新少林寺/SHAOLIN スペシャル・エディション(2枚組) [DVD] 新少林寺 (製作年度: 2011年)
レビュー日:2013.3.31
更新日:
評価:★★★★★
Yahoo映画リンク
IMDBリンク


解説(Yahoo映画より):
ジェット・リーを一躍スターダムに押し上げた1982年のカンフー映画の歴史的金字塔『少林寺』を、29年ぶりに現代によみがえらせたカンフー・アクション大作。『香港国際警察/NEW POLICE STORY』のベニー・チャンが監督を務め、少林寺が大炎上する中、命懸けで戦う男たちの姿を近代武器と伝統武術による戦いを織り交ぜながらダイナミックに活写する。アンディ・ラウ、ニコラス・ツェー、ファン・ビンビン、ジャッキー・チェンらアジアの大スターによる夢の共演や、エモーショナルなエンディングが待ち受ける新しい少林寺の世界に注目だ。


「少林寺ジレンマ」のひとつの解決

いや、よかったです。
今まで少林寺映画見るたびに感じた「少林寺ジレンマ」のひとつの解決が示されて、なんかすっきりしました。
そうかぁ、解決のキーワードは「断捨離」だったのね!
(いや、映画でそういうセリフがあるわけじゃないですよ。これはあくまで極私的解釈)

「断」は生命への執着を断つ
「捨」はモノにこだわる心を捨てる
そして「離」は心のよりどころとなる場所といえどもいざとなれば離れる
(凡人には「断」は難しいので、「捨」「離」でがんばるしかないかなぁ)

だからこの映画でのカンフー修行では、今までのように戦闘能力をつける体力トレーニング場面はほとんど出てきません。自分の心身を鍛錬していく型の繰り返しのみ。そこに「今までの少林寺モノとは違うんだぞ」というメッセージが込められているような気がしました。
そしてラスト近く、極限状態に追い込まれた坊さんたちがバタバタと死んでいきます。でも、どんな壮絶な死に様をとげてもみんな穏やかな表情で死んでいくんですよ。あれはスゴイと思った。

昔「少林寺」や「阿羅漢」で素敵なおじさま師父として登場したユエ・ハイさんが方丈(少林寺のトップ)役で出てきたのも感激。
まるであのまま少林寺で修行続けて悟り済ましたような風格で、もう出てきて慈悲にあふれたお言葉が聞けるだけでも満足なのに、あのご年齢で予想以上に貫禄あるカンフー技も披露。この方丈様の身の処し方もお見事です。

そして「ナイスガイ」以上に「戦う料理人」ジャッキー! もう最高!
豪快な野菜炒め(爆)と、「中華鍋武器にするアクション」には萌えました。
出番多くない割りにはしっかり美味しいとこ持ってってるし……w
ジャッキー演じる悟道とちびっこ少年僧たち(彼らも立派なカンフー使いです)は、ひたすら悲惨で重いトーンに傾きがちのこの映画に、笑いと癒しの味付けを加えてくれたと思います。

あ、本来の主役のアンディ・ラウ、もちろん好演です。
初め傲岸不遜な軍閥の将軍侯杰として登場するアンディ・ラウ。しかしその言動には、決して真の安らぎを得ることができない修羅の心がほの見えます。
侯杰が最初の方で放つ「殺さなきゃ殺される」というセリフを聞いた時あっと思いました。
リー・リンチェイ(ジェット・リー)が「少林寺」でユエ・ハイ師父に同じセリフを言っていたのを思い出して……

その後最愛の娘を死なせる羽目になって絶望のどん底に落ちる侯杰。それをきっかけに改心し、人間として再生していくあたりはジェット・リーの「SPIRIT」を思い出しました。

ジェット・リー本人こそ出ていないものの、この作品は彼とあの「少林寺」へのリスペクトもちゃんと込められているんですね、きっと。

修羅の道から猪の罠という文字通り「畜生道」に落ちた侯杰が悟道に救い上げられ、一椀の麺を与えられて人間の心に立ち返り涙を流す場面はとても象徴的。
この後侯杰がどのように「殺さなきゃ殺される」という論理を超えて悟りの境地に達するのかは見てのお楽しみ。

少林寺そのものは禅宗のお寺だそうですが、僧達が何かにつけて唱える「阿弥陀仏(アーミィトゥォフォー)」という少林寺モノ定番の決まり文句や、悪人の極致から180度の転換を遂げる侯杰を見ていると、なぜか親鸞聖人の「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」という言葉を思い出してしまいました。


INDEX