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武者小路有紀子さんのコッペリアの思い出  (2004.9.20)

東京オリンピックが終わった数年後から約10年間、牧阿佐美バレエ団は、東京大手町の産経ホールで隔月で定期公演を開いていました。牧阿佐美さんの母であり師であり牧阿佐美バレエ団の団長であった橘秋子さんが亡くなってからは、この定期公演はなくなってしまいました。
この定期公演、若手を育てるという意味もあって、毎夜主役を代えて3〜5夜連続で行われ、若いバレリーナがプレッシャーと戦いながら懸命に踊る姿は、毎回新鮮な魅力に溢れていました。「白鳥の湖」(全幕)を、4人のバレリーナ、森下洋子さん、靫啓子さん、川口ゆり子さん、武者小路有紀子さんが毎夜交代でオデット・オディールを踊り、話題になったこともありました。当時大学生だった私は学生会員になり、毎回のように定期公演を楽しんでいました。「バレエを広めたい」という橘秋子さんの気持ちから、学生会員は500円というかなりの出血サービスでした。大原さん他3名は、その後もバレエダンサーとして活躍しましたが、武者小路有紀子さんは、バレエを辞め家庭に入られました。武者小路由紀子さんは武者小路実篤の孫娘で、当時、森下洋子等と少女雑誌のグラビアを飾ったりした人気者でした。上記5人の中では、川口ゆり子さんと武者小路さんが最年少でした。
 
武者小路有紀子さんがコッペリアの主役を踊ったことがありましたが、私はこのステージを今でもはっきりと覚えています。小柄でスワニルダにぴったり、それはそれは可愛らしいスワニルダで、1幕、2幕は、これこそ理想のスワニルダと思ったものです。フランツに焼きもちを焼くシーンやコッペリアに成りすますシーンの演技はとても可愛らしく、ピルエットもスピードでぶん回すというような派手な踊りをしませんが、これがかえって品があって、良かったです。ただ3幕の結婚式は、フランツとのパドドゥに微笑ましさを感じたものの、ややバランスが不安定でハラハラしたのを覚えています。また可愛らしさが災いしてか、もう少し成長した女性のイメージが欲しいと思ったのを記憶しています。でも、最後のカーテンコールで花束を受け取るとき、「自分が受け取って良いのかしら?」、というように、一瞬、ためらいながら受け取った姿は、本当に、可愛らしかったし、ホッとした満面の笑みが素敵でした。
 
当時の牧阿佐美バレエ団には、上記5人を筆頭に、斉藤弘子さん、清水洋子さんといった主役級のバレリーナもたくさん居り、中でも大原永子さん、森下洋子さんは、少女雑誌のグラビアの常連で、バレエを志す少女達の憧れの的でした。靫啓子さんは、「ゆうきみほ」と改名、テレビドラマ赤い靴で主役を務めました。その後も、佐々木想美さん草刈民代さん、上野水香さん達が活躍しました。
けれど、森下洋子さんは清水哲太郎氏との結婚を機に松山バレエ団に去り、佐々木想美さん、上野水香さん、小嶋直也氏など、主力のダンサーも、他のバレエ団に移るなどして、このバレエ団を去っていきました。私は、このバレエ団が好きで、今も良く見に行きますし、今後も見に行く予定ですが、主役級がこれだけ抜け、プリマと言われるのが、草刈民代さんただ一人では心配です。バレエ団に何が起きているのでしょうか?

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