星月夜作戦 - Tokyo Nova The Detonation Scenario

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Opening Phase - オープニングフェイズ

■オープニングフェイズ

「また出てきたわね、“女王”。
でも童話に出てくる冬の魔女じゃ、これ以上調べようがないわね‥‥」

――アンジェリン・エヴァーグリーン

●RLシーン:モスクワ・ルール

条件:一番最初のシーン
登場:キャストの登場は基本的に不可。タイムトラベラーや、時間を管理しているキャストのみ登場可能。
場所:時は西暦1992年1月初頭、雪の降りしきる冬の日。崩壊直後のソヴィエト社会主義共和国連邦、モスクワ。ジェルジンスキー通りにほど近い研究施設。
◆解説:
 星月夜作戦の真実の一端をプレイヤーに印象づけ、物語に引き込むシーンである。画面はセピア色、登場人物の人名や台詞は画面の下に字幕が流れるような、映画の1シーンを想像してもらおう。
◆描写:
 何処かの情報センター。壁のスクリーンには世界地図が映し出され、世界主要各国の首都の時間が下の時計に表示されている。中央に鎮座するのはソ連、大洋を隔てて仮想敵国のアメリカ。災厄後に赤道直下に移動する日本は、太平洋の端のほんの小さな島国でしかない。
 壁の一角には赤い地に星とハンマーのソ連国旗、そして盾の上に剣を配置したKGBの紋章旗が張られ、歴代の偉大な指導者の写真が並んでいる。
 部屋では白衣の研究者や軍服、背広姿の男たちが働いているが、一人の情報将校の中佐が入ってくるのを見ると全員作業を止め、直立して敬礼する。

研究者たち「(ざわついて)おお、これは、リリン中佐‥‥」
ゼレーリン少尉「我ら、ソヴィエト連邦に尽くさん。同志中佐殿、星月夜作戦は順調です。“女王”(カラリエーヴァ)は、いつでも使える状態にあります」
リリン中佐「よくやってくれた、同志少尉。‥‥全員、よく聞いてくれ。残念な知らせだ」
 憂いを含んだ口調に、全員が答えを予感して言葉を待つ。

リリン中佐「“モスクワ・センター”から、近々正式通達がある。現時点をもって、星月夜作戦を完全に凍結する。我々は今後の身の振り方を、考えねばならなくなった」
 そう。1991年末に、ソヴィエト連邦は崩壊したのだ。
一同「(ざわついて)では‥‥」
リリン中佐「作戦に関する全てのデータをすぐ破棄できるように手配してくれ。この作戦は我が国の歴史からは、永遠に消えることになるだろう」
ゼレーリン少尉「しかし同志中佐殿。“女王”の持つ力があれば‥‥」
 中佐は首を振り、寂しげに微笑む。
リリン中佐「同志少尉。使用するような事態は、来なくていいんだ。考えてみれば、ゴルバチョフ書記長は最初からこの作戦に反対だった。我らの同志が、世界で勝ち得てきたものは、こんなものではないはずだ」
ゼレーリン少尉「そうですか‥‥もう、戦いは終わったのですね」
 星月夜作戦と“女王”に関わった全員が、万感の思いで世界地図を見上げる。

リリン中佐「(一同を見渡して)その通りだ。諸君。長い冬の戦いは終わった。親愛なるアメリカの遠き友人たちとは、長い付き合いになったな。
 これから始まる新しい世界では、彼らとはもう戦う必要がなくなるだろう。各自でよく考え、行動してほしい。連中の言う“モスクワ・ルール”とやらを、最後ぐらいは守ってやろう」

 中佐は改めて一同を見渡し、姿勢を正すと敬礼する。
リリン中佐「同志諸君。私は、君たちと共に働けたことを、光栄に思う」

◆結末:
 万感の思いを込め、全員が母なる祖国の為に、眠りにつく女王の為に、最敬礼する。カメラはスクリーンの世界地図に向かい、広大な大陸を映し‥‥そして銀幕は暗転する。

◆ノート:
 “モスクワ・ルール”は情報項目のひとつであることをプレイヤーに伝えましょう。このシーンは映画の中の1場面なのか、それとも実際に起こったことなのかは、いずれ分かることを伝え、ミステリアスな予感を増大させましょう。
 情報将校のリリン中佐はカリスマ◎の祖国の将来を憂いていた人望ある指揮官、ゼレーリン少尉はカブト◎で血気盛んなその部下としています。
 “モスクワ・センター”とは、ジェルジンスキー通り2番地にあるKGB本部のことです。KGB議長ウラジーミル・クリュチコフは8月クーデターの犯として捕らえられ、最後のワジム・バカーチン議長は4ヶ月しか任に就けませんでした。
 壁の写真にはレーニン、スターリンから始まる歴代指導者が並び、最後はミハイル・ゴルバチョフです。混乱後のロシア連邦大統領には最初にエリツィン、その後プーチンが就任しています。
 公式にソヴィエト連邦が崩壊したのは西暦1991年12月25日でした。
 そして時は流れ、世界は災厄を耐え抜き、100年以上後。時の塵の向こうに女王が忘れ去られた頃、運命の天輪は再び巡り始めます‥‥

KGB - ソヴィエト連邦国家保安委員会
●『イヌ』:不愉快な視察

条件:『イヌ』のオープニング
登場:『イヌ』のみ自動登場
場所:ブラックハウンド基地、機動捜査課オフィス
◆解説:
 ミルトン・ブラウンの指揮する工作チームが『イヌ』と接触する。彼に不愉快な印象を持ち、怪しむように演じること。
◆描写:
 『イヌ』がいつも通りにオフィスにやってくると、オフィスが何やら騒がしい。
 不気味なスーツの一団。先頭に金髪に茶色の眼をしたダークスーツ姿の北米人が立っている。ここでミルトン・ブラウンが《買収》を宣言。身分を取得、外交官特権によってあらゆる警察のリソースを使用可能とする。

レイ巡査「な、なんなんだよテメぇら!」
千早冴子課長「本当に視察なのですか。このような行為に及ぶなら、それなりの権限があってのことなのでしょうね」
ミルトン「全員そのまま。外交官特権です。(懐から定期入れを取り出して全員に見せる仕草をして) 少々調べたいことがありましてね。特務警察のアセット(資産)を有効に使わせていただきましょう」
千早冴子課長「そ、それは‥‥!」
ミルトン「(指を鳴らして)よし。始めろ」

 黒服たちが勝手に入っていく。トロンを勝手に操作し、戸棚を全て空けて段ボールをひっくり返し、資料室が荒され、空中には紙の束が舞い、機動捜査課は大騒ぎになる。隊員たちは呆然として見守っている。
レイ巡査「あーっ! それ、オレのオヤジの写真!」
アスカ巡査「私の書いた報告書‥‥もうダメかも‥‥」
里見隼人巡査「おいおい、マジですか? あ、『イヌ』さん!」
アスカ巡査「でも『イヌ』さん‥‥あのID、どこから見ても本物です‥‥」

 ここでキャストと誰かを会話をさせてもよい。しばらくすると、ミルトンの部下らしき眼鏡を掛けたポニーテールの女性がオペレータールームから出てくる。
レーネ・ジーン「(眼鏡を直しながら小声で)チーフ。データベースをスキャンしましたが、大した情報はありませんでした。ロシア絡みの事件は少ないですね」
レーネ・ジーン「(キャストを認めて)‥‥あら、何か問題でも?」
ミルトン「フン。ブラックハウンドは優秀な警察機構だと聞きましたが。評価を改める必要があるようですね。‥‥そう、評価を改める必要が。よし。引き上げる」
 外交官を名乗る男たちは大した収穫がないのを知ると、ブラックハウンドを嘲笑い、後片付けもしないままさっさと去っていってしまう。

◆描写2:
 もしもアクトの参加者にメモリ巡査たちが人気なら、以下の描写を加えてもよい。
 一同が呆然として見送っていると、オペレータールームから電脳担当の娘たちがプンプンしながら出てくる。
メモリ巡査「まったく、なんて失礼な人たちかしら!」
聖美・キーファー巡査「ちょっと聞いてくださいよう、『イヌ』さん。キャリア組かなんかですか? 外交官特権とか言って、あの女の人が入ってきたんです」
 二人は『イヌ』に、涙ながらに横暴を訴える。ミルトンの部下のレーネ・ジーンの話だ。背の高いキャリアウーマンは勝手に席を乗っ取ってジャックインし、流れるような動作でキーボードを叩き、最後に二人に言い残して去っていったのだ。「どんなに高性能のデータベースでも、問題はそれを使う人間のようね」と。

キーファー巡査「あたしたちを何だと思ってるのかしら。もう、里見くんはあんなだし今度はこれで、どうしてこう災難が次から次へと‥‥」
メモリ巡査「まったく、これだから北米の人間は礼儀がなっておりませんわ!」
 『イヌ』が何か突っ込まないのであれば、代わりにキーファーが言う。
キーファー巡査「(小声で)あの‥‥メモリ。私とあなたも、北米出身なんだけど」

◆描写3:
 怒り心頭の面々の中で、千早冴子警部は決断を下す。
千早冴子課長「‥‥外交官IDはどこから見ても本物だった。しかしあのブラウン氏、ただの外交官ではないようね。あの人物を調査して。その結果必要が生じれば、貴方の判断で独自の行動を取りなさい。ああ、後片付けは、こちらに任せていいわ」
 しばらく会話を交わした後、“氷の猟犬”は三本の指を立てる。
千早冴子課長「お願いするわ、『イヌ』。あなたがやるべき理由は3つあるわ。ひとつは‥‥」

 頭脳明晰で知られるアイス・ハウンドが指を折ろうとした時、向こうで段ボールが崩れる盛大な音が響く。
里見隼人巡査「‥‥あちゃー。おいおい、マジですか?」
キーファー巡査「ちょっと里見くん。もう、よけいに散らかしてどうするのよ!」
千早冴子警部「(疲れたようにため息をついて)‥‥後片付けが先ね。ああ、『イヌ』、もう、行っていいわ」

◆結末:
 調査費用として1ゴールドが与えられる。最後に『イヌ』に何か演出をさせ、怪しい外交官たちに疑惑の目を向けたらシーンエンドとしよう。

◆ノート:
 機捜課の愉快な面々は全員エキストラであるため、ミルトンの身分を看破できません。頼みの綱は『イヌ』だけなのです。この後片付けは、エンディングフェイズまで続きます。(もちろん、コネ技能は正常に使用できます。)
 このシーンは全体的にコミカルな雰囲気となっています。ブラックハウンドには人気オフィシャルゲストも多いため、笑いを取るのも容易でしょう。他のゲストや、貴方のプレイグループでお馴染みのイヌのキャストがいたら、シーンの背景で片づけをさせられていることにしても構いません。
 MIDの面々は“カラリエーヴァ”に関してハウンドが何かを掴んでいないかを調べに来ました。情報機関である彼らが何故目立ちやすい行動を取ったのか。その理由は2つあります。ひとつはキャストを泳がせてそこから情報を入手するため。もうひとつは、敵役ゲストの存在をプレイヤーに印象づけるためです。

Separator - セパレーター、絶ち斬る者、黙示録の竜の尖兵
●オルタナティブ導入:モノアイの男

条件:『イヌ』のオルタナティブ・オープニング
登場:『イヌ』のみ自動登場
場所:イエローエリアのBAR“デビルズ・バレット”乱闘事件現場
◆解説:
 『イヌ』のゲストコネをインディア・セヴンに変えた場合の例を載せた。
◆描写1:
 洋画の1シーンの如く、夜の街の現場の回りに救急車やパトカーが止まっている。敬礼するSSS。担架で運ばれていく酔客。サイボーグ同士の喧嘩ということで、かなり大騒ぎになったようだ。
怪我人「くそ〜! オレのサイバーアームが‥‥」「おいマイク、しっかりしろ! 酷いな、折られるなんて」
キーファー巡査「あ、『イヌ』さん、お疲れ様です! 犯人がまだ中にいるんです!」

◆描写2:
 BARの中は椅子が折れ、壁がへこみ、なかなか大変なことになっている。補償金はだいぶ掛かるだろう。壁際で身長2mの大男が詰問を受けているが、頭部がサイバーなので酔っているのか醒めてきたのか表情がよく分からない。完全義体ではないようだ。
インディア・セヴン「だから答えられねェって言ってんだろが! 弁護士が来るまで、オレは何も喋らねえぞ」
I-7「ケッ、誰かと思えば今度は『(キャストの描写を入れよう)』野郎か。ハウンドは黄色い猿ばかりかと思ったら、今度は『(キャストの描写を入れよう)』かァ? ああん?」
メモリ巡査「キーッ! 不潔ですわ! アスカ先輩、あの男、不敬罪で逮捕すべきですっ!」
アスカ巡査「(なだめて)まあまあ、メモリ‥‥。あ、『イヌ』さん、これから護送に移るところです」

 ここでしばらく会話をさせよう。サイバーアームに刺青風にI-7の文字、シェードの中から不吉なモノアイが『イヌ』を試すように眺めている。二人にカブトワリが入っていた場合は、互いに分かり合うものがあるだろう。ここでは粗野な犯罪者のように描写すること。

I-7「イエスでもノーでもねェ。オレは何も喋らないぞ」
I-7「ほう‥‥てめェ、ヤる気か?」
I-7「(乱闘で散らばった床に落ちた拳銃に手を伸ばそうとして)‥‥ああ、冗談だよ冗談。これだけのコップを相手に銃撃戦なんて、脳のないマネはしねェさ。ほら、手錠を掛けたきゃ掛けろよ(太いクロームの両腕を出す)」

◆描写3:
 狭い車に無理やり押し込まれるインディアは、最後の瞬間、モノアイで意味ありげに『イヌ』を見る。その後サイレンを鳴らし、大都会の夜をパトカーは去ってゆく。インディアは窓からメタリックの腕を出すと、中指を立てて抗議の意を示す。『イヌ』に最後に何か演出をさせよう。
 ちなみに横では、メモリ巡査が破廉恥な犯人だと怒っている。

◆結末:
 しかし、北米連合政府某筋の圧力により、この事件は結局うやむやの内に闇に葬られてしまった。容疑者は解放され、ハウンド隊員たちは忙しくてこの事件を忘れてしまった。
 その後、インディアはより強力な完全義体に置換、軍除隊の憂き目に遭った後、MIDに拾われて準軍事作戦に従事するようになる。そして時は流れる‥‥

◆ノート:
 サイバー色の濃いキャスト、カブトワリなどにはこちらを使うのもよいでしょう。この場合、ミルトン・ブラウンが機捜課を訪れる『●『イヌ』:不愉快な視察』は、オープニングの一番最後のシーンに回します。

Dominator - ドミネーター、絶対火力の制圧射撃
●『ニューロ』:ロシア語のプログラム

条件:『ニューロ』のオープニング
登場:『ニューロ』のみ自動登場
場所:電脳空間、あるいはニューロの自宅、馴染みの店など自由
◆解説:
 『ニューロ』の元をアルファ=オメガが訪れてくる。『ニューロ』にキーワード『“マースカ・ディカーブリ”』について興味を持たせるのが目的である。
◆描写:
 聳える無限長の銀の虚空と緑のグリッド。無限に広がる電脳空間、トーキョーN◎VAウェブ複合体。『ニューロ』がイントロンしていると、ピンクの髪に赤い瞳をした可愛い女の子のアヴァターが現れる。
アルファ「あ、いたいた、『ニューロ』! ねえ、『ニューロ』さんは、ロシア語に詳しい? アルファ、わかんないことがあるの」
アルファ「『“マースカ・ディカーブリ”』って知ってる?」
 『ニューロ』がもし的確な答えを言うと、彼女は憤慨する。
アルファ「違うもん。アルファだってロシア語ぐらいわかるもん! アルファは何でも知ってるもん! “12月の仮面”っていう意味でしょ? ‥‥でも、その先が分からないの。うーん、仮面て、人やAIが被るものです。12月がかぶるものじゃないです。おかしくないですか?」

 ここで『ニューロ』は、噂になっている謎のプログラムの存在を思い出す。様々な根も葉もない噂が飛び交っている都市伝説なのだが、実在するとも確かに言われているのだ。
情報項目『◆“マースカ・ディカーブリ”13までの情報は、ここで判定させてもよい。

アルファ「アルファ、思ってることがあるの。このことばを探っていけば、新しいお友達に会えるような気がするの」
アルファ「『ニューロ』なら、もしかしたら分かるかな。分かったら、アルファにも教えてね。AIだったら、お友達になりたいな!」

◆結末:
 『ニューロ』が好奇心から調べてみることにしたら、演出を聞いてシーンエンド。ちなみに彼女から調査費用はもらえない。
 なおアクトの途中で分かるが、『“マースカ・ディカーブリ”』に関する噂の幾つかは、ウェブ上での動きを見るためにMIDが流した情報操作である。

◆ノート:
 もしも『ニューロ』が元からアルファ=オメガとのコネを持っていたりした場合は、どういう関係なのかプレアクト段階で聞いておき、描写を調整するとよいでしょう。
 電脳聖母の娘が似合わないようなシリアスなキャスト、ハッカー系など大人のキャストの場合は導入を調整することもできます。以下は、軍事関係と縁のありそうなキャストで、導入をN◎VA軍情報部の櫛田千里少佐に変えた場合の例です。

королева - U.S.S.R.カラリエーヴァ、冬の女王
●オルタナティブ導入:主要取引先との世間話

条件:『ニューロ』のオルタナティブ・オープニング
登場:『ニューロ』のみ自動登場
場所:金持ちたちが遊びに興じる、休日のウェットシティのカジノ
◆解説:
 アルファ=オメガが似合わないようなキャストに適合させたオープニングの例。『ニューロ』の元を櫛田千里少佐が訪れてくるパターンを載せた。
◆描写1:
 周りでは着飾った人々や金を湯水のように使うのがお洒落と思っている人々が、ルーレットに歓声を上げている。あなたがソファでくつろいでいると、いつの間にか近づいてくる人影があった。
 回りに溶け込む服装、あくまで自然に周囲に目を配り、姿勢のよい長身の女性は何気なくあなたの隣に座る。その筋には有名な、N◎VA軍情報部の櫛田千里少佐である。

櫛田少佐「儲けの方はどうだい。ここのカジノは素人の金持ちが主な客層だ。本気を出せば、勝つのはそれほど難しくないだろう」
櫛田少佐「別にキミに仕事の依頼をしに来たわけではない。これは、“主要取引先に対する世間話”だよ」
櫛田少佐「下手に電脳上で堅いフォートレスでも作ると、あちこちの電脳部隊がすぐに嗅ぎ付けてくる。こういう人込みの中の方が、秘密の会話を交わすには一番安全なのさ。旧世界の情報部員たちと変わっていない‥‥皮肉なものだな」

◆描写2:
 彼女は、『“マースカ・ディカーブリ”』の伝説、宣伝スクリーンの中を流れる映画『星月夜の祈り』の予告編、ロシアとの偶然の一致性について『ニューロ』と会話を交わす。

櫛田少佐「現在、N◎VA軍情報部では本件に関して重要度を設定していない。不確定要素が強すぎるからね。あるいはどこかの勢力が流した情報操作ということも考えられる」
櫛田少佐「さあ‥‥あの映画で損をする勢力というと北米だが、たかが映画1本にそこまでするはずもないだろう。我々N◎VA軍の情報分析官の調査では、あの映画に政治的なメッセージは含まれていないと報告があった」
櫛田少佐「“12月の仮面”‥‥ずいぶんとロマンチックだな。だが、ロマンだけでは生きていけないのは、キミや我々の世界の住人なら知っているだろう」
櫛田少佐「これは依頼ではない。“主要取引先との世間話”だよ。私に報告する義務もないし、キミに任せる。
 さらばだ。この情報をどう利用するかは、キミに任せよう」

◆結末:
 『ニューロ』に自由に演出させ、シーンを閉じよう。

◆ノート:
 よりシリアス度の高いキャストなら、こうした導入のアレンジもよいでしょう。必要ならルーレットで小金を儲けたとして、1ゴールドほど調査費用を持っていることにしても構いません。

Operation: Starry Night - オペレーション・スターリィ・ナイト、星月夜作戦
●『カブト』:困難はトーキーのアクセサリ

条件:『カブト』のオープニング
登場:『カブト』のみ自動登場
場所:ナイト・ワーデン社の応接室、カブトの自宅、打ち合わせ場所など自由
◆解説:
 アンジェリン・エヴァーグリーンが依頼に訪れる。キャストが護衛依頼を承諾し、彼女を好意的な味方ゲストと印象づけるのが目的である。
◆描写1:
 今度の依頼人は、活発そうな若い女性のトーキーだ。
アンジェ「はじめまして。私は、アンジェリン・エヴァーグリーン。アンジェでいいわ(手を差し出す)」
アンジェ「なるほど、『キャストのハンドルを入れよう』とはあなたのことね。この街ではボディガードを雇うのに、このワーデン社を頼るのが一番と聞いたのよ」
 『カブト』に何か特徴があれば、それを活かしてしばらく会話しよう。
アンジェ「そういえば、一昔前まではカブトのシンボルは強化クリスタルのシールドだって聞いたけど‥‥へえ、やっぱり最近は違うのね。(頷いて)私の読んだドキュメンタリーの通りだわ。『カブト』さんは『(武器を入れよう)』を使うのね」

◆描写2:
 彼女が経緯を話す。北米のウェブを巡っていて偶然見つけたデータ集合体『“カリリオーン・クラスタ”』の中身は、電脳に詳しくない彼女には荷が重かった。興味を覚えてロシアの歴史を調べ始めた彼女は、謎の存在『“カラリエーヴァ”』の名に突き当たる。そして偶然、トーキョーN◎VAでは『星月夜の祈り』という題材を同じくした映画が公開中だ。
 ロシアに直接渡るのもいいが、ゴエルロは寒く、設備も整っていない。赤道直下のN◎VAであれば、図書館や電脳ライブラリなど資料も豊富だ。それで彼女は取材旅行を兼ね、N◎VAに渡ってきたのだという。期間は一週間、取材中の身辺警護。ゴールド1枚が前金で払われる。

アンジェ「(データチップを見せて)これに入れてきたカリリオーン・クラスタって名前だけど、何が入っているのか分からないのよ」
アンジェ「失礼ね。それぐらい私も調べたわ。ロシア語で“鐘”って意味よ」

◆描写3:
 予想される妨害などはないのかなどと尋ねられると、彼女はやや弱気になり、助けを必要としていることを示す。
アンジェ「それで‥‥そのことなんだけど。どこかの誰かが、私を見張ってるような気がするの。私宛ての電子メールが時々遅れたり、この街に来てから、外を歩いてて誰かの目を感じたり。気のせいだと‥‥いいのだけど。なんだか気持ち悪いわ」
アンジェ「だって、そんなときのためにカブトがいるんでしょう。私だってちゃんと調べてきたのよ。たとえ何も起こらなくたって、カブトがいること自体が抑止力になるんだって」

◆描写4:
 しばらく会話をさせよう。どのような経緯を経ても、話が決まると彼女はにっこりして改めて手を差し出す。
アンジェ「じゃあ、契約成立ね。よろしくお願いしますわね。
(ポケットロンを操作して)まずは例の映画を観に行って‥‥図書館にも調べにいかなくちゃならないわね。それからあそこと‥‥N◎VAの地理もチェックしておかなきゃ。『カブト』さん、この街に詳しいわよね?」
アンジェ「そうよね、私もしっかりしなくちゃ。このぐらいの障害で引き下がったらトーキーの名がすたるわ。
(人差し指を立てて) メディア業界にはこんなことわざがあるのよ。“困難はトーキーのアクセサリ”ってね!」

◆結末:
 『カブト』に好きに演出させてシーンを閉じよ。以降、アンジェリンはチームを組み、基本的に表舞台では『カブト』と行動を共にする。

◆ノート:
 アンジェはトーキー◎、<※事情通>や<※シャーロック・ホームズ>も備えた、実は勘も鋭く調査能力は優秀なゲストです。しかし判定は行わないため、彼女の取材調査は演出的には進んでもルール的には進みません。情報入手はキャストが行ってください。これはこのシーンでプレイヤーに伝えましょう。
 もしリサーチフェイズ中に詰まったら、彼女が判定したことにしてヒントを出したりしてもよいでしょう。

Angelin - アンジェリン、星月夜の天使、枢機卿の娘
●『フェイト』:謎めいた依頼人

条件:『フェイト』のオープニング
登場:『フェイト』のみ自動登場
場所:フェイトの自宅、事務所あるいは待ち合わせ場所など、自由
◆解説:
 『フェイト』の元をニール・スミスが訪れてくる。キャストが依頼を承諾すること、及びニールが紳士的な味方ゲストであり、どこか謎めいた部分を印象付けるのが目的である。
◆描写1:
 現れたのは写真の中では背景に埋没してしまいそうな、壮年男性だった。鋭い水色の瞳だけが、その印象を裏切ってあなたを見つめている。服装も地味ながら高級なジャケットをまとい、身なりもよい。
 ニール・スミスは物静かな紳士で教養に富み、どこか見た目通りだけの人間ではないことを感じさせる。
 アクト開始までに『フェイト』の事務所の様子、及び『フェイト』本人の外見、設定、趣向などを調査あるいはヒアリングしておき、それに合わせてニールの台詞を調整し、用意しておくとよいだろう。ここは貴方の腕の見せ所だ。
 彼はまるで前から知っていたかのように、初めて会ったはずの『フェイト』の個性を次々と言い当てる。
ニール「君は出身地はどこかな。(手でやんわりと遮って)ああ、待ってくれたまえ。私が当ててみよう。そうだな‥‥そう、君は『』出身。大方ご両親のどちらかが『』人‥‥そんなところではないかね」
ニール「言葉だよ、『フェイト』君。君のニューロタングには、かすかな『』の訛りがある。私のような北米人とは違うアクセントだ。電子音声でなく人間の話す言葉なら、そこで分かるのさ」
ニール「ただ見るだけでも、様々なことが分かるよ。例えばそこにある『』から、君は『』が好きなのが分かる。服は『』が好き。
 きっと君は煙草は『』でコーヒーは『』、ふーむ、きっと休みの日には‥‥『』するのが気に入っている。そんなところではないかね」
ニール「魔法を使った訳ではないさ。よく見ているだけで、様々なことが分かるのだよ」

◆描写2:
 本題に入ると、彼は『“カラリエーヴァ”』の調査の話をする。
ニール「君は映画は好きかね。私も映画はよく見る。その国の人間が何をどう考えているのか、他の国をどう見ているのか、よく分かるからね」
ニール「はは、確かに、あの作品ではどうも私の国が悪者に描かれているようだが。別に私はなんとも思わんよ。ものの見方というのは、多面的なものだ」
ニール「あの『星月夜の祈り』に出てくる“カラリエーヴァ”という言葉――あれがフィクションではないとしたら、君はどう思うかね」

 請われたなら彼は自己紹介をする。フリーのジャーナリストとして世界を巡り、今は引退し、悠々自適の生活を送っているところだ。在職中に様々に形を変えて物語に名を残す“女王”に出会い、その本質を結局突き止めることができずに終わってしまっていたという。
 そして今。偶然、トーキョーN◎VAでヒットしている映画の中にも、再び“女王”が登場した。旅行でN◎VAに来ていたという彼は昔のことを思い出し、気に掛かった最後の仕事をどうしても終わらせたいというのだ。期間はとりあえず1週間、適宜連絡をしてほしいとのことである。

◆描写3:
 もしキャストが比較的若年で、「どうして自分なんかに‥‥」などと言って来た場合は、そのキャストを納得させよう。
ニール「可能性だよ、『フェイト』君。
広範囲に信用があり、なおかつ高い料金を取る私立探偵に頼む手もある。だが君のような人物には君だけの潜在力や大きな可能性、独自の視点がある。だから私は、君を選んだのだ。
 あの『星月夜の祈り』という映画に描かれているように、この世界にはいくつもの側面がある。善と悪、光と闇、西と東、過去と未来‥‥いずれも多面的なものだ。年寄りには年寄りの、若者には若者の独特の視点と可能性がある。
 せっかくの1回きりのビジネスだ。互いのために良い結果を出してもらいたい。だから君のような人物を探したのだ、『フェイト』君」

◆描写4:
 依頼が成立したら、彼は前金を払う。
ニール「そんな訳で、君には年寄りの最後の仕事に、付き合ってもらおうと思ったわけだ。ところで、今のこの街では、ゴールドのクレッドスティック1枚が相場だという。この認識で正しいかな?」
ニール「(机の上にカードを置くしぐさをして)よろしい。2枚出そう」
(キャストに与えられる報酬点は10点である)

 ニール氏は中央区、インペリアル・ホテルの高級ルームに宿泊している。電話連絡は自由。ただし自分の居場所は内密にしてほしいと依頼する。

◆結末:
『フェイト役』が了承すれば、彼は温和な笑みを湛えて握手する。
ニール「よいビジネスができて嬉しいよ、『フェイト』君。確か、フェイトとして売り出し中の名は『(ハンドルを入れよう)』だったね。実に君らしい名前だ。では、いつでも連絡してくれたまえ」

◆ノート:
 スムーズに進めたい場合は、ニール氏と前から親交があり文通していた(キャストがトーキーだったりした場合)などとするのも良いでしょう。キャストの設定をうまく活かし、演出に結び付けましょう。
 ここでニール氏を印象付けられるかは、貴方の星月夜作戦の勝利の鍵のひとつになります。実際のアクトでは、やはり女性で10代〜20代の駆け出しのフェイトなどのキャラクターが最も似合いました。実は、PC1枠はヒロイン枠なのです。

Cardinal - カーディナル、スパイの国の枢機卿
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Operation: Starry Night - 星月夜作戦
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