全体的な印象
前作「止まっていた時計が今動き出した」から約1年半ぶりのオリジナルアルバム。
この間にZARD初のコンサートツアーが行われ,ZARDの活動は相変わらず活発だった。本作のリリースが発表されたときはもう新作か?という印象すら受けた。まあ,前作と前々作の間隔があまりにも長かった事もあるのだけど。
本作リリースの前にライヴDVDが発売され,高セールスを上げた。また,シングル「星のかがやきよ/夏を待つ帆(セイル)のように」は久しぶりのロングセラーになり,長期低落傾向にある程度の歯止めがかかった印象がある。
本作はシングル4曲,セルフカバー2曲,アルバムオリジナル7曲という構成になっており,新曲が多数聴けるZARDファンとしては満足いく構成になっている。
一度通して聴いた印象は,大変バラエティに富んだアルバムであるということ。あと,泉水さんの声が倉木麻衣チックに震えて聞こえる曲があったということ。
音質は,様々なスタジオを使って凝った録音をしているからか,曲によって少しばらつきがある。最初パソコンに繋いだミニコンポから音を出したときには音質が悪く感じられたが,その後STAXのイヤースピーカーで聴いたところ,それ程悪くないと感じられた。
全曲解説
01.夏を待つセイル(帆)のように
作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:葉山たけし
40thシングル。シングルと同じ印象。変わっていないだろう。歌詞はラヴソング。ライナー・ノーツによると,タイトルが「セイル(帆)」と漢字表記を併用しているのはセイルでは意味が伝わりにくいからだそうだ。
02.サヨナラまでのディスタンス
作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:葉山たけし
アルバムオリジナル曲。久々にロックしているZARDだ。歌い出しからヴォーカルにエフェクトがかかっていて焦るが,1分過ぎからちゃんと外れますからご安心を。サビが「愛が見えない」そのまんまだけど,あまり面倒なことは言ってはいけない。
ライナー・ノーツによるとアルバム表題曲になる予定だったとのこと。この曲のタイトルを若干前向きに修正してアルバムタイトルになったそうだ。
03.かけがえのないもの
作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:小林哲
38thシングル。アレンジはシングルと同じ印象。変わっていないだろう。本作ではシングル曲は別アレンジがないようだ。歌詞はラヴソングかつ自分探し。
本作では作曲・編曲はローマ字表記でしか書かれていないのだけど,小林哲さんって「サトル」さんだったのね。「テツ」だと思っていた。
04.今日はゆっくり話そう
作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:徳永暁人
39thシングル。シングルと同じ印象。これまた変わっていない様子。ラヴソングではあるが,色々な意味を持たせた歌詞。主人公が自分の内面を見つめている部分の方が多いかな?
05.君とのふれあい
作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:葉山たけし
アルバムオリジナル曲。泣きのメロディーのバラード曲。私としては,今回のアルバムオリジナル曲で「サヨナラまでのディスタンス」とナンバーワンを争っております。
歌詞を読むと別れの曲。ひたすら過去を振り返るあまり救いのない歌詞。考えてみると最近のZARDは無邪気な前向きの曲が少ないなあ。あ,元々そうなのか?
06.セパレート・ウェイズ
作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:古井弘人
イントロがコンドルが飛んでいきそうな雰囲気だったので,どうなるやらと思って聴いていると,泉水さんのヴォーカルが入ると何事もなかったように普通に始まる。ライナーでも取り上げているように間奏がトランペット。ちょっと今までにない雰囲気の曲。
さて,ここまで6曲連続で作曲が大野愛果だ。凄い働きぶり。
07.Last Good-bye
作詞:坂井泉水 作曲:多々納好夫 編曲:葉山たけし
FIELD OF VIEWへの歌詞提供曲のセルフカバー。編曲もFOV版と同じ葉山たけしだ。若干穏やかな仕上がり。必死さすら感じられるFOVバージョンに比べるとリラックスしたような印象を受けてしまう。ただし「君がいたから」のような極端にゆったりとしたアレンジではない。
08.星のかがやきよ
作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:葉山たけし
40thシングル。40thシングルが2曲あるのは両A面だったから。
シングルバージョンと変化無し。歌詞はZARDのイメージ通りの,ラヴソングのようで励ましソングのようなもの。
09.月に願いを
作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:小林哲
アルバムオリジナル曲。3拍子。ワルツだ。こういうZARDの新たな側面を見せることができるのは,ヒットを狙って勝負していないアルバムオリジナル曲ならではと思う。
歌詞はラヴソングなのに,そこは泉水さん,ワルツのリズムが逆に怖くなるくらい孤独が強調されている。
10.あなたと共に生きてゆく
作詞:坂井泉水 作曲:織田哲郎 編曲:小林哲
テレサ・テンへの歌詞提供曲のセルフカバー。この曲が泉水さん初の歌詞提供となり,女性ヴォーカルへの歌詞提供は現時点ではこれが最初で最後になっている。
テレサ・テンへのオマージュからか,間奏に二胡と北京語の台詞が入る。
テレサ・テンバージョンよりもサビはリズミカルになっている。とても感動的な仕上がりで鳥肌が立った,
歌詞は嫁ぐ娘の心境を描いたもの。結婚式ソングだ。
11.I can't tell
作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:葉山たけし
アルバムオリジナル曲。前作に収録予定だったが,何故か最後の最後で外された曲。外される前のプロモーション盤がレコード店に出回っていたため,マニアの間では結構知られた曲だ。
作曲が長いこと新曲書いていないはずの栗林誠一郎で,ライナー・ノーツでも長い間眠っていた曲とストックであることがちゃんと書かれている。
ストック曲を色々いじくり回した結果,やたら速くて,泉水さんの声が倉木麻衣チックに震えているような今回収録ヴァージョンとなった。前作収録予定ヴァージョンを聴いたことがあるが,前作のヴァージョンの方が普通に良い仕上がりだったなあ。勿体ない。良い曲なんだよこれ。
歌詞は男性視点で,別れた女性への断ちきれない想いと,想い出にすがるしかない孤独な現実を歌っている。
12.good-night sweetheart
作詞:坂井泉水 作曲:徳永暁人 編曲:葉山たけし
アルバムオリジナル曲。軽快なメロディー。サビの部分のメロディーは好きだなあ。
少し強めに入る男性ヴォーカルのコーラスがウザイと感じる人もいそうだ。
歌詞はラヴソング,この曲の恋はうまくいっているようだ。
13.君と今日の事を一生忘れない
作詞:坂井泉水 作曲:徳永暁人 編曲:徳永暁人
アルバムオリジナル曲。重い雰囲気のバラード。ライナー・ノーツに書かれているように複雑な曲。3年前からトラック制作が続けられていたというが,結局ストックという事だろう。前曲同様にコーラス(男女とも)が強すぎてウザイ人もいるだろう。
この曲もラヴソングなんだけど,過去を振り返っていて,決して順調にいっていない様子が伺える。
ジャケット・ブックレット
オリジナルアルバムとしては初めてのデジパック仕様。ブックレットを取り出すのに少し難儀する。
泉水さんの写真は前作ほどは充実していない。ひたすらジャケット写真と同じ服装での写真が続く。秋冬向け衣装であるが,ピッチリした服のため,泉水さんのナイスバディが強調されてその点はグッドだ。
「Today is another day」以来のライナー・ノーツが付いた。「Today is another day」のように別紙が添付されているのではなく,今回はブックレットの最後に収録。
前作同様に期間限定のスペシャルコンテンツが用意された。アクセス用パスワードは前作ではアンケート葉書に書かれていたため,うっかりアンケート葉書を出してしまうとアクセスできないという困った仕様だったが,今回は前回の教訓を生かし,IDとパスワードが書かれた独立した紙が収録されている。今回のパスワードは考えればわかるという代物ではないぞ。
セールス
- オリコン最高位3位
- 登場週数12週
- 総売上14.0万枚(300位までの集計)
思ったほど伸びず,トップ100圏内も6週間だけであった。アルバムの最低売上げ記録を再び更新。
2005年は女性ヴォーカルの不振が目立つ年だった。シングル年間トップ50中女性ヴォーカルは僅か14曲だった。2000年台を引っ張ってきた宇多田ヒカルと浜崎あゆみはセールスを下げた。特に宇多田ヒカルのセールス低下は急激だった。
その中で,シングルにこれといったヒットのない倖田來未のベストアルバムがミリオンセラーとなり,浜崎ブレイク時と似た状況となった。
オレンジレンジ,ケツメイシの強さが目立ったが,秋口から失速気味なのが気になる。
おすすめの1曲
「サヨナラまでのディスタンス」
ロックしているZARDは格好いい。
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