に映し出すことに成功した。
#089 千葉淳平「ユダの窓はどれだ」  『紅鱒館の惨劇』
 事件を報道する新聞の見出し「団地夫人射殺さる。/麦ケ丘の密室殺人/弾丸はTV受像機から出た?」。仁木悦子「弾丸は飛び出した」を思わせる設定だが、作中でも「これはN.Eさんの短編を読んだ証拠よ」と先達に敬意を表している。カーの『ユダの窓』を読んで夢中になった奥さんが、「ユダの窓」を凌駕すべく、トリック考案に夢中になっているさなか、ライバルの奥さんが密室で殺されて。コアな密室の謎を、設定の妙とユーモアでくるんだ愛すべき一編。



12月25日(水)
・近所の洋食屋でサイ君と安ディナー。
・「あすなひろし」サイトのたかはし@梅丘から連絡ありましたので、御紹介しておきます。以前触れた「選集1」は先日入稿して、12/ 30のコミックマーケットで先行限定販売の予定とのこと。また、徳間書店・コミック1971(12/19発売)にみなもと太郎氏の推薦で「寒いから早く殺して」が掲載決定した由。詳しくは、「あすなひろし」サイトで。独自ドメイン(http://www.asunahiroshi.net)取得したようで、凄い。「酒飲み+プログレ日記」も更新中。



12月22日(日)
・父親の見舞いに行ったら、TVで有馬記念を見てて多少安心。馬券買ってるくらいの元気があればいいのだけれど。市電に乗ったついでに、普段行かない古本屋へ行ってみる。電話帳の広告に「ミステリ」とあって期待したが、レコードメインでそれほどめぼしい物はなし。手ぶらで帰るのも、なんなので、「折々」の参考に石子順『映画366日館』(現代教養文庫)、『カレンダー世界史』(岩波ジュニア選書)を購入。前者は、この手の本は絶対あると思っていたけど、366日に関係の深い映画を1頁1作ずつ紹介している労作。東京新聞に1年間連載したものを単行本化した由。映画の中に出てくる日付にこだわって、5年がかりの作業だったという。ちなみに、12月20日は大島渚「少年」(作中の、子供を体当たりさせていた一家が指名手配されたのが、この日)、21日は、ジョン・ハフ「ブラスターゲット」
(パットン将軍暗殺の日)、22日ジャン・エルマン「さらば友よ」(ブロンソンが地下金庫に忍び込んだ日)。映画に日付は出てこないのが普通なので、大変な作業だったと思う。しかし、まとめて読むと、
ふーんと思うだけで、あんまり面白くないような。自分の首、締めてるか。

【折々の密室/12月20日】
・日本専売公社法成立(1948)
#084 アンソニー・バウチャー 「煙草の煙の充満した部屋」 『密室殺人傑作選』 
・本、どこいったー。 

【折々の密室/12月21日】
・クリスマス密室特集その1
 4編ずつやっても、和洋とりまぜて3年分はありそうな。
#085 ウィリアム・バーンハート「クリスマスの正義」 『双生児』
 「クリスマスは多国籍企業の陰謀だ」「家でトロロープの小説でも読んでいた方゛いいというクリスマス嫌いの弁護士ベン・キンケイドが巻き込まれた事件。店員のボーナス用に用意された400ドルがカウンターから盗まれた。店に出入りしたものはおらず、身体検査の結果はいずれもシロ。いわゆる密室の謎だ、となったところで、店先に立っていたサンタクロースが疑われて…。クリスマス・ストーリーらしいハートウォーミングな一編。


12月21日(土) 『消えたオーケストラ』
・忘年会が続くと、体力の衰えを実感する。
・さっきのNHKニュースで、世界のクリスマスの話題を取りあげており、フィンランドの項で、トナカイにひかれた橇に乗ったサンタが映し出されて、「世界の子供たちにブレゼントを届けるために、。サンタさんはトナカイの橇で出発しました」とアナウンサーが普通に喋っていた。サンタ出発中継。これぞ21世紀。

【折々の密室/12月18日】
・国連加盟記念日
#082 ディクスン・カー「外交官的な、あまりにも外交官的な」 『カー短編集3』
 静養を進められた弁護士が保養地で滞在中、女教師に一目惚れするが、お相手の彼女は、デートの最中、並木道の緑のトンネルに入ったまま戻ってこない。反対側のテラスで食事をしていた大使は、彼女は通っていないと証言。不可解な消失事件に続いて、並木道に血染めのナイフが発見される。事件は二転、三転し、恋に落ちた男は翻弄される。愉快な結末が待ち受ける異色のエスピオナージュ+不可能もの。

【折々の密室/12月19日】
・日本フィル、スト突入「第九」演奏会中止(1971)
 「第九」はもはや日本の曲だという説もあるらしいが、こんな事件もあったのですな。
#083 宇神幸男『消えたオーケストラ』
 ハイドン作曲「告別」は、終楽章でまだ曲が終わらないうちに、楽団員が一人ずつ退出する演出で知られている。この初演時の演出どおりに曲が再現されたコンサートホールから、本当に楽団員50人が跡形もなく消えてしまった。楽器輸送用のトラックも消えているが、楽団員全員を乗せることは不可能。特異な舞台衣裳なので、ホール外に出ていけば人目につくことは必至。彼らは、いかなる方法で消えたのか。やがて、誘拐を告げる声明文が事務所に届き・・。クラシックの知識に裏打ちされた舞台設定と、こなれた文章で惹きつけるが、中盤以降の展開があっさりしすぎて、期待ほど盛り上がらない。「不可能」の設定は若干緩めで『消えた巨人軍』等の大量誘拐物に近い味わいか。『神宿る手』に始まる音楽ロマン4部作の第2作。


12月16日(月)

【折々の密室/12月15日】
・観光バス記念日
 観光バスではないけれど。
#079 山田正紀「人喰いバス」 『人喰いの時代』
 これも本出て来次第。うわん。

【折々の密室/12月16日】
・電話の日
 1890東京・横浜間で電話が開通したのを記念。 
#080 マッキンレイ・カンター「午前三時の光」 HMM'88.2
 深夜の大きなマンション、交換手のところに繋がった一本の電話が彼を驚愕させる。前日、殺人が発生して封鎖されているはずの22号室からの電話だったからだ。ヘッドホンからは気味の悪い息づかいが聞こえ、そのつど電話は切れる。部屋の唯一の鍵をもつマネージャーと、22号室を調査するが、部屋は無人の密室。いつのまにか、マネージャーの腕には鮮血が付いている。前日の事件でも、鍵がかかったこの部屋から、殺害された住人が連れ去られている。何かあるとにらんだマネージャーは、暗闇の部屋に隠れるが、何者かの足音が近づいてきて…。結末はいささか拍子抜けだが、恐怖の雰囲気の醸成がうまい。

【折々の密室/12月17日】
・ライト兄弟複葉機で初飛行ら成功
#081 エドワード・D・ホック「ブリキの鵞鳥の謎」 『サム・ホーソーンの事件簿U』 
 ノースモントにやってきて住民の話題をさらった飛行サーカスの一団で殺人事件が発生。内側からラッチがかかった操縦室内で操縦士が刺殺された。操縦中に刺殺されたのならどうして飛行機は飛び続けたのかという謎を絡めて、極めて限定された状況からホーソン博士はサプライズを取り出す。



12月15日(日) リスト更新
・もはや、なんとかの冷や水という気もするが、随分と更新が滞っていた密室リストを更新。長いこと
溜めており、過去に教えて頂いた方には申し訳なし。とりあえず第一弾123タイトル(国内)追加ということで、来週くらいに、もう一回更新を予定。例によって、読まずに入れているのも多いので、誤り等御教示いただければ幸いです。現在の総タイトル数も怪しいので、数え直して合算することとします。
ふうう。
・御教示いただいたもの
依井貴裕『夜想曲』(以上、松本楽志さん)
篠田秀幸『幽霊病院の惨劇』(ハルキノベルス)柄刀一『サタンの僧院』『ifの迷宮』『マスグレイヴ館の島』はやみねかおる『ギヤマン壺の謎』『徳利長屋の怪』平石貴樹『笑ってジグソー、殺してパズル』森博嗣『夢・出逢い・魔性』三雲岳斗『M.G.H.』『海底密室』湯川薫『イフからの手紙』有栖川有栖『幽霊刑事』(以上、中村さん)
久生十蘭「萩寺の女」(以上、宮澤さん)
大西赤人 『引き継がれた殺人』草上仁「転送室の殺人」東野司 『消えた十二支の謎』 折原一『倒錯の帰結』(以上、葉山馨さん)
蘭郁二郎『白日鬼』(以上、広沢さん)
都筑道夫「雪うさぎ」和久峻三『仮面法廷』(以上、上野さん)
島久平「自殺の歌」「犯罪の握手」鷲尾三郎「月蝕に消ゆ」(以上、ようっぴさん)
篠田秀幸『人形村の殺人』(以上、てつおさん)
江戸川乱歩「妻に失恋した男」笹沢佐保 『地下水脈』辻 真先 『超特急燕号誘拐事件』斉藤 栄 『雪の魔法陣』有爲エンジェル『赤と青の殺意』 山田正紀『女囮捜査官5 味覚』由良三郎「勘違い」赤川次郎「三毛猫ホームズのびっくり箱」 舞城王太郎『煙か土か食い物』(以上、TACさん)
山田風太郎『警視庁草紙』(以上、おげまるさん)
宇神幸男『消えたオーケストラ』由良三郎「延髄斬り奇譚」井上ひさし『四捨五入殺人事件』(以上、やよいさん)
林泰宏『見えない精霊』(以上、岩井大兄)

・その他追加分
愛川晶『巫女の館の密室』 秋月涼介『迷宮学事件』浅暮三文『殺しも鯖もMで始まる』芦辺拓『メトロポリスに死の罠を』 『グラン・ギニョール城』天城一「ポツダム犯罪」鮎川哲也「空気人間」「「呪いの家」有栖川有栖『マレー鉄道の謎』「仮装パーティーの夜」「毒の晩餐会」「天馬博士の昇天」泡坂妻夫「雪の絵画教室」伊井圭「通り雨」石崎幸二『袋綴じ事件』浦賀和宏『浦賀和宏殺人事件』逢坂剛『裏切りの日日』太田忠司『維納音匣の謎』大谷羊太郎『幽霊殺人事件』折原一「北斗星の密室」 「トロイの密室」霞流一『牙王城の殺劇』『首断ち六地蔵』『デッド・ロブスター』「タワーに死す」加賀美雅之『双月城の惨劇』川田弥一郎『最後の審判』楠田匡介「窓に殺される」楠木誠一郎『十二階の柩』倉阪鬼一郎『青い館の惨劇』倉知淳『星降り山荘の殺人』黒田研二『闇匣』小森健太朗『ムガール宮の密室』 斉藤栄『金沢能登殺人事件』 『横浜神戸殺人旅行』迫光『シルヴィウス・サークル』  佐藤友哉『エナメルを塗った魂の比重』篠田秀幸『人形村の殺人』『法隆寺の殺人』 『帝銀村の殺人』 柴田よしき「正太郎と冷たい方程式」篠田真由美『原罪の庭』 『綺羅の棺』 島田荘司『ロシア幽霊軍艦事件』『魔神の遊戯』殊能将之『樒/榁』高里椎名『それでも君が』高田崇史『QED 式の密室』柄刀一『奇蹟審問官アーサー』辻真先『ニッポン絶体絶命』『死体が私を追いかける』 『幻の流氷特急殺人事件』『北海道・幽霊列車殺人号』積木鏡介『芙路魅』西尾維新『クビキリサイクル』 『クビツリハイスクール』西澤保彦『聯愁殺』西村京太郎『焦げた密室』はやみねかおる『ミステリーの館へようこそ』東川篤哉『密室の鍵貸します』『密室に向かって撃て!』平野肇『越冬卵』久生十蘭「稲妻草紙」「象の腹」藤木稟『ハーメルンに哭く笛』本間田麻誉「罪な指」舞城王太郎『世界は密室でできている。』森博嗣『魔剣天翔』 『恋恋蓮歩の演習』『六人の超音波科学者』『捻れ屋敷の利純』『朽ちる散る落ちる』 『赤緑黒白』本岡類『大雪山 牙と顎の殺人』門前典之『死の命題』 『建築屍材』山口雅也『奇偶』山田正紀『女囮捜査官4 嗅覚』 『ミステリ・オペラ』 『SAKURA』 『篠婆骨の街の殺人』湯川薫『イフからの手紙』結城恭介『殺人投影図』鷲尾三郎「一○九号室の女」
・海外長編
  ポール・アルテ『第四の扉』バークリー『レイトン・コートの謎』ヘレン・マクロイ『割れたひづめ』マイケル・スレイド『髑髏島の惨劇』


12月13日(金)
・忘年会その1。中華飲茶の店。二次会でススキノに出たが、久しぶりで込み合っているススキノを観た。
・『「X」傑作選』購入。双葉十三郎「匂う密室」、天城一「奇蹟の犯罪」等嬉しいところが収録されている。『本格ミステリベスト10』も購入。
【折々の密室/12月14日】
・義士祭り
 1702年のこの日、赤穂浪士が吉良邸討ち入り。今年は討ち入り300年。
#078 山田風太郎「殺人蔵」 『妖説忠臣蔵』
 大石内蔵助の乗った籠を襲った曲者。赤穂の浪人が襲撃者の血の跡を追って、一軒の空家に飛び込むが、家の中には猫の子一匹いない。それから数日経ち、この空屋で殺人事件が発生。襲撃者を追った三人の浪人のうち、一人が殺され、後の二人が呆然と亡骸の前で呆然としている。周囲の子供達の証言では、もう一人頭巾をした人間が出入りしたらしいのだが、頭巾の男の姿は、やはり消失している。浪人の一人は、裏切り者を殺害した旨告白し自害するが、残りの浪人も何者かに殺害されて…。事件の探偵役「私」は、義挙に秘められた深い意図と峻厳たる意志に戦慄する。人間消失に、三重殺、意外な犯人に加え、「北イタリア物語」ばりの意外な探偵の正体も明かされる贅沢至極な一編。


12月12日(木)

【折々の密室/12月12日】
・光丸山天狗祭り
 栃木県那須郡湯津上村で14日まで開催
#076 大坪砂男「天狗」  『天狗』
 山峡の温泉宿で出逢った黒づくめの女。早朝、便所の個室の扉を開いて女と遭遇し、恥をかかされたと思いこんだ男は、「そのブルマースを穿った下肢は白日の下に曝されるべきと結論。水無沼へ女を投擲するという「天狗飛切の術」−一種の不可能犯罪−を実現するための奇怪な計算に熱中する。偏執狂的な論理を、高密度、独自の諧調で描いた異様なる傑作。

【折々の密室/12月13日】
・双子の日
 明治7年のこの日、「双子の場合は、先に産まれた方を兄・姉とする」という太政官布告が出された由。   
#077 横溝正史「双生児は囁く」 『双生児は囁く』
 終戦後のデパートで人々の話題を呼んだ真珠の展覧会。檻の中で展示される「人魚の涙」が衆人環視の中奪われ、周囲に人がいないにもかかわらず見張り人が殺害された。続いて、発生する第2、第3の殺人。第3の殺人もまた犯人出入り不能の部屋で行われた。探偵役は、双子のタップダンサー星野夏彦・冬彦。猟奇的要素に加えて、関係者を集めて行われる謎解きも冴えもなかなかで、全盛期の横溝の片鱗が窺える。 


12月10日(火)
【折々の密室/12月11日】
・アレイスター・クロウリー(英:魔術師・作家)死去72歳
#075 ランドル・ギャレット 「想像力の問題」 『SF MYSTERY大全集』(別冊奇想天外)
 魔法が支配するパラレル・ワールド英国。出版社社長が首吊りの形で死んでいた主任法廷魔術師の杖を使った分析によれば、死亡当時室内に存在したものはおらず、邪悪な力や黒魔術の徴候もない。事件は一見自殺の様相を呈していたが、ダーシー卿は、殺人と断言する。魔術の世界ながら謎は、極めて現実的な解法が与えられる。いささか現実的すぎるかも。


12月9日(月)
・パラサイト・関アップ忘れでした。すみませぬ。
・講談社ノベルス密室本に浅暮三文『殺しも鯖もMで始まる』登場。MYSCON(祝!・第4回開催)で、密室とクローズドサークルの違いがわからないとおっしゃってたが、これは堂々たる密室物らしい?
・小林文庫50万アクセスおめでとうこざいます。書込みネタが思いつかないんで、北の地より。
・ズルをしながら、やっとこ追いつく。ノーモア「折々」更新遅れ。無理か。

【折々の密室/12月9日】
・漱石忌
#073 砂山マモル「漱石とフーディニ」 『本格推理7』
 ロンドン留学中の漱石が公演中のフーディニと知り合い、彼の友人である日本の奇術師の草分けだった男の密室死の謎に取り組むことに。密室の謎はありふれたものだが、フーディニの刑務所脱出
の逸話や漱石の探偵嫌いなどをうまく絡めている。

【折々の密室/12月10日】
・中井英夫逝去
#074 中井英夫「聖父子」 『13の密室』 
 妻の浴室での密室死の消息について、切々と将来の息子に語りかける父親。『虚無への供物』第一の事件を彷彿させる機械的トリックによる犯行の隠蔽はむしろ語り手の妄執の純度を落としているような気もするが、ここでの密室は何のために存在しているのか考えてみるのも一興だろう。物語の逆オイディプス的なアプローチは、かなり斬新な試みに映る。 


12月8日(日)
・西村文生堂の目録を見る。エアード『聖女が死んだ』の値段に驚いたり。
【折々の密室/12月7日】
・大雪(二十四節気の一つ)
 今年は、11月の雨で雪が溶けてしまい、積雪がないのが不思議。
#071 有栖川有栖「天馬博士の昇天」 『山伏地蔵坊の放浪』
 冒頭で紹介されるイギリスの実話という雪にまつわる怪談が面白い。雪が積もった村道に点々と馬の蹄鉄のような足跡が残されているのを村人が発見。しかし、跡は、四つ脚でもなく二つ脚でもなく一本脚で歩いたよう跡が延々と一直線に続いている。その足跡は、塀を越え、干し草を越え、家に突き当たった場合は、その屋根の上を歩き、60キロにも及んだという。結局その謎は解決されることはなかったらいしいのだが…。本編の方は、雪の夜の足跡なき発明家殺しを扱っている。技術の進展を踏まえ、文庫版では書き直したそうだが、あのインパクトの後では、それもむべなるかな。放浪中に遭遇した難事件を語る山伏地蔵坊の(今のところ)最期の事件。

【折々の密室/12月8日】
・ジョン・レノン死亡(1980)
 冒頭でジョン・レノンの死のことが出てくるらしい、次の本を結扱おうと思って5、6軒古本屋を探したが、いまだ入手できず。これは、入手次第ということで。
#072 太田忠司『さよならの殺人1980』
 


12月6日(金) このミス/消えたプリンス
・昨日(7日)、「このミス」入手。同時にミスター高橋『「ッチメイカー』購入。さきにマッチメーカーを読んでしまうのは、我ながらいかがなものか。前作に比べるとネタの温存なのか、確実に内容tが落ちている。
・「このミス」全然読んでないのは、相変わらずだが、惜しいのは海外の『煙で描いた肖像画』(『煙の中の肖像画』)、創元推理版が43点(18位)、小学館版が15点。両方合計すると、58点で12位となる。それにしても、両版の差が28点というのは、一体何を表しているのだろうか。さきに訳されたのは小学館版。とすると、訳の差か、値段の差か。訳の差はともかく、この種の投票の場合、価格の差を評価に反映することは許されるのか。そうすると上位にある文庫版の評価も割り引いて考えなければならないのか。そんなことを考えていると夜も寝られない。各人のコメントがこの種のベストの華なのだから、スペースを元の形にに戻すことを希望。

【折々の密室/12月4日】
・聖バルバラ記念日 
聖バルバラは、ローマ時代の若い女性殉教者。キリスト教で若い未婚の守護神とされている。「白い衣装のバルバラ」は雪のことをいい、「白い衣装のバルバラはおだやかな冬を告げている」というように使うらしい。
#068 楠田匡介「妖女の足音」 『続・13の密室』
 北海道出身のせいか、実質的デビュー作「雪」をはじめ楠田匡介の描く冬はえらくリアリティがあるような気がする。本編は、60年ぶりの寒さに襲われた地方で足跡なき殺人を扱ったもの。離れで果樹園主が殺害されるが、母屋との間には降り積もった雪には足跡はないー。トリックは一発物だが、珍しくロマンの薫り漂うラストは印象深い。

【折々の密室/12月5日】
・ポルトガル沖で幽霊船・帆船メアリ・セレステ号発見される(1872)
#069 コナン・ドイル「ジェ・ハバカク・ジェフスンの遺書」 『ドイル傑作選U 海洋奇談』
 本出て来次第。

【折々の密室/12月6日】
・アイルランド自由国成立(1922)
#070 G.K.チェスタトン「消えるプリンス」 HMM'86.12
 ブラウン神父譚にも、アイルランド問題への言及がよく出てくるが、チェスタトンの場合、この問題を当時の政治的・社会的関心事ということを超えて、自らのアイデンティティにすら関わりのある問題と認識していた節がある。アイルランドの政治犯の消失事件を扱った本編が収録された短編集『知り過ぎた男』の刊行年が1922年、チェスタトンの生涯の最大の謎とされているというローマ・カトリック教への改宗がやはり同じ年、さらにアイルランド自由国成立が同年ということを考えると、そこに一本の脈絡があるのではないかという気にさせられる。
  「マイケル王子」と呼ばれ、アイルランドの民衆の支持を受けていた神出鬼没の政治犯がついに浜辺の孤塔に追いつめられる。地元アイルランド出身の警察官とイギリスの警察官混成のチームは、塔を取り囲み、三方の窓から侵入を試みるが、すべての警官が銃撃され、やっとの思いで塔に踏み込んだときには、「王子」は消失していた…。イギリス出身の捜査官は、王子が案山子に化けて逃走を図った一見をひきあいに、捜査に必要なものは「新しい眼」だと主張する。村の警官には案山子がそこにあることを知っていたがゆえに、王子を発見できなかった。外部の人間である自分は、案山子があればじっと案山子を見つめる。自分は新しい眼をもっていると。しかし、本編の探偵役であるフィッシャーは、終局に至ってその見解を否定する。「新しい眼では眼に見えないものを見ることはできない」生命や魂といった存在まで見つめることはできない、と。ここでは、「見えない人」テーマがさらに深化させられているといえるかもれない。事件は、「アイルランドの悲劇」と「イギリスの真理」が激しく相克する場としての様相を呈してきて、英国の統治原理が曖昧な形で勝利する。しかし、チェスタ トンが寄り添おうとしているのは「霊について知りすぎている」(見えないものが見える)アイルランド精神であることは疑いない。ここに、思想的足場の移動が明確に宣言されているようにも思う。人間消失の謎解きが、認識の地平を押し広げ、新しい世界が開かれていくような感覚。ブラウン神父譚の傑作に勝るとも劣らない、チェスタトンにしか書きえない傑作。フィッシャー物の全貌の紹介が待たれる。


12月5日(木)

【折々の密室/12月1日】
・映画の日
#065 加納一朗「箱のなかの箱」 『密室探求第一集』
 映画に造詣が深い作者の映画館を舞台にした密室物。斜陽の町の映画館太陽座の映写室で社長が殺害される。映画館という「箱」のなかの「箱」ともいえる映写室は密室で、鍵は内部に落ちている。刑務所帰りの撮影技師が辿る真相とは。ありがちな機械トリックではあるが、映画に絡めたという意味では吉。トリックは実験済みという。

【折々の密室/12月2日】
・鷲尾三郎逝去(1989)
#066 鷲尾三郎「月蝕に消ゆ」 『鷲尾三郎名作選』
 月蝕観測のため学校の屋上で望遠鏡を覗いていた学校教師二人が、校長の消失を目撃する。校長は橋を渡っている最中、それこそ大気の中に溶け去るように消えてしまったのだ。しかも「月世界の招聘により」昇天す、という予告文が事前に送られていたのが判明。消失物が得意の推理作家牟礼順吉の推理は?抜群の不可能状況に対するは、こうまでして消えたいかというトンデモトリック。笑いがこみ上げるのを禁じ得ないが、これは楽しい笑いである。

【折々の密室/12月3日】
・奇術の日
 1・2・3のゴロ合わせで、日本奇術協会が制定した由。
#067 泡坂妻夫「虚像実像」 『奇術探偵曾我佳城全集』
 マジックショーのさなか、舞台に駆け上がった女が奇術師ジョン井竜を殺害。女はそのまま舞台中央のスクリーンの中に飛び込んだが、両袖に立っていた関係者は自分の方に逃げてきた人間はいないと証言する。犯人は映写スクリーンの中に消えてしまったのか。人形や映画を使った虚像実像いりまじる複雑な奇術の中の殺人を曾我佳城が鮮やかに解き明かす。 



12月4日(水)

【折々の密室/11月29日】
・議会開設記念日
#063 斉藤栄『国会議事堂の殺人』 
 60年安保当時、デモ隊が国会議事堂を取り巻いているにもかかわらず、首相が安全圏に脱出しているという史実を不審に思った大学院生が「国会には秘密の抜け穴がある」という論文をひそかに執筆。身の危険を感じた学生は論文を三分割して、友人らに託すが何者かに惨殺される。犯人は公安か過激派か。論文を託された親友は、恋人と調査に乗り出すうちに、学部の恩師も現代建築の密室内で殺され…。三分割した論文で興味をつなぎ、建築資材を活用した密室やアリバイのサービスも手慣れたもの。アリバイのトリックが新手というか、うーむ、こんなのもありか?

【折々の密室/11月30日】
・寄生虫予防運動終わる(11/21〜) 
#064 倉知淳「寄生虫館の殺人」
 本出て来次第。


12月3日(火) 
・「彷書月刊」の今月号「昭和出版街」は、名張市で開催されたの乱歩講談と三重県の古本屋の話が中心。北園克衛特集だが、ハヤカワミステリ文庫のエラリイ・クイーンのカバーデザインは、現在書店で見かけることのできる唯一の北園デザインだとか。
・パーシヴァル・ワイルド『探偵術教えます』(昌文社)購入。・『絶対ミステリーが好き!2」の特集は「本格ミステリーは「密室」で読め!」新本格を中心とする密室物が手広く収められており参考になる。日下氏の鮎哲追悼文もあり。・入院中の親父を見舞った帰り、病院の近くの古本屋でキリル・ボンフィリオリ『深き森は悪魔のにおい」700円だったのでつい購入。ダブリ買いはやめようと思ってはいるのだが。
【折々の密室/11月28日】
・高柳健次郎がテレビの公開実験(1928)
#062 仁木悦子「弾丸(たま)は飛び出した」 『凶器の蒐集家』 
連続スリラードラマ「弾丸は飛び出した」見たさに、ちゃっかり歯医者の待合室にあがりこんでいた悦子。若いギャング役の男優の姿に見ほれるなか、画面の男の銃は轟然と火を吹いた。その瞬間、待合室の外の窓からテレビを観ていた老人が銃撃されるという怪事件が発生。周囲の状況から、その弾丸はテレビの画面から飛び出したとしか思えない…。続いて、事件の関係者と思われる外人の密室で銃殺事件が発生。今度は、絵の中の女が撃ったのか。さらに映画のポスターや銃を握ぎるフランス人形から弾丸が飛び出したとしか思えない状況の事件が続発。飛びきりの不可能状況が連打されすぎるせいか、雄太郎の推理が駆け足気味なのが惜しい。

12月1日 
・もう12月だよ。法事とノア観戦で土日も終わる。喪中葉書も仕上げなければ。
・1週遅れの新日プロレス放映で棚橋が僕らと一緒にハワイにいきましょうとか言っている。この辺の配慮ってのは、地元放送局はしないのかね。
【折々の密室/11月26日】
・御茶壺奉献祭
 京都北野天満宮で行われる、秀吉の茶の湯の故事にまつわる祭り。
#060  E・ジェプスン&R・ユースティス「茶の葉」 『世界短編傑作集3』
 仲違いした二人の男性が相次いでトルコ風呂に入り年上の男が刺殺される。一方が犯人としか思われず、起訴されるが、不思議なことに凶器は発見されなかった。傷口に残された茶の葉から意外な真相が露見するいわずと知れた古典。中盤以降被害者の娘が探偵役となった法廷劇となることは、まったくもって失念していた。

【折々の密室/11月27日】
・更生保護記念日
#061 楠田匡介「沼の中の家」 『楠田匡介名作選』 
 日本唯一の長期刑務所の作業所がある「沼の中の家」。周囲二里の沼は死の沼と呼ばれ、沼底から吹き出すガスのため魚一匹生息していない。囚人は、この鉄壁の監獄から脱獄を企てるが。保護司を永く務めた著者によるトリッキイな脱獄物。