このホームページを立ち上げた頃の日記です。この続きは院長のブログ(ある町医者の診療日記)にあります。
私は、有床診療所として地域の医療ニーズに答えようとがんばってきたつもりですが、有床診療所というのがこれほどシンドイものだというのは開院前には分かりませんでした。有床診療所がどんどん無床診療所に変わって行っているというのもうなずけます。
有床診療所がこれから生き残って行くには、療養型病床群とかショートステイとかいう、いま流行りの老人医療で稼いでいかないといけないのでしょうが、これさえも当院があるような必要病床を満たしている地域では許可されません。こんなことは理不尽と言えば理不尽でしょう。しかし、徳州会のようにそういう通達など無視するというのも、それは力のある者だからできることです。地域の医療事情など無視して大病院を立てる、そんなことは小さな有床診療所の医者をやっている者には不可能なことです。
また、専門科に特化しては地域医療ニーズに答えられないと思い、私はジェネラル・メディシャンを目指していたのですが、これも今思えばシンドイ道を選んだものだとつくづく感じています。診療所は、特徴を全面に押し出さないと生きていなくなってきています。厚生省の示す家庭医制度など、絵に描いた餅に過ぎない。
近所の人たちが気軽に受診でき、特殊な病気や重くなければ入院も受け入れる、重いと考えられる時は総合病院へというような有床診療所。こういうのが理想なのでしょうが、理想はあくまでも理想、人は霞だけでは生きていけない。
明日17日は私が属している鳴門医師会のゴルフコンペなのですが、大雨です。天気予報によると次第にこの雨も上がるようですが、それにしてもすごい雨。患者さんが診察室に入ってくる最初の挨拶がみな「すごい雨ですねぇ」というのになっています。これほどの雨だとすると天気予報通りに明日上がったとしても、下はぬかるんでいることでしょう。
明日が思いやられます。
これでも私は鳴門医師会ゴルフ同好会の幹事をしているのです。
100を切るのもやっとの幹事ではありますが、世話する方としてはいい条件をセットしたいものです。しかし、天候という自然条件はいかな幹事と言えどもどうにもなりません。
NAME | OUT | IN | GROSS | HDCP | NET | RANK |
---|---|---|---|---|---|---|
高麗 敬司 | 41 | 38 | 79 | 10 | 69 | 2 |
福田 徹夫 | 44 | 45 | 89 | 20 | 69 | 3 |
原田 道則 | 48 | 44 | 92 | 17 | 75 | 6 |
佐藤 和之 | 40 | 40 | 80 | 7 | 73 | 4 |
吉田 成仁 | 39 | 38 | 77 | 9 | 68 | 1 |
川端 正義 | 45 | 39 | 84 | 9 | 75 | 5 |
森内 幹 | 65 | 59 | 124 | 36 | 88 | 8 |
橋本 公昭 | 48 | 53 | 101 | 17 | 84 | BB |
ドラコン NO7:高麗 NO11:橋本
ニアピン NO4:佐藤 NO16:福田
新ハンディ 吉田:7 高麗:9
昨日の大雨の余波でしょうか、鳴門カントリークラブは濃い霧の中。しかし、暑からず寒からず、また風も強くなく、ゴルフにはまぁまぁというコンディションでありました。
グリーンはさすがに水を含んで遅かったのですが、ゲームにはそれほど支障はありませんでした。私が幾度も幾度も3パット4パットしたのは、ひとえに私の腕に原因があります。情けない、、、
このように泣きが入るというのも結果表を見てもらえばお分かりのように、サンザンだったからであります。ティーショットはまぁまぁだったのに、アプローチとパッティングがまるでダメ。一緒に回った高麗先生には私のスウィングをほめてもらったというのに、それが結果に全然現れていない。
それにしても、他の先生方の上手なこと、どこにそんな練習時間があるのだと疑いたくなります。本業が暇なこと、練習量の多さなど、みな私が一番なのだが、それが結果に全然現れてこない。これでも、週に2、3度は近くの打ちっ放し場で練習しているのですがねぇ、、、
次回の鳴門医師会コンペは9月の予定です。
捲土重来(何度この言葉を使えばいいのだろう、、、)
手根中手関節というのは、手根骨(手首の関節のすぐ抹消にある手の小さな骨、全部で8個ある)と中手骨(手の指の骨と手根骨の間の骨、各指それぞれに1個づつある)とをつないでいる関節なのですが、ここの脱臼というのを私は今まで経験したことがありませんでした。それを今週、2例、立て続けに経験しました。
類は友を呼ぶ、ってのはこのことでしょうか。
整形外科を専門にされている先生方から見たら、経験したことがないということ自体、整形外科に未熟な証拠だと言われそうですが、私愛用の「図説骨折・脱臼の管理」という教科書には「手根中手関節は周囲を強固な靱帯によって支えられているので、その脱臼は極めて少ない」とあります。それが2例立て続けに来たのです。それも今まで経験したことがなかったのにです。
1つは第5指で、子どもと遊んでいて踏まれて受傷。もう1例は、仕事中、手が材木の下敷きになって受傷した、これは母指の手根中手関節の脱臼でした。
こういうことってあるのですねぇ。
麻酔(正中神経、尺骨神経、橈骨神経ブロック)下に整復しギプス固定しておきましたが、前出の教科書には「手根中手関節脱臼は一般に不安定でキルシュナー鋼線固定を施行し、整復を保持しなければならない」とも書かれています。患者さんにはこのことを説明し、経過中再脱臼してくるようなことがあれば手術をしましょうと言っておきました。
今のところ再脱臼はしていません。
腓骨神経麻痺というのはそう珍しい障害ではなく、とくに整形外科を専門にされている先生方はその診断を間違ったり、見のがしたりしたら何をしていると怒られることでしょう。
実を言いますと、2ヶ月ほど前に私はこの腓骨神経麻痺を腰部神経障害として紹介しえらい恥をかいたことがあります。その記憶も冷めやらぬ6月6日、また腓骨神経障害患者が来院されたのです。
これも類は友を呼ぶというのでありましょうか、、、
何の外傷もなく、また圧迫するようなこともないのに前日の夕方より足がしびれてきた、そして翌日にはそのシビレが下腿にまで広がってきたと患者さんが来院されました。調べてみると、確かに痛覚が浅腓骨神経領域で障害されております(第1、2趾間は正常ですから深腓骨神経は障害されていない)。また母趾の伸展障害も軽度見られます。腓骨頭でのチネルサインもある。これはまずあの腓骨神経麻痺に間違いないと、こんどは腓骨神経麻痺疑いということで紹介することになりました。
なお、下肢の伸展検査(いわゆるラセーグ検査)や坐骨神経の圧痛検査(バロー検査)は異常なく、さらに足背動脈などの足の動脈はドップラー聴診器でよく聞こえますので、ヘルニアや動脈閉塞によるものではないのは明かでしょう。
さて、結果は、、、
紹介状の返事がどう帰ってくるか、私の診断の正否も気になりますが、それ以上に予後がどうかです。自然回復が十分期待できるものなのか、あるいは何か局所的な原因(腫瘍などの)があってそれに対する治療が必要だったりしないのか、、、
寒くて乾燥している気候の時にインフルエンザが流行する、ってのは分かるのですが、じめじめして暑い今のような時期にインフルエンザが流行るものなのでしょうか?
というのも、6月の中頃から末にかけて、インフルエンザではないかと思われる患者さんが続けざまに来たのです。
もちろん、それがインフルエンザだと確証できているわけではありません。当院のようなところでビールス検査などできるわけはないですから、たぶんインフルエンザだろうと推測するしかありません。その症状がインフルエンザを強く疑わせるという熱発患者。39度かそれ以上の高熱と頭痛などの全身症状が強い、それに反し鼻咽喉頭症状が軽いとなれば、冬であればまずインフルエンザと診断してしまうでしょう。そういう患者さんが続けざまにやってこられました。
私の所にはあまり風邪の患者さんは来ないのですが、そういう私の所にでもこれほど来たということは、こういう風邪がかなり流行ったのではないかと推測しています。
で、調べてみました。
インフルエンザは今、どれくらい流行っているのかというような情報はインターネットの独壇場ですので、どこかにないかと調べてみたらありました。
http://www.gunma.med.or.jp/kansen/zenkoku.html
に感染症の動向資料が載っています。そこのインフルエンザのところを見ると、、、
さすがに冬は多く、4月の末になると激減しています。2万近くあったのが300位にまでなっている。ただし0ではない。
もうしばらくしたら、6月分の統計も出るでしょうから、それを注意していることにします。
レセプト点検の時期です。
しばらくインターネットで遊ぶのはお預けですね。
月初めはレセプト点検の時期であると同時に、審査が帰ってくる時期でもあります。
審査で削られないようにきちんとレセプト点検をしているところでは少ないかもしれませんが、どうも当院は目を付けられているようで、削られることが多い。確かに、こちらのミスで、ははぁ、お代官様の言われる通りでごぜぇますだ、と頭を地面にすりつけるしかないことも多いです。
冗談めかせて書いていますが、裏には憤りと悲哀が込められているのです。この文章の本当の意味、文章の裏に流れている憤りや悲哀を医師以外の方に理解していただくのは難しいでしょう。いや、医師の中でも開業医にしか共感していただけないのではないかと思います。
本来は再診なのに初診料を取っているとか、受診日数と処置の回数が合わない、保険者がいない(こういうこともあるからきちんと保険証の確認をすべきなんですが、実際にはなかなか実行できないものです)などなど、こういう明らかにこちらのミスというのはあります。そして、それを指摘されたら、それこそ、ははぁ、と平身低頭もします。
ただ、中に診療内容にまで口を出してくるものもあるのです。
それも、数ヶ月や半年もたって、削ってくる。これは、今はやりの健保組合や国保組合が独自に依頼している民間の審査会社がやったものでしょう。ただ機械的にこれこれはこの病名では認められない、として削っているとしか思えません。
一つ例をあげましょう。
40台の女性、主訴は心窩部痛(上腹部の痛み)です。
だいたいこういう患者さんは胃が痛いと言われますが、胃が原因とは限りません。腹部ではもっともポピュラーな胃腸炎のほか、胆石症、膵炎、腸閉塞など、泌尿器科では腎結石、さらに心筋梗塞ということも考えておかねばなりません。そして、女性ですから婦人科的な病気のことも。
問診と理学的所見から、だいたい胃腸炎だろうというのが明らかになっても、それでも一応は除外診断をすべきです。これをきちんとしないから、時として医療過誤が起こるのだとさえ言えます。そのため、たぶん急性胃腸炎だろうとは思っても、心電図をとったりすることもある。そして、エコーと略称される超音波検査は腹部の疾患が疑われる時には必ず行うべき検査だと、私は思っています。外来で腹部の聴診や触診をするときにいっしょにやれる上に得られる情報はたくさんあります。
これが、エコーは第2の聴診器である、と言われる理由です。
理学的所見を取るときに聴診しない医師はいないでしょう。聴診するのに特別な部屋が必要なわけではない、レントゲン検査とは違うのです。そして、そこから得られる情報には診断をする上で決定的なものがあります。エコーも同じです。
違うのは、聴診器は数千円から数万円という機具ですが、エコーは数百万するという値段の差だけと言えます。
この患者さんは、心電図とエコー検査をしたが、結局、単純な急性胃腸炎だったとします。で、病名を急性胃腸炎としてレセプトに出すとしたら、まず心電図とエコー検査は削られるはずです。一方、この患者さんに腹部レントゲン撮影をしたとしたら、たぶん削られないでしょう。私はレントゲン検査は不必要と考えますが、審査会社はこちらの方は通すはずです。
医師ならこれを理解できる。日常実際に診療している医師なら。
しかし、審査会社の人間には分からないでしょう。たぶんただ機械的に腹部レントゲン撮影は可、心電図検査、エコー検査は不可とするでしょうし、彼らが実際にそうしているのは、私が経験していることです。
こういうことは医療を歪めていると思います。
と、愚痴っていても、レセプトで削られるのは悔しいし、私も食べていかねばなりません。で、狭心症疑いとか胆石症疑いなどという病名を付け加えることになる。これらは除外診断の中の一つに過ぎないし、そんなことは病名として書かなくても医師なら分かることです。急性胃腸炎と最終診断しているが、その前にいろいろな除外診断をしているのだろうと分かるはずです。
ただし、審査会社の人間にはこれが分からない。そのため、一旦通ったエコー検査が(これは最初の審査は医師がしているからです)、何ヶ月もたって削られてくる。そして、これは「胆石症疑い」という病名漏れによるものですから、再審査を出しても認められません。病名漏れは通らないのです。
つまり、泣き寝入り。
中高年の女性で突然腹痛が起こってきて、下痢、それも血性となればまず虚血性大腸炎を疑うというのは常識である、、、、
とえらそうに書いてますが、最初私が経験したときにはびっくりしたものです。
腹痛でふーふー言っている上に、下血しているとなると、何か重大な生命にかかわる疾患ではないかと、患者ばかりでなくそれを診る私の方も心配してしまう。
そして大腸内視鏡で見てそのすさまじさに2度びっくり。
これは何じゃ!
ところが、そんな驚くようなものじゃないのだ、というのをこの病気を何度も経験されている内科の先生に教えられました。
「一度見たら忘れませんよ、非常に特徴的ですから」
確かに言われる通りでした。
先日、中年の女性が突然の腹痛が起こってきた、さらにその下利便が真っ赤だということで驚き、心配な上に痛みと下痢のため昨夜は少しも寝ていませんと来院されました。
それも、血性下痢というので、いま流行りの「O157じゃないのでしょうか?」と、O157のことも心配を倍加させている。
私はこれはあの虚血性大腸炎だろうとあたりをつけ、まず内視鏡してみましょうと、自信たっぷりに説明しました。
内視鏡検査をするのに前処置はいりません。下部消化管の内視鏡には便は邪魔なもので、これをきれいにするのが大変なのですが、虚血性大腸炎の場合は、下痢があるため前処置が不要です。
検査室にそのまま横になってもらい、大腸内視鏡検査をやりました。
その内視鏡写真・・・・>
これほどひどいのが1週間後にはほとんど治癒してしまいます。粘膜の再生力の強さのたまものでしょう。次に1週間後と2週間後の内視鏡写真を示します。まだ完全治癒とまではいっていませんが、ほぼ治癒しているとみていいと思います。
1週間後・・・・・・・・・・・>
2週間後・・・・・・・・・・・>
私は最低1週間くらいは絶食にしようと考えていたのですが、3日後にはお腹が空いたから何か食べたいと言われ、流動食をはじめました。少し心配ではありましたが、順調に経過、上記のように1週間後の内視鏡検査ではほとんど治癒状態になっています。
2,3ヶ月して、注腸検査をして狭窄が起こっていないかみる予定ですが、たぶん大丈夫でしょう。
商品名を書いていいのかどうか、ちょっと心配なところもあります。それも批判的な内容ですから。 しかし、このキズドライのような、医師が使わない、かつ処方もしないが、医療処置に使われるものを、一般になんと呼ぶのか分かりませんので、敢えて使わせてもらいます。 なお、もし問題があるのなら、別の名称に変えますので、メールなり掲示板なりにご教示願います。
以下、本文です。
擦過傷に使えとCMでよく流れていますから、皆さんよくご存じでしょう。 あたかも、ちょっと吹きかけたらそれですぐよくなるような、そういう内容です。 近頃、傷、それも擦過傷以外の例えば切り傷や裂き傷、中には挫滅創にまでこれを付けて来る患者さんが多くなりました。
これは是非止めて下さい。
傷というものは、上から清潔な布(ハンカチでいいでしょう)で押さえて、そのまま病院に行って処置してもらうのが一番いいのです。傷が汚れているのなら清潔な水(水道水でかまいません)で洗うくらいが、医師でない人ができる処置です。上から、キズドライのようなものを付けるのは何の意味もありませんし、逆に医師による後の処置に洗浄という余分な手間をかけるだけです。さらに、特にいけないと思うのは、少し深めの擦過傷にこれをつけると、上が乾燥し下の擦過傷部分に異物や細菌が閉じこめられ化膿してきたり蜂巣織炎やリンパ管炎まで起こしてくることです。創傷面が開放されていますと、傷口についた異物や細菌は浸出液と共に排出されますが、閉じこめられていると、細菌はより深く進入してきます。そのために周辺に炎症が広がるのです。 さすがに近頃はアロエとかその他不潔なものを付けて来る人は少なくなりましたが、こういう不必要で後の処置に困るものを付けてくる人が後をたちません。CMの効果なのでしょう、逆に多くなっています。
私は、キズドライのようなものは、ほとんど出血もしないようなごく浅い擦過傷にしか意味はないと思います。出血するまで深く傷ついたものには適応外だと考えます。 そして、出血しないくらいの傷なら、何もしないでそのまま乾燥させておけばいいのですから、結局、こういうものはなんの価値もないと思います。
指輪をはめている指が腫脹し、指輪が食い込んだ状態となると、ますます腫脹してきますから悪循環となり、指輪が取れなくなってしまいます。
この時、どうするか?
簡単で確実な方法があります。それも指輪を切断するのではなく、また指を切断するのでもない確実な方法。既にご存じの方も多いと思いますが、知っているのと知らないのでは大違いです。
今日、休日当番だったのですが、指輪が取れなくなったと患者さんが来られ、この方法でとってあげました。非常に感謝されました。指輪は諦めていたのにと。
使う道具は、よくすべり丈夫な糸だけ。私は、少し短いのが玉に瑕なのですが、ナイロン糸を使っています。
言葉で説明するより図を見たらすぐ分かりますので、医学雑誌より引用します。
臨床外科、1997年増刊号(52巻)、282ページ。
(右図参照)
なお、麻酔なしでやろうとすると、かなり痛いです。できれば伝達麻酔下にした方がいいと思います。
まるでコロンブスの卵みたいな簡単な方法ですが、思いでの詰まった指輪をダメにすることなく除去できますので、患者さんに喜ばれること請け合いです。
インフォームド・コンセントが大切であるというのは、今やコンセンサスができています。
たぶん、この原則論に反対する人は、医者にもまずいないでしょう。
しかし、これは行き過ぎじゃないかというのを近頃よく耳にします。
今日(平成10年11月26日)の日経新聞に、「説明義務を怠り医療過誤」という記事が載っていました。
脳血管造影中に患者が脳梗塞を起こした、それに対し松山地裁は「検査に過失はない」が「検査の危険性の説明義務を怠った」として「医療過誤を認定し」、被告医療法人に「約4500万円の支払いを命じた」というのです。
医者は患者に治療や検査をする前に、なぜそれをするのかの理由や、そのメリットばかりでなくデメリットも説明し、患者に納得してもらって初めて実際に治療や検査を行うことができる。これがインフォームド・コンセントです。そして、これは治療を行う側の義務であり、治療を受ける側の権利でもあります。
しかしこの事例のように、それが不十分であるから医療過誤だというのには、私はどうしても納得できない。
医療過誤というのは、検査や治療に不適切なことが行われ、それによって患者が不利益を受けた場合に言うはずです。医療過誤は説明が不十分なのではない。治療や検査で過ちを犯したことが医療過誤です。
この判決では、検査に過失は認められない、としています。
検査に過失はないのになぜそれが医療過誤だとなるのか。私は納得できない。
この判決で裁判所は、インフォームド・コンセントが不十分だという理由だけで、検査に失敗したとか治療方法を間違ったというのと全く同じ程度の責任を医療機関に負わせようとしています。そして、こういう傾向はこれからもますます強くなって行くだろうという教訓を、私たち医療をする側はこの判決で持ちます。
これは、医療側も、その医療を受ける患者側も、双方にとっての不幸だと思います。
こういう傾向は、真のインフォームド・コンセントのためにはマイナスだと考えます。
これだと、医療側は不十分だとされないためにインフォームド・コンセントをマニュアル化し、ただ機械的に、説明したということだけを残すようになるでしょう。そして、患者には、医療のプロとしてこうすることを勧めますということは一切言わなくなると思います。これでは、インフォームド・コンセントではなく、インフォームド・セレクトです。そして、こういう状態は医療を受ける側に多大の不利益をもたらすでしょう。検査にしろ、治療にしろ、これを選べばあれが立たず、あれを選べばこれが立たずという究極の選択をしないといけないことがほとんどなのです。その選択の苦しさや責任をただ患者に押しつけるだけのインフォームド・セレクトが、インフォームド・コンセントとして広く行われるようになって行くのではないか。
実際、訴訟社会であるアメリカでは、既にこういう弊害が出てきているそうです。
インフォームド・コンセントが不十分だということと医療過誤とは分けるべきだと思います。近頃、患者救済のためにインフォームド・コンセントが不十分だということを持ち出すことが非常に多くなっています。それは、医療過誤を証明する苦労に比べたら楽だからでしょう。しかし、こういうことを続けていたら、インフォームド・セレクトという医療を行う上で非常に重要なことを歪めるだけです。そして、それは患者にとっても不幸なことだと思います。
O?157とかMRSAなど、しばらく前から細菌の逆襲ということが医療現場ばかりでなく一般的にもよく言われるようになっています。
抗生物質がこれほど発達しても、細菌感染をコントロールできないのが現実です。主に、抗生物質に対する耐性を細菌が獲得することによるのでしょうが、これは生物が持っている本質的な能力でもあります。一番簡単なビールスのような、定義次第で無生物とも言えるような簡単な生物から我々人間も含む非常に複雑な多細胞生物まで等しく持っている能力です。
ですから、これからも未来永劫、細菌感染症は人の健康にとって驚異であり続けるでしょう。
そして、そういう感染症の中で、昔から非常に重篤な感染症として医療関係者に恐れられているものがあります。
ガス壊疽です。
ガス壊疽は、厳密にはクロストリジウム菌感染による特異的感染症を言いますが、往々にして細菌培養検査をしてもクロストリジム菌を検出できないことがあります。その時にはガス産生菌感染症と言うことになりますが、非常に死亡率が高い重篤な感染症であるということにはそれほど違いはありません。
私は救急医療を専門としていましたので、下肢や会陰部のガス産生菌感染症の経験はありました。しかし、頸部のは今回初めてです。これが私にとって非常に貴重な経験でありかつ教訓となったことでしたので、ここに記録にとどめておこうと思います。
40歳台の男性が、喉が痛い、高熱が続くと来院されました。
喉は少し発赤が見られますが、扁桃腺は大きくなく、また膿もついていない。右の顎下部に軽度の腫脹と圧痛が見られ、リンパ節炎を起こしていると考えられました。それも白血球増加がありますから、ビールス感染ではなく細菌感染による咽喉頭炎および頸部リンパ節炎と考え、抗生物質の静注および経口投与を開始しました。
翌日、40度近い高熱が続くこと、咽喉頭部および脛部痛が強く、また倦怠感もあるとのことで入院加療とし、抗生物質の点滴静注を開始しました。
しかし、高熱および咽喉頭部痛は軽減せず、さらに次第に右顎下部の腫脹が強くなってきました。発赤も次第に広がり、上方は右頬部、下方は鎖骨まで達しました。蜂巣織炎です。そしてついに、入院3日目、右顎下部および頬部の腫脹に握雪感を触知したのです。レントゲン写真でも、さらにCTでも明かなガス像が認められます。
間違いない!
この時、私は自分の血の気が引くのをはっきり感じました。たぶん、真っ青になっていたと思います。
ガス壊疽、それも頸部のガス壊疽!
下肢なら、どうしてもダメなら切断という手があります。しかし、頸部ではそれはできない。また広範囲の切開、デブリドーマンも、たとえ結果的に生命を救うことができても、後に醜形や拘縮を残すでしょう。
頸部のガス壊疽なんて、いったいどうしたらいいのか!?
とにかく、開業医で対処できるようなものではありません。
私はガス壊疽には高気圧酸素療法という先入観がありましたので、徳島県でそういう設備があるところがどこかないか、知り合いの先生に尋ねたりしたのですが、どうも適当なところがない。それで、遠方なのですが、私の出身大学にすがることにしました。
大阪大学救急部には、その中で手術ができるくらいの大型の高気圧酸素室があります。私が研修医の時、よく患者さんについてその中に入ったものです。
午後も5時頃だったでしょうか、大阪大学救急部に電話をかけたところ、幸いなことに私を知っていてくれるスタッフが出てくれました。そして、快く受け入れを承諾していただけました。さらにいいことには、ちょうどその日の当直医はこういう頸部のガス産生菌感染症の経験を何例か持たれており、患部にチューブを挿入して洗浄する方法で助けていると言うのです。
これは、願ってもないことです。さっそく、救急搬送の手はずを整えました。患者やその家族の了解をとり、鳴門市消防署には救急車の手配(これがまた大変だったのですが、それは後ほど)などをし、午後7時過ぎより、私も救急車に同乗して大阪府吹田市にある大阪大学救急部まで患者を搬送することになりました。
以下次号
患者さんは高熱と頚部痛で憔悴されていましたが、全身状態は比較的良好でした。食欲は落ちているとはいえ経口摂取は可能で、病院食はほぼ全量摂取できていました。もちろん自力歩行も可能でした。しかし、後に分かったことですが、救急搬送前日に採血した検査では、BUNが40、Creが2.0と腎障害を来たし、さらに総蛋白が5gを切るほどの低蛋白血症になっていました。一見元気そうに見えていましたが、既に危険な状態であり、死への坂道を転げ落ちる一歩手前だったのです。
ですから、歩ける患者を鳴門市から大阪まで救急車で搬送する適応があるのかと思われるかもしれませんが、結果論から言っても、救急搬送が正解だったと確信しています。
救急搬送は、鳴門市救急隊により、鳴門市の当院から鳴門大橋を通り淡路島、明石大橋を渡り垂水まで搬送、そこで垂水の救急隊に乗り換え、吹田にある阪大病院特殊救急部に行くことになりました。
垂水で乗り換えねばならなかったのは、鳴門市の救急隊が大阪まで患者搬送した経験がないこと、つまり前例がないこと、および道路事情を隊員が知らないことなど、きちんと搬送できるか確信がもてなかったことによるものでしょう。私は患者の疲労などを考え、できれば直通で行ってくれないかとお願いしたのですが、上記のような理由で垂水での乗り換えとなりました。しかし、これが結果的に正解でした。
夜の本四連絡道路をサイレンを鳴らしながら一路垂水インターへ。
救急車は意外と揺れるものです。患者さんはじっと目を閉じて担架に寝ています。不安だったしょう。近くの総合病院への転院どころでなく、遠方の大学病院への2時間以上をかけての転送なのです。これは命もあぶない重篤な状態に違いなのだろうと分かっているはずです。私も不安ですが、患者さんはそれ以上に不安だったに違いありません。後で聞いたことですが、家族ももしかして患者は棺に入って鳴門に帰ってくるのではないかとさえ覚悟していたそうです。
明石大橋の雄大で美しい眺め、そんなものを鑑賞する余裕などなく渡り終え、垂水インターで降り、そこで待っていてくれた垂水の救急車に乗り換えました。そこでも、患者が歩いて乗り換えられる状態であることに怪訝そうにされましたが、これはしかたありません。このことについては帰る時に病態の説明をしましたから理解してくれたと思います。垂水からは、阪神高速で西宮へ、さらに名神高速で吹田のインターへ、そしてそこから万博の跡地に建っている阪大病院という道順で搬送していただきました。
この吹田インターを降りてから阪大病院までがまるで迷路なのです。聞きしにまさる複雑さ。これでは一度も来たことのない鳴門の救急隊では、まず迷ってしまっていたことでしょう。垂水の救急隊でさえ、地図を片手に走らないといけなかったのですから。
それにしても鳴門から吹田まで約2時間ちょっとです。明石大橋の効果絶大と言わねばなりません。
阪大病院救急部外来で患者さんを当直医に引き渡しました。紹介状を渡して簡単に今までの経過を説明してから、一緒に救急車に乗ってきた患者さんの奥さんには、最高の治療をしてもらえるところに来たのですからここに任せるしかないことなどを説明しました。これで一応、私の責任は終了です。後は、阪大救急部のスタッフの力にすがるしかありません。
そこで私に残る問題は、どうやって吹田から鳴門まで帰るかです。
この時、既に9時を過ぎていました。開業医の悲しさ、翌日を休診にはできません。来るときは、救急車に乗っておればいいのですが、帰りはそういうわけにはいきません。しかし、とにかくまず垂水まで帰る救急車に同乗させてもらうことにしました。垂水まで行けば、そこから高速バスなど何らかの交通手段があるだろうと期待してです。ところが、救急隊が調べてくれたところでは、最終バスはもうないと言うのです。これは困った。垂水のインターまで家族に迎えに来てもらうという手も考えたのですが、垂水インターは吹田以上の迷路になっていて、待ち合わせなど全くもって無理というものです。これはタクシーで淡路島に渡らないといけないかとあきらめかけたら、救急隊員が助け船を出してくれました。
淡路サービスエリア(SA)までなら送ってあげますよ、と言うのです。
願ったりかなったり、地獄に仏とはこのことです。淡路島にさえ行ければ何とかなります。 さっそく自宅に電話し(携帯電話はほんとに便利です)、妻に淡路SAまで迎えに来てくれるよう頼み、待ち合わせ場所を指定しました。これで安心して帰れます。こうなれば気は楽です。淡路SAまで、垂水の救急隊員と世間話をしながら、そして途中の明石大橋の夜景(まさにレインボーブリッジ、いやぁ美しい)を今度は充分堪能できました。その日は、風が強く、橋の上ではワンボックスカーの救急車が横風にあおられたのですが、気持ちがハイになっていたからでしょう、全く気にもならなっかった。
以下次号
患者さんは転院後、約2週間して、元気になって帰って来られました。
それも、恐れていた頸部の拘縮など全くない上に、さらに洗浄用チューブを挿入した跡がある程度の傷跡しか残っておらず美容的も問題はありません。
ほんとに良かった。
阪大病院には、時々主治医に電話し、経過順調であるということは知っていたですが、それでも元気に帰って来られた時には、思わず涙が出ました。患者さんやその家族の皆さんも少し涙ぐまれておられましたが、私もです。
主治医の先生から聞いた話や紹介状、また患者ご本人より聞いた話などから転送後の経過をまとめますと、、、
転送したその日にエコーガイド下に頸部の膿瘍を穿刺し、さらに透視下にガイドワイヤーを用いてドレーンを挿入し洗浄。非常に臭い膿瘍が出てきたそうです。そして、ペニシリンG2000万単位/日、チエナム1g/日を点滴投与。ドレーンはそのまま留置し、持続洗浄を続けた。
経過は非常に順調で、炎症は急速に軽快し、ドレーンは7日目には抜去できた。
全身状態も良好で、食事はほぼ全量を摂取していたそうです。患者さんご本人の話では、食べることが自分に出来る唯一のことだと一生懸命食べたということです。
劇的に良くなった。救急部のスタッフも皆驚くほどの回復ぶりだったそうです。
自力歩行、経口摂取もでき、その上点滴もない状態の患者が救急部の病室にいると、ご本人は大変です。重症患者に囲まれているのです。夜通し、人工呼吸器や心肺モニターの音がしているところでいることを想像してみて下さい。そういう中でさぁ寝ろと言われても、そう寝られるわけもない。また、時には人が死んで行くところを見なければならない。普通の精神の持ち主ではとてもそう長くはおれるようなところではありません。
この患者さんもさすがにまいってきたそうです。一般病棟に移れたときには嬉しかったでしょうし、さらに退院のときにはどれほどだったか、、、
救急部退院時にはほぼ健康状態だったのですが、すぐ自宅へというのも心配だったので、1週間ほど当院で入院療養とし、その後自宅療養となりました。
さて、このケースにおける反省です。
これほど重症にしないようにすることが可能だったかどうかです。
初期における抗生物質の選択は適切だったか、またその量はあれでよかったのか?
例えば最初からもっと強力な抗生物質をもっと多量に使うべきだったのではないかというようなことはないのかどうか。
次に、もっと早く適切な病院への転院を考慮すべきではなかったのか?
しかし、もしそうであっても、では実際この患者の場合どの時点なのか、、、
頸部リンパ節炎で高熱を出している患者は外来でさえたくさんいます。こんな患者を救命センターに紹介していては顰蹙を買うだけでしょう。
では、頸部の蜂巣織炎が見られるようになった時点か?
ただ、この時点で私は外来で使っていた抗生物質を変更しているのです。また量も多めに使用しています。この経過も見ずにすぐ転院というのも問題です。
患部に握雪感が見られるようになった時点より遅くなれば、これは医療過誤でしょう。あれ以上、当院でもたもたしていたら、患者の命にかかわったし、たとえ助かっても、たぶん頸部に大きな瘢痕を残していたと思います。
結論としては、平凡ですが、、、
こういう恐ろしい感染症があるのだと肝に銘じていること。そして、適切な医療機関への転送の時期を失しないこと。
これしかないと考えます。
いろいろ反省はあるのですが、結果としては後遺症もほとんどなく治癒しました。これは阪大病院救急部のスタッフの皆様のおかげです。また、患者さんご自身もよくがんばられたと思います。
さらに今回、転送には鳴門および垂水の救急隊員に一方ならぬお世話になりました。
ここであらためてお礼を申し上げます。
皆様、ほんとうにありがとうございました。
この冬はインフルエンザがニュースを賑わしました。 やれどこそこの老人ホームで何人死んだの、あそこの精神病院では何人だのと、そのたびに病院の管理がどうのと言われ院長が釈明会見をやらされていた。
以前は、学童にインフルエンザの予防注射をやって、社会的な流行を止めることで、老人や呼吸器疾患を持っている人への感染を防ごうとしていました。それが、予防注射の副作用問題が起こり行われなくなった。今や、予防注射に使うワクチンさえことかくありさまです。
本来は、学童などに予防注射をするのではなく、老人や呼吸器疾患を持っていて、インフルエンザにかかると命も危ないという人たちにこそ実施すべきなので、それも保険で予防注射をするとまで踏み込んでやるべきなのです。ところが、そういう人たちには予防注射で何かあると訴えられるかもしれないと逆に予防注射がなされない。厚生省は学童にインフルエンザの予防注射をして副作用問題でたたかれたことで、膾を吹いている。
さて、当院にもインフルエンザにかかると、非常に危険だという患者さんが入院されています。陳旧性肺結核による慢性呼吸不全患者です。予防注射をどうしようかと迷ってはいました。患者さん自身も、私費でもやってもいいとは言われていたのですが、いま一つ踏み切れなかった。
私も、副作用が怖かったのです。
その患者さんが、2月になってインフルエンザにかかってしまったのです。さぁ、それからが大変です。
シンメトレルというインフルエンザの治療薬を飲んでもらい、熱はすぐ下がったのですが、呼吸機能が悪くなり、非常に苦しがる。ちょっと動くだけで呼吸不全がひどくなるほどで、便所にもいけない。そのため膀胱バルーンを挿入し、大便もベッド上でしてもらうようにしました。しかし、それでも酸素を常時投与しないといけない状態でした。じっとベッド上で安静にしていても息ぐるしがる。
いつでも挿管し、人工呼吸器に乗せられるよう準備をしていたのですが、幸いなことになんとか3月になっておちついて来ました。そして、次第に酸素も要らなくなり、今は前と同じように、元気と言えば語弊がありますが、大部屋での生活に戻っています。
これが精神病院や老人病院ではどうなっていたか。人工呼吸器があるとも思えないし、、、
また、早期にシンメトレルを投与できて、それが奏効したからよかったものの、これが遅れていたら、どうなっていたか分かりません。患者さん共々、今年は10月か11月になれば予防注射をしようと言っているところです。
私の地域の機関病院は鳴門病院なのですが、インフルエンザの流行期はインフルエンザにかかった高齢者のためにベッドが満床で、他の患者さんに使えず困ったそうです。それが3月まで続いていたとか言われていました。
4月になって、やっと暖かくなり桜も満開となり、流行も終わりでしょう。
インフルエンザの予防注射はしておきましょう、というのが、今回の教訓。
医療類似行為を行ってしこたま金を儲けている連中がいる。
こういう連中は、今に始まったことではなく、昔からいた。また日本だけの現象でもない。ヨーロッパ、アメリカ、中国や東南アジア、そしてアラビアやアフリカなど世界中にいて、病気という、人の不幸を食い物にして肥え太っている。
病気という人の不幸を食い物にしているというのは、医者も同じじゃないかと言われると返す言葉がありません。また、中には同業者として恥ずかしいような連中がいるのも事実ではあります。ただし、そういう医者の風上にも置けないという連中はごく少数ですし、彼らは医療類似行為を行っている医者でない連中と別段違ったことをしているわけではありません。彼らは、医療類似行為をして金を儲けているのがたまたま医者だったというものであり、医者だから医療類似行為をしていたのではない。医者という肩書きは、医療類似行為の強力な権威付けにはなっているでしょうが。
さて、そういう医療類似行為の中で、近頃とみにそのネタになっている病気にアトピー性皮膚炎があります。慢性疾患であり完全治癒というのが難しいこと、クリアカットな病因の説明がしにくいことなどがその理由でしょう。そして、特に近頃はステロイドに対する不安を煽ることで、自分たちのビジネスチャンスを拡大しています。
つい最近、アトピー性皮膚炎が重症化し、入院治療まで要した症例で、いわゆる民間療法を試みていたのがどれほどあるかという研究発表があり、確か50%以上の人が主治医には言わずにやっていたとのことでした。テレビニュースでこのことを知ったのですが、その多さに驚いた次第です。
これに関連して、MRの人が持ってきてくれる資料に面白い記事がありましたので紹介します。
題して、「アトピービジネスとステロイド外用薬・悪魔の薬伝説 」(PTM vol.10,9(3)APR.,1999)、著者、金沢大学医学部皮膚科教授、竹原和彦。
「アトピー性皮膚炎の医療をめぐる社会的混乱ともいえる状況は我が国特有のものであるが、今日なお終焉を迎える兆しは全く感じられない。このような混乱の背景として、「ステロイド外用薬・悪魔の薬伝説」をその企業戦略の根間とするアトピービジネスの存在が重視される」
アトピービジネスとは何か、いわゆる民間療法という言葉とどう違うのか、、、
アトピービジネスは、「 アトピー性皮膚炎患者を対象とし、医療保険診療外の行為によってアトピー性皮膚炎の治療に関与し、営利を追求する経済活動 」と定義される。
民間療法は、その背景には「善意によるアドバイス」というニュアンスが含まれており、「営利を追求する経済活動」というのとは乖離しています。しかし、今日の日本のような高度資本主義社会においては、いわゆる民間療法でもそのほとんどが「営利を追求する企業活動」と化しているのも事実です。種々の名称の研究所を名乗り、そこからこういう治療法があるという本を出して権威付けをする(これと悪徳商法の典型であるバイブル商法とを区別可能でしょうか?)。町の本屋をちょっと覗いてみて下さい。そういうバイブル本がたくさん並んでいます。これらは「善意によるアドバイス」という意味の民間療法とはとても言えません。「営利を追求する企業活動」以外の何ものでもない。
その上、このビジネスに医療機関や医師までが参加しているのです。
で、著者は、前述のアトピービジネスの定義に「 医療機関及び医師によって実践、後援されているものも含む」という注釈を付け加えたいと述べています。
このアトピービジネスは、そのほとんどがステロイド外用薬の副作用を誇張することでアトピー性皮膚炎患者の不安を増大させ、その不安につけ込んで、自分たちの「驚異」の治療法を売り込もうとしています。これは、宗教カルトが、人の死や不幸という漠然とした不安感を誇張し、そこに自分たち独自の救いを差し伸べることで勢力を拡大しているのと全く同じ構図と言えましょう。
著者は、そのステロイド外用薬の副作用なるものが、事実ではないと強調しています。副作用がないと言っているのではありません。そうではなく、それらは誇張されたものだったり、誤解であったりするものだと言っているのです。
1,リバウンド現象
いわゆるリバウンド現象とされているものの多くが「不適切な治療が継続されている例において、不適切な時期に治療が中断されることによる症状の急性憎悪」を意味していると著者は述べています。アトピーだけじゃなく、他の病気においても、治療を中断すればその病状は増悪する、それは治療薬が原因ではない、不適切な治療と不適切な治療中断が原因なのだと。
2,副腎の萎縮
very strong クラスのステロイド外用薬であっても「通常使用量(1日10g以下)では、異常を生じないことが過去の研究により証明されている」そうです。
3,全身的副作用が生じる
内服薬での副作用から、こういう懸念を持っていることが多いということです。
4,治療抵抗性の獲得
著者は、これは「症状に応じた適切なランクのものが使用されていない、十分量が使用されていないなどによる錯覚である」と断言しています。
5,依存症を生じる
これは、慢性疾患における病状のコントロールを目指すという治療法を否定することに通じると著者は指摘してます。インスリン治療中の糖尿病患者はインスリン依存症と言うのかと。
6,催奇形性がある
現在では内服薬においてもほぼ否定されている。通常使用量の外用薬では「全く問題ない」。
7,色素沈着
炎症後の色素沈着がステロイド外用薬の副作用と誤解されている。
アトピービジネスのカモにならないためにはどうすればいいのでしょう?
最善の方法は、ステロイドを必要とするような慢性皮膚疾患の場合には、専門医に治療をお願いするということにつきると私は思います。
これは、患者さんだけじゃなく、医師にも言える。
私は、皮膚科専門医ではありません。ですから、ステロイド外用薬もリンデロンV軟膏とローションしかおていません。これはクラスとしてはstrongになり、使いやすいかなと考えたためです。そして処方するときには、必ず「漫然と使用しないこと」ということをしつこく説明することにしてます。それと、白癬との鑑別の意味で、白癬菌検鏡検査をすることにしています。そして、頑固な湿疹病変はすぐ友人の皮膚科専門医に紹介することにしています。
アトピービジネスの隆盛は、大衆の無知がその一番大きな理由でしょうが、医師にも責任があると言わねばなりません。1のリバウンド現象、4の治療抵抗性の獲得などは、医師のステロイド外用薬使用に不適切な部分があったために起こったのだと言われてもしかたがないでしょう。
では「正しいステロイド外用剤の使用法」とはどういうものか、、、
著者は、その例として図で示しながら次のように述べています。
「憎悪時には、症状を短期間に改善しうる程度の強いステロイド外用剤を使用し、充分な改善が得られた後に中止または保湿剤に切り替える。また、その後の憎悪時には早期に適切なランクのステロイド外用剤を開始し、コントロールすることが大切である」。
ひとことで言えば匙加減ということになりますか。ただし、この匙加減ほど難しいものはありません。科学に裏打ちされた長い経験が必要でしょう。
自戒を込めて、、、
9月はじめに、徳島県国民連合団体連合会から「パソコンで介護報酬の電子請求ができます」というパンフレットが来ました。
お、医療の電子化もやっとここまで来てくれたかと喜んだのですが、その内容を見て落胆しました。これを利用する条件にマイクロソフトのOS(Windows98/95、NT)ばかりじゃなく、アプリケーション(Word97/98、Excel97)まで指定しているのです。
国保連合会は何を考えているんだと思いました。介護保険という公的な保険制度を一私企業に支配させるつもりなのかと。
以下は、私が徳島県医師会の掲示板にUPしたものです。
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介護保険がマイクロソフトに支配されようとしている
鳴門市で開業している橋本と申します。
この掲示板はほぼ毎日覗かせてもらっていて、以前、何度か書き込んだこともあります。
以下のことは、問題提起として書かせてもらいます。
昨日(9月8日)、徳島県国民健康保険団体連合会から介護報酬の請求方法に関するアンケート 調査のお願いという文書が来ました。それによりますと、介護報酬等の請求方法がISDN回線 を使った伝送や磁気媒体、紙での方法の3種が予定されているとのことでした。
ISDN回線を使っての伝送や磁気媒体での請求が加わるというのには私も賛成ですが、問題は それが私的企業のソフトを使うことを条件としていることです。
「国民健康保険中央会が開発する通信プログラムを利用するときの条件(予定)」として、、、
動作OS:Windows98/95、WindowsNT4.0
必要なソフトウェア:Microsft Word 97/98、Excel97
と書かれています。
動作OSでさえ、一つのものに限定してしまうのは問題だと思うのに、ソフトウェアまで私的企 業のものを使うのは、介護保険自体がその会社の支配されることと同じではないでしょうか?
OSやアプリケーションは情報の根幹をなしており、そして情報を握る者がその情報を利用する ものを自由にできるのです。
つまり、介護保険の電子請求に、ある私的企業のOSとソフトウェアを使うということは、介護 保険という日本の公的制度が一つの私的企業の支配下に入ることを意味しています。
大げさに聞こえるかもしれませんが、もしそうであれば情報というのを軽視し過ぎていると思い ます。今や、情報を握る者が世界を握るのです。
個人としての趣味や仕事に、何を使うかは個人の自由でしょう。各人がいいと思うものを使うと いうのは個人の権利でもある。
しかし、公的な機関の場合は別です。
私たちは、公的機関が決めたソフトを使うことを強制されるのです。
このことを前提に、どういうOSでどういうソフトを使うか、そしてそれ以前にどういうデータ 形式を使うかということまで慎重に考慮しないといけない。
私的企業のソフトウェアを条件とするというのは間違っています。
公的機関が使うデータ形式は、できるだけ一般的なものにすべきです。
具体的には、ワープロ文書はJISなりの文字コードを使ったテキスト形式とし、データベース は、ほとんどのソフトが扱えるCSV形式での伝送にすべきだと考えます。
医師会会員の方々のご意見をお聞かせください。
また、医師会はどういう姿勢でいるのかも教えていただけるとありがたいです。
国民健康保険中央会の上記のような決定に、医師会も同意しているのでしょうか?
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医師会の担当理事から回答を頂いたのですが、それによると、国保連合会が医師会の了解もなく介護保険に関するアンケート調査を医師会会員に行ったことに反対しているとのことでした。
マイクロソフトのOSやアプリケーションを利用の条件にしていることには、医師会はどう考えているのかと問うたのですが、その内容については今回は立ち入らない(立ち入るとアンケート調査したこと自体を認めることになるという理由だそうです)とのことでした。
これ以上、医師会に何を問うても無駄だと悟った次第です。
それにしても、どうして国保連合会はマイクロソフトに肩入れするんだろう?
類は友を呼ぶじゃないですが、9月はキズドライの不適切な使用(適切なものがあるのかと言いたくもなりますが)例が何例か来院されました。中には、蜂巣織炎まで起こしている人もおられ、いったいどうなっているのかと、私が参加している掲示板には薬剤師のかたもおられるので、で問題提起してみました。
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皮下まで達する傷にキズドライをふりかけてくる患者が多くて、本当に困ります。
それと、以前から指摘していることなんですが、擦過傷であっても、出血するほどの深さがあれば、キズドライをかけるべきではないと思います。
表面のみが乾燥しそれがバリアーとなりその下でばい菌が繁殖、そのためにかろうじて残っていた皮膚細胞まで死滅させたり、中には蜂巣織炎まで併発している例もたびたび経験します。
キズドライの効能書きはどういうようになっているのでしょう?
切り傷や、擦過傷であっても深い傷には使うなということは書かれているんでしょうか?
もし書かれていないとしたら、なんとかしないといけない、、、
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ところが、深い傷には使うなと書かれているのだそうです。
薬剤師のかたの返辞を引用します。
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【特記事項】
(1)キズドライを使用する前に必ず、水道水等のきれいな水で患部の汚れを
充分洗い流すこと。(充分に洗浄しないで使用すると、患部に汚れが残
り化膿するおそれがあります。)
(2)患部が広範囲にわたるキズや深いキズ、やけどの場合は、本剤を使用し
ないこと。
(3)重ね塗りをしないこと。
(4)同じ箇所に繰り返し使用する場合は、ぬるま湯等で患部をきれいに洗い、
付着している薬剤を除去してから使用すること。
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確かに、この注意を守っておれば、キズドライの固まりの下で菌が繁殖ということはないでしょうし、ひいては蜂巣織炎を起こすようなこともないでしょう。
しかし、それならそれで、ではキズドライはどういう傷に使うものなのかというのが問題になる。
すぐ乾くような浅い擦過傷ということになるのでしょうが、そんな傷にわざわざキズドライなどかける必要もない。そのまま自然に乾燥するのを待てばいいんですから。
10月25日、診察室に来てモニター画面を見ていたら、何やら目の前に多数の小さな粒子が見えるのです。白い画面でよく分かり、暗いところでは分かりません。中心に黒点がある小さな円、それが多数見える。それも右目だけで、右目を閉じて左目だけで見ると見えません。
私は以前から飛蚊症があるのですが、それではありません。
急に数が増えたこと、それも右目だけというのは、どうもおかしい。
そう思い、眼科で診てもらうことにしました。
そうしたら、網膜剥離だと、すこし血管にかかっており、そこから少量の出血が起こっており、赤血球を見ているんだと。そして、このまま放置していると剥離が進み、視力障害、また血管が切れれば多量の出血も起こる可能性があるのだそうです。
私を見ていただいた先生は、大学から診療に来られているそうで、レーザー凝固には慣れています、施術自体は10分くらいで終わりますと説明されました。
これで一気に安心してしまった。
私もこういうムンテラができないといけない。 自慢じゃないですが、私はこれが下手で、どれほど患者さんを逃していることか、、、
話が横にそれました。
レーザー凝固は、一旦、診療所に帰って待たれていた患者さんの診察をかたづけてから、やっていただくことになりました。
背術中は、緊張しました。自分でも体の筋肉が硬くなっているのが分かります。
ほとんどは痛みはないのですが、何回かに1回、眼球が内側から圧迫されるような独特の痛みがあります。頭の右側半分、右肩から上肢にかけて放散痛も感じました。なんとも表現できない嫌な感じ。
網膜が裂けているところを中心に3重に焼きました、これで大丈夫でしょう。
早く来られて良かったですね、1週間でも放置されていたら、外来治療は無理で入院になっていました、と説明されました。
今日で1日たちましたが、赤血球が紐状に連なっているのか、曲がりくねった線が見えます。
私はどうも右目で主に見ているようで、うるさいというかなんというか、、、
それに、まだ小さな粒子もたくさん見える。
いつまで続くのやら、、、
しかし、手遅れになって視力を失うことを思えば、不幸中の幸いです。
そして、眼科の先生には、感謝に堪えません。ここでも、お礼をしておきます。
ありがとうございました。
まず訂正。
私のは網膜裂孔であって、まだ網膜剥離までは至っていない段階のもののようです。
網膜裂孔が起こり、そこから液体が網膜下に進入し、網膜が剥離するが、その前にレーザー凝固で網膜を癒着させて剥離しないようにしたと。
現在、無数に見えていた小さな黒点はほとんどなくなりました。
また中心部にらせん状に見えていた紐も、あるにはあるのですが、ほとんど気にならなくなった。
ただ一つ心配のなのは、1月7日夕方、急に三日月状の視野欠損が起こったことです。
左凸の弧状で、それが縞状に黒い部分と白く光っている部分がある。視野中心部の少し左側にそれが見えており、文字がうまく読めない。
視野欠損も網膜裂孔の症状だと言われていましたから心配したのですが、おかしいことに、両目で同じようみ見える。右を閉じても左を閉じても同じように見える。で、様子をみることにしたのですが、、、
これが1時間ほど続いたでしょうか、三日月が次第に大きくなっていき、視野から見えなくなりました。
今はなんともありません。
なんだったのだろう、、、
眼球の異常なら両眼で同じように見えるというのもおかしいし、脳、それも後頭葉か、などといろいろ心配をしているところです。老眼が次第に強くなっていることといい、これも歳をとってきた証拠でしょう、、、
歳をとったと言えば、正月に高校の同窓会がありましたが、白くなっているのあり、禿げているのあり、女性は女性でおばさんになっているし、私だけではないということではあります。
一般名、塩酸アマンタジン、商品名、シンメトレル。
今年はリレンザという新しい抗インフルエンザウィルス剤が認可になりましたが、まだ保険適用にはなっておらず、私ら開業医には使いづらいところです。
そのため、今年のインフルエンザにはシンメトレルを投与することになります。
その副作用と、単に病悩期間が短くなるに過ぎないことの2点を説明し、インフルエンザの可能性の高い患者さんに使うかどうか決めてもらっています。しかし、高齢者や肺などの慢性疾患を持っている患者さんは別です。飲むべきだと強く薦めています。
その一例です。
61歳、女性、12年前に胃癌にて胃全摘術、一昨年、脳出血、昨年には卵巣嚢腫で卵巣摘出術を受けている。体格は虚弱。
昨日より高熱が続くと来院されました。来院時の体温は39.1度、頭痛と腰痛があり、咳も少しある。しかし、上気道の他覚所見には乏しく、白血球数も4900と正常範囲であるため、まずインフルエンザだろうと診断しました。
食欲はなく食事もほとんどとれないとのことで、入院の上点滴をし、シンメトレル50mgを1日2錠飲んでもらうことにしました。
入院当日にボルタレン坐薬(25mg)を1個、および翌日未明にも熱発したためもう1個挿入しましたが、それ以降、38度を越すような高熱は出ず、さらに第2病日にはほぼ平熱となり、食欲も増加したため点滴も止めることができました。そして、第4病日には退院となりました。
その他、外来で処方した患者さんについては、非常によく効いたという印象を持っています。
こういう薬がずっと以前からあった(薬価収載は1975年です)にもかかわらず、インフルエンザ薬と認可されず、そのため一部の専門家しかその知識がなく我々開業医は長く使うことがなかったとはどういうことなのか。
それに聞くところによるとこの塩酸アマンタジンは、そもそも抗インフルエンザウィルス薬として開発されたものであり、欧米ではインフルエンザの薬として使われてきたというではないですか。本来はインフルエンザの薬であり、パーキンソン症候群にも効くというのは二次的な効能に過ぎないんだという。それが、日本では逆になってしまっていたとはどういうことなのか。
ほんと、どうして厚生省は、塩酸アマンタジンを抗インフルエンザウィルス剤として認可しなかったのだろう、それもこれほどの効果のある薬を。
開業以来11年、私も週休2日制になることにしました。
当院も他の医療機関のように木曜日休診とすることにしました。
実施するに当たっては、反対、特に大蔵省の反対が強かったのですが、世間の流れには逆らえません。
問題は、休みが増えてそれで何をするのかです。
ゴルフが面白いというわけでもないし、アウトドアの趣味もない。まぁ、パソコンでごそごそ遊ぶくらいが関の山。
そういう予想はついていたのですが、やはりというかなんというか、その通りになりました。
今、Linux(リナックスと発音することが一般的)にこっていて、院長室のパソコンにインストールしています。今まではVine1.1をインストールしていたのですが、この5月にVineのニューバージョンが発表になり、さっそく取り寄せ(インターネットに公開されているものをCDRに焼くサービスがあります)、インストールしてみました。
私は、ほとんどがワークステーションとして使っているだけで、サーバーとしてはいつかサーバーを設置する時の勉強として動かしているだけなので、評価は偏ったものになります。
その評価ですが、一言、すごい、よくこれほどのものが無料でと思います。
当地でもCATVが、やっとというか、引かれることになりました。
正式なサービスはまだのようですが、インターネットへの24時間接続サービスも始めるようですので、その時には当院も加入するつもりです。
そして、その暁には、Linuxマシンにウェブサーバーやプロクシサーバーをおきたいと思っています。
問題は、そのセッティングです。
セキュリティのあまいサーバーを作ろうものなら、自分のところだけじゃなく、クラッカーに足場にされたりして他のところにも迷惑をかけることになります。そうならないように、今、いろいろ勉強しているのですが、なかなか、、、
平成12年8月の徳島県医ニュースに今年の集団的個別指導のことが掲載されていました。
今年は指導されに来いという通知が来ていないところを見ると、当院はなんとか個別指導されなくてすんだようです。「診療報酬明細書の一件あたりの平均点数が引き続き高い保険医療機関」には、なんとか入らなくて済んだということになります。
ほっとしたといいますか何というか、、、
この「診療報酬明細書の一件あたりの平均点数が高い保険医療機関」 に指導をするという制度は、いくら考えてもおかしい。
そう感じているのは私だけじゃなく、大多数の保険医も同じ様で、医師会の会合などで話しても皆さん批判的です。
まぁ、そうです。「奮闘記」にも書いていますが、表向きは「点数が高いことがいけないわけじゃない、診療をしていて結果として高点数になってもそれは当然であり、指導を受けたからと言って萎縮診療をすることはありません」 と厚生省側は言っています。しかし、高点数であれば指導するという制度自体が、言っていることと正反対です。点数が高ければ「指導」するし、続けて高い場合はさらに厳しい「個別指導」が待っているとなれば、 どこから見てもこの制度は、点数が高いやつにはペナルティーを与えるぞというもの以外の何ものでない。
あまりに批判が多いので、指導対象を選ぶ方法を変えるとかいう噂を聞いたことがあるんですが、どうもガセネタだったようです。こういう噂話はどこの業界にもあると思います。医療業界も同じということですね。
県医ニュースによると、「個別指導」は、「平成10年度に集団的個別指導を受けながらも、依然として診療報酬明細書の一件あたりの平均点数が高いなど、厚生省が指摘する事由に該当する保険医療機関」で病院2件、診療所10件、合わせて12件。昨年は27件だったそうですから、皆さん、かなり一生懸命萎縮診療をされたようです。もちろん私も引っかからないようにしっかり萎縮診療をしてしまいました。
集団的個別指導(平成10年度に私のところが受けた)は、病院10件、診療所36件の計46件で、昨年の32件より大幅な増加だとか。ここに引っかかった方たちは、来年は必死に萎縮診療されることになるんでしょう。
もちろん、個別指導などいくらでもこいという猛者もおられるでしょうし、そういう方たちのおかげで、私ら一般保険医が「指導」というオオカミから守られていることになります。その意味でも、個別指導を受けられた医療機関の方々には感謝しないといけない。医師会も、何か表彰状を差し上げたらどうだろう。
数ヶ月前になりますが、消防署から交通事故現場に出動要請が私のところに来ました。未明、5時過ぎだったでしょうか、運転席に閉じこめられ、救出に時間がかかっている、まだ呼びかけに応答するので、医師の現場出動をお願いしたいということでした。
私の経験からは、医者が現場に行っても、ほとんど何もできません。経験豊富な救命救急士の方がよっぽどしっかりした初期治療ができるのじゃないでしょうか。
ただ、そうは言っても、救急隊にはいつもお世話になっています、むげに断れない。
で、救急車に乗って現場に行くことになりした。これはいわゆるドクターカーです。
現場は、大事故らしく、夜中というのに渋滞していました。反対車線を通行して現場に着くと、既にドライバーは助けだれていましたが、心肺停止していると言うのです。確かに、呼びかけに反応しないですし、頸動脈も触れません。瞳孔は暗くて分からないですが、これではたぶん散大していたことでしょう。ほとんど全身に打撲があり、四肢および肋骨の骨折があります。外出血はあまりないですが、胸腔や腹腔内などへの出血により出血ショックが一番考えられます。
こういう時は、現場で何かしようとするより、できるだけ早く病院に運ぶことです。出血性ショックによる場合は、心マッサージはあまり効果を期待できないのですが、心停止しているのですからやらざるをえません。救急車に供えられているアンビュマスクで人工呼吸しながら(これは私)、救急隊員に体外心マッサージをしてもらいながら、鳴門病院に搬送することにしました。
これがまた、難しいんです。救急車に揺られながら、マスクで人工呼吸するのは、なかなか難しい。すぐ胃の方に空気が行ってしまう。それにマスクの保持にかなりな力が要ります。ちょっとゆるめると顔との隙間から空気が逃げる。そろそろ力の限界かなという時に、鳴門病院に着いて、当直医に受け渡すことができました。
患者は、結局、心拍が再開することはなく、死亡されました。
残念ですが、しかたありません。うまく蘇生されると、苦労も吹っ飛ぶのですが、いつもそううまくはいかない。
NHKで放送されていたERでは、救急隊員が気管内挿管をし、静脈ルートを確保、いくら点滴を入れたのと医師に報告している場面がよく出てきます。アメリカではそれだけ救急隊員のできる医療手技が多いということなのでしょう。本来は日本もそうなるべきなのかもしれません。蘇生率の低さは、心呼吸停止患者への蘇生術開始の差でしょう。