風はるか


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線路の先に

朝の赤嶺駅

翌12月1日。この朝、走破率は99.992655% (私鉄では99.972955%) になっていた。一晩寝たら0.000006ポイント減ってしまったのにはもちろん理由がある。昨11月30日限りで、神岡鉄道19.9kmが廃止されたからだ。すでに乗車している路線だったので、率にするとほんのわずかだが減る結果となった。まあ、誤差にもならないような誤差、それこそ数字の遊びだし、残り2.0kmであることには変わりはない。

ということで気分を新たにふたたび赤嶺駅前のモニュメント前に立つ。最南端から最西端までの所要時間は3分。7:42、最後の列車に乗り込んだ。


赤嶺駅の先には那覇空港の滑走路が見える。駅を出てすぐ右にカーブを切り、陸海空の自衛隊基地を左に見ながら走る。やがて下にモノレール車両基地、前方にはターミナルに駐機する旅客機が見えてきた。

7:45、列車は日本最西端の駅に何事もなく停止した。到着便の時間にはまだ早く、出発便へ急ぐ客が去ると構内は閑散とする。日本最西端の鉄道改札口を抜けた横の壁には、「日本最西端の駅」の記念碑が埋め込まれていた。東経127度39分8秒、最東端の東根室から2,511km。総営業キロ27,231.1km、JR19,835.9km、私鉄7395.2kmに及ぶ鉄道の旅がここで終わった。

那覇空港駅壁面のステンドグラスに朝日が差し込む 日本最西端の駅モニュメント

全線完乗の余韻に浸っている時間はあまりない。私も空港ターミナル、JALチェックインカウンターへ急がねば。JTA605便 石垣空港ゆき、さらにJTA961便に乗り継ぐ。行き先は日本最西端の島、与那国島だ。



赤嶺 7:42-(14)-7:45 那覇空港 8:30-(JTA605)-9:30 石垣空港

機材はJAL新塗装のJTA ボーイング737-400 (JA8932)。就役時は「スカイマンタ」を愛称に持ち、機首にマスコットマークをつけていた。マンタとは沖縄近海に棲息するオニイトマキエイの通称である。1990年代のJALグループは機材への愛称づけに熱心で、ものによっては1960年代までのように個々の機体にも愛称をつけていた。JTAの前代機材だった737-200もひところ「スカイシーサー」と称していたとのこと。しかしJAL-JAS統合後の塗色更新と機材交代の途上でこれらは廃止の方向へ向かっており、JTA機も新JAL塗色に統一されつつある。

雲に機影が映る(降下時に撮影)

RWY36から離陸。きょうも低い位置に雲が天井のように連なっている。那覇空港周辺は飛行高度制限があるとのことで、離陸してすぐに水平飛行をするから、ラジコンで体育館の中を飛んでいるような錯覚に陥る。この雲行きでは下の眺めも期待できそうにないが、その層を突き抜けて晴れの域に出た次の瞬間、機影をやわらかな虹が取り囲んだ。ブロッケン現象だった。左側から右側に席を取り直して期待した宮古島も、その先の下地島空港も結局見えなかったけれど、こんな現象に出会えたのも悪くないと思う。


石垣空港全景(961便から撮影)。市街地(左側)からバスで10分 [写ルンです400EX]

石垣空港の滑走路長は今なお1,500mしかない。100人乗りクラスのジェット旅客機ではもっとも離着陸性能の高い737をもってしてもぎりぎりの長さで、タッチダウンするや否や逆噴射を目一杯吹かして急停止するらしい。実はオーバーラン事故が1回起きており、それを知ってしまっただけによけい緊張する。この機には機内スクリーンはついていないが、ついていたらよけいスリルが増すかもしれない。通常はおおむね70%前後で停止できるようだが、この空港には誘導路がなくスポット(駐機場)へは滑走路を走って戻るため、さっさと空けないと後続機が困る。

RAC BN-2アイランダー

9:25 RWY04に無事着陸した機は、ボーディングブリッジも牽引車もない開放的なスポットに向かう。2番スポットへ進入してクルリと150度ほど向きを変え、9:31停止した。いれかわりに10人乗りのプロペラ機 BN-2アイランダーが、かわいらしい音を残して軽々と離陸していく。

タラップを降りると旅客ターミナルまで目と鼻の先だが、1番以外はかならずバスに乗せられる。スポット内でエンジン始動するので、安全上そうなっているようだ。ちょうど1番からエアーニッポン(ANK)737-500が出発するところだった。

乗り継ぎ時間のあいだ、屋上デッキに行く。ローカル空港にしてはめずらしく、小さいながらも2棟のターミナルを持つが、ANK乗り入れの際に増設したようだ。事実、第3種空港に分類される石垣空港はその中で最も発着回数が多く、那覇便はJTAとANKあわせて20往復余もある。