小田急バス私設ファンクラブ実録シリーズ実録・小田急わんわんバスツアー
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実録・小田急わんわんバスツアー

1997年6月23日・箱根あじさい電車と山のホテルの御昼食

三鷹から箱根へ出発

 小田急バス観光課が放つツアーブランド「小田急わんわんバスツアー」で箱根に行ってきました。グループ企業である箱根登山鉄道と山のホテルでのランチ、箱根神社参拝と湿生花園見学がセットになって一人9,800円の日帰り旅行です。
 ツアーの発着地は吉祥寺駅ですが、自宅最寄りの三鷹駅北口から乗車。バスは昼食のメニューによって1号車(上写真右)と2号車(同左)に分かれ、和食の筆者は2号車3番D列に席を取りました。担当のバスガイド・小林さんは、若くて楽しそうな方です。
 所定の午前6時50分に三鷹を出発した2台は、けやき橋地下道でJR中央線をくぐって、次の集合場所・調布駅南口へ。同じ会社の路線車が、会釈をしながら何十台となくすれ違います。当方はリクライニングシートでこれから箱根路、あちらは満員ぎゅう詰めでこれから会社や学校。たまには優越感に浸るのも悪くありません。
 約30分で調布駅南口のバス乗り場に着き、ここでかなりの乗車があります。柿24系統の苦労の種・鶴川街道の渋滞を過ぎ、読売ランドを山越えして高石交差点から津久井道に入って、新百合ヶ丘駅北口(南口ロータリーは路線バス専用のため使えないのです)に着いたのは8時13分。ここで早くもトイレ休憩が設けられ、犬のマークにODAKYU BUS TOURと書かれたバッジを持って、数名が電鉄駅構内の便所にダッシュしていきました。それにしても、三鷹から新百合ヶ丘まで3エリアくし刺しの乗り継ぎは何度もやっていますが、1台の小田急バスでこのコースを走るのは初めての経験で、これだけでもそこそこ楽しめます。

蒸しぶろだけど情緒たっぷり「あじさい電車」

 新百合ヶ丘で全参加者がそろい、東名川崎インターから高速道路に入ると、バスは水を得た魚のように快調に飛ばします。途中港北パーキングエリアでの休憩をはさんで、9時23分に小田原厚木道路入り、10時ちょうどには箱根湯本駅に到着しました。途中、小林さんが高速沿道の見どころなどをいろいろ解説するのですが、既に外は本格的な梅雨空、丹沢の山並みも小田原城も残念ながら見えないのでした。でも、筆者は小田急の観光バスに乗っていることでハイになっているから、それもまた良いというわけです。
 指定された湯本10時33分発「あじさい電車」は、モハ1形編成にモハ2形を併結した3両編成。当然冷房はなく、扇風機もありませんから、雨で窓を開けられない車内はまさに蒸しぶろです。しかし湯本を出て最初の坂に差しかかると、両側に今や盛りと咲き誇るあじさいに、車内からは期せずして「見事だねぇ」とため息が漏れました。
 電車は速くても20km/hと、超スロースピードで山を登っていきます。急曲線と急勾配で元々スピードが出せない上、この日から始まった「あじさい電車」のダイヤはあじさい観賞対応で到達時間を遅らせています。観光鉄道らしいサービスです。
 終点の強羅駅前は大型バスを横付けするスペースがないため、われわれは一つ手前、彫刻の森駅で下車(写真)。湯本から回送で先着していた2台の横では、売店の温泉まんじゅう蒸し器が、うまそうな湯気を立てていました。

料理は良いが景色は見えず…

 彫刻の森駅から、急勾配・急カーブの続く道を登っていくと、にわかに展望が開けます。芦ノ湖畔・元箱根に到着です。ここからさらに箱根神社方向へ、狭い山道をさらに分け入ったところに、本日の昼食場所「山のホテル」はありました。
 全客室から芦ノ湖が見渡せ、庭に色とりどりの花が咲き乱れている―というのがホテルのセールスポイントなのですが、肝心のレストランは和食・洋食とも地下で、窓一つありません。せっかく箱根まで来て、東京の地下街みたいな味気ないロケーションで食事とは…。全体的に充実した行程だっただけに、大いに悔やまれます。
 ちなみに和食のメニューは、刺し身、とろろ昆布、かぼちゃ汁、天ぷら、煮物、炊き込みご飯にみそ汁とお新香。かぼちゃ汁は、裏ごししたかぼちゃとみそをあえて作ったもののようで、身に入っているブロッコリーとの調和が◎の一品でした。
 これだけでホテルを後にしても詰まらないので、食後は1階の喫茶コーナーに移動し、芦ノ湖を見ながらティータイム。隣のボックスでくつろいでいた乗務員の皆さんと、小田急バスの昔の話で盛り上がりました。こんなこともあろうかと持参した、20年前の向ケ丘遊園駅前の写真に、ベテランの運転士さんは新人として苦労した生田営業所時代を懐かしんでおられました。きょうの客層はほとんどが熟年世代以上で、筆者のような若者は例外的だったのですが、「日曜のツアーは若いお客さまもいらっしゃいますよ」とは小林さんの弁。
 山のホテルを出ると箱根神社は隣なのですが、神社の駐車場に入る道が下り側から鋭角になってしまうため、バスはいったん元箱根に下りてから再び神社へ。このころには朝方から降り続いていた雨も上がり、つゆにぬれた木立のすき間から、明るい日差しがのぞいてきました。参拝を済ませて仙石原の箱根湿生花園に着いた時には、すっかり晴れ上がり、ハナショウブ(写真)などが咲き誇る園内の散策を楽しみました。

雲海の中の富士山に拍手

 箱根の観光スポットは以上で、バスは乙女峠を越えていったん静岡県に入り、御殿場インターから東名高速で帰途に就きます。乙女峠はその昔、孝行娘が父の病気快復を祈ってお百度を踏み、ついに力尽きて路傍のつゆと消えた悲しい伝説の残る所。小林さんのガイドはたんたんと進みますが、娘が絶命するくだりでは、さすがに車内のおしゃべりも静かになりました。
トンネルを抜けて峠の頂上に出ると、眼下に広がる雲海の奥に、今日は駄目だろうとあきらめていた富士山の威容が! 小林さんが「あ、見えました、富士山」と興奮すると、車内からどよめきが起こり、やがてだれともなく拍手かっさいとなりました。日本人は、富士山が好きなんだなあ。
 御殿場ICから再び東名高速に乗るころには、にぎやかだったお客さんも一日の疲れが出始め、舟を漕ぎ始める人もちらほら。しかしバスガイドに居眠りは許されず、乗客一人ひとりに熱い日本茶のサービス、そしてごみ収集。走るバスの車内、移動するだけでも大変ですが、頑張っています。
 ほぼ定刻の午後5時すぎ、夕陽まぶしい新百合ケ丘の街に、バスは戻ってきました。「お楽しみいただけましたでしょうか」との問い掛けに、車内からはまた拍手。思わず小林さんの表情もほころびます。麻生区役所前で数名を降ろすと、往路とは違い平尾団地、坂浜、稲城大橋経由で調布駅南口へ。若干の渋滞はあったものの朝ほどではなく、午後6時半、定刻より早めに三鷹駅北口に到着しました。
 「ありがとうございました」「また参加します」―。一日を共に過ごした小田急バスのクルーとお客さんが、笑顔であいさつを交わして別れていく光景に、忘れかけていた温かさを感じました。箱根の思い出と手みやげをそえて、夕べの食卓では話が弾みそうです。

〜完〜


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