中国・九州思索行

やさしい電車

かつて門司・戸畑まで伸びていた西鉄の市内電車(北九州線)だが、1980〜90年にかけて次々に路線を縮小し、今では専用軌道の折尾-黒崎にとどまってしまった。この区間も近い将来廃止の方針が出ている。

黒崎駅前の歩道橋に立って八幡側を見ると、線路の消えた東側には架線をよけてアーチ状になった歩道橋が名残をとどめる。反対を向くと、黒崎駅前も再開発で駅と線路が移転した。

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黒崎駅前。駅前通り(国道200号)にそのまま通じていた
線路と駅(左下矢印)は、向こう側のビル内に移転した
(中央矢印)
黒崎駅前電停。3面2線のすっきりした乗降場
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小倉駅を発車する北九州モノレール。
乗降・乗換えに概して不便な新交通システムの中で
この駅乗り入れは評価できるが (小倉-平和通)

工事中の仮通路を通って、新装の黒崎駅前駅に行ってみる。JRの駅からも、駅前の交差点からも少し離れてしまった。

路面電車というのは街にとけこむ気楽な乗り物のはず。それが道路から、街から、駅前から消えてビルの中に押し込まれるとはどうしたものか。JR改札の横とまでは言わないが、駅前ロータリーに線路をもってくることができなかったのか? 確かにきれいにはなった電停を見ても、なんだか割り切れない。

小倉では、これも路面電車だった西鉄北方線を廃止してモノレールにしたが、これは駅ビル建設を機に小倉駅のまん中に堂々と乗り入れてしまったのだ。空中はるか高いところを走り、「人にやさしくない」傾向が強いモノレールより、本来ならより「やさしい」路面電車のほうがアクセスが悪いとは、話が逆じゃないかとも思う。

もっともこの場所は現在「黒崎駅前バスターミナル」のちょうど隣にある。そちら側とは有機的に? 結合しているというわけ。


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西鉄との分岐点をゆく筑鉄3000系連接車
(熊西)
JR811系。緑の帯は三井グリーンランド装飾車
(黒崎-折尾)

ブザーがなったので反射的に折尾ゆきの電車に飛び乗る。筑豊電鉄との分岐・熊西で降りてみた。隣をさっそうとJRの電車が行き交う。JR線のフリークエントサービスも、市内電車の客を減らす要因になったらしい。

鹿児島本線に駅新設の計画があり、完成したら西鉄線は廃止になるとか。乗り入れてくる筑鉄のため熊西-黒崎駅は残すそうだが、小倉まで直通できなくなった筑鉄も先行きは厳しそうだ。